大型二輪免許 取得記

大型二輪免許 (バイクの免許) を取得した記録です。自動二輪免許時代に限定解除に挑戦し、その後、教習所を卒業し、結局、それを捨てて試験場で取得したという変な記録です。

このページの目次


前提知識

二輪免許の区分

バイクの免許は、エンジンの大きさ (排気量) で区分されています。現在の区分では、50cc以下だけに乗れる原付免許、400cc以下だけに乗れる普通二輪免許、それ以上にも乗れる大型二輪免許に分かれています。原付免許と普通二輪免許は16歳から、大型二輪免許は18歳から取れます。なお、「二輪免許」とだけ言えば、通常、普通二輪免許と大型二輪免許のことを指し、原付免許は含みません。

普通二輪免許はさらに「小型限定」と「限定なし」に分かれていて、小型限定は、125cc以下だけに乗れるという限定付きの免許になっています。また、これとは別に「AT限定」と「限定なし (MT)」に分かれていて、AT限定はオートマチック車のバイク (要するにスクーター) だけに乗れる免許です。従って、普通二輪免許は、全部で「限定なし」「AT限定」「小型限定」「AT限定小型限定」の4通りの組み合わせの免許があることになります。

しかし、私が初めて免許を取った当時は、普通二輪免許と大型二輪免許は分かれていなくて、共通の「自動二輪免許」でした。そして、125cc以下に乗れる「小型限定」、400cc以下に乗れる「中型限定」、それ以上に乗れる「限定なし」という区分でした。まあ、区分の分かれ目は変わっていないんですけどね。そして当時は、中型限定までは教習所で取れていましたが、限定なし免許 (現在の大型二輪免許) は運転免許試験場の技能試験 (一発試験) でしか取れない免許でした。

一発試験とは

運転免許の取り方としては通常は2つの方法が考えられます。指定自動車教習所 (自動車学校) を卒業して取る方法と、運転免許試験場の技能試験 (一発試験) を受ける方法です。一発試験は、教習はなく、試験だけが行なわれているもので、試験に合格すれば免許がもらえます。飛び込み試験と呼ばれることもあります。試験内容や採点基準、合格点などは、教習所の修了検定や卒業検定と同じです。つまり、検定の部分だけをやっている形ですね。

通常は、1時間いくらで運転練習をさせてもらえる自動車練習場などで練習してから受けにいくことになります。規定時間などはないので、自分が納得行くまで練習してから、合格できると思った時に受けにいく形です。短時間で運転をマスターできるうまい人なら、結果的に安く免許が取れるかもしれません。

ただし、教習所の場合は、普段の教習で使っている車両を使って、いつもの教習コースを走って検定が行なわれますが、一発試験は、初めて乗る車両で初めてのコースを警察官の見守る中、運転できなきゃなりません。このため、採点基準や合格点は同じとは言え、合格率はかなり低いです。まあ、不合格になったら、また次に受ければいいだけですけどね。試験場は各県に1〜2か所あり、試験は一般に予約制で、平日にだけ行なわれています。住民票のある県の試験場でしか受けられません。

限定解除試験

さて、暴走族などが社会問題になり、交通事故死亡者が毎年1万人を越えていた時代がありました。対策としてやり玉に挙がったのが、限定なしの自動二輪免許 (現在の大型二輪免許) だったのかもしれません。事故を減らすためには、免許試験を思いっ切り難しい試験にして、免許を取らせないようにすればいい。……そんな方針だったのかどうかは知りませんが、結果として、限定なしの自動二輪免許は一発試験でしか取れない、しかも現実離れした鬼のように難しい試験が行なわれていた時代があったのです。

一から限定なし免許を取得することも制度上は可能でしたが、あまりにも難関なので、通常は、中型限定免許を取ってから、限定解除するという道になります。20回受けても合格しないとか、様々な伝説がありました。逆に言えば、バイクに乗る者にとっては、持っているだけで尊敬と羨望の眼差しで見られる免許だったのです。

中型二輪免許 教習記

限定解除の話に入る前に、中型限定免許を取った時のこと書いてみましょう。

教習時間

私が最初に取った運転免許は、自動二輪免許 (中型限定) でした。俗に「中免」と呼ばれていました。これは、現在の普通二輪免許 (限定なし) に相当します。

バイクの教習は、すべて場内コースだけで行なわれ、路上教習はありません。仮免許がないので修了検定はなく、卒業検定だけがあります。卒業検定も場内コースだけで行なわれます。教習期限は現在は9か月間になっていますが、当時は短い3か月間でした。この期間内に教習を終えないとなりません。

何の免許も持っていない状態からの規定教習時間 (補習がない場合) は、当時は学科20時間、技能11時間でした。現在は学科26時間、技能19時間になっています。現在は、応急救護、危険予測、シミュレータ教習などが増えているんですよね。当時はこれらはありませんでした。また、当時は二輪学科と四輪学科に互換性がなかったので、二輪の学科には、四輪車特有の部分の話はなかったです。

基本操作

さて、バイクは、右手がアクセルと前ブレーキ、左手がクラッチ、右足が後ろブレーキ、左足がギアチェンジ、という風に全部の手足を同時に使います。まず、これが大変だと思いました。

特に自転車の感覚から言って、ブレーキが右手と右足というのが変な感じです。つい右手と左手を操作してしまうんですよね。でも、左手はクラッチなので、ブレーキと同時にクラッチを切るとエンジンブレーキが効かなくなるのでダメです。何度も注意されました。原付 (スクーター) も自転車と同じで、ブレーキが右手と左手らしいので、原付で慣れた人も最初はこれで少し苦労するらしいです。

周回カーブ

最初は、カーブを曲がるのが怖かったです。カーブでは10km/hぐらいしか出せませんでした。「ここは20km/hぐらい出しても安全なカーブですよ」と言われるものの、怖くて出せないのです。直線でなら出せるんですけどね。カーブでスピードを出せないのは、曲がる方向を向いていないからと、バイクを傾けられないからでした。

【二輪車でカーブでの視線方向の図】

上の図のようなカーブのときは、破線の方向 (前) ではなく、実線の方向 (カーブの先) を見ながらカーブに進入しないとなりません。でも私は、まっすぐ前を見て運転しなきゃ怖かったです。斜めを見ながら運転するなんて……。まあ、今なら前を見て突入する方が怖いですけどね(笑)。周回カーブだけで何度も補習を受けました。

バイクの傾け方

さて、四輪車の教習は助手席に同乗して1対1の指導と決まっていますが、二輪にはその決まりはありません。この教習所の二輪の指導員は、40代男性、30代男性、20代女性の3人がいました (見た目の話で実年齢は知りません(笑))。この3人で教習生10人ぐらいを同時に見て教習する形です。でも、私はあまりに下手なので、いつも1人の指導員を独占する形になっていました(苦笑)。

その日は20代女性指導員が付きっきり。バイクが傾けられないということで、「私の後ろに乗って」と言われます。2人乗り教習です。「傾ける時はこんな感じ」と、カーブに入っていくけど、怖くて体が逃げてしまいます。「私が傾けているのに、後ろでそれに逆らっちゃダメでしょ。一緒に傾いて感覚をつかんで」と言われますが、落ちそうで怖くて傾けられないです。

セクハラ教習?

「じゃあ、私の体に密着させて」「へっ!?」……それは何か問題がありそうだが、いいのか?(笑) 「ダメ。まだ体が逃げてる。もっとしっかりしがみ付いて密着させて」「ええーっ!?」……こうして、女性指導員に後ろから抱き付いての指導を受け、ようやくバイクを傾ける感覚がわかってきたのでした。

当時、このような2人乗り教習は、よく行なわれていました。私だけでなく、他の教習生も指導員と2人乗りしているのをよく見かけたし。でも、最近はセクハラが問題になるので、この手の指導はあまり行なわれないようになってきているみたいです。私はこれでバイクを傾ける感覚をつかんだので、ある意味、理に叶った教習であったと思うのですけどね(笑)。

視線誘導

課題が入ってくると、コケまくり、脱輪しまくりでした。教習のたびに青アザを作っていました。S字は脱輪しまくりで、クランクはパイロンなぎ倒しまくり。これは視線が近いからだと言われます。もっと遠くを見ろ、と。1つ目の角を曲がろうとしているときは、2つ目の角を見てなきゃダメ。バイクは見た方向に進もうとするから、「あそこで脱輪しそう」と、そこを見ると、余計にそこで脱輪すると言われました。難しい。これも何度も補習です。

一度、1時間ずっと8の字走行をやらされたことがあります。広い所にパイロン (ロードコーン) を2つ置いて、この間を8の字を描いて走ります。これなら脱輪しないから怖くないでしょ、とのこと。これを一定半径で回れるようにするわけですが、一方のパイロンを回っている時は他方のパイロンを見てなきゃダメとのこと。でも、今、こっちのパイロンを回るのに精いっぱいな状況なのに、そんな先を見ている余裕がありません。

パイロンを回っている時に、指導員が反対側のパイロンに立ち、「今、この手の位置を見て」と言われます。思いっ切り先じゃないの。「今はここ」「今はここ」と見るべき点を言われ、半径を変えながら、これを1時間ずっとやりました。時間の最後に、「じゃあ、S字を通ってみて」と言われてやってみると、あっ、通れた。まだスムーズとは言えませんけどね。

補習の果てに…

S字をなんとか通るというだけで何時間も補習を掛けている状態だから、指導員も大変だったと思います。スラロームのリズムをつかむためにと言って、2人乗り教習を繰り返しやったり、1つずつ補習を積み重ねていきました。

私は元々、バイクに乗りたかったから教習を受けたのではなく、身分証明書代わりに取ろうと思っていただけです。だから、途中で何度、「小型限定にしておくんだった」と思ったかしれません。それでも、指導員が熱心にみっちり付き合ってくれたので、なんとか卒業まで到達できました。すべての段階で補習を受け、規定教習時間の2倍以上 (3倍近く) 掛かりました。夏休み中に取るつもりだったのに、秋も深まり、3か月の教習期限ギリギリでした。

卒業検定合格の時は、「卒業の最低限のレベルに達した状態」と言われました。ギリギリ通してもらった形なんでしょう。なんか悔しいです。いや、本来は卒業レベルに達していなかったのに教習期限が来たから合格にしたんじゃないかとも思います。せめてもう少し上を目指したい。でも中型限定の上って、限定解除?

限定解除しよう

いつかは…

それから1年ほどの間に、大型特殊免許やけん引免許などを取ったりしましたが(笑)、バイクは乗っていませんでした。ペーパーライダーです。そんな時、知人に二輪の限定解除をしたという人がいました。免許証を見せてもらいましたが、免許証の裏に「限定解除」のスタンプが押されていました。その意味とすごさは話には聞いていました。このスタンプこそが、バイク乗りの憧れの的なのです。1100ccのバイクを買ったと聞いたので、センタースタンドを掛けた状態で、またがせてもらいました。でかっ!!

私もいつか限定解除したいと思いました。大型バイクに乗りたいとは特に思わないけど、中型限定免許がギリギリ合格だったという雪辱を果たしたい (←目的がなんか変(笑))。

免許制度変更

そんなある夏休みのことです。「9月から二輪免許の制度が変わる」……ふと、そんな話を耳にしました。大きな変更点は、自動二輪免許が普通二輪免許と大型二輪免許に分かれること。そして、大型二輪免許が教習所で取れるようになること (これは実際は数か月後) です。びっくりです。しかし、一番びっくりしたのはその免許の名前でした。

普通二輪免許ぉ!? 何だ、そのダサい名前は!! 普通だなんて、そんな免許、持ちたくないぞ。しかし、中型限定免許を持っている私は、あと1か月もすればそのダサい名前の免許を持っていることにされてしまうのです。あっ、ダサいというのは、あくまでネーミングの話ですよ(笑)。

しかし、制度変更前に限定なし免許を手に入れれば、制度変更後は大型二輪免許を持っている形になり、普通二輪免許を避けることができます。幸い大学は夏休みで、時間は取れます。よし、限定解除しよう。

こうして、私の挑戦が始まりました。……って、なんちゅう動機だ(笑)。まあ、元々いつかは取りたい免許ではありましたが、逆に言えば、いつでも良かったわけで、「今取ろう」と思い立ったきっかけは、普通二輪免許という名前を嫌ったからなんですよね。

攻略本

この難関の免許を取るための攻略本は色々と出ていましたので、読んでみました。まずは服装から。暴走族になりそうだと思われると特に厳しく採点されて落とされるので、真面目な格好で行くこと、といったことまで書かれていて、うーむと思ったり。髪は短めの真面目な髪型でとか。ヘルメットは持参して受けにいく形ですが、派手なものは避け、白のヘルメットがいいとか。学校の校則みたいだな(笑)。

また、安全確認の時に左右をきちんと見ていることがわかりやすいように、完全無地のヘルメットより、後ろにワンポイントのロゴなどがあってもいいとのこと。左右を見る時に、ロゴが動くので、後ろから見てもきちんと安全確認していることがわかりやすいというわけですね。というわけで、前後に小さくロゴが入った真っ白のヘルメットを買いました。まずは形から(笑)。

発進手順

本には発進手順も細かく書かれていました。教習所ではこんなに細かくは指示されなかったので、ここまで厳密にやるのかと思いました。ポイントはバイクを触った瞬間から発進の瞬間まで常にブレーキが効いた状態であること。そして、右足を地面に付く時は必ず右後方を確認してからでないとならないことです。

バイクはギアチェンジを左足のペダルで行なうので、停車状態でギアを変える時は右足を地面に付かないとなりません。この時、後ろブレーキから足が離れるので、その前に前ブレーキを握り、そして右後方確認をしてから足を付かないとならないわけです。同様に、キーをオンにする時は前ブレーキから手が離れますが、その前には後ろブレーキを踏んでおかないとならないわけです。

停車時も、完全に止まり切っていないうちは足をステップから離さないとか、右足は決して付かないとか、細かい規定が色々あります。

練習時間

他にも、走行方法などが細かく書かれていましたので、参考にしました。走り方の見本は白バイ隊員の走り方だとか。練習場の人の文とかも載っていましたが、「うちの練習場では、普段400ccを乗っている人なら、平均して15〜16時間ぐらい練習してから受けにいき、5〜6回ぐらいの受験で合格している」とか書かれてありました。これでもかなり好成績の練習場なんだろうな。私の場合、20時間以上の練習は必要だなと判断しました。

練習場

二輪の練習場をタウンページで探して申し込みました。着いてみると、何だこりゃ、狭っ!! 直線部分は50mぐらいしかありません。個人経営の練習所のようです。でも、練習生は多くいました。とりあえず、10時間セットで申し込みました。

【大型二輪車の全体図】

車両は750cc (ナナハン) のバイク。試験場では、失敗しやすいようにわざとアイドリング (アクセルを回さないときのエンジン回転数) を下げてあるとのこと。そこで、この練習場ではアイドリングを限界まで下げて調整しているらしいです。わざと運転しにくいようにチューンナップするとは、すごい世界です。通常走行中は全然気になりませんが、低速時はかなり不安定になります。このバイクに慣れれば、試験場のバイクは簡単に感じると言っていました。しかし、たまにクラッチを切っててもエンストすることがあったので、これはやり過ぎでしょう(笑)。

ここはコースが狭いので、通常走行より課題の練習がメインでした。

検定課題

当時の限定なし自動二輪免許と現在の大型二輪免許は、検定課題は基本的に同じです。右左折などを除くと、踏切、指示速度、坂道発進、S字、クランク、一本橋、スラローム、波状路、急制動です。踏切は止まって確認するだけなので、他の課題を挙げましょう。

指示速度

指示速度は、指定された区間内で指定された速度を出すという課題です。何km/hを指定されるかはコースによって違います。当時、私が受けた試験場では、指示速度50km/hでした。今の教習所では40km/hぐらいが多いのかな? バイクは加速が速いので、難しい課題ではありません。

坂道発進

上り坂の途中で停車し、その後再発進する課題です。1速に入れ、左足は地面に付いて、後ろブレーキを踏んだままアクセルを多めに回します。半クラッチにしたら、徐々にブレーキを緩めます。全部の手足を同時に使わなきゃならないというのはありますが、要はブレーキを踏みながら発進動作ができるわけで、四輪車の坂道発進よりは簡単と言われています。

S字

S字 (曲線狭路コース) は、コース内からはみ出ないように通過します。脱輪したり、切り返しが必要になったり、途中で立ち止まったりしたら、他がどんなにできていても即不合格です。四輪車なら脱輪してもすぐ止まって引き返せば減点で済みますが、二輪車は微小な脱輪でも即不合格です。もちろん、立ち止まるのはダメと言っても、出口で車が来ている時に止まるのだけは許されます。

【大型二輪のS字の図】

コースによっては、左カーブと右カーブの順序は上記の図と逆のこともありますが話は同じです。内輪差があるので、コースの外側を通るようにします。

二輪のS字コースはコースの外に障害物のパイロンが置かれているので、極端にバイクを傾けると接触のおそれがあります。なので、少しだけ傾けて進みます。バイクはブレーキを踏むとバイクが倒れようとし、アクセルを開くとバイクが起き上がろうとするので、左カーブと右カーブが切り替わる点 (コース中ほど) では、一旦アクセルを開いて左に傾いていたバイクを起こし、次にブレーキを踏んで右に倒し込む (傾ける) ようにすると、スムーズに通れます。ギアは2速がやりやすいです。

もっとも、教習所のバイクはアイドリングが高く設定してあるので、アクセルもブレーキもクラッチも使わず、一定速度で通っていく方が楽かもしれません。試験場のバイクはアイドリングが低いので、アクセルとブレーキを使っていかないと、バイクが不安定になると思います。クラッチはつないだままでいいですが、あまりにアイドリングが低いバイクならアクセルを多めにして半クラッチにした方がいいと思います。

なお、このコース内では前ブレーキは使っちゃダメです。極めて高い確率でコケます。前ブレーキはよく効くので、低速でバイクを傾けているときに使うとバランスを崩すんですよね。というわけで、ブレーキを使う場合は後ろブレーキのみです。出口で車が来ていて止まらなきゃならないときも、バイクが傾いているときなら後ろブレーキで止まった方が無難です。中型限定免許の教習中に、ここで前ブレーキを使ってコケた回数は数知れず(笑)。

クランク

クランク (屈折狭路コース) は、コース内からはみ出ないように通過します。四輪車のクランクはコースの外側に障害物のポールがありますが、二輪車のクランクは、コースの内側に障害物のパイロンがあります。おかげで無茶苦茶圧迫感があって、狭く感じます。脱輪したり、切り返しが必要になったり、途中で立ち止まったり、パイロンに接触したりしたら、他がどんなにできていても即不合格です。これももちろん、出口で車が来ているときには止まりますが、それ以外で止まってはいけません。

【大型二輪のクランクの図】

このコースはS字と違い、バイクを傾けるとパイロンに接触しますので、傾けずに、ゆっくりとハンドルで曲がっていく形になるかと思います。これは、1速がやりやすいという人と、2速の半クラッチがやりやすいという人が半々ぐらいでしょうかね。なお、コースによっては、右曲がりと左曲がりの順序は上記の図と逆のこともありますが、話は同じです。

教習所のバイクはアイドリングが高く設定してあるので、アクセルもブレーキもクラッチも使わずに通るといったことが可能かと思います。試験場では、アイドリングが低いので、アクセルを多めに回して半クラッチ状態で通過する方が安定すると思います。なお、このコース内でも前ブレーキを使うと高い確率でコケますので、ブレーキを使う場合は後ろブレーキを使うようにします。

一本橋

一本橋 (直線狭路台コース) は、幅30cm、高さ5cm、長さ15mの平均台です。これを落ちずにできるだけ遅い速度で通過します。二輪車は止まったら倒れますので、ゆっくり進む方が難しいのです。これを10秒以上掛けて渡るという課題です。速く通過してしまうと1秒早いごとに5点減点。落ちたり、エンストしたり、足を付いたりしたら、他がどんなにできていても即不合格です。

【大型二輪の一本橋の図】

停止線で一時停止後に、コース前方が詰まっていないことを確認してからスタートします。台は高さ5cmあるので、乗っかるためにはアクセルが必要ですが、そのアクセルの勢いのまま行ってしまうと6秒ぐらいで通過してしまいます。台に乗っかったら一旦クラッチを切って後ろブレーキを踏むといいと思います。と言っても、ブレーキを踏み過ぎて失速しないように。このコースも、台の上では前ブレーキを使わず、後ろブレーキだけにします。

あとは、半クラッチで通過します。アイドリングの低い試験場のバイクでは、アクセルを多めに回した方がいいです。そして弱い半クラッチで速度調整します。後ろブレーキを軽ーく踏みっぱなしでもいいかもしれません。

ふらつかないためには遠くを見ること。私はわざと目のピントをぼかしてボケーっとするのがいいと思いました(笑)。試験中は時計は見えないので、10秒は自分で数えないとなりません。「1、2、3、……」と数えると絶対に速く数えてしまいます。「鳩ポッポ」の歌を歌うとちょうど10秒だとか、「111、112、113、……」と120まで数えるとか、色んな技があるようです(笑)。でも、私はまったく数えずに渡る方がうまくいきました。数えていると体が固くなるんですよね。

あと、粘って台から落ちてしまったら不合格になり、元も子もありません。9秒で行ってしまっても5点減点だけ。無駄に粘らないという方針もあります。

スラローム

スラローム (連続進路転換コース) は、障害物 (パイロン) の間を縫うように、できるだけ速く通過します。7秒以内で通過するという課題です。遅いと1秒ごとに5点減点。パイロンに接触したり、パイロンを飛ばしてしまったり、エンストしたり、足を付いたりしたら、他がどんなにできていても即不合格です。

当時はコース両脇に白線が引かれていて、白線を踏んでも不合格でした。現在はこの規定はありませんが、振幅が大きくなるとタイムロスですから、結果的に減点にはなりますね。

【大型二輪のスラロームの図】

これもS字の時と同様に、傾けていたバイクを逆に傾けるときには、アクセルで起こしてからブレーキで倒し込むようにすればスムーズに進めます。リズムが大事です。あと、この課題では、リーンアウト (バイクだけを傾けて体は傾けない) の方がうまく行くと思います。ギアは、3速でやる人もいましたが、通常は2速がいいでしょうね。

この課題も前ブレーキは使わないようにします。後ろブレーキのみです。また、アクセルを大きく使わないのなら、ブレーキなしでも行けます。

波状路

波状路は大型二輪だけの課題です。道路上に高さ5cmの板が不等間隔で置かれていて、そこをできるだけ遅く通過します。ハシゴを乗り越える感じですね。これもガタガタガターッと勢いを付けて通ると簡単ですが、一山一山ゆっくり越えて進みます。5秒以上掛けて通過するという課題です。速く通過すると減点で、コース両側の白線を踏んだり、エンストしたり、足を付いたりしたら即不合格です。

【大型二輪の波状路の図】

1速で、腰を浮かせてやります。板は高さ5cmあるので、乗り越える時はアクセルが要ります。ただ、そのままの勢いで行くと速度が出過ぎるので、乗り越えたらクラッチを切って速度を殺します。ブレーキを踏んでも構いません。この課題も絶対に前ブレーキは使っちゃダメです。極めて高い確率でコケます。ブレーキは後ろブレーキのみです。また、アクセルを大きく使わないのなら、ブレーキなしでも行けます。でも、エンストを防ぐためには、アクセルを多めにした方が失敗が少ないと思います。

板は不等間隔で、前輪だけが乗り越える時、後輪だけが乗り越える時、同時に乗り越える時などがあります。従って、アクセルは不等間隔で回していかなきゃなりません。ただ、板の間隔は、何番目と何番目の間は何cmと全国共通の法令で決まっています。何度も練習していたら、アクセルを回すタイミングはリズムとして覚えてしまうんですよね。「ブン、ブン、ブンブンッブン、ブン、ブンブンッブン」のリズムでアクセルを回せばいい……とか(笑)。あんまりな試験対策だな(笑)。

これは前輪に体重を掛けると楽なので、腰を浮かせるだけでなく、ひざの上に立つ感じでやるとやりやすいです。両ひざは座っている時と同じように前のタンクを締めて、ひざから頭までを垂直に伸ばして立ち上がったような姿勢ですね。

急制動

急制動は、急ブレーキを掛けて短距離で止まるという課題です。当時は、距離は忘れましたが50km/hからブレーキを掛ける課題でした。現在は、40km/hからブレーキを掛けて11m以内 (路面が濡れているときは14m以内) に止まるという課題になっています。

停止位置までに止まれなかった場合は即不合格です。止まれたけど指定速度が出ていなかった場合や、指定位置より前からブレーキを掛け始めていた場合は、10点減点の上やり直しになります。やり直しても指定速度が出ない、あるいはブレーキが早過ぎる場合は不合格です。この課題では、指定速度を越えても、指定距離内に止まり切れればOKになります。逆に指定速度を1km/hでも下回っていれば減点やり直しなので、指定速度の2〜3km/h上からブレーキを掛けるようにするといいです。

この課題では前後両方のブレーキを同時に掛けないと減点になります。後輪はロックしやすいので、前ブレーキを強めに、後ろブレーキは申し訳程度に掛けるといいです。7対3などと言われますが、路面乾燥時は9対1ぐらいでもいいぐらいです。タイヤロックは減点ですが、この課題ではエンストは減点なしです。エンジンブレーキを極限まで使ったと見なされるようです。あと、停止位置のラインを見るとふらつく可能性があるので、前を向いて止まった方がいいです。

法規走行

混合交通

10時間の練習で、急制動以外の課題は一通り練習しました。急制動は、コースが狭くて50km/h出せなかったです。苦手なのは一本橋で、9秒台が出せるかどうかといったレベル。まだ練習が必要だと思いましたが、色んなコースや車両に慣れた方がいいと思って、別の練習場に申し込みました。こちらは、無茶な調整がしていないバイクでした。低速がすごく安定しています。750ccって、こんなに低速に粘りがあったんですね(笑)。乗りやすいです。っていうか、前の練習場が変な調整をしすぎていただけか。

この練習場は四輪車と共通のコースだったので、同じコース内に普通車やトラックなどもいました。昔、中型限定免許を取った教習所は、普通免許と二輪免許だけの教習所だったし、この前までの練習所は二輪だけで練習したので、トラックが走っているようなコースをバイクで走るのは初めてでした。右折のために中央線寄りで止まっている時に、左からトラックが右折して入ってくるのとかは、かなり怖かったです。

二輪免許は路上教習がないので、こういう体験が場内でできることは重要だと思いました。つまり、大型免許 (トラック) と二輪免許 (バイク) を同じコースでやっている教習所に入るということですね。

法規走行の重要性

話を戻して、この練習場での最初の練習時間です。「別の練習場で課題を一通り練習してきました」と言うと、「じゃあ、言う通りに走ってみて下さい」と、右左折などを指示されて走ってみます。すると、法規走行が甘いと指摘されました。課題の練習にばかり力を入れる人がいるがそれではダメだとのこと。法規走行こそ一番の課題だという話でした。

一本橋が苦手で8秒台しか出せないとしても、2秒不足で10点減点だけです。70点以上が合格なので、それでも合格できるわけです。試験では課題は1回ずつしかやらないので、「いつもこの課題では10点減点になってしまう」というのがあったとしても、結局10点減点にしかならないわけです。一方、いつも交差点で10点減点になる人だと、試験中、交差点は何回も通るので、絶対に合格できないのです。課題は一発不合格になるような失敗さえしなければいい。通常走行で絶対に減点されないようにするのが合格の早道だとのこと。なるほど。

走行位置

通常走行位置はキープレフトの原則。つまり、左寄りを走らなければなりません。原付じゃないので、路端に寄って走る必要はないけど、車線のど真ん中よりは少し左ぐらいを走らなきゃならないわけです。実際は真ん中より左であればいいのですが、絶対に減点されないように考えると、はっきりわかるぐらい左に寄ります。通常の車線幅なら、車体の左端を路端から1mの位置に合わせて走ればいいようです。

左折するときは、あらかじめ左に寄って走らなればなりません。実際は路端から1m未満であればいいという規定ですが、絶対に減点されないように考え、また、路端から1mの通常走行位置から見てきちんと進路変更していることがわかるようにするには、路端から50cmの位置を走るようにとのこと。交差点から30m手前の地点でこの状態になっていないといけません。左折中は、路端から50cmのこの間隔を保った状態のまま曲がっていき、通常走行位置の1mの位置に入ります。

右折の場合は、同様にあらかじめ中央線寄りを走ります。これは中央線から50cm未満であれば良く、中央線を踏んだら即不合格という規定ですが、絶対減点されないように考えて、車体の右端が中央線から30cmの位置を走るようにとのこと。これも交差点から30m手前の位置でこの状態になっていないとなりません。そして、交差点中央の直近内側を通って、通常走行位置の1mの位置に入ります。

【二輪車の法規に従った右左折方法の図】

まとめると上の図のようになります。これらの走行方法は、中型限定免許を取った時の教習所でも、他の免許の時でもやったことですから当然知っていましたが、教習所では50cmや30cmなどに厳密に合わるようなことはやらず、だいたいの間隔でこの走行をしていました。このような厳密さは攻略本にも書かれていましたが、やはり限定解除試験では、厳しく間隔を合わせて走らなきゃならないようですね。

合図と確認

進路変更の手順は、ミラー確認、合図 (ウィンカー)、ミラー確認、後方目視、それから進路変更の開始です。この合図から進路変更開始までの時間が3秒必要です。右左折の時は交差点から30m手前で進路変更が完了していなければならないので、結局、合図を付け始める時期は、交差点から30m、プラス進路変更に掛かる距離、プラス3秒で進む距離の位置です。

交差点を直進する場合は、たとえ青信号でも左右を確認してから進みます。この左右確認は、交差点から現在の速度の停止距離分手前の位置で行なわなければなりません。交差点進入直前に確認したのでは、「ぶつかる」と確認できるだけで止まることができません。これでは確認ではなく脇見です。

左折する場合は、交差点の左右の確認。そして、左後方の巻き込み確認をしてから曲がります。この場合は、徐行しているので、ほとんど直前の確認でOK。右折なら、左右と対抗車の確認ですね。

ポンピングブレーキ

ブレーキを掛けるときは、ブレーキを複数回に分けて掛けるポンピングブレーキをします。実際は2回以上に分かれていれば減点しない規定ですが、念の為に3回に分けてブレーキを掛けるようにとのこと。ポンピングブレーキには、後続車にこれからブレーキを掛けるぞと合図する意味と、タイヤロックを防ぐという2つの意味があります。短い周期で何度も掛ける必要はなく、ある程度の長さの周期で自然に掛けるといいようです。

なお、低速状態からのブレーキなら2回でもいいし、徐行状態からのブレーキならポンピングの必要はないとのこと。まあ、そりゃあそうですね。あと、低速時を除いて、ブレーキは前後のブレーキを同時に掛けないといけません。低速時は後ろブレーキだけでもOKです。

徐行

交差点の右左折や、優先道路に進入するときなどは徐行です。徐行はおおむね10km/h以下の速度と言われています。しかし、二輪の限定解除試験は落とすための試験ですので、11km/h出ていたと言って減点されることもあり得るとのこと。これは20点減点なので、右左折のたびにこんな減点を受けては合格できません。絶対に減点されないように、徐行場所は7〜8km/hで走行するようにと言われました。これは一本橋を7秒で渡るぐらいのかなりの低速です。うひょー。

もちろん、先述の通り、左折は路端から50cm以内をキープしての小回りです。ふらつきも減点です。すみ切り (交差点の角の丸まり) が小さい交差点では、この小回りをこの超低速で安定して行なうのはかなり難しいです。四輪車なら何ともないでしょうが、二輪車は失速すると倒れるからです。

左折超徐行小回り

見本を見せると言って、指導員がやって見せました。ゆっくり歩くぐらいの速度でまったくふらつかずに、ぴっちりと路端から50cm以内の均等な間隔を保ったまま小回りで曲がっていきました。「これができなきゃ20点減点だ」……ひーっ!!

やってみました。ダメです。こんなに超低速でこんな小回りをしていては、失速して足を付いてしまいます。走行中の足付きは即不合格です。これはきつい。いや、正確には、「転倒を防ぐために足を付いた」が即不合格、「ふらつきを防ぐために足を付いた」は減点という規定のようです。足を付かなかったらどうなっていたかによって分かれるわけですね。しかし、バイクを傾けている最中の足付きがふらつき減点で済むことはありません。完全に不合格です。

この練習として、バイクのハンドルを最大に切った状態で、半クラッチと後ろブレーキを使ってできるだけ遅い速度で進むという練習をやりました。確かにこれができれば、左折の徐行小回りは簡単かもしれません。しかし、ここまで来るとほとんど曲芸ですね。この練習はなかなかうまくできませんでしたが、徐行小回りならなんとか形になりました。我流ですが、失速しないようにアクセルを回し、速度が出過ぎないように半クラッチにして、リーンアウト (バイクだけを傾けて体は傾けない) でやると、やりやすいと思いました。しかし、まさか左折一つでここまでが要求されているとは、恐るべし、限定解除試験!!

見通しの悪い交差点

他にも、見通しの悪い交差点は徐行です。本来なら一時停止した方がより安全と考えられますが、徐行でいい所で一時停止をすると、ふらついて足を付いたと見なされるおそれがあるとのこと。試験では、車が来ていないのなら止まってはいけないのです。そして、7〜8km/h以下の最徐行で走行しながら、見通しが悪いので前傾姿勢で左右の確認をしないとなりません。もちろん、超低速走行中に左右に首を振るわけですから、ふらつかないように注意します。

試験コースには見通しの悪い交差点もあります。変な話ですが、ここを通過する時は車が来てほしいと思いました。車が来ていれば、堂々と止まれるので、ふらつきの心配をしなくて済みますからね。

加速

試験はゆっくり走れば安全運転だからいいわけではありません。交通の流れを乱す車が公道に出ると迷惑です。安全なときには、きちんと制限速度一杯まで出せなきゃなりません。場内試験コースは歩行者もいない安全な状況なので、当然、制限速度ぴったりで走行することが要求されます。制限速度を越えてもダメですが、遅くても減点なのです。

コースには、右左折後すぐまた右左折なんていうような部分もあります。当然、右左折部分は徐行です。しかし、右左折と右左折の間は直線道路です。制限速度が出せないとなりません。もちろん、距離が短いとそこまでの加速はできませんが、それでも制限速度に近付けるよう努力はしないとなりません。たとえ、左折後10mでまた左折というような場合でも、必ず充分加速してから減速しないとならないのです。

メリハリ

これも見本を見せてもらいました。曲がり終えた瞬間から思いっ切り鬼のような加速。そしてポンピングブレーキで思いっ切り減速。無茶苦茶遅い超徐行で左折。曲がり終えた瞬間、また思いっ切り鬼のように加速。……何だ、この走り方は!? こんな走り方を路上でやっていたら何度追突されるかわからんような気が……(笑)。

このように、スピードを出す所はしっかり出し、押さえる所はとことん押さえる走行を「メリハリ走行」と言って、これができていないというのが最も減点されやすいとのこと。直線部分で遅いというだけで10点減点、右左折が速いというだけ20点減点できるのです。落とすための試験でこれほど減点しやすいところはないわけですね。そして、これらの減点を受けないようにしようとすると、こういう極端な走り方になってしまうようです。

なお、二輪の試験は、四輪と違って、試験官が同乗して試験を行なうわけではありません。試験官はコース横の2階から見ているだけです。つまり、いくら加速しても試験官自身が強いGを感じることはないのです。このため、エンジン音を無駄にうならせたり、上体が後ろに持っていかれたり (姿勢を崩したり) とかをいっさいせずに加速できれば、加速度が大き過ぎるという減点はされないとのこと。「姿勢を微動だに崩さず、思いっ切り加速しろ」……うーむ。

型を演じる

しかし、確かに走り方としては現実離れしていますが、この走行を見て「美しい」と思いました。静と動、緩と急、まさにメリハリです。要所要所がピタッ、ピタッと決まっていて、実に美しい。

そして思いました。この走行は、空手や拳法でいうところの「型 (かた)」だと。私は空手などはやったことがないので詳しくはわかりませんが、おそらく型と実戦は全然違うと思います。しかし型には基本のすべてが含まれているのではないかと思います。この走行もそうです。実際の道路でこんな走り方はできないでしょう。しかし、やはりこの走行は基本なのだと思います。そして、ある程度のバイクを操る腕がないと、この型は演じられません。逆に言えば、この型が演じられる人なら、道路に出ても通常走行ができる腕はあるでしょう。そうやって見ていると、安全確認の目視も、歌舞伎の「見得 (みえ)」を切っているように見えなくもないかな(笑)。

現実離れした厳しい規定も、これが型だと思うことで自分で納得が行きました。そして、指導員の走行を見て、私もこの美しい型を演じてみたいと思えるようになりました。

右左折後すぐの右左折

右左折の後すぐに次の右左折がある場合、1回目の右左折の時に、直接、2回目の右左折の進路変更完了状態 (寄せた状態) に向かうようにします。下の図は、左折後すぐに右折なので、左折時には、直接、中央線から30cmの位置に向けて曲がっています。こういうのは教習所でもやりました。

【二輪車の左折後すぐ右折の図】

このように、距離がないときは進路変更完了後の位置に直接向かい、距離があるときは通常走行位置に一旦入ってから進路変更をします。40m足らずの距離なら直接入り、70mぐらいの距離があれば一旦通常位置に……とかは交差点の見た目で判断が付きます。問題は、ちょうど中途半端な距離の時です。

この場合、試験官が「通常走行位置に向かうべき」と思っていたのに進路変更完了位置に向かったら、走行位置が悪いということで減点です。しかし、試験官が「進路変更完了位置に向かっていい」と思っていたのに、通常走行位置に行った場合、その後正しく進路変更できていれば減点はありません。つまり、迷ったときは通常走行位置 (左から1m) に向かうべきだということになります。

短距離での進路変更

例えば、左折後すぐ右折という所で迷ったとします。迷ったので、通常走行位置に向かったすると、距離が短いので、進路変更が非常にやりにくくなります。この場合でも、「合図から3秒後に進路変更開始」「交差点の30m手前までに進路変更完了」の両方を満たさないとなりません。そこで方法ですが、まず左折完了後、即座に右合図に切り替えます。ここから低速状態で3秒分の時間稼ぎをします。もちろんこの間にミラー、目視の安全確認はしておきます。そして、ここから短距離で進路変更するようにすれば、30m手前までに進路変更を完了することが可能です。距離が短い所で3秒を確保するために、この3秒間を低速で進むわけです。

【二輪車の左折後右折の迷う距離の図】

もちろん、メリハリ走行も必要ですから。この直線部分でも大きく加速と減速がないと減点になります。そこで、3秒経った瞬間からドバッと加速していくことにします。その後、減速です。ただし、進路変更しながらの加速は、車体を大きく傾けながらやると、急ハンドルの減点になるので、スムーズに行ないます。これで、すべての規定を満たした、法規に従った走行ができるという話でした。うーむ、すごい。法規に従った走行というより、法の網の目を抜けた走行という気もするが……(笑)。

というわけで、この、短距離での法規に従った進路変更の練習をやりました。「左折後左折」「左折後右折」「右折後左折」「右折後右折」の4通りがありますが、2回目が右折である方が難しいですね。短距離で大きく進路変更する必要があり、加速しながら30cmの位置ぴったりに寄せなきゃならないわけですから。中央線を踏むと即不合格で、ふらつきは減点です。

受験、そして…

2週間待ち

試験は予約制だから、早めに申し込んでおいた方がいいと言われたので、試験場に行きました。申請書を書き、受験料を払って窓口に出すと2週間待ちだと言われました。えーっ!!

来月から制度変更なので、私の場合は今月中に合格しないと、普通二輪免許を避けるという目的が達成できません。受験の機会は1回しかありませんでした。この難関を一発合格しなきゃならないのか……。これは失敗しました。思い立った時にまず練習を開始してしまいましたが、まず申請していれば2回受ける機会もあったのです。

でも、幸い1回はチャンスがあります。月末の最後の試験日に予約を入れました。これから2週間ちょっとの間、猛特訓です。しかし、貧乏な大学生の私。練習代金が底を付いてしまいました。日雇い・即日払いのバイトを入れて、練習代に当てるという日々が続きました。丸1日働くと、翌日2時間分の練習代が出るという繰り返しです。最初から合計30時間ぐらい練習をしたところで試験日が来ました。

事前審査

試験には、事前審査があります。これに合格しないと本試験を受験させてもらえません。事前審査の課題は3つ。引き起こし、8の字押し歩き、センタースタンド掛けです。

引き起こしは倒れているバイクを起こすというもの。重量は200kg以上あります。持ち上げろと言われれば不可能ですが(笑)、起こすだけなら腰を入れて体重を掛ければOK。腕の力だけじゃ起こせません。力よりもコツですね。

8の字押し歩きは、バイクを押して8の字を描いて歩きます。バイクの左側に立って歩きますので、左回りは何でもないですが、右回りの時に注意です。バイクを傾け過ぎると重くて倒してしまうので、腰に密着させて歩きます。

センタースタンド掛けは、文字通りセンタースタンドを掛けます。サイドスタンドは左側にスタンドを出し、バイクを傾けて止めますが、センタースタンドは下にスタンドを出し、後輪を浮かせて止めます。200kg以上の車体を浮かせるわけですが、体重を掛けて、てこの原理ですね。バイクを傾けないように垂直にするのがコツ。

でもまあ、限定解除試験を受けにいこうなんて人で、事前審査で落ちるような人はまずいません(笑)。当然、一緒に受験した人は全員合格でした。

本試験

本試験の前にコース見学があります。試験コースを受験者みんなでぞろぞろ歩いて1周します。この時に、どの辺で合図を出すべきかとかも考えて、実際に走っている状態をイメージしながら歩くといいですね。周回の直線が300mぐらいある広いコースでした。次に、ならし走行があります。100mほど試験車両に乗っての練習走行をさせてもらえます。この間に車両のクセをつかむようにします。普通車用のS字を通って戻ってこいと言われました。普通車のS字をバイクで通ると、余裕ありまくりですね。なるほど、確かにアイドリングは低いです。最初の練習場のバイクほどひどくはないけど(笑)。

そして試験開始。最初の課題は一本橋でした。試験は不合格が決まった時点で終了になるので、一番失敗しやすい課題を先にやらせて、試験時間を短縮しようとしているわけですね(笑)。一本橋は、その後の練習で、だいたいは10秒台、たまに9秒台というぐらいのレベルでしたが、本番では安全策の9秒台ペースで走行。この5点減点は最初から捨てて他の部分に力を入れていました。

その後、走行を続け、ついに最後の課題、急制動です。これを最後に持ってきているのは、これが一番危険な課題だからでしょうね。下手な人にやらせると、急ブレーキでスリップ転倒、骨折という可能性もあります。だから、ここまで不合格にならなかった人にだけやらせるのだと思います。多くの人が急制動の前で帰らされていましたが、私はなんとか不合格を言われずに進めました。

指定速度到達不能

さて、メーターで針が50km/h超を指しているのを確認してブレーキ。指定の線よりかなり前に止まれました。これで後は、発着点に戻るだけだと思っていたら、「速度不足。1周回ってきてやり直し」とのこと。えーっ!!

やり直しは10点減点ですが、まだ不合格にならないということは、結構点数が余っていたんだな。そして、今度こそ50km/h超を確認。ブレーキ。「速度不足。発着点に戻って下さい」……がーん!! 指定速度到達不能で不合格です。なんて情けない落ち方だ……。

後から考えると、スピードメーターの針と速度測定器の結果は異なっている可能性があります。1回目で不足と言われたのなら、2回目ではもっと出すべきだったのです。私は2回とも指定位置よりかなり手前に止まれていました。あれならメーターで55km/h以上を出していても充分止まれていたと思います。やり直しの2回目は速度不足でも不合格、指定距離内に止まれなくても不合格です。だったら思い切ってもっと冒険すべきだったのです。はぁ……。

普通二輪免許取得?

終わった後で、不合格者を集めて試験官の説明がありました。「次からは、自動二輪免許限定解除ではなく、大型二輪免許取得になるので、申請書を書き直すように。新規免許取得になるので受験料は上がるので注意。また、受験資格が18歳以上になるので、現在16〜17歳の者は18歳になってから来るように」とのこと。

うわぁ、やけに若いのが混じっていると思ったら、16〜17歳の駆け込み受験だったのか。3ない運動 (高校生にバイク免許を取らせない運動) を無視して受けにきているのかな? ……とは言っても、そんな若いのは一部で、受験者の大部分は見た目20歳以上の人でしたけどね。

こうして、私は普通二輪免許を手に入れたのでした(涙)。まあ、この時期はすでに限定解除試験が最も厳しかった時期とは違うのかもしれませんが、やはり一発合格とは行かなかったです。あと1か月あれば合格できる状況にあったのではないかとは思いますが、目的が達成できなかったので再受験はしませんでした。

大型二輪免許 教習記

入所

それから何か月か経って、近くの教習所で大型二輪免許の教習が始まりました。大型二輪って、教習所ではどういう教え方をするんだろう。ふと、そんな興味が湧き、入所してみました。……って、どんな動機だよ(笑)。

さて、普通二輪免許 (限定なし) を持っている人が大型二輪免許を受ける場合、規定教習時間 (補習がない場合) は、学科なしの技能12時間です。この12時間というのを聞いて、「たったそれだけ?」と思ってしまいました(笑)。

二輪免許の教習は、私が中型限定免許を取った当時は、周回、課題、法規走行の全3段階でした。これが、大型二輪と普通二輪に分かれると同時に、第4段階 (危険予測など) が追加されました。その2年ほど後に第1〜2段階と第3〜4段階がそれぞれ統合されて、現在は全2段階になっています。私はその2年ほどしかなかった二輪4段階制の時期にこの教習を受けました。

技能教習

入所するとまずは運転適性検査。またこれかよ(笑)。これはもう何度も受けたからいいよー(苦笑)。また時間内にできるだけたくさんやるという、私の苦手分野の内容です。

さて、技能1時間目。まずは、バイクの引き起こし、8の字押し歩き、センタースタンド掛けからスタート。事前審査の内容ですね。教習所では、これらはできなくても教習が進められるそうです。実際、引き起こしができない子もいるとか。そんな状態で、引き起こしだけで延々補習をやってもできるようになるとは思えないし、先に進めてしまうのも仕方ないのかな。しかし、1人で起こせないようなバイクに乗るというのもどうなんだろう。

そして、周回走行。コースを時計回りに回ります。当時の第1段階は、普通二輪免許を持っている人は1時間しかなかったので、最初の時間がいきなり見極め。これは周回が普通に走れれば合格です。

コースの難易度

第2段階は課題をやりましたが、苦労したのがなんとS字です。この教習所のS字は試験場より難しかったです。S字コースの内部の形状は法令で全国共通で決まっていますが、入り口部分の形状は、すみ切り半径以外は決まっていません。以下の2つの図はどちらも法令の規定通りのS字です。内部の形状は同じですね。

【簡単なS字の例】
【難しいS字の例】

見てわかるように、同じ左折進入でも、明らかに下側の図のS字の方が難易度が高いです。私の行った教習所は、この下のような形状のS字でした。入り口はほとんどヘアピンカーブです。進入部分でよく脱輪しました。私は、視線が近いと言われました。これだけヘアピンになっていると、ほとんど真後ろを見るぐらいで進入しないといけないんですね。

S字もそうですが、一本橋もコンスタントに10秒以上が出せるようになるまで練習しました。結果、第2段階は3時間ほど補習になってしまいました。まさか、こんな所で引っ掛かるとは……。私はある意味、教習所をなめていたのかもしれません。教習所なんて試験場で受験するより圧倒的に簡単だろうと思っていました。しかし、それは違ったのです。まあ、私が下手クソだということでもあるのでしょうが(笑)。

様々な教習

第3段階は法規走行をやりましたが、これは難なくこなしました。第4段階は危険を予測した高度な走行ということで、様々な教習をやりました。

指導員が左右どちらかの旗を挙げるので、それが飛び出しだと思って、反対側に避けるというのをやりました。「回避」と呼ばれる教程です。周回の直線部分を使って30km/hで指導員に向かってバイクで突っ込んでいきます。旗が上がったら瞬時に指導員の右か左に避けないとなりません。指導員もタイミングがわかっているので、ギリギリに旗を挙げるし、ひきそうで怖いよ。回避にはどれぐらいの距離が掛かるのかを体験させる教程です。バイクは回避に予想以上に距離がいるので、ハンドルで避けるよりブレーキを掛けた方が避けられる可能性が高いんですね。

普通二輪車と乗り比べるというのがありました。400ccバイクに乗ったのは、中型限定免許を取った時以来でした。400ccって、こんなに楽々と取り回せる、軽いバイクだったんですね。なんか、おもちゃみたいな感じ。全然加速が効かないし……。すると、リッターオーバー (1000cc以上のバイク) に慣れると、今度はナナハン (750cc) がおもちゃに感じると言われました。人間の慣れって、恐ろしい。

疑似追突体験というのがありました。指導員の後をピッタリと追従していくと、指導員がいきなり急ブレーキを掛けるので、追突しないように止まるという内容です。と言っても真後ろを走ると本当に追突したときに危ないので、微妙にラインをずらしてやります。車間距離は大事だよという体験をさせる教程です。

コース上に物が落ちているのを避けるというのをやりました。カーブの出口にいきなりパイロンが散乱していました。これを避けて通ります。周回を1周回ってくるとパイロンの位置が変わっていました。状況に応じて瞬時に判断しないとなりません。

そして、普段よりスピードを出してカーブを曲がるというのをやりました。バイクを傾けるのが楽しいという感覚がわかりました (……って、なんか、教習目的と違う理解(笑))。他にも、コース外の舗装されていないガタガタ部分 (砂利道など) を走るといったことをやりました。これらは体験するというだけの教程なので、検定課題にはありません。なお、現在はシミュレータ教習が1時間ありますので (その分、実車教習が1時間減っている)、この辺の教程は現在はシミュレータでやるのかもしれません。

卒業検定

卒業検定は全長1500m以上の場内コースを走り、ミスするたびに減点される減点法の採点で70点以上が合格です。コースは2種類あり、検定当日にどちらかに決まる仕組みでした。2つのコースは課題の順序などが違います。限定解除時代とは違って、急制動は40km/hから行ないます。50km/hからという規定にすると、狭い教習所でできなくなるからかな? 検定は他の教習生が教習中に行なわれましたが、通常の教習時よりは走っている台数が少ないです。

さて、私の検定中、周回の直線を走っていると、左側の発着点から発進しようとしているバイクがいました。まったく後方を確認しようとしていなかったので、嫌な予感がしてブレーキの構え。案の定、何の確認もなしに周回に飛び出してきたー!! 急ブレーキでなんとかギリギリ止まりました。びっくりしたー。ブレーキを構えていなかったら間に合わなかったよ。

「あのバイクが止まれなかったら完全に事故だぞ!!」とか怒鳴り声が聞こえました。バイクは指導員の補助ブレーキがないので、こういうのは怖いですね。私は急制動が2回になってしまったじゃないの(笑)。しかし、今回はなんとか避けられたけど、避けようがないタイミングで突っ込んで来られた場合でも、ぶつかって転倒したら私も不合格になるんだろうか、とかちょっと考えてしまいました。……そして私は検定を再開し、無事に合格でした。

再挑戦を…

こうして卒業証明書は手にしたのですが、ここでふと思いました。確かにこれを運転免許試験場に持っていくだけで大型二輪免許は手に入ります。でも、なぜかここで、あの限定解除試験の雪辱を果たしたいような気がしてきました。そう、一発試験に再び挑戦してみたい……と(笑)。だから、この卒業証明書は使わずに封印しよう。

再び試験場へ

練習再開

それから、時間が取れずに何年か経ちました。ようやく重い腰を上げ、大型二輪免許に再挑戦です。教習所は貸しヘルメットだったので、久しぶりに限定解除練習をした時の白ヘルメットを取り出しました。外側は変わっていませんでしたが、内側のクッションが劣化しているし、あご紐の皮もバリバリになっていました。うーん、ヘルメットって意外と寿命が短いんですね。まだ数年経っただけなのに……。もう公道では使えないでしょうが、なんとか試験合格までは使えそうです。

練習場に行ってみるとバイクは私1人。昔は、練習場のバイク練習は大勢でやっていましたが、今回の練習は1人のことが多かったです。今は、教習所で取れるから、どこの練習場も、大型二輪の練習をする人は少ないんですね。

練習場のバイク置き場から発着点までバイクを押して歩いていたら、それだけで息が上がってしまいました。年取ったなぁ……じゃなくて、最近、運動不足だな(笑)。ちなみに、練習の翌日は筋肉痛でした。内腿と左腕が痛い。ニーグリップと半クラッチのせいだな。バイクに乗ると普段使わない筋肉を使うようです。

規定が甘くなった?

さて、ブランクはありましたが、コースは普通に走行できました。最初の時間、「どこかで練習してきた?」と言われました。「昔、限定解除に挑戦を」と言うと「道理で。今はそんなにぴっちり走らなくても減点されないよ」とのこと。左折前の巻き込み確認は二輪ではやらなくていいことになったとか (四輪では必要)、ポンピングブレーキも長い直線の後だけやれば良く、余裕のない所では特にやらなくていいとか、距離が短い進路変更は30mぴったりにこだわらなくてもいいとか、徐行もそこまで極端に落とさなくても大丈夫とか、うーん、今の規定はだいぶ甘くなったんですね。というか、現実に即した規定になったと言うべきかな。

でも、「そのやり方で慣れているのなら、減点されるわけじゃないから変える必要はない」と言われたので、そのままやることにしました。徐行はともかく、巻き込み確認なんて、もう癖になっているし。

課題練習

普通に走るだけならブランクは感じませんでしたが、細かい課題はスムーズにとは行きませんでした。一本橋は10秒台がコンスタントには出なくなっていますし、スラロームはハンドルで曲がっていると言われました。

「左手をタンクの上に置いたままで、右手だけでスラロームしてみてごらん」と指導員。やってみました。うわぁ、無茶苦茶バイクが重い。「どう? いかに腕の力だけで曲がっていたかわかった?」と言われました。スラロームは下半身の体重移動で曲がるもので、手は添えているだけ。200kg以上もあるバイクを腕の力で誘導しようとするからスムーズに行かない、とのこと。片手運転でも楽々できなきゃ、やり方がおかしいわけなんですね。もちろん本番は両手でやりますが、こんな練習方法があったとは。

たいていは1人での練習でしたが、一度、普通二輪 (400cc) を練習している子と一緒の時がありました。20歳になっているかどうかってぐらいの小柄な女の子。へぇ、こんな子が試験場で受験するのかぁ。なんか意外だな (偏見!!)。その子の前で一本橋をやることになりました(汗)。別にいい所を見せようってわけでもないですけど、緊張します。

橋に乗った途端、あれ? 今日は調子がいい。計測は12秒台。ええっ!? そんなタイム、今まで出したことないよ。なぜか、それ以来、一本橋は12秒台がバンバン出せるようになりました。壁を越える瞬間ってこんなものなのかな。

大雨の中、練習した日がありました。まあ、予約した試験日が雨の可能性もあるし、こういう練習も必要かな。一通りの課題を練習しましたが、急制動の時に思いっ切りスリップしてコケてしまい、ズザーッと投げ出されて手袋に穴が空きました。怖ーっ!! 「こんな日に普通にブレーキを掛けるなんて」と言われました。うーん、限定解除練習の時や教習所でも、雨の日に練習したことはあったのですが、感覚を忘れていたようです。まあ、こういう経験は練習の時にできて良かったと言うべきか。

課題以外では、小転回の練習をやりました。4mぐらいの幅の中でUターンするというもの。速度を落としたら半クラッチにして、ほとんど真後ろを見るぐらいの視線で、リーンアウトでバイクを倒し込みます。そして、アクセルを開けて起こします。半クラッチにするのは、このアクセルを開けた時に暴走しないようにです。うーん、この練習を限定解除練習の時にやっていれば、大型二輪の教習所のS字で苦労することもなかっただろうなと思いました。

覚えにくいコース

10時間ほど練習したあと、受けにいきました。事前審査からセンタースタンド掛けがなくなっていました。これも甘くなったのかな? 試験官が免許証をチェックしている時に見ていると、みんな免許証が青かったです。ゴールドの私が浮いている(笑)。さて、今度の試験コースは直線部分が80mほどの二輪専用コースでした。コースが狭いです。指示速度が40km/hになっているのはいいとして、コース図を見て、これは覚えるのが大変だと思いました。

試験コースの全長は法令で決まっているので、狭いコースではそれだけ何回も同じ所をぐるぐる回らなきゃならないことになります。何回目にどこを曲がるかは毎回違うので、コースが狭いということはコースが覚えにくいということでもあるのです。四輪車の試験なら試験官が同乗しているので、コースはその都度指示されますが、二輪はコースをすべて覚えてから走らなければなりません。

また、コースが広いと「曲がる交差点が近付いてきたからそろそろ進路変更の準備をしないと」などと考えて法規走行をすることができますが、狭いとそんな余裕はありません。左折後すぐ右折なども頻発するので、次の次にどこを曲がるのかがすべて把握できていないと合図も確認も遅れてしまいます。要するに、広いコースではコースが覚えやすい上にコースをはっきり覚えていなくても走れるが、狭いコースはコースが覚えにくい上にコースを完璧に覚えていないと走れないのです。コースが狭いと二重の意味で難関になるんですね。狭い教習所と広い教習所でも同様のことが言えると思います。広い方が簡単です。

受験者のレベル

さて、私の順番は15番目ぐらい。バイク2台で試験をしているので、7〜8番目に回ってきます。緊張の中、前の人達の走りを見学していました。何だこりゃ、下手クソが多いな……。いや、人のことは言えませんが(笑)、昔の受験者に比べると明らかにレベルが落ちていますし、教習所の卒業検定受験者に比べても下手な人が多過ぎます。まあ、無理もないことです。教習所で12時間で取れる今の時代、10時間も15時間も練習してから受けにいくぐらいなら教習所に行くでしょう。試験場に受けにいくのは、安く免許を取ろうと、ほとんど練習せずに受けにいく人ばっかりになってしまったようですね。

他の受験者の走りを「寄せが甘い」「徐行が甘い」とか思いながら見ていましたが、それでも合格を言われています。まあ、採点基準は教習所の卒業検定と同じでないとならないわけですし、昔の採点が異常過ぎたのですが(笑)。これなら、普通に走れたら合格できそう。それでも7割以上の人は落ちていましたが、その普通に走れていないような人が多く受けにきている感じです。

ところで、ここは二輪専用コースなので、2台のバイク以外何も走っていない状態で試験が行なわれていました。優先車に出会って止まらなきゃならないなんて可能性はかなり低いです。これだったら、以前の教習所で周回に飛び出してきたような人が受けにきたとしても、優先車妨害の不合格ではなく、安全不確認の減点で済んでしまうかもしれないんですね。それでいいんだろうか……。

情けない不合格

さて、私の番。発進しようと1速に入れるとエンスト。あっ、クラッチを握っていなかった(笑)。おいおい、今までこんなバカなミスはしたことがないぞ。さて、今回は、ならし走行は右折を3回するというもの、そこから戻ってこずにそのまま試験に突入する規定です。このコースは、最初の左折後すぐに踏切がありました。左折した角から踏切の停止線までは1車長もないぐらいです。ここは止まりにくそうだなというのはコース見学の時から思っていたんですけどね。左折を小回りして踏切停車……えっ!? 何ーっ!! ……コケました。ただの左折で転倒(笑)。まだ、課題を1つもやってないんですが(笑)。

コースがあやふやで、もう1つ先で左折と思っていたら、ここだったので焦って曲がり、さらにすぐ踏切停止だからと、低速でバイクを傾けている最中に前ブレーキを掛けたというのが原因のようです。ひどいミスだ。

試験官は不憫に思ったのか、「ケガはないか? じゃあ、一本橋とクランクをやってから帰って下さい」とのこと。転倒は一発不合格で、即試験中止ですが、ちょっとだけ練習させてもらえるようです。しかし、ああっ、一本橋から落ちた。ああっ、クランクで足付いた。1回の試験で3回分落ちているよ……。終わったあと、試験官が私に「まっ、もっと練習しましょう」と一言。試験場には魔物がいると思いました。私こそが普通に走れていないようなやつだった(笑)。

またまた失敗

その後、練習場を変えて6時間ほど練習しました。そして今回は、何も見なくても試験コースのすべてが頭に浮かぶぐらいイメージトレーニングして試験に臨みました。

試験当日、一本橋を4秒ぐらいで爆走している外国人がいました。絶対に課題の意味を勘違いしている(笑)。さて、私の試験開始。問題の左折部分は、アクセルを回して半クラッチ。これなら倒れそうになったときにはアクセルを多めに回せば速度を上げずに車体を起こすことができます。そして、後ろブレーキで停車。なんだ、普通に一時停止できるじゃない。そして次は一本橋です。あっ、……橋から落ちた(笑)。またこんな失敗か。

ここで、思ったことがあります。試験場受験のポイントは、練習量とか、うまい下手以前の問題として、試験場自体への場慣れが最重要課題だと(笑)。

また別の練習場に行ってみました(笑)。「どこで落ちた?」「一本橋で」「じゃあ、やってみよう」というわけでやってみると、「粘り過ぎ」と言われました。「13秒台とか出しても意味ないから、10秒後半を狙うように」とのこと。へ、13秒!? 全然時間を数えていなかったので、そこまで出せるようになっていたとは思いませんでした。その後、4時間練習して次の試験に向かいました。

合格しないで!!

その日、試験場に着いて財布の中を見て「あっ」と思いました。受験料はあるけど、免許交付手数料がない!! つまり、不合格なら問題ないけど、合格した場合にお金が足りないことになります。とりあえず受験料を払い、コース見学の時間を利用してお金を下ろしにいくことにします。試験場の係員に下ろせる所を聞くと、これが遠い!! 試験開始時刻までにギリギリ帰ってこられるか……。しかし、途中で場所がわからなくなって、時間もないので引き返してきました。ダメだ。今日は練習と割り切って落ちよう。

そして、試験開始。一本橋は12秒ペースで安定しまくりだし、こんな日に限ってどこもミスをしないってどういうことだよ。完走して発着点に帰ってきました。ダメだ。どう考えてもこれは合格だ。しかも下手すると満点だ。……案の定、合格でした。うれしくない。財布には100円も残っていないぞ。

遅刻

交付時間まではまだ時間があります。この隙にもう一度下ろしにいかないと。さっき迷った所まで行って見渡すと銀行が見えた……って、遠っ!! 急ぎ足で駆け込むとこんな時に行列ができているし。ようやく下ろして時計を見ると、集合時刻までもう時間がありません。タクシーを拾おうと思うと、こんな時に限って1台も通らないし。ひーひー言いながら走って引き返しました。

着いたら「言われた集合時刻はきちんと守るように。みんなが迷惑するんだから」と怒られました。とほほ……。こうして、あまりうれしくない状態で免許交付を受けたのでした。

総括

私の場合、この免許は、最終的には免許取得が目的ではなくなり、中型限定ギリギリ合格の雪辱を果たしたい……つまり、免許取得相当の実力を付けたいというのが第一目的になりました。免許取得だけが目的なら、ここまで練習する必要はなかったでしょう。練習代はバカみたいに使ってしまいましたが、自分がどこまでも下手クソで、でも少しだけはうまくなったのがわかっただけ、良かったかなと思っています。

よく、試験場で取った人と教習所で取った人はどちらがうまいか、みたいな話をする人がいます。でも、両方を経験した私から言わせてもらえれば、それはナンセンスです。

運転免許って、いわゆる免許皆伝のことではないし、うまい人が取れる、下手な人が取れないとかいったものでもないと思います。少なくとも第一種免許に関しては、公道に出る最低条件を満たした……ただそれだけです。最低条件を満たせば取れるし、どこでどれだけ練習してどう取ったからって、最低に過ぎないんだということです。慢心しないようにしないと。


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