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音楽教室
 掲示板に、「なおこせんせい」と言う、お名前で書き込みがあったのをご存知でしょうか。なおこ先生は、てっちゃんの通う音楽教室の先生です。なおこ先生と私たち親子の出会いは、てっちゃんが3歳3ヶ月の頃でした。音楽の素養を身につける為というより、てっちゃんを集団に入れる必要性を感じた私は音楽教室に通わせることにしました。しかし、てっちゃんはなかなか興味を示してくれず窓際に行って外を眺めていたり、私が無理に傍においてもゴロゴロしいるばかりでした。それでも、なるべく叱らないで根気よく注意を先生や流される曲に向くように工夫しました。そのうち時々興味を示すと、すーっと寄って行って短い間ですが集中するようになりました。出席をとる時も、始めは全く参加できなかったのが返事をするようになり、名前を言えるようになり、挨拶ができるようになっていきました。そんな成長を先生を始め他のお母さん方も一緒に喜んでくれました。しかし、年中の頃になると、音楽教室のプログラムも難しくなってきて、てっちゃんがついて行くのは少し難しくなってしまいました。なおこ先生は「てっちゃんはなにか素敵なものを持っているから音楽を続けるべきだ」と言ってくださいましが幼稚園に入園することもあって音楽教室は一旦退会することにしました。翌年、フックンが音楽教室に入ることになったので、てっちゃんも一度やったコースでしたが2歳とし下の子に混じってもう一度やってみることにしました。 ところが、てっちゃんは、その頃になると幼稚園で集団行動を身に付けて、みんなと同じ事が出来るようになっていたのですが楽しそうではないのです。身体はちゃんとみんなと同じように動かすのに目が死んでいるのです。これには私は参りました。前に参加した時はみんなと一緒にやれることは少なかったのですが、それでも興味を持つ曲には目を輝かして聞き入っていました。そんな瞬間の為に私は、根気よく通わせることが出来たのです。たぶん敏感なてっちゃんことですから、そのクラスが自分のいる場所ではないことを感じていたのかもしれません。私は耐えられなくなって半年で休むようになってしまいました。すると、なおこ先生はてっちゃんの為に全く独自のプログラムで個人レッスンをしてくださると言ってくれたのです。先生なりに、てっちゃんの障害について調べてくださって、わかりづらい彼の障害に果敢に挑戦すると言って下さいました。個人レッスンが始まって6ヶ月、今も試行錯誤は続いています。てっちゃんの笑顔を大切にしながらのレッスンは亀の歩みのような進歩です。でも、あせる理由はどこにもありません。私も先生も音楽がきっと、てっちゃんの人生を豊かなものにしてくれると信じています。
 「てっちゃんのこの素敵な雰囲気を音楽で表現できるようになるといいね」と、なおこ先生が言ってくださいます。これは、私と先生の大きな大きな夢になっています。   (Jun.2000)