久留米競輪・佐世保競輪


平成9年6月5日・6日
 久留米といえば松田聖子、チェッカーズといるがやはり中野浩一だろう。実績についてはい
まさら書く必要もないし競輪界に残した功績は数え切れない。私が中野の走りを現場で見たの
は2回だけでしかも最晩年だった。それだけに余計に見たかったと思うと同時にそれを越える
選手の登場を期待しているが中野より強い選手は出てきても中野の存在を越える選手は出て
こないような気がする。その点同じミスターと呼ばれる存在だけあって長嶋茂雄と似ている。中
野の通算勝利数が666勝で長嶋の通算ホームラン数が444本とどちらもゾロ目なのは単な
る偶然だろうか。
 そんな聖地に近い久留米と佐世保競輪の旅打ちです。

 飛行機を降りて地下鉄で天神へ。ここから西鉄電車に乗って久留米に向かう。福岡空港から
久留米への高速バスもあったはずなのだがなぜか乗っていない。時間が合わなかったのだろ
うか。西鉄は大手私鉄に名前を連ねながらバス会社として日本一大きく自前でバス車体の製
造を行っているくらい(西工ボデーと呼ばれる)で電車は少々影が薄いのだが赤と白に塗られ
た特急列車は関西の大手私鉄にひけを取らない車両である。ペパーミントグリーンの普通用
の電車はどう見てもきれいには見えないが。
 西鉄久留米駅で電車を降り無料バスに乗る。バスは15分程度走り公園の中で停まった。久
留米競輪も公園の中にあるようだ。


 なかなか設備の整った競輪場だった。スタンドもぐるりとバンクを取り囲んでおり地方には珍
しい。特別観覧席は4000円のロイヤル席から1000円の席まで複数ありバック側の掘り下
げ式の席は他場にはない視線で非常に珍しい。今回は入らなかったが次回はぜひともここで
見てみたいものである。大きなスタンドを作るのではなく一番見やすい場所を選んでいる傾向
にあるようでそれはそれで見識だろう。ただ場所が多くなるとチェックポイントも増えるわけでそ
の分人件費もかかるわけだが。サイクルギャラリーも設けてあり当然ながら中野浩一の記録
や自転車も展示されている。レースそのものは何度も書いている通り九州によくある「3地区対
抗戦」で知っている選手も無く車券もあたらなかった。


 この日は長崎に停まるつもりだったのでJRの久留米駅に向かう。やってきたバスは「堀川バ
ス」という会社で福岡といえば西鉄バスとその子会社だと思っていたので他に民間バス会社が
あるのかとびっくりした。福岡市にも市バスはなく北九州市も市バスはほんの一部で北九州市
民でも知らない人が多い、バスといえば西鉄バスを差すと言われるくらいの土地柄だがさすが
に福岡県でもこのあたりに来るとその勢力は衰えてくるようである。JRの久留米駅に隣接して
ブリヂストンタイヤの工場があり駅前の通りも「ブリヂストン通り」だった。ここはブリヂストンの
親会社であったアサヒ靴の発祥の地という。子が親より大きくなるのは人間なら喜ばしいことだ
が企業の場合はなぜか時代の波に乗れなかったもの悲しさが漂う。豊田自動織機のようにトヨ
タの車を作って生き延びているところもあればアサヒ靴(アサヒコーポレーション)のように倒産
したところもある。大日本セルロイド(子会社は富士フィルム)は残っているのだろうか。

 久留米から二駅目の鳥栖で電車を乗り換え長崎に向かう。かって駅の裏側は貨物の操車場
だったらしく昔来た頃は広大な空き地になっていたがこの頃は巨大なサッカー場を建造してい
た。こんな所にサッカー場を作って客来るんかいなと思っていたがその不安は現在見事に的
中している。こんな素人の予言が当たるくらいなのに何億というお金をよくも使うものである。
 長崎行きの特急は間もなくやってきた。自由席はほぼ埋まっていたが次の佐賀で大部分が
降りた。唄われるほどの田舎ではなさそうだがもっとも数十人レベルである。ここから先はそう
増減せず諫早、浦川を経て長崎へ。路面電車に乗って市街地のホテルに向かう。長崎の路面
電車は単車(1両)ばかりでかなり混雑していた。もっとも100円という缶ジュースさえ買えない
安い値段で市街地の端から端まで乗れる以上文句は言うまい。

 午前中を観光で過ごし昼頃佐世保行きの高速バスに乗る。鉄道でも行けるのだが本数は少
なく運賃も高いのでバスに限る。このあたりなら渋滞もしていないだろう、という予想通りバスは
定刻に佐世保駅前に着いた。無料バスは既になく駅前の地図を見て歩いていく。道行く車のナ
ンバーにアルファベットが入っている(本来平仮名が書いてある部分がアルファベット。米軍関
係者)のが基地の町を思い出させる。競輪場は駅の反対側で約15分歩いて着いた。最西端
の公営競技場だがそんな感慨はなく小ぶりなスタンドに腰を下ろしてあたりを見回す。1・2コー
ナーの向こう側には海が見え造船所のクレーンの奥には軍艦らしきグレー一色の船が浮かん
でいた。山の上の方まで住宅地が広がっているのが港町らしい。私は神戸で高校時代を過ご
したがどうしてこんな斜面に住むのか全く理解できなかった。クレーンも入らないだろうしどのよ
うにして家を建てたのか非常に疑問を持った、そんな高校時代のことを思い出した。バスに乗
る前に購入した長崎駅の駅弁を広げながらレースを観戦したがレースの様子も的中した覚え
も無い。

 二日間全く当たらないので嫌気が差し早々と帰ることにする。帰りもバスの時刻に合わず駅
まで歩いていく。梅雨入りしているだけあって雨こそ降らなかったもののかなりむしむししており
気持ちが悪かった。駅の前に地下街(というほどではない。単なる通路か)がありそこの一軒で
ちゃんぽんを食べることにする。全く期待していなかったが結構美味しかった。その後佐世保
を訪れるたび(といってもこの後1回しかないが)訪問している。佐世保といえば有名な通販会
社がありメーカーの営業マンが商品に取り上げてもらおうと日参していると聞いたことがあるが
この頃はそこまで有名ではなく佐世保の会社ということも知らなかった。もし今なら「たかた御
殿」ぐらい見て帰ったに違いない。

 またもやバスに乗り福岡へ帰る。結局なぜバスにするのかといえば運賃の安さと途中停まら
ないことによる「セキュリティ」のよさに起因する。泥棒は逃げることを一番に考えるからスリや
置き引きをするなら到着間近にする。つまり鉄道のようにちょこまか停まっていると逃げ場がい
くつも発生するわけで一人旅だとゆっくり寝ていられない。特に最近のJRの特急はしょっちゅう
停まるだけに敬遠することが多くなった。福岡市内はかなり渋滞しており約30分遅れでバスは
到着した。

写真は2007年に撮影したものです。

久留米競輪ホームページ
佐世保競輪ホームページ


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