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妖怪に、会った。
すごく、懐かしい妖怪だった。
いままで、会ったはずがないのに、会ったことがあるような。
むかし、日本にはたくさんの妖怪が、人々と共存していたなんていう話も、まんざら嘘ではないのかも知れない。
そんなことまで思わせる、初夏の旅だった。
駅前のレンタサイクルで自転車を借り、走り出した。
おじいさんの謎はまもなく解けた。
静寂だな。
僕は、前言を撤回しようと思った。
おばあさんは、トマトを渡すと、あっという間に去っていってしまった。それまで、あれだけ話をしてたのに、不自然なくらいあっという間に。
夕食は、離れに呼ばれた。
女将さんに、
僕らが部屋に戻ったのは、結局日本酒一升をあけてから。
M君は二日酔いだった。ま、当然だろう。
朝食のため、明るくなった離れに行った。
妖怪が隣に棲んでいた時代。
Copyright (c) arinomi workshop , 1999
はじめの妖怪
夕方、平泉から遠野にやってきて、綺麗な駅舎にできたばかりのステーションホテルに泊まった。近くのスーパーマーケットで弁当とビールを購入後、まだ新しい匂いのするホテルの部屋で、フロントで借りた遠野民話に関するビデオを見ながら、得も言われぬ異国感に浸っていた。
「・・・・・・どんとはれ」
ビデオの中のおばあさんは、囲炉裏端で物語り終わると、こういった。
「むかしさぁ、遠野物語読んだんだけど、さっぱりわかんなくて投げ出しちゃったんだよなぁ」
連れのM君がこういった。
そういえば、僕も。古本市で買ったのに、結局全然読まなかった。
「この民話、知ってる?」
ビデオを見ながら訊いてみる。
「んー、なんとなくは」
僕は、知らなかった。しょうがなく、フロントで手っ取り早く読めそうな絵本まで仕入れてくる。
「明日、どうやってまわろうか?」
「チャリンコ借りて、まずカッパ淵」
「ああ、有名なとこね」
カッパといえば、僕のひいじいさんがそっくりだったという。だから、なんとなく、写真で見たひいじいさんみたいなカッパが、水浴びしてる姿を想像した。
「カッパに会うでぇ」
ゲゲゲの鬼太郎の愛読者であるM君は、すっかり会う気である。どこまで本気で、どこまで冗談なのか区別が付かない。
窓の外でワンマン列車が止まる音がして、駅の光が消えた。
明日の始発かな。でも、それまでに起きられる自信はまず、なかった。
夏真っ盛り、まさしく夏休みの空だ。
夏に妖怪ツアーなんて、いいじゃないか。
わくわくしながらペダルをこぐ。妖怪の存在自体に半信半疑のはずのなのに、なんだか本当に会えそうな予感がする。
でも、それは単に予感。なのに、『はじめの妖怪』に会ったのは、あっけないけども、それからすぐだった。
なんの変哲もない、地方の町を抜け、観光地図をもとに、「キツネの関所」という所に着いた。こんな風に書くと立派な観光地に来たみたいだけど、とんでもない。車道に面した、単なる草むらだ。
むかし、街道(僕らがこいできた道路らしい)の関所のようなところで、キツネがそこを歩く人々を騙した伝説があるのだという。
けれど、草むらは草むら。勿論駐輪所はない。僕らは、自転車をガードレールに寄せるようにして止めた。それでも狭い歩道は、人が通るにも不便かも知れない。
僕はそんなことを思って、歩道の先を見た。田舎道だから、人も通らないかな、と思ったんだ。
向こうから、自転車に乗ったおじいさんがゆっくり走ってくる。
ああ、邪魔になるかな。
自転車に鍵をかけながらそんなことを思ったとき、声をかけられた。
「どちらから、来なさったんかね?」
僕もM君も、ぎょっとして顔を上げた。
こころなしか僕のひいじいさんに似ている、さっきの、自転車おじいさんだった。
何時の間に、ここまで来たのか、オールドファッションな自転車を降り、僕らをじっと見ている。
「と、東京です・・・・・・が」
M君が代表して答える。
すると、
「それはまぁ、とぉきょぉといえば、・・・・・・」
と、おじいさんは語りだした。昨日のビデオのおばあさんに近いような遠いような訛で、はっきりいって、半分ぐらいしかわからなかったけど、どうやらおじいさんは僕らを観光客だと見て、いろいろと語ってくれているようだ。
僕らは呆気にとられて何も言えない。
「これから、カッパ淵へ?」
「あ、はい」
「だったら、カッパのおじいさんに会ったと、ノートに書きなさい」
カッパのじいさん?
ノート?
状況のつかめない僕らは「はぁ・・・・・・」としか答えられない。
でも、おじいさんは満足げに言い残し、僕ら二人に握手を求め、自転車にまたがって、遠野の町の方向に去っていってしまった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
なんだったんだ、あれは。
僕らは、「キツネの関所」も忘れ、しばらくおじいさんを見送ってしまった。
おじいさんの手は、ちょっと冷たい、でも骨張った感触だった。
がっかりするくらい、あっけなく解けた。
噂の「カッパ淵」は、「キツネの関所」から、結構離れていたけれど、下り気味の道路だったから、さほど時間はかからなかった。
お寺の境内に自転車を駐輪し、畑と畑の間を縫うように流れる小川に出た。この小川が少し澱んで、淵のようになっているところ。そこが、「カッパ淵」だ。
「なんだか、ただの用水路にみえる」
「うん・・・・・・」
でも、淵の端に小さな祠があって、そこに陶器でできたカッパくんが腰掛けたポーズで安置されていたから、「ああ、やっぱりカッパ淵らしい」と思えた。
突然、 M君が「あーっ」と声を上げた。
「おい、これ、あのじいさんじゃない?」
僕はM君に促されて、祠の奥を覗き込んだ。
「ほんとだ、あのじいさんの写真」
祠の奥に、大きく引き伸ばされた写真が一枚、額に入れて飾られていた。そこには、果たしてあのおじいさんが笑って写っている。
「なんなんだ、このじいさんは、いったい」
「あああっ、ノートもある。ほら」
祠に、手垢にまみれた大学ノートと、黒い綴じ紐でつながれたボールペンが、場違いにおいてあった。ちょうど、観光地の喫茶店とかにおいてある、「思い出帳」のような感じだ。
僕とM君は、顔を見合わせた。
「ほんとに、カッパのおじいさんだったんだ」
M君がつぶやいた。
「キツネにつままれたような」とはよく言ったもので、僕らは「キツネの関所」でカッパに出会ったんだ。
にばんめの 妖怪
「カッパのおじいさんに会ったと、ノートに書きなさい」
僕らはおじいさんの台詞どおり、ほかの観光客みたいにノートに書き込むことにした。
カッパ淵は僕ら二人以外誰もいない。
畑の真ん中。
セミも鳴いているけど、淵の水に吸い込まれるようで、気にならない。
その淵が、時折「ちゃぽん」と音を立てる。
「・・・・・・んっ!」
淵が音を立てるたび、M君は辺りに神経をとがらせているようだ。
「どうした?」
「カッパが、おれたちに隠れて、水遊びをしている音や」
大真面目な顔して、M君が水面を見つめている。
僕はM君がカッパを探している間に例のノートに書き込んで、ふとそう思った。
ところが。
僕がそんなガラでもないことを思ったせいなのか、その静寂に、奇妙な音が混じっていることに気がついた。
M君も気がついたらしい。
二人、何も言わず、淵の先の方を見た。流れでいうと上流方向にあたる。
M君が何を期待してか、息を凝らしているのがわかって、僕は吹き出しそうになったけど。
ぎぃー、ぎぃー・・・・・・
木立の中から、聞こえるかすかな音は、やがてはっきりとする。姿もみえた。
腰が曲がりかけた、おばあさんだった。
じいさんの次は、ばあさんか。
言葉にこそしなかったが、二人で思わず笑った。
恐らくこの辺りの農家の人だろう。よくお年寄りが使う買い物カートを押していたから、奇妙な音がしたのだ。
隣のM君は、カッパじゃなかったことにがっかりしたようだった。
おばあさんは、ゆっくりとした足取りとは裏腹に、あっという間に僕たちのところまでやってきた。
さっきのおじいさんといい、このおばあさんといい、なんだか僕たちの時間軸を無視した速さを感じる。なんだか、現実離れしてるよなぁ。
僕たちは、黙って、そのおばあさんを見送ろうとした。
ところが。
「どちらから、来なさったんかね?」
ん??なんか、どこかで聞いたようなフレーズ。
しかし、M君はそうは思わなかったらしい。
「と、東京です・・・・・・が」
またもや、同じように答える。
おばあさんはにっこり笑うと、自分の子どもが東京にいることを楽しげに語りだした。
さっきのおじいさん、つまりかっぱのおじいさんは、一見して「変わってる」と思ったけど、このおばあさんは「変わってる」のではなくて、「観光客に親切な人のかな」と思った。遠野の人は観光客に優しいんだな、と。
そのおばあさんが、突然、「トマトはいらんかね」といった。
唐突さに、僕もM君も返事できずにつまった。
おばあさんは、僕らの反応はよそに、カートのふたを開けた。
カートの中には、スーパーのビニール袋でもなく、日用品のたぐいでもなく、たった5つ、トマトがそのまま無造作に入っていた。
おばあさんは「変わってるわけじゃない」と思ったことだ。十分、「奇妙な人」だ。
話によれば、今し方おばあさんの畑で取ったトマトなのだそうだが、カッパ淵でキュウリならぬ、トマトが登場するとはなんだか、奇妙な因縁(どういう因縁だか、わからないけど)を感じる。
思わず沈黙してしまった僕らを、遠慮していると思ったのか、おばあさんはひとつ、ぐにゃっと変形して実ったトマトをカートから取り出し、僕の鼻先に突き出した。反射的に僕は受け取る。
「う、わー、つやつやしてますね」
手にしたトマトは、とりたてだというのに、ワックスをかけたようにぴかぴかに光っている。形は変だったけど、大きくて、重くて、手触りも気持ちいい。
僕のトマトを背後から覗き込んでいたM君にも、おばあさんはトマトを手渡した。僕のよりも丸くて整っていたけど、同じようにつやつやで大きかった。
なんだか、ここでもキツネかカッパにでも騙されてるような、錯覚におちいった。
木立の中へ、おばあさんはカートをぎぃーぎぃー押して、姿を消した。姿が見えなくなると、あのカートの音も聞こえなくなった。カッパ淵は、もとのように静かになって、僕とM君が真っ赤なトマトを手に立ちつくしていた。
が、自他共に認める食いしん坊のM君はさっそくTシャツでこすって、トマトを拭き、一口頬張った。
「これ、うまい」
確かに・・・・・・僕もおばあさんのくれたトマトは美味しかった。青臭くて、それでいて甘酸っぱいような。
「騙されたのかな・・・・・・カッパとキツネに」
少し空腹感があった胃が、トマトで束の間の満足をしている。でも、あのトマト、実は幻だったのかも知れない。
僕は、残った深緑のヘタを思わずみた。
あれっと気がついたら、手の中にあったはずのヘタがなくなって、お腹も元通り空いてる。
そんなこともあり得そうだと思ったからだ。
相変わらず、M君はカッパの気配を探っている。
「でもさぁ、妖怪のたぐいって、以外と目に見えない存在ってわけやなくて、普通に当たり前のような顔して、会ってるのかも知れんな」
再び自転車でスタートするとき、自転車にまたがったM君がぼそっと呟いた。
さんばんめの妖怪
だから、宿に着いたら絶対にすぐに寝ようと思った。寝ようなんて思わなくても、すぐに寝られると思った。
僕らは、遠野から次の目的地・金田一温泉を目指した。ここで一泊して、明日は青森に出るつもりなのだ。
金田一温泉は、知る人ぞ知るスポット。何で有名かと言えば、「座敷童子」。
「カッパ」の次は「座敷童子」。ついでに、旅行の最終日には、恐山まで足を延ばすつもりだった。
妖怪好きのM君企画だから、しょうがない。M君は大学に入る以前、一度この金田一温泉に来たことがあるそうだ。
「ここの、旅館の一つに、座敷童子の出る部屋があるんや」
「その部屋に泊まったんだ?」
「いや、俺、小心者やから・・・・・・」
小心者のくせに妖怪が好きとは、ねぇ。
僕らは、夕暮れ頃、ようやく岩手県の北の端、金田一温泉に到着した。
感じのいい女将さんが、お膳で運んでくれる。
昼はスーパーのパンですました僕らは、当然がっつくように食べ始めた。そんな食べ方をするのはもったいないくらい、美味しかった。
「ん?」
M君はふと手を止めて、縁側の方を探るように見た。
「どうした?」
「いま、男の子が遊んでるような声がした」
僕も耳を澄ますと、確かに「きゃっきゃ」というような、小さな男の子の声がする。
「でも、真っ暗だよ」
縁側の外は既に日が沈み真っ暗で、その先に何があるのかもわからない。
子供が外で遊ぶには、ちょっと不自然な感じ。
「ここに泊まってる、他のお客さんかもしれんな」
「きっと、そうだよ」
座敷童子なんていうから、たかが子供の声に敏感に反応してしまう。
僕もM君も、そう思って再び夕食をかっこんだ。
「座敷童子のことを、主人が話しますので、よかったらいらして」
といわれたので、僕とM君は外の自販機で調達してきた缶ビールを手にしたまま、促されるまま離れに向かった。夕食を食べた、そのふすま越しの部屋だ。
高い天井に、大きな梁、そして、囲炉裏。
囲炉裏端に、白髪混じりの老人と、浴衣姿の男性(浴衣が僕らが着ているものと同じだったから、お客の一人なのだろう)が座っている。
僕らもその中に入れてもらって、座った。
ご主人は、最初はお茶を煎れてくれたけれど、にっと笑うと「親戚の酒造で造ってる酒です」といって、日本酒を出してきた。
酒に弱いM君は見る見るうちにタコのようになる。ついでに意識もかなり遠のくヤツだから、その後のご主人の話を覚えているのか知らないが、ひとしきり自己紹介のようなことをすると、ご主人は座敷童子の話を始めた。
「ここの座敷童子は、実は身元がはっきりしておるんです」
「身元、というと?」
「わたしのご先祖に当たる男の子なんですよ」
「男の子?」
僕とM君は顔を見合わせた。
「あのう、変なことを訊きますが、今日こちらに男の子が泊まっているということはないですか?」
M君は一時的に酔いが醒めたように、ご主人に訊いた。
「いいえ、泊まっていないと思いますが」
「じゃ、ここに住んでる方で男の子は?」
「いませんよ」
僕らは突っつきあった。
あの、夕食の時の声。
まさか・・・・・・。
M君はご主人に、夕食の時の話をした。
すると、ご主人は笑って、
「あの部屋は、すぐ隣が座敷童子の現れる部屋ですからね」
ちなみに、もう一人座している男性は、その現れる部屋に泊まっているお客さんだそうだ。
「うっわぁー」
歓喜なのかよくわからない声を出して、M君はガッツポーズをした。
よっぽど座敷童子に会いたかったらしく、M君はしばらく興奮状態から醒めやらぬという調子でいた。
時間は午前4時をまわっていた。
外が白んでいるのがわかる。
酒で案の定、へろへろになってしまったM君は、眼鏡も外さず、ましてや「座敷童子が夢枕に現れる」なんてことは考えもせずに、あっという間に寝入ってしまった。
僕も、M君ほど酔っていなかったし、妙に頭が冴えていたけど、とりあえず布団に入った。
カッパやら座敷童子やら、いろいろ出てくる日だったな。
変な話だけど、今まで話し込んでたご主人も妖怪のたぐいだったのかも。それでも、全然不思議じゃない。朝起きたら、何もなくなってて・・・・・・。
あ、今も枕元になにか立っているような気がする。酔ってるせいなのか、眠いせいなのか、それとも・・・・・・。
僕は宙に浮くような変な気持ちで、浅い眠りに落ちた。
僕も本調子ではなかったけど、とにかく電車の時間もあるし、起きあがった。
夢に、座敷童子は出てこなかった。でも、カッパと死んだ祖母が出てきたような気がする。夢によくあるように、つながりや脈絡は見えなかったけど、今にも出てきそうな妙にリアルっぽい夢だった。
すっかりはだけてみっともない浴衣からジーンズに着替え、タオルと歯ブラシを持って、洗面所に行く。
洗面所の窓から、風一つなく暑そうな夏空が見えた。
誰もいない洗面所。
僕が蛇口をひねって、顔を洗おうとしたとき、洗面所の戸がきぃっと僅かに開いた。
風?
僕は窓を見たけど、窓は開いてはいなかった。
なにかの弾みで開いたのかな。
そう思った途端、戸はまた、きぃっといって、元の通り閉まった。
「お前、いま洗面所に来た?」
顔を洗ってから部屋に戻り、M君に尋ねる。
「いや。どうした?」
僕は今のことを話すと、
「他に誰かいたのと違う?」
「それはなかった。だって、スリッパ音とか足音とか、しなかった」
M君はふぅんといってから、タオルを持って出ていった。
と思ったら、三十秒と立たない内にM君はばたばたと駆け戻って来た。
「おい、あの洗面所の戸、バネが着いてるから、お前が見たみたいに少し開いた状態になんか、ならへんぞ」
寝起きで、寝グセだらけのM君は、少し青ざめていた。
縁側の向こうも見渡せる。
「・・・・・・向こう、ただの草っぱらや」
青ざめたままのM君が呆然と呟いた。
確かに、丈の高い草が生えているのが見える。
「じゃ、昨日の男の子の声、ますます普通じゃない・・・・・・」
朝食を終え、本当なら一風呂浴びたいところだけど、電車の時間があるから宿を出てタクシーで駅に向かった。
M君は二日酔いか、寝不足か、はたまた座敷童子効果か、なんとなくぼんやりしている。
僕だって、M君から見れば、ぼーっとしているかもしれない。
ああ、なんだかキツネにつままれ放しだった。
きっと、夏の光があたりの輪郭をあんまりはっきりさせるものだから、余計に騙されているような気分になるんだ。
そうじゃないとすれば、やっぱり僕らは、妖怪達に化かされているに違いない。
いまこうして見ていることも、妖怪達のまやかしなのかもしれない。
伝説を聴くたび、そんなことを考えていた。
でも、妖怪はどこへ行ってしまったんだろう。
M君は旅の後、むふふと笑いながら、こういった。
「東北には、まだ妖怪が生きている」
ちょっと違うな、と僕は思う。
「東北では、妖怪が人間のような顔をして、生きている」
僕らが出会った人たちが、果たして妖怪なのか確かめようはない。
けれど、僕は夏の終わりにこう思った。
今年はいい妖怪に出会えたな、と。
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