ヨセミテ国立公園

 ついに念願が叶った。今回は行ってみたいところMy Ranking No1.のアメリカはヨセミテ国立公園である。言わずと知れた世界遺産でもあり、滝好きの聖地でもある(ロッククライマーの聖地でもある)。

 前日にサンフランシスコ入りし、1泊2日の日本人向けの現地ツアーに出かける。指定されたホテル前で20人乗りくらいの小型バスに乗り込む。道中は小さい街がところどころあるだけで、どでかい畑、牧場の田園風景が続く。

 当日は土曜日で天気もいいので観光客が多そうだと、ガイド兼運転手は少々あせりながら高速で車を飛ばしていく。その甲斐あってか、4時間弱で公園入口ゲートに到着。十数台並んでいる程度で通り抜けることができた。ボードには「TODAY SUNNY HIGH 89°」つまり華氏89度と書いてあったので摂氏30度は超えているようだ。ここのゲートは1台通るのにかなり時間をかけるので、おのずとこの先の道はあまり混まないということになっているようだ。
 目的地のヨセミテヴァレーへは入口から40分程度かかる。見どころが多く観光客が訪れるヨセミテヴァレーもヨセミテ国立公園のなかでもほんの一部である。なんせこの公園の面積は東京都の1.5倍程度あるのだ。途中、大規模な山火事で黒く焦げた森があった。山火事は森林を残していくため(再生するため)に必要な自然現象なのだそうだ。

 運転手が「トンネルを抜けたら、右手にいい景色が見れるので徐行します。」と言うので席を移動し、カメラを構えているとV字の渓谷に川が流れているのが見えてきた。奥には一筋の滝もある(写真左)。車は川沿いに下って行き、いったん川を渡り反対側の道を戻る方向に進むとトンネルがあり、その手前が駐車場になっている。
 ここがトンネルビューと言われる景色が眺められる展望台で、ここから見るヨセミテヴァレーは約1000mの花崗岩が氷河で侵食されてできたV字谷だということがわかる。写真ではスケール感があまりわからないかもしれないが、奥多摩あたりの多摩川沿いの1000m級の山々が、全て切り立った断崖絶壁になっているようなもんである。過去訪れたことのある大雪山の天人峡、層雲峡でいうと3、4倍くらいのスケールである。
 ここからは奥にハーフドーム、左手にロッククライマーの聖地世界最大の一枚岩エル・キャピタン、右手にブライダルヴェール滝を望むことができる(写真右)。谷では森林が緑の絨毯のように茂っている。よく見ると展望台の右上の岩場からも滝が落ちている。
 次はさきほど見たブライダルヴェール滝に向かう。道の脇にバスは停まった。5分後に出発ということで出てみるが、ここからは滝の下半分が木々で見えない。案内板には滝まで5分とある。団体行動なので行きたいのを泣く泣く我慢。

 この滝は高さ188mで池袋のサンシャインとほぼ同じ。普段は綺麗な一枚の布のような姿だが、風に煽られてなびく姿が花嫁のヴェールのように見えるのが名前の由来である(写真左)。
 ちなみに、今回なぜヨセミテに行っているかというと、実は新婚旅行なのである。まさにうってつけの滝である。
 続いてはハーフドームが見えるところで停車(写真右)。ハーフドームは名のとおりドーム状の岩がちょうど半分に割れたような形をしている。
 ヨセミテバレー入口付近では青く、急流だった川もこのあたりだと緑が滲んだような色をしていて、流れているというより水面がスライドしていくような感じである。ゴムボートに乗って川下りをしている人もいる。

 反対側にはヨセミテ滝。Upper,Middle,Lowerの3段からなり、高さは739mで世界第3位である。ちなみにそれより高い落差の滝は
 1位 エンジェルフォール ベネズエラ 972,m
 2位 トゥゲラ滝 南アフリカ 948m
となっている。
 はるか上の岩から落ちてくる純白色の水は落ちているというか、水飛沫が舞い降りているようである。落下に時間がかかっていることでスケールの大きさを感じる。
 一番上の滝の下のほうは霧のようになっていて、風が吹くたびになびいている。よって上の滝が落ちているところに滝壺は無い。この滝は明日時間があるのでその時じっくりと見ることにする。

 昼飯はアメリカで手に入る食材でつくった幕の内弁当である。カリフォルニア米のごはんのうえにはなんと鰻の蒲焼まで乗っている。木陰でベンチに座って食べる弁当はおいしい。リスが足元に来て欲しそうに二本足立ちをしているが、食べ物をあげてはいけないのが残念。
 今日の泊まりは予約が取れにくく、ダイニングルームでのディナーはドレスコードがあるというので有名な高級ホテル「アワニーホテル」である(写真右)。一緒のツアーの他の人はヨセミテロッジあたりに泊まる人もいるのだが、記念にと車で5分くらいかかるアワニーにわざわざお茶を飲みにくるくらいである。

 しかしチェックインは済んだものの、部屋に入れる時間はまだ先だということで、レンタサイクルでヨセミテバレーをサイクリングすることにした。
 ブレーキがペダルを逆回転させて止まるタイプなので慣れるまでかなり苦労した。やはりいざという時は反射的にハンドルのレバーを握ろうとしてしまい、レバーが無い!と思ったら頭が真っ白になってペダル逆回転などできない。人に注意しながらゆっくり行くことにする。
 ビジターセンターで情報収集した後、ロイヤルアーチズ、ハーフドームなどの岩を見上げながら進み、子供たちが水浴びをしているミラーレイクに行き、約2時間かけてサイクリングロードをぐるっと一周した。ところどころ大きなキャンプ場があり、シーズン中なのでたくさんの人がいる。サイクリングの妨げになると思いカメラは持っていかなかったが、照りつける太陽、涼しく爽やかな風が吹き抜ける緑の木々の木陰、目の前にそびえる灰色の岩の壁、涼しげな川の流れ、楽しそうな子供たちのはしゃぐ声。全て脳裏に焼きついている。ヨセミテに行くならぜひサイクリングをオススメする。

 アワニーホテルで部屋に入ると、窓の向こうには庭があり、タキシードやドレスを着た人達が歩いている。上に目をやると岩の壁である。つくりはロッジなので、高級ホテルと言えども豪華絢爛とは違い、格式のあるアンティークな感じのホテルという印象である。夕食はさすがにタキシードなど持ってこなかったので、カジュアルなバーのほうでアワニー特製前菜盛り合わせとローストビーフサンドを食べてお腹いっぱいになった。

 朝はまだ時差ボケがあったので空が白み始めるくらいに起き、夜が明けてゆく窓の外の風景を眺めながらコーヒーを飲んでくつろいだ。朝から平和な気分である。縁起でもないがあと何日間で死ぬといわれたら是非ここに長期滞在したいものだ。

 2日目の午前中は、大型バスに乗ってグレーシャーポイントに向かう。昨日からずっと見上げていた岩の上に行くわけだ。英語のガイドが話しをしてくれるが、昨日日本のガイドが言っていたことと内容が似てたりしたので少しは理解できた。駐車場につき、自由行動となるが集合時間まで1時間30分もある。非常にありがたい。

 天気も快晴で見晴らしもよくシェラネバダ山脈が果てしなく続いているのが見える。
 まず、真っ先に右手に見えるのが、181mのネバダ滝、その下がヴァーナル滝である。まるでダムの放水のようである。
 先に進むと岩が途切れ、そこからはロイヤルアーチズ(弧を描くように3段くらいに岩が削れている)とハーフドーム、その下のミラーレイクが見渡せる(写真下)。下からだとわからないが、その先も谷はずっと続いている。ここを氷河が削りながら流れてきたのかと自然の凄さに感動する。
 眼下にはヨセミテヴァレーが箱庭のように見ることができ、昨日サイクリングでまわったところを上から一望できる(写真左上)。緑の森の中を川が蛇行して流れている。アワニーホテルもマッチ箱のように見える。その上からはヨセミテ滝が流れ落ちている(写真左)。下から見るとあんなに豪快で大きかった滝が、ここから見るとまわりの風景に溶け込んですごく穏やかな感じに見えてくる。
 ヨセミテは個々でたくさんの滝、岩などのみどころがあるが、ここに立って感じるのは、たかだか2km弱のエリア内にそれらが密集し、協調しあって素晴らしい風景を作っていることだと思う。まさに神様がつくった絶景ともいうべきところで、猛暑なのだが神聖な気分で涼しげに感じる。ヨセミテのジオラマなんてのが販売してたら是非欲しいところだ。
 帰りの集合時間まで2時間くらいあるのでヨセミテの下の滝(Lower Fall)に行く。那智の滝のような感じで木々に挟まれた歩道を滝を見ながら歩いていく。
 下に着くと滝が起こしたかと思われる風が水飛沫を運んできて涼しい。滝壺付近にはなんと人がゴロゴロいる。この滝でさえ落差は約100mあるので華厳の滝の下に行くようなものだ。濡れるのと転んでズブ濡れになるのが怖いのでやめておいた。
 ここからは上の滝は見ることができない。上の写真でわかるようにかなり奥に入ったところにあるからだ。しかしここから見る岩の上部はかすかに青みがかった感じで霞んで、生えている木がすごく小さく見えることからこの岩や滝の大きさは凄いのだと改めて感じた。
 昼食に大好きなミートボールスパゲティを食べ、帰りのバスに乗り込む。帰りも2箇所観光で立ち寄るそうだ。まずはエル・キャピタン。肉眼では非常にわかりづらい半分くらい登ったところにいるロッククライマーを発見した。1週間くらいかけて頂上まで登ったりするそうで、その間はぶらさがりながら睡眠を取るそうである。岩には金具を打ち込むことは禁止されているので、岩の割れ目に専用の金具を引っ掛けて固定したりするそうだ。

 次は右にブライダルヴェール滝、左にエル・キャピタンを望む場所。ここもヨセミテの代表的なビューポイントであり、まるで絵画のようである。2日間の締めくくりとしてこの景色を名残惜しげに眺めつつ、またいつかヨセミテに来ようと心に決めるのであった。