2017年4月号 教会報「翼」巻頭言
「敵と向き合ったラハブ」
小林 重昭
「サルモンはラハブによるボアズの父、ボアズはルツによるオベデの父、オベデはエッサイの父、エッサイはダビデ王の父である」。(マタイ1:5〜6)
「ヌンの子ヨシュアは、シッテムから、ひそかにふたりの斥候をつかわして彼らに言った、『行って、その地を探りなさい』。彼らは行って、名をラハブという遊女の家にはいり、そこに泊まった。…『われわれがこの地に討ち入る時、わたしたちを吊り降ろした窓に、この赤い糸のひもを結びつけ、またあなたの父母、兄弟、およびあなたの父の家族をみなあなたの家に集めなさい』」(ヨシュア2:1、18) 。
桜の花も開花し、ようやく草木の萌えいずる季節となりました。皆さん、お変わりございませんか!
震災各地の被災者の皆様の上に、主の御守りと一日も早い復興をお祈りします。
今回は、ヨシュア記二章を開きました。登場人物はラハブです。新約でラハブの名は、「イエス・キリストの系図」で、四人の女性の二番目に登場します。ラハブの子孫としてダビデ王、そして1400年後、イエス・キリストが誕生しました。
ラハブ物語は、ヨシュア記2章に展開されます。力強いリーダーシップで、出エジプトを導かれましたモーセは、カナンの地を目前に亡くなりました。ヨシュアがモーセの後継者となりました。
「わたしは、モーセと共にいたように、あなたと共におるであろう」(ヨシュア1:5)。ヨシュアは、神様の励ましを頂いてカナン征服のため立ち上がりました。
ヨシュアの最初の大仕事は、ヨルダン川の東一一キロに聳え立つエリコの城を攻め落とすことでした。ヨシュアは、エリコを探るために、二人の斥候(スパイ)を送りました(ヨシュア2:1,2)。
ここに「遊女ラハブ」の名前が出て来ます。その「ラハブの家」にイスラエルの二人の斥候が泊まったのです。まさに、彼らは人目を避けるために、「遊女ラハブの家」を選びました。ところが、エリコの王は、「イスラエルのスパイがエリコに侵入」したとの情報を耳にし、ラハブの家に憲兵隊を遣わしました。
一色義子は、「エバからマリアまで(聖書の歴史を担った女性たち)」(キリスト新聞社)の中で、このラハブを「敵と向き合ったラハブ」と紹介します。「遊女ラハブ」は、社会的ハンディキャップを乗り越えて、二人のスパイを匿い、敵国イスラエルの背後におられる「神と向き合った」のです。まさに、驚くべきラハブの信仰です。その信仰の故に、ラハブの家族が救われました。実にラハブは、「神と向き合った」信仰の故に、イエス・キリストの系図に登場し、聖書の歴史を担う女性となったのです。
T、ラハブの信仰
「『わたしたちはそれを聞くと、心は消え、あなたがたのゆえに人々は全く勇気を失ってしまいました。あなたがたの神、主は上の天にも、下の地にも、神でいらせられるからです』」(ヨシュア2:11)。
ラハブは、自国の王に嘘をついてまで、イスラエルのスパイを匿いました。まさに、ラハブは歴史を支配される神、天地万物の創造者なる神への信仰を告白したのです(参へブル11:30、ヤコブ2:25)。
U、ラハブの救い
「ラハブが窓に結び付けた赤いひもは、過ぎ越しの羊の血を現し、また、キリストの救いの血を現します」(F・B・マイヤー)。ラハブの前歴が、どの様であっても、この一本の赤いひもはラハブの救いを意味しました。しかも、それは父母、兄弟ら家族全員の救いを約束しました。