横谷峡(よこやきょう) 乙女滝〜霧降の滝〜王滝〜横谷観音〜おしどり隠しの滝 

 やっと紅葉のシーズンが到来。今回は長野県にある横谷峡である。中央本線特急あずさに乗る。ほぼ満席でハイキング姿の人が多い。朝からあまり食べるてもぐったりするので今回は駅で買ったおむすびで軽い朝食にする。
 山梨県のあたりはずっと曇りで視界も悪かったが、小淵沢を過ぎ、長野県に入るあたりから晴れ間が見えるようになった。幸先がいい。目的の茅野駅に着いた。
 ここからはバスに乗ってメルヘン街道を登っていく。30分程度で横谷峡入口(右)。
 やたら車が止まっていて高原リゾート風のレストランやホテルが立ち並んでいる。軽井沢チックである。どうやらここがリゾートで有名な蓼科高原らしい。あまり下調べはしてこなかったので横谷峡と蓼科のリゾート地がこんなに近いとは思わなかった。

 バス停近くの観光案内所で横谷峡の地図をもらい、出発。しかしハイキング姿の人はあまりいなくて、みんな手ぶらでサンダル履き等の軽装である。なんだか自分達が場違いな感じがしてくる。途中ドッグランとかの施設があるが、一家族がいるだけである。

 少し歩くとザーッと音がしてきて道を横切るように水が流れている。それは下の渓谷に向かって落ちていっている。
  さきほどの水の落ちているところまでくると、ここが乙女滝である(左)。名前のせいだかおばさん連中がはしゃいで写真を撮っている。マイナスイオンを示す看板がある。この看板は、この後あちこちで目にすることになる。
 空は晴れて、紅葉もちょうどいいくらいで、その中を白い水しぶきがシャワーのように勢いよく噴出している。この部分の滝の高さは約30mだが、ここから50mくらい下の横谷峡のメインとなる渋川まで水は急斜面を流れ落ちていっている。

 ここから渋川まで下りるとすぐ左手に横谷温泉旅館がある。川べりに露天風呂がありなかなかよさそうだが、明るいうちはハイカーから丸見えなので利用は難しそうだ。

 橋を渡ると霧降の滝が見えた(左下)。5mくらいでたいして大きい滝ではないが一息つくにはいい滝である。川の本流で幅があるので水量が多いと見ごたえがあるにちがいない。

 滝とは別方向、道の脇の岩肌から水滴がポタポタ落ちているような場所に三脚でカメラを構えた人が数人いる。写真サークルなのであろうか。シャッター速度を変えたりなんかしてこの水滴をどう撮るかがテーマなのだろう。自分に言わせれば「せっかくなので後ろの滝撮ればいいのに・・・」。

 しばらく上がると鷲岩というのがあったが何が鷲なんだかよくわからない。鷲の羽根のような感じということなのだろうか。その後も屏風岩、一枚岩と続くがどこがそれなのかがいまいちわからない。それより茶色の岩肌を名もなき滝が滑り落ちている姿が美しい(下)。案内には氷爆コースと書かれてあるのでこれらが冬場には凍り付いて綺麗な姿を見せるのであろう。一度見てみたいものだ。
 さっきまでいた軽装の観光客は上流に進むにしたがってだんだんといなくなってきた。次に目指すは王滝だが、いろいろなところから見ることができるらしい。まずは滝壺付近まで接近することにする。

 特に最近雨が降ったわけでもないのに、岩の多い道は湿っていて滑りやすい。河原に下りて歩いたりすること約10分王滝の中段部分に出た(右)。

 この渓谷の中でも一番威厳のある感じの滝で、およそ上25m、下15mの2段の滝である。マイナスイオン指数は大きい数値を示していて清々しい。しかし残念なのはこの2段の滝を一目で見れないことである。何かの写真で2段の写真を見たことがあった気がしたので戻る道を注意して見ると、ロープが下流の川に向かって下りている。これはと思い、注意しながら、ロープをたよりに岩場を10mくらい下りるとちょうど下流に出た。
 ここなら撮れそうだと思ったが、上の段は少ししか見えない。岩が滑らないのを祈って川の中の岩にホップステップの2段跳びで飛び移った。

 ホッとひと息つき上流を眺めると滝の上から逆光の太陽が射していて、水飛沫が霧となりキラキラと光りながらと上昇している。2段の滝は紅葉を伴い綺麗で、袋田の滝を正面から見た時と同じような感じである(下)。多分道のわかりにくさと、川に落ちる危険を伴うため、ここから王滝を見る人は横谷峡に来た人の100人に1人もいないんじゃないだろうかと思う。その絶景を一人占めできた感じがして少しばかりうれしかった。

 ここから山肌を蛇行しながら横谷観音に向けて登っていくのだが、途中、真正面から王滝を見る展望台がある。ここは残念なことに上段しか見えないが、滝の落ち口あたりがよく見え、紅葉がとても美しい。
 登ること約20分で横谷観音に着いた(左下)。横に真っ赤な紅葉があり、「皇太子御一家行啓記念樹」と書かれてある。
 ここからは下を見ると王滝や渓谷全体の紅葉の絶景を望むことができる。渓谷の先には茅野市外、その先にはうっすらと山々が見えた。もう少し霞んでなければアルプスの山々も見えるはずである。少しばかり紅葉の最盛期は過ぎているような気もするが十分に美しい。この横谷観音はメルヘン街道から近くの駐車場まで来ることができるのでまたまた軽装の人がたくさんいる。

 昼も過ぎてお腹も減ったのでここで茅野駅で買ったおいなりが3つ入った「おいなり3」なる弁当を食べた。3種類あったがなかでも辛子が入ったものはイケる味だった。前に誰だかタレントがテレビで「うちはいなりには辛子です。」と言っていたがなるほどであった。今度うちでやってみよう。
 1時間近く休み、疲れも回復したので横谷観音から下りていき、渓谷の上流を目指す。高い位置からの移動なので、ほぼ平坦な道を快適に進んでいくと明治温泉の赤い屋根が見えてきた。川の対岸からはこちらの山肌の紅葉を撮っているであろう人達がちらほらと見える。
 川に向かって階段を下りるとおしどり隠しの滝の脇に出た(下)。なだらかで複雑な段をつくり流れ落ちている。茶色い岩肌にはチャボミゴケといわれるめずらしい苔が張り付いていて(滝のそばに説明があった)、段毎にある滝壺は苔と水の色が合わさった緑色をしていてコントラストが非常に美しい。ここも三脚のカメラマンが10人くらいいた。標高はあまり意識していなかったが1500mと立て札に書いてあった。

 少し時間があったので、さきほど対岸にいたカメラマンのあたりに行ってみた。そこからは滝と明治旅館と紅葉やバックの山(横岳?)まで一望できて、渓谷の最後を飾るのどかないい風景だった(左)。
 ここから渋川温泉の脇を通り、メルヘン街道の渋川口バス停に出た。まだ30分くらいあったので道を登ったところにある渋川展望台に行こうかと思ったが、歩道がなく、車がビュンビュン走る峠道なのでやめておいた。バスを待っていると日曜の15時なのに渋川温泉に向けて車がどんどん来る。たぶん立ち寄り湯なのであろう。自分もそうすればよかったと思ったが時すでに遅し。
 帰りのバスは渋滞もあり1時間程度かかったが、疲れていたのでほとんど熟睡していた。
 茅野駅では、おみやげに名産のそばと野沢菜を、車内用に缶ビールとおつまみを買い、帰りのあずさに乗り込んだ。これから紅葉が山梨、東京とだんだん南下してくる。さて今度はどこに行こうかな。

【参考移動時間】 茅野駅−バス30分→横谷峡入口バス停−徒歩10分→乙女滝−徒歩15分→霧降の滝−徒歩40分→王滝−徒歩20分→王滝展望台-徒歩20分→横谷観音-徒歩25分→おしどり隠しの滝-徒歩30分→渋川口バス停-バス50分→茅野駅
【所要時間】 6時間20分(上記以外に休憩等含む)