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ミリタリーファイル

A. V作戦



B・新型兵器開発経過

B1-01 次期主力モビルスーツ

 次期主力モビルスーツとして選定されたMS-14ゲルググの、開発経過の統括をおこなう。

 連邦のモビルスーツが確認されるより前の今年7月末日、グラナダにおいてMS-06Fに代わる宇宙戦用モビルスーツの機動選定試験がおこなわれた。この機種選定には以下のような背景があった。

 (1)宇宙における戦力増強の必要
 一週間戦争とルウム戦役においてわが軍は多数のベテランパイロットとモビルスーツを喪失。さらに地上に多くの戦力が投入されたのと比較して、宇宙戦線が手薄になっていた。

(2)ザクの攻撃兵器としての性能低下
 わが軍が戦争の長期化を解消すべく多くの戦力を地上に投入した際、その主戦力として期待されたザクは地上での展開能力の低さを露呈し、その汎用性を充分に発揮できないことが判明した。
 また南極条約の発効によって核兵器が全面使用禁止となった現在、モビルスーツの近接核攻撃戦術が封じられたことで、ザクの攻撃兵器としての有効性は著しく低下している。

 このコンペティションに参加したのはZIONICのMS-06R-2と、ZIMMADのMS-R09の2機種である。
 MS-06R-2は、生産中止に終わったMS-06R-1Aを大幅に改修した機体である(詳細は補足資料・C-5)。
 R09は、初の本格陸戦用モビルスーツであるMS-09を改装し、宇宙戦闘型に転用したものであった(詳細は補足資料・C-6)。
 選定試験では、空戦時の機動性、最大戦速時の攻撃能力においてMS-06R-2が優れていたのだが、量産性や火器搭載量などを含めた総合性能の点から、MS-R09に採用が決定した。
 しかし、これはあくまで戦局の長期化をにらんだ補助的な採用であり、連邦のV作戦モビルスーツが確認された後の9月下旬に作成・提示された次期主力機の計画書の要求を満たすものではなかった。

 この計画書が提示された時点では、わが軍の戦略的状況において、連邦のモビルスーツ開発が大きな懸念事項となっていた。
 戦線の膠着化は、独自のモビルスーツを開発する時間と、ミノフスキー粒子下状況に即した戦術を確立する時間を連邦に与えていたのである。
 連邦の工業力をもってすればモビルスーツ部隊が充足するのも時間の問題であり、すでにモビルスーツ開発力でのわが軍の優位性は失われたに等しい。
 加えて、連邦のV作戦モビルスーツが装備する小型メガ粒子砲の存在は大きな脅威であり、早急に何らかの対抗手段を講じる必要が生じた。
 これらの事実をうけて、モビルスーツの運用は大きな変更を迫られ、次期主力モビルスーツの開発が総力をあげておこなわれることとなった。

 次期主力機の計画書では、「現在ザクが運用されている、あらゆる環境で運用が可能であること」が条件として想定されていたということである。
 次期主力機の選定テストはZIMMADのMS-15と、ZIONICのMS-11を対象として、グラナダにておこなわれている。
 MS-11はMS-06R-2や06系の発展型である06R-3をベースとして、ビームライフルの装備を前提に開発がおこなわれていた。そのため高出力の熱核反応炉を搭載し、胸部の周囲には空気の吸入・排出口が設けられている。同時に推進用ロケットエンジンは脚部と腰部に移された。両腕には大気圏内を飛行するための補助ジェットエンジンが装備されている。
 MS-11のナンバーはのちに他の宇宙戦用特殊モビルスーツに移され、新たにMS-14とナンバーがつくとともに、ゲルググのコードネームが与えられている。
 コンペティションにおいて、MS-14は高い戦闘力、機動性、運用能力を示し、競合相手のMS-15が白兵戦闘で盛り返したものの、結果的には圧倒的な性能差を見せつけている。こうしてMS-14は正式採用機種に選定された。

 ZIONICは先行量産型として25機のYMS-14を10月にロールアウト、10月26日までにシャア・アズナブル大佐用に確保された機を除く24機を、急遽編成されたエースパイロット部隊に引き渡している(エースパイロット部隊に関する詳細はB1-03)。先月下旬には携帯用ビーム兵器の生産ラインが始動している。
 公国軍総司令部の試算資料によると、今年度段階でゲルググの生産機数の予定が180機。量産に関しては、ブロック生産方式の特性を生かして国内の一般工場においても大型部品の生産をおこなう。来年4月までにMS-14の生産ラインをフル回転させて800機程度を実戦配備する予定であり、地球攻撃軍のモビルスーツもMS-14へと転換することになっている。

B1-02 MS-14用ビーム兵装の開発

 先月下旬から、MS-14ゲルググが使用するビーム兵器の生産ラインが始動している。10月にすでにロールアウトしているMS-14先行量産型への配備をはじめとして、今後はゲルググの量産とあわせて生産・配備を可及的速やかに進める予定となっている。
 MS-14の標準装備となるビーム兵器は、主にビームライフルとビームサーベルの2種類。ビームサーベルに関しては、ユニットの両端からビームを生成する仕様となっており、これによりナギナタ状のビームを形成することが可能である。

 MS-14とその小型ビーム兵器の運用に際しては、エネルギーCAPの充填機器も必要となっており、そのために基地や戦闘艦のジェネレーターを使用することになる。これにより、各種艦艇にMS-14の実戦配備をにらんだエネルギーCAP用設備が追加されることとなり、すでに一部艦艇はドック入りしている。
 この設備が追加されているのは大型ジェネレーターを艦載しているドロス級、グワジン級戦艦、そしてザンジバル級巡洋艦だけである。これは、この3タイプには容量的に設備追加の余裕があり、比較的容易に搭載が可能だからである。
 また、現在就航しているムサイ級やチベ級重巡洋艦の改装はおこなわない予定である。これらの艦の格納デッキに物理的余裕がないのがその理由だが、今後竣工してくる艦については、建艦の段階でデッキを広めにとるなど設計を変更し、設備充実を図ることで搭載可能にしていく予定である。

 MS-14のビーム兵器携帯をかくも重視しているのは、9月にサイド7で確認された連邦軍の新型モビルスーツの存在によるところが大きい。このモビルスーツは携帯型メガ粒子砲であるビームライフルを使用しており、その威力はMS-06を一撃で破壊するほどで、ゲルググ以前の機体では対処が困難であることが明白である。
 また一般にビーム兵器の使用は、モビルスーツ本体への高出力熱核反応炉の搭載を前提としており、水陸両用モビルスーツ等の局地戦用機で実用化された以外は、今のところこの条件に該当する機体は他には存在していない。

 MS-14のビーム兵器運用が可能になったのは、戦場で捕獲した敵新型モビルスーツのビームライフルの分析と、サイド6経由で公国軍情報部が収集した情報の解析が実を結んだためである。小型ビーム兵器の開発はこれまで大きな技術的課題となっていたが、連邦が開発した「エネルギーCAP」を参考に完成した新技術は、すでにわが軍の蓄積してきたモビルスーツ開発ノウハウに容易に組み込むことが可能であると判明している。
 この研究開発の過程では、白兵戦用ビーム兵装であるビームサーベルの開発がビームライフルより比較的容易に進んでいた。これはビームライフルに比べて大きな出力を必要としなかったことと、Iフィールドの新型スタビライザーを搭載することで、サーベル形成の安定化に成功したためである。そのためビームサーベルに限っては、MS-14だけでなくその他の新型機種による使用も実現している。

B1-03 MS-14系の試験運用

 次期主力モビルスーツ・YMS-14の運用試験部隊であるエース部隊から、昨日進行状況に関する報告が入った。この部隊は10月26日の本国発進後にグラナダからの派遣部隊と合流したのち、機動巡洋艦「キマイラ」以下6隻からなる機動部隊として編成され、現在はコレヒドール暗礁宙域で実験中である。今回の報告により、同部隊が予定されている運用試験日程の83%を現時点でこなしていることを確認。

 同隊の目的は、YMS-14の配備計画における実戦・実務データ収集にある。つまり、かつてのMS-05の配備計画における教導機動大隊の位置づけと同様のものと理解してよい。
 当該実務は戦技実験のみならず、かつては実施されなかったであろう過酷な環境下での耐久実験も実施されるクリティカルなものであり、広義な意味での部隊運用の試金石たるものである。
 実験結果にフレキシブルに対応できるように、関係各民間企業の関係者・技術者も同乗し、一定の効果を得ている。

 同隊はYMS-14を24機有し、パイロット31名はいずれもが当該部隊活動のために選抜された人員である。
 YMS-14の機体は各種のバックパックを換装することで、異なる性質をもつ機体への換装が比較的容易にできる。この作業でできるバリエーション2タイプは、MS-14BとMS-14Cと呼ばれる。
 MS-14Bは背部に増速用ブースターを備えた機体である。膨大な初期加速を要するベテランパイロットの一撃離脱戦法にも十分対応しているため、エース部隊のベテランパイロットたちの機体評価はきわめて高い。
 MS-14Cは背部にビームキャノンパックを搭載するほかに、頭部にも補助カメラを新たに備えるなど、機体にも若干の設計変更が施されている。もともとはビームライフルの開発の遅れをうけて提案されたものだが、ゲルググ本体が内蔵している新型熱核反応炉のキャパシティが高出力のビームキャノンパックにも十分対応できるからこそ実現した機体である。

 これらの機体と人員によって試験運用をおこなっているエース部隊であるが、早期に報告されていた内容のうち、主なもの2点を挙げておく。

 (1)サバイバビリティの向上
 運用時の事故や機体故障の分析の結果、ゲルググにおいては誘爆のみならず、損傷による他パーツへの波及効果がきわめて小さいことが確認されている。それはすなわちパイロットの生存率向上を意味する。
 これは、量産効率をアップするために本機体から採用された、モジュールごとのブロック生産方式に負うところが大きい。

 (2)腕部ジェットエンジンの有用性
 腕部の補助推進システムは、地球における逆攻勢の際に大気圏内で使用することを想定し搭載されたものだが、実際はコロニー内での運用も可能である。これはつまりゲルググが、本国コロニー内での本土決戦の備えとして活用できることを示す。
 今後の戦局が攻勢もしくは守勢といったいかなる状況になろうとも、MS-14がモビルスーツ戦力の中核になることは確実であり、その量産は急務であるといえる。

 最後に、エース部隊編成という処置については、不測の事態による計画の挫折というリスクを内包しているため、危険視する向きがあったのは事実である。だが、可及的速やかなる配備計画の要求上、これは緊急避難処置といえるものであり、現時点では多大なメリットをもたらしていることは掛け値なしの事実でもある。



C.補足資料