北見競馬

平成10年6月28日

 最北の競馬場、北見競馬場に行くことにする。ここは札幌からでも飛行機で一時間近く、鉄道
なら4時間以上かかるまさに「日本一遠い場」であろう。
 北海道には函館、札幌(JRA)・門別、旭川(道営)・岩見沢、帯広、北見(ばんえい)と7箇所の
競馬場があるが(札幌はJRAと道営の双方、旭川は道営とばんえいの双方が使用。ちなみに
10年位前までは岩見沢や帯広でも道営とばんえいの双方が使用していた)全場を同時に開
催することはなく開催日程にもよるが最低でも4回は季節を変えて北海道を訪れなければ北海
道全場制覇も出来ないのである。

 大阪から北海道への航空券は千歳が特割便も設けられ少々割安なのに対しその他の空港
へ向かう便は割高となっている。そんなわけで私は当時全日空が発売していた「早割」の50パ
ーセント引きの航空券で女満別へ向かうことにした。

 公共交通機関を利用して旅打ちをすることにしている私だがさすがにここは無理だろうと最
初からあきらめていた。北見駅からバスがあるらしいがおそらく午前中で終わりだろう。女満別
空港に到着するのは11時半でありここから北見市街までは40分くらいかかるらしい。昼を過
ぎてもバスがあるか・・・タクシーにしても市街地からどれくらい離れているかわからんし・・・と判
断しレンタカーを予約していた。当時勤めていた会社の上司が某大手レンタカー会社にいたこ
とがありそのつてで割安に借りることが出来た。レンタカーの値段はええかげんなものである。

 女満別空港に着きずらりと並ぶレンタカー会社のカウンターからその会社を見つけ名前を告
げる。ワゴン車に乗せられてプレハブの事務所へ。事務所内にはもうすぐ7月だというのにスト
ーブがついておりびっくりする。車に乗ってみてもヒーターをつけたぐらいだから結構寒い。

 国道に向けて車を走らせるが周りに家は全くない。人影も見えない。しばらく進むと線路があり
すぐ近くにホームだけの駅があった。石北本線の西女満別駅だろう。空港の最寄駅には違いな
いが歩いたら30分以上かかるだろう。線路を空港のほうに捻じ曲げてもいいかなという気が
する。とはいえ本数は少ないし(電車も飛行機も)必要ないか。国道に出て走っていくが全く景色
が変わらないのに気づき無意識にアクセルを緩めていたのかとメーターを確認したら80キロ
を超えている。人間の感覚とは恐ろしい。この道路に制限速度の標識はなく法定速度の60キロ
だろう。あぶないあぶないとアクセルを緩めるが気を抜くとすぐに80キロを超えてしまう。
 対向車もめったにこないし後方にも車はいない。自分の車のエンジン音以外何も音はしない。
ラジオでも聞くかとスイッチを入れたがNHK第一しか入らなかった。週末に参議院選挙を控え
ており政見放送を流していた。自民党から共産党、はては大日本愛国党から雑民党まで全て聞
いてしまった。後にも先にも政見放送を聞いたのはこの時だけである。

 20分ほど走ると町になる。町といっても10−20軒の家が並びホクレンのガソリンスタンドや
セイコーマート(北海道のスタンドとコンビニはこればっかり)があるという集落なのだが道路案
内板には「○○市街」と書いていたりする。これで市街だったら東京や大阪はどう言うんだろう
か。この市街に近づくと道路に速度制限の標識が現れる。40キロとか50キロとか。この制限速
度になるところあたりで取締りが多いと聞いていたのでスピードを落とす。ましてや観光客の乗
るレンタカーである。地元警察にとってはねぎをしょった鴨みたいなものだろう。実際に取り締ま
りはやってなかったけど。
 少々寄り道もしたので13時前に北見市内に入る。突如として道路は4車線になり車が増え
る。レンタカー事務所でもらった地図を元に競馬場へ向かう。市街地からはそんなに遠くな
い・・・とはいえ徒歩で向かうことは無理だろう。駐車場は当然無料。

 何も食べていなかったのでとりあえず食堂に向かう。食堂の建物はスタンドの裏にあり3店舗
ほどあったが1店は閉まっており1店は売店専用の感じだった。ちゃんとしたものが食べたかっ
たので残る1店に入り豚汁定食を頼む。この豚汁はジャガイモが入っておりそれが汁に溶けト
ロントロンのジュルジュル、おふくろの味風に仕上がっていた。私が食べた豚汁のうちで上位ラ
ンクに入るがかなり空腹だったことを考えると少々割り引く必要があるかもしれない。

 この競馬場はばんえい専用で平地コースがないので割合近くでレースを楽しめる。奥のほう
にはオーバルコースの跡のような所がありかなり昔には平地のレースも行われていたのかもし
れない。
 新聞を買い見つめる・・・が見当もつかない。となれば騎手で買うしかない。リーディング争いを
していながら無印の馬に乗る騎手を中心に買うようにする。それにしてもそりに乗っていても
「騎手」なのだろうか。パドックでは乗っているけどね。

 レースは200メートルでその途中に二つの山がある。この山をいかにして越えるかが騎手の
腕の見せ所だという。つまり最初から全力で歩かせていたら二つ目の山を登る途中でばててし
まうのである。斜面の途中で止まってしまったら再び動き出すのは難しい。これは車でも電車で
もそうである。一つ目の山を越え間の平坦なところを歩かせながらゆっくり呼吸を整えさせ二つ
目の山の手前でいったん立ち止まり、気合を入れて一気に山を越える。見たところそういう競
技らしい。それをまわりと競争しながらやるわけだから相手のペースに飲まれないよう制御する
のだから平地以上に騎手の腕がものをいうのだろう。
 ばんえい競馬はそんな楽しみがある。数多くの人に見てもらいたいものである。北海道の文化
そのものだろう。アトラクションでもいいから東京競馬場あたりでやってみるとか、それが無理な
ら札幌競馬場にコースを作り開催するとか。一度生で見てみたら感動すること間違いなしであ
る。

 北見駅前のレンタカー営業所に車を返却し列車に乗る。タイミングの良い列車はなく普通列
車に乗る。ボックスを占領し本を広げていたら反対側のボックスの女子高生二人が大きな声で
話し出した。田舎のローカル線の乗客は病院通いの高齢者か通学生ばかりである。
 やかましいことも多いがこっちがよそ者だから仕方がない。変なやつがいると言われているの
かも。
 普通列車は遠軽という駅どまりでここで札幌行きの特急が来るのを待つ。遠軽から先は人跡
未踏の山間部であり極端に列車は少なくなる。4両ながらがらがらの特急に乗り込み札幌へ。
深夜23時近かった。

ばんえい競馬ホームページ

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