<教会報「翼」2020年 5月号 巻頭言>

 

 『苦 難が生み出すもの』  島津吉成牧師

ロー マ書 第五章一〜五節

 

「この希望が失望に終わることはありません。私たちに与えられた聖霊 によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです」。 ローマ書 第五章五節

 

新 型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、その中で、苦しみ、悲しんでいる人、そのような人を支える働きをしながら、へとへとになっている人たちがい ます。しかし、聖書は、「苦難をも誇りにしている」と語ります、これは驚くべき言葉です。この言葉は、苦難そのものを喜べ、と言っているのではありま せん。苦難は苦しく、辛いものです。聖書は、このような苦難にどのようにして打ち勝つのかを語っているのです。苦難に打ち勝つために大事なこと、それ は、私たちが今、どのような恵みに入れられているのかを覚えることです。私たちは、主イエスの十字架によって義とされています。神さまが私たちを真っ 白なものとして見てくださるのです。ですから、私たちは神さまとの間に平和を得ています。罪赦された者として神さまの前に出ることができ、神さまの栄 光に与る希望が与えられえているのです。やがての時、私たちはイエス様と同じ姿に変えられ、天に迎えられる希望が与えられています。このような恵みを 与えてくださった神さまが、この苦難の中にも働いておられます。苦難はただ苦しいだけで終わるのではなく、神さまが新しいみ業をなしてくださる時で す。そのことを信じて、その恵みを先取りするようにして、苦難をも喜ぼうではないか、と聖書は語るのです。

で は、苦難を通して与えられるものとはなんでしょうか。まず、第一に「忍耐」が与えられます。苦難は私たちを祈りへと導きます。祈りの中で神さまと交わ り、新しい力を得るのです。その力こそ、忍耐、耐え忍ぶ力です。忍耐とは、じっと我慢することではありません。そこには、積極的に堅く立ち、強く進む という意味が込められています。ある人はこの忍耐を木の根の力に例えました。木の根は堅い岩にも食い込んでいきます。私たちも忍耐をもって、苦難の中 にあっても、信仰の根をしっかりと張ることができるのです。第二に、忍耐は「品格」を生みます。品格という言葉には、テストに合格するという意味があ ります。それは、不純物が取り除かれて純粋なものになるということです。イエス様は、「幼子のようにならなければ、天国に入ることはできない」と言わ れました。純粋に神さまに信頼しきっている人、そのような人こそ、練達した人、品格を身につけた人ではないでしょうか。いろいろなことが起こってくる 中で、神さまの恵みを見出していく、そこに、恵みの品格を身につけた人、神さまの恵みを見つける練達した人の姿があるのです。

続 けて聖書は、そのような品格が希望を生み出すのだと語ります。神さまの恵みがその人に刻まれていく時、その人は希望に生きる者となります。なぜなら、 その人は問題を神さまのところに持っていくからです。私たちにはがっかりするようなことが起こりますが、神さまが私たちに希望を与えてくださいます。 この神さまを見上げて進んでいきたい、そう思わされます。最後に、この希望は失望に終わることがないと聖書は締め括ります。私たちは失望することがあ ります。しかし、失望の中にあっても、もう一度立ち上がることができるのだ、と聖書は語るのです。それは、聖霊によって私たちの内に神さまの愛が注が れているからです。苦難の中にあっても、神さまが私たちをどんなに愛しておられるのかを、聖霊は教えてくださいます。私たちは弱くても、恐れることは ありません。私たちは希望をもって再び立ち上がることができるのです。