/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/航海日誌(27)/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

【10月18日(水)〜10月19日(木)】

10月18日(水)  千葉県 千倉漁港 日和待ち
朝は雨。前線が南下しているための雨ですが、北西から高気圧が張り出してくるため、この雨もまもなく止むはず。
ただ、風は南西。前線が通過したあとは、急速に天気が回復しますが、強い寒気の南下とともに北西の風が強まっ
てくるはず。すでに日本海側の新潟では強風波浪注意報が発表されています。

午前中は、自転車を出して女房が近くのスーパーに今日一日の買い物へ。Kasayanはいつもの点検作業と、航海
が終わりに近づくにつれて、いただくメールが多くなったので、シコシコと返事書き。
気が付くともう昼。味噌煮込みうどんが美味しく感じられるほど肌寒い季節になってきました。
ラジオを聞いていると、関東では木枯らし一号が吹いたとのこと。一昨年の木枯らし一号が吹いた時、テレビ局の
ニュース原稿を書いていたことを思い出していました。まさか今回の航海中にこのニュースを聞くとは・・・・・。
春に出港したのに、もう冬の便りです。ちょっとゆっくりしすぎでしょうか?

午後、今度はKasayanが自転車で散歩。JR外房線の千倉の駅まで自転車で20分。千倉の町の中心は漁港の
近くにあって駅は北の町外れ。駅前は商店が数軒あるだけの寂しいところでした。
強い北風にくじけて船に帰るとあとは読み残した本を探し出してひたすらラジオを聞きながら読書。
16時過ぎからようやく北西の風が弱まってきました。気圧計を見ると上昇の度合いも緩やかになっています。

明日は前線が一気に南下して高気圧が本州をすっぽりと覆う見込み。
計算通りなら風も弱まって出港することができそうです。朝のうちは弱い北から北東の風。その後、風は弱まりな
がら東あるいは南東に変わります。野島崎の東側では上げ潮流時に南西流、下げ潮流時に北東流になりますが、
野島崎に近い白浜港の満潮は午前9時30分。いつもの時間に出港すれば、野島崎を連れの潮流と追いの風に
乗って進むことができます。またタイミングがよければ洲埼も順流で越えることができるはず。多少の向かい風は
我慢。東京湾は下げ潮流になってしまいますが通いなれた道。浦賀水道航路の本船も昼前後には少なくなるので
湾口の横断にも都合の良い時間帯にかかります。勝山浮島付近まで北上して一気に久里浜の発電所を目指す
コース。あとは、観音崎を越えてホームポートまで2時間半。以前出場したこともあるレース海面。
・・・・・・・・・というように予定通りにいくと良いのですが、そうならないのがクルージングの常。
洲埼でくじければ館山に入りますか?


千葉県千倉漁港


10月19日(木) 千葉県 千倉漁港 ⇒ 横浜ベイサイドマリーナ
4時に目を覚ましてスライドハッチから顔を出してみると空には満天の星。昨日の雲はすっかりと取り払われてい
ます。ただ、北よりの風が6メートル前後。海上保安庁のテレホンサービスでは洲埼で北北東8メートル、野島崎
では北東7メートル。予想と比較して実況は1〜2メートル強めになっているようです。5時の気象庁予報では千葉
県南部が「北東の風はじめやや強く」。昨日は関東地方では、北西の最大瞬間風速18メートルが観測され「木枯
らし一号」の発表となりましたが、回復のタイミングが遅れ、午前中いっぱいこの風の影響が残ってしまいそうです。
ということは野島崎を回りこんで東京湾を北上するにはずっと真向かいの風になるということ。でも追い風で野島崎
を回り、洲崎にさしかかるころには、この風もある程度弱まるだろうと判断して出港決定。

千倉漁港の入り口の岩礁と定置網がはっきりと見えるように、いつもより20分ほど出発時間を遅らせて5時20分
出港。入港と反対に60度の進路を忠実にトレースして岩礁をかわし、定置網の手前で90度に変針して沖だし。
後は北北東の追い風にのって白浜港沖へ。満ち潮の南西流にも乗ってワンポンのメインだけで対地6ノット。
ただ北東から大きめのうねりが来てワイルドジャイブ一発。ジャイブプリペンダー代わり細引きでブームを縛り、い
ざというときリリースできるようにエンドをコクピットにリードして対応。

アッというまに白浜通過。進路を真西に変えてクオーターで快走。黒潮の影響を恐れていましたが、岸より1.5マ
イルは反流が強く、一気に対地速度は7ノットオーバー。後ろからのうねりに乗ると、船尾からは白いスプレーが上
がってサーフィングします。1時間もしないで野島崎通過。記念撮影をしていると引きっぱなしだったケンケンの後ろ
で魚が大きく跳ね上がってカツオをGET。立て続けに2匹。

一気に妻良鼻まで進み、進路を北西にとって洲崎へ。風向がやや変わって北北東8メートル。やや登り気味のアビ
ームにバウからスプレーがひっきりなしに降り注ぎます。Kasayanの頭もめがねもびっしょり。
それでも、9時には洲崎灯台通過して、いよいよ東京湾へ。予想外の快調なセーリング。

でも、思わずニッコリしてしまったKasayanの前には正面からやってくる白い波頭と10メートルの真向かいのブロー。
機帆走で一気に登りきってしまおうとしましたが、波長が船の長さとぴったりマッチして、バウが波に突き刺さっては海
水をしゃくりあげ洪水のような水がドッグハウスの上を滑ってコクピットに打ち込みます。ドジャーが無いのでもろに海
水を浴びてびしょびしょ。仕方ないので進路を館山湾の中央に向けてジグザグで切りあがることにしました。

この時、ふと気付いた事。それは、何度も走ったことのある海なのか、初めて走る海なのかで、同じ風速でも感じ方が
大きく違うという事。いままでならこのような状態に遭遇したら間違いなく予定していた避難港に入港してしまったことで
しょう。でも今日は辛いとか怖いという気持ちにはならず、むしろ船と一緒に波を越えていくことを楽しんいます。
多分、この状態を津軽海峡で経験していたら、同じ10メートルでも20メートルほどに感じて、臆病なKasayanは恐怖
で足が震えていたことでしょう。また、ひょっとして紀伊半島で周参見へ逃げ込んでしまった波はこの程度だったのかも
しれません。

館山湾の中央に進んだ後は北西に変針して富浦沖を狙い、再び北東に変針して勝山沖へ。そして一気に浦賀水道航
路横断へ。湾の奥へ進むにつれて北風も弱まってきて7メートル前後。

海上保安庁1655KHzの通報を聞くと、浦賀水道航路では、北行船南行船合わせて11隻が通過中とのこと。
横断開始はまず北行船に注意。数万トンクラスのタンカーとLNG船、そして内航船を4隻クリアー。
そしてセンターラインに沿って北上しながら今度は南行船に目を凝らし自動車船、タンカーなど5隻をクリアー。
何度も通過してもあまり気持ちの良くない7マイルです。

でも久里浜沖に来ればもう安心。久里浜沖の海鹿島を通過してこの時点で本州一周達成。あとは4月22日の出港の日
に通った道をひたすら逆走。浦賀沖、観音崎を通過して横浜ベイサイドマリーナはもう目前。
いつもはキャビンでゴロゴロしている女房もここからは珍しくコンパニオンウェイに立ってスライドハッチから顔を出して
遠くに見えるランドマークタワー、ベイブリッジを眺めています。

181日、入港80港、2616.5マイル。対水ログでは2900マイル。短いようで長い航海でしたが、まず思い出された
のは港の様子や景色ではなく、思いがけなく出会った多くの人たちの顔でした。心から歓迎してくださった地元ヨットマン
の方々、あたりまえのように手を差し伸べ受け入れてくださった漁師さん。多くの方々に助けられながらの旅。
またHPを通じて、いつも励ましていただき、そして、沢山の情報もいただきました。
自分に何ができるのか、どうあるべきなのか・・・・・・・とても考えさせられる旅でもありました。

そして、15時30分、ついに横浜ベイサイドマリーナ入港。平日にも関わらず、クラブメンバーの方々が迎えに来てくださ
っていて、当マリーナ最長老、80歳のシングルハンドヨットマンM氏が船で迎えてくださいました。

いつものデイセーリングと同じように、ビジターバースに舫いを取って今回の航海終了。

でも「Kasayanの日本一周」はまだまだ続きます。
なぜなら本州を一周しただけで、沖縄にも小笠原にも北海道のオホーツク海側にも行っていないのです。
しばらくは、身体を休め、生活設計を立て、もうちょっと大きな船に変えて準備を整え、そう遠くはないいつの日にか、また
こうして航海日誌を書く日々をスタートさせたいと思います。


房総半島南端、野島崎通過



 

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