若松競艇・別府競輪


平成8年11月27日、28日
 北九州市は合併した市とはいえ公営競技場が4ヵ所あり(現在門司競輪廃止に伴い3ヵ所)市
内で3競揃っているところはここだけでしょう。若松は競輪場、競馬場のある小倉・門司からは
だいぶ離れていますので同じ市内という印象はかなり少ないです。石炭の積み出しで賑わった
往時の建物が残りこっちが表だ、と主張しているような感さえあります。

 新幹線を小倉で降りて在来線へ。大阪や東京近郊ではこの頃既に普通列車は全車禁煙とな
っていたが九州ではまだ一両吸える車両があった。この頃東日本を除くJRは3ドアクロスシー
トの新型電車を競うように投入しており九州にも811系という電車が入っていた。そんな新車
に灰皿が付いているのが珍しく遠慮なく吸わせて頂く。そういえば競艇場でもスタンドの分煙が
始まりかけていた時代だったが九州の施行者は「土地柄を考えるととても出来ない」などとコメ
ントしていた。それが納得できるような状況だったのでJRは新型の電車にもあえて灰皿をつけ
たのだろう。嫌煙運動はこの後九州をも席捲し間もなく普通列車は全面禁煙となった。この灰
皿は2年ちょっとの運命だった様な気がする。
 競艇場の最寄り駅は折尾から筑豊本線に乗り換えた奥洞海で無料バスは黒崎から出ている
のだが私は戸畑で降りる。この区間は複々線になっており貨物線にも使われていないホーム
があった。

 戸畑駅の前には洞海湾が広がっており線路は大きく迂回して折尾に向かう。湾の対岸であ
る若松へは若戸大橋が赤い鉄骨を見せていた。昭和30年代に出来たこの橋は石炭と鉄で賑
わった北九州の勢いそのままという感じだったのだろう。橋は湾を通る船の為かなり高いとこ
ろを通っており自転車や歩行者は不便なので渡船が今でも残っている。渡船で行くのも風情が
あっていいだろうとこのルートを選択したのである。駅を真っ直ぐ進むと渡場で何人もの人が待
っていた。で乗ろうとすると入口に箱が置いてあり大人は50円払うようにと書いていた。それで
風情は吹き飛んでしまった。大阪市内にも渡船は結構残っているがすべてタダだし富山でも乗
ったことがあるがこれもタダだった。富山の場合以前は有料だったらしいが自動券売機のリー
ス料など費用の方が高くみみっちいお金を取るくらいならと無料にしたらしい。ここ若戸渡船の
場合は箱の中に入れるだけなので費用はかからないがそれでもみみっちい。仕方なく50円を
投入し乗り込む。真っ赤な橋を下から見上げながら船旅は数分で終わった。

 若松渡場からも競艇場行きの無料バスが出ているので待っていたらなんと全面ボートの絵で
「若松競艇」と大書きされたバスがやってきた。しかも北九州市営バスだった。こんなバス競艇
場の送迎にしか使えないぞ、と思っていたら「若松」の部分は取り外せるようになっていた。ここ
若松競艇は芦屋競艇と近接しており二つを合わせるとほぼ毎日開催されることになる。このバ
スは両競艇場の送迎専用バスとして活躍しているのだろう。それにしても北九州市営バスは門
司や小倉では見かけることはなく八幡西区あたりのみで見かける変な存在である。福岡市も
北九州市もバスといえば西鉄バスばかりなので妙な新鮮さを感じてしまう。

 片側2車線の道路を走り15分くらいでバスは競艇場に着いた。踏切を渡ると金融会社の看
板、大手の会社ではなく堅気ではなさそうな怪しげな会社のものが並びあまりいい雰囲気では
ない。大きな駐車場を走りゲートに着いた。
 この頃スタンドの改修工事が終わりかけていたが少々分不相応ではないか、と思えるような
スタンドだった。競走水面は洞海湾のどん詰まりになっており循環しないせいか非常に水は汚
くボートが通った後は茶色く濁っていた。コース巾も狭く水面際で見ていると6コース艇の水飛
沫がかかった。そんな具合だからかなりインが強くあまり面白いとは思わなかった。バックスト
レッチや1マークの奥は土手になっているだけだったが2マークの奥には造船所の大きなクレ
ーンや建造中の船も見えた。ちょうど対岸あたりにはウインズ八幡があると思うのだが見えな
かった。のどかな雰囲気ではありながら工場外の片隅ということもあり私が育ったあたりの風
景を思い出してしまった。チャゲ&飛鳥の「NとLの野球帽」という歌に出てくる風景がぴったり
と合う。工場の間の駐車場で野球をしていた頃を思い出す。

 帰りは競艇場の入口前にある筑豊本線の奥洞海駅から列車に乗る。30分に1本程度しか
走らないのに複線であり貨物輸送が盛んだった頃を思い出させる。筑豊本線は最後まで電車
やディーゼルカーではなく機関車が引っ張る客車列車が残っていた。ピーっとホイッスルを響
かせてがたっとゆっくり動き出す。折尾で乗り換えるつもりだったが既に本州ではこのような列
車は走っていなかったこともあり終点の直方まで乗ってしまう。途中には上り線と下り線が大き
く離れている区間がありかっては複線どころか複々線だったことを思い浮かべさせる。直方か
ら筑豊電鉄で黒崎に戻り小倉で泊まる。

 小倉から特急に乗り別府に向かう。「にちりんシーガイア」だったと思うがはっきりしない。南
へ、南へと進んでいくとだんだん太陽が真上になってくるような感じがする。11月も下旬だとい
うのに冬が近づいているという感じはしない。
 別府で降りると温泉旅館の広告で一杯だった。当然といえば当然だが別府競輪はどうやって
行くかはどこにも書いていない。だいぶうろうろした挙げ句、別府北浜バス停から競輪場方面
の路線バスが出ていることを突き止め歩いていった。別府北浜バス停は国道沿いにありバス
も大分方面から来ているようだった。どうやら無料バスのような類はないらしい。バス停におい
てあった出走表を取りバスを待っていると「兄ちゃん、今日もとろうな」と声をかけられた。なん
となく返事をすると「このレースはこれやで。間違いないよ」などと話し始めた。やばい、コーチ
屋かと思い早目に返事を切り上げバスに乗り込んだ。

 国道に沿ってバスは北上し海辺を走るバイパスとの合流地点に競輪場はあった。バイパス
が無かった頃は競輪場は海辺だったにちがいない。道路の街路樹は南国風の木で思いっきり
リゾート気分を味わせているが競輪場には不釣り合いである。そんなミスマッチも面白かった。
湯どころの別府らしく場内にも温泉があるがさすがに入る気にはならなかった。3レースほど買
ってみていたらバス停で先ほど声をかけた男が「な、決まったやろ」と再び声をかけてきた。ど
うやらコーチ屋ではなく単なるおせっかいなオヤジのようだがややこしい存在には違いなく適当
に返事をして付きまとわれないうちに競輪場を去ることにした。まあ勝てなかったということも理
由には違いないけどさ。

 道路と線路が沿って走っており少し離れたところに駅が見えた。その駅まで歩くことにし途中
ジョイフルというファミレスで食事にする。現在このファミレスは中国地方から関西の西の方あ
たりまで店舗を展開しているが当時は九州でのみ知られているような存在で私も初めて入っ
た。日替わりのランチは信じられないほど安く味もこの程度なら、というレベルで私はその後も
機会がある毎に行くようにしている。ローカルファミレスとしては京都の舞鶴に本拠を置くトマト
アンドオニオンというのがありここのハンバーグも結構いけるので愛用している。お近くで店舗
を見かけた際にはこの両チェーンには入って見ることをお勧めする。
 離れたところにあった駅は亀川という駅で一応競輪場の最寄り駅になるだろう。特急も停ま
る列車が一部あるので便利だが普通列車の数はそう多くはない。帰りは夜の大分空後発の飛
行機を予約していたのでだいぶ時間がある。時刻表を眺めると幸崎というところまでは本数が
割合あったので行ってみることにする。おそらく大分・別府の都市圏の切れ目あたりだろう。
 別府をすぎると電車は海と断崖に挟まれた狭い空間を道路と並んで併走し始めた。別府大
分マラソンのコースで何度もテレビで見た風景である。かってはこの道路に路面電車も走って
いたらしいがクルマの邪魔になるとして廃止されたらしい。確かに道路の拡張も難しくやむを得
なかったかもしれない。
 幸崎は草で覆われた構内が目につく小さな駅だった。赤色の佐賀関行きのJRバスが電車に
連絡していた。佐賀関といってもぴんと来ずそういえば昔製鉄所があってその専用線がこの幸
崎から出ていたことを思い出した。草で覆われた部分はその跡地なのだろう。私が初めて訪れ
た頃はこんなレベルだったのだが今佐賀関といえばあのブランド魚「関アジ」「関サバ」で有名
な漁港である。そのままバスで佐賀関に向かっていればそんな魚を味わっていたかもしれない
が案外漁港では魚を食べさせる店は少ないものである。それでもせっかく近くまで行っていた
のになという思いは今でもある。ついでに言えば亀川近くの日出では城下カレイという特別なカ
レイがおり(何でも海中に真水が湧き出ているところがありここにカレイが集まっているとか)こ
っちの方も結構いけるらしい。別府競輪はぜひとも再訪せねばなるまい。

 大分駅から空港行きのバスに乗ったのだが別大道路(さきほどのマラソンコース)の渋滞に
巻き込まれ大いに遅れて別府につきさらにお客を乗せた。当時九州のバスは遅れるのが当た
り前で定刻通りにつくことはまずないと思っていたから私は余裕を持った時刻のバスに乗って
いた。別府をすぎても渋滞は続きいらいらし始めたが郊外に出るや思いっきり飛ばし始めさら
に空港道路という片側1車線の自動車専用道路に入るや否や制限速度を50キロ以上オーバ
ーする速度で走り出した。いろいろなバスに乗ったが「怖い」とまで思うほど飛ばしたバスはこ
の時しか乗ったことはない。バスは定刻通りに空港に着いたのだが何がなんでもやり過ぎのよ
うな気がしないでもない。

若松競艇ホームページ
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