/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/航海日誌(26)/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

【10月11日(水)〜10月17日(火)】

10月11日(水)  茨城県 那珂湊港 ⇒ 千葉県 銚子マリーナ
昨夜、20時には眠りについてしまったので、目を覚ましたのは午前2時半。すっかり目がさえてしまったので、その
まま天気図をダウンロード。高気圧の張り出しによる北東の強風は昨日まで。今日は高気圧の中心が東の海上に
ぬけて、気圧傾度の低いだらだらの気圧配置。北東の風は吹きますが、力の無い風になりそう。北東の風が最も
吹きやすく、そして北東が最も良くない風向きである鹿島灘を越えるにはまあまあの条件といえそうです。

午前5時15分、周りに止まっている游漁船が出港準備をしている中を出港。航海灯をつけてゆっくりと港外へ。
那珂湊港周辺は遠浅になっているため、押し寄せてくるうねりが増幅されて船が大きく上下。沖合い1マイルからは
目標方位167度で銚子沖まで直線で38マイル。ぼんやりとかすんで見える単調な砂浜の沖合い4マイルを、ただ
ただ前進。風は北の微風でほぼ真後ろ。メインだけの機帆走でトコトコ。変針点が無く、海岸にメリハリのない航海
はたいくつそのもの。出港30分後からケンケンを流して今夜のおかずを調達にかかりました。
まずは小ぶりのサバをGET。塩焼きにちょうど良いと思い欲を出してもう一匹と思っていると次は30センチのイナ
ダをGET。さらに立て続けにソーダガツオ3匹とシイラをGET。カツオとシイラは食べるだけアイスボックスに保存し
て、残りはリリース。

釣りに熱中していると、鹿島臨海工業地帯の煙突群が右前方に見えてきました。松林が途切れた所に突然現れた
巨大な工業地帯は、以前何かで見たサウジアラビアの石油積み出し港と一脈通ずるところがありそう。
沖合いに停泊している巨大船を避けていると、東風がやや上がってきたのでようやくジブを開きました。対水速度は
エンジンの加勢を得て6.5ノットもあるのですが、対地速度はようやく5ノット強。ここにきて黒潮の影響を受け始めた
ようです。

12時前、単調な海岸線が途切れて銚子港のタワーが見えてくるころから波が悪くなってきました。
風は5メートル前後なのですが、方向の定まらないうねりのような波が立っています。これが噂に聞く難所、銚子の口
かと思いながら犬吠埼へ。無料で停泊できて町にも近い銚子の漁港も魅力的でしたが、この波を見ると、今日のよう
に穏やかなときに通過してしまったほうが良いと判断。犬吠埼を廻りこんだ銚子マリーナを目指すことにしました。
・・・・とアマチュア無線430メガでKasayanを呼ぶ声。
航海の当初から何度もメールをいただいたE氏。銚子へ向かうにあたって会えたら良いと思いメールで示し合わせて
いた周波数をワッチしていたのですが、まさか本当に呼んでいただけるとは。おまけに驚いたことにご自分の船で犬
吠埼の沖まで迎えに来てくださいました。
大きく手を振ってE氏の船の後を追いながら何の苦労も無く銚子マリーナ入港。山口県の室津以来のヨット用の浮き
桟橋に横付け。停泊料金は一晩3780円也。オーナーズルームが自由に使えてシャワーも24時間。コインランドリー
有りの設備なら良心的価格。

停泊手続きを終えて、早速桟橋でE氏とイナダの刺身で一杯。E氏はこのHPを毎日見ていて下さって、今回の航海
の話、お互いの船の話で盛り上がり時間が経つのも忘れて気が付くともう夕方。夕食はE氏の車で銚子の街へ。
再びマリーナに戻ったときは20時になっていました。いつものようにお世話になりっぱなしのKasayan。

明日は、寒冷前線が通過するため、南西が強まる予想。次のレグは30マイル以上避難港の無い九十九里浜を通過
するので、真登りの南西強風は敬遠したいところです。あす一杯、久々のマリーナで船を洗い、舷側を綺麗に磨いて
残り少ない航海を快適に過ごす準備をしたいと思います。


迎えにきてくださったE氏  犬吠埼沖にて


10月12日(木) 千葉県 銚子マリーナ 日和待ち
久しぶりのマリーナで安心して眠りにつきましたが、いつもの癖で4時起床。アメダスをダウンロードすると、伊豆
諸島北部と房総半島南部では南西の風になっていますが、全般に弱め。でもプログノをダウンロードして解析す
ると、どう見ても南西が強まり、前線通過のタイミングで反対の北東が一気に強まる気配。南西の強まるタイミン
グが昼過ぎになればなんとか勝浦、せめて大原まで進むことができますが、万が一、読みを誤って九十九里浜
のど真ん中で真正面からの強風にぶつかったら引き返すしかありません。・・・で、もう一寝入り。

8時に起きだして朝食をとったあとは、4ヶ月ぶりにデッキ掃除。日本海、北海道、東北で灰色に汚れてしまった
デッキを丁寧にゴシゴシ。水をふんだんに使える幸せ!!!。南西の風と晴天で気温が上昇して、水仕事がむし
ろ快適なくらい。長旅の汚れで、真っ黒な水が流れ落ちていきました。
バウのアンカーウェルの中も大量の水で塩抜き。排水溝からは同じく黒い水が吹き出てきました。

そして、舫いロープの塩と脂ぬき。漁港では、水産加工の廃液のため、ロープが海水に浸かると魚の脂がこびり
つき、悪臭とぬるぬるとした手触りになってしまいます。洗剤を使って丁寧にもみ洗いをしましたが、染み込んだ
臭いと汚れは取れず、ついには桟橋でデッキブラシを使ってこする始末。
ようやく臭いが取れたところで、今度は、アンカーロープ洗い。このロープも泥と塩と脂でギトギトになっています。
こちらの掃除も一苦労。

一段落ついたところで、最後は、水線から高さ20センチまでこびりついた真っ黒な汚れの掃除。
舫いロープと同様、魚の脂と八戸の川の泥が固くこびりついていて走ったくらいではそう簡単に取れるような代
物ではありません。ウェットスーツにシュノーケルでゴシゴシ水線をこすること1時間。ようやく元の白い船に戻り
ました。さらにキール付近の点検。キールの一番下にフジツボがやや付着していたので、塗料を落とさないよ
うに割り箸の腹を使って掃除。シンクからの排水穴にもフジツボが付着していたので同じく割り箸で掻き落として
作業終了。気が付くと、もう午後。
Kasayanが船の作業中、女房はマリーナのコインランドリーで今まで洗濯していなかったものをまとめて洗濯。
綺麗になった船の上には洗濯物がセールのようにたなびいていました。

午後1時、銚子では、南西の風ですが、そよそよと気持ちよい風が吹いているだけ。ひょっとして出港できたかも
しれない?と海上保安庁のテレホンサービスを聞くと、勝浦で南西9メートル。ということはブローで13メートル前
後は吹いていることになります。もし出発していたら、そろそろ勝浦に差し掛かるところですから、逆の潮と真向か
いの風で相当苦しんでいたはず。まあ、良かったか。

夕方、徒歩20分の銚子電鉄の外川駅まで買い物を兼ねて散歩。外川の漁港は犬吠崎のすぐ南にある小さな漁
港で、昔NHK朝の連ドラ「澪つくし」の舞台になったところ。漁港から急な坂を登って漁村の中を通っていくと、
小さな駅があります。以前3年ほど千葉市に住んだことのあるKasayanですが、同じ千葉県とは思えないほど静
かで田舎の雰囲気を漂わせていました。

17時半帰艇。風は既に北東に回っています。船に入ってものの5分。ゴーッという音とともに突然北東の強風が
吹き始めました。いよいよ前線通過。すぐに保安庁テレホンサービスを聞くと、犬吠埼では北北東の風18メートル。
ブローでは余裕で20メートルを越えています。恐るべし犬吠埼。マリーナの中でも船がヒールしてポンツーンに
押し付けられるので、大きなフェンダーをセットして増し舫い。
前線通過の読みを誤ると本当に恐ろしいことになります。前線通過の日は動かないに限ると心に誓うKasayanで
した。

明日も午前中はこの北東が残る見込み。追い風といっても15メートルの追い風と一晩吹き荒れた後の波はさすが
にゴメンです。明日もこの快適なマリーナで過ごす予定。そうなると、週末にホームポート帰港は難しくなってきました。
待っていてくださるクラブの方々には申し分ありませんが、もうしばらく房総半島を堪能してから帰港することになり
そうです。


もやいとアンカーロープを桟橋に広げ、船の上は洗濯物だらけ


10月13日(金) 千葉県 銚子マリーナ 日和待ち
13日の金曜日。昨夕から吹き始めた北東の強風は午前中いっぱい吹き荒れ、朝のテレホンサービスでも北北東
の風15メートル。波4メートル、うねり3メートル。勿論、日和待ち。

昨日、マリーナならではのやるべきことは全て終了していたので、キャビンでのんびりと読書。この強風では、洗濯
物を干すことすらできません。

11時、銚子電鉄外川駅まで歩いて、銚子の街の見物へ。一両のワンマン電車で20分。駅前から広い道路が港ま
で一直線に伸びた大きな町ですが、人通りが少なくなにか寂しい街。およそ10分で利根川に沿った銚子港へ。
北東の風が利根川河口から吹き付けていて、かなり奥まった船だまりでも波が立っています。利根川河口の銚子
の口では、きっと三角波が立って、まさに難所の様相をみせていることでしょう。
1時間ほど散策しましたが、特に目を引くものもなく、 昼食にラーメンを食べて再び銚子電鉄で犬吠駅まで。

犬吠駅からは徒歩10分の犬吠埼灯台へ。以前、車で訪れたことがありますが、ヨットで沖を通過したあとに訪れる
灯台は、また一段と感慨深いものがあります。女房と二人、セルフタイマーで記念撮影。
そして、沖を走る本船がうねりに大きく上下しながら走る様をぼんやりと眺めていました。

マリーナまで3キロ。ゆっくりとウォーキング。途中、小さな店でシラス干購入。この店の漁船で漁をして、店で釜あげ
したシラス干。マリーナに着く頃にはようやく北東の風が収まりはじめていましたが、空からはポツポツと雨粒が。

明日朝には、南下した前線がやや北上して、ちょうど銚子付近にかかります。
北東の強風が吹きやすい状態はかわらず、気象庁の予報では、千葉県北東部「北東の風のちやや強く。波うねり
2メートル」。朝の実況で判断して出港できるのなら出港したいと思いますが、明後日のほうがより良い状況。
おまけに明日は、能登半島七尾でお世話になったN氏が銚子マリーナのレースのためこのマリーナに訪れるとの
こと。週末帰港はほぼ不可能なので、この際N氏にお会いして、明後日出港というパターンが濃厚?


10月14日(土) 千葉県 銚子マリーナ 日和待ち
朝目を覚ますと雲ひとつ無い晴天。でも、GPVデータは、昨夜と同様に昼前後から北東の風が強まることを示して
います。2回連続、同じ計算結果が出ているのでまずその通りになるだろうと判断して予定通りの日和待ち。

午前中は、昨夜オーナーズルームで知り合った銚子マリーナに停泊しているトローラーのオーナーの船を見学。
ご自分でエアコンからレーダー、ソーラーパネル等を取り付けている自作派。有名なグランドバンクスに似た船で、
ウッディーな味のある船。それだけに自作の物を取り付けるには、その持ち味を損なわないような工夫が必要に
なるのですが、コストをかけずに手の込んだ仕事がしてあって、思わず見入ってしまいました。
船の改造には、人の仕事を盗むのが一番!!

感心しながら船に帰ると、一昨日お世話になったE氏のご友人のS氏来艇。名刺をお渡ししてご挨拶。
S氏が自艇に戻られると、今度は、銚子マリーナで唯一の本格的レーサーのオーナーY氏来艇。銚子から小名浜
間のレースシーンについて拝聴。Y氏はこのエリアのレースを率先して盛り上げようとしている方。これから銚子
マリーナが外洋ヨットレースの一つの窓口となることを祈ります。

そして、昼食後、今度は、7月に能登半島七尾でお世話になったN氏来艇。午前中お話をしたY氏の船で明日の
レースに参加するため、わざわざ在住の神戸からこられたほどのヨット好き。3ヶ月ぶりの再会。
一緒にY氏の船に行ってビールで乾杯。ヨットの世界は広いようでなかなか狭いもの。

今日は、多くの方とお会いし、出会いばかりの一日でしたが、いよいよ明日は出港予定。
こうして日誌を書いている間もゴーゴーと北東の風が吹いていますが、この風も明日朝には弱まる見込み。
若干波とうねりは残りますが、勝浦までは進むことができそうです。
明日朝の実況で最終判断予定。避難港の無い九十九里浜を無事通過できるよう祈りながら早めに休むといたします。


10月15日(日) 千葉県 銚子マリーナ ⇒ 千葉県 勝浦港
目を覚ますと、まだ深夜0時。外に出てみると、頭上の満月がまるで昼のようにあたりを照らしています。九十九里
浜の一番北側にある屏風ヶ浦の断崖が月明かりに見渡すことができ、その上に立っている煙突から吐き出される
煙が緩やかに南へとたなびいているのが分かります。まずまずの風。朝の出港を確信して再び床へ。

マリーナからの出港はアンカーを揚げる必要もなく、フェンダーも舫いも必要最小限で済むので非常に楽。
おまけに月が防波堤を照らしてくれているので、余裕で日の出30分前の5時15分出港。
今日は、横長の高気圧に覆われていますが、気圧傾度はゆるく昨日まで強く吹き出していた北東の風も5メートル
前後に弱まっています。出港前に確認したレーダーアメダスでは、四国沖に前線の雲。夕方には関東南部に進ん
でくる見込み。

マリーナを出て屏風ヶ浦を右手に見ながら九十九里浜の南の端、大原を目指します。関東に戻って一番感じるのが
遊漁船が増えたこと。日曜日の今日は、つり人を乗せた游漁船が飯岡方面から大挙して犬吠埼方面へ走り去って
行きます。

屏風ヶ浦を過ぎるといよいよ砂浜が延々と続く九十九里浜。遠浅になっているので、岸よりはうねりが高くなっている
と判断して沖合い8マイル前後を直線に南下。黒潮の影響が心配されますが、海上保安庁の通報では、九十九里浜
沖10マイル以内は南流の範囲。左後ろから東よりの風を受け、同じ方向からのうねりにも押されて快調に走ります。

大原まで直線32マイル。暇つぶしに早速ケンケンを流すとものの10分でシイラをGET。シイラも食べ飽きてしまった
のでキャッチアンドリリース。次は宗田カツオ。これもキャッチアンドリリース。銚子マリーナで聞いた話だと、このあた
りではメジマグロが捕れるとのこと。頭の中はマグロ、マグロ!!!。でも釣れるのはシイラと宗田カツオだけ。
結局九十九里浜通過の5時間に、シイラ9匹、宗田カツオ3匹。計12匹GETの大漁でしたが、全てリリースしてしま
いました。

九十九里浜の南の端は、北側の屏風ヶ浦と同様な絶壁。屏風ヶ浦が赤い崖なのと対照的な白い崖。崖を回りこむと
大原漁港が見えてきます。風も波も良いのでそのまま勝浦へ。御宿漁港の前を通過して八幡岬を通過。
八幡岬の沖でいよいよ黒潮の影響が出て対地速度4ノット。エンジンを足しても対地速度は4.5ノット。
海上保安庁の通報では、黒潮本流が勝浦沖ギリギリに接近していたので、まさにその影響?
一気に鴨川まで進むかと考えはじめていた気持ちも萎えて、八幡岬を大きく回りこんで勝浦入港13時45分。
ガラガラに空いている岸壁に横付けしてビールを一缶飲んだところで雨が降り出しました。
前線の北東進がやや早くなったようです。勝浦入港で正解。

遅い昼飯を食べて、女房はいつもの探検へ。Kasayanは船の点検・・・をしなくてはならないのですが、バースに横に
なったとたん深い眠りに落ちてしまいました。
気が付くともう外は真っ暗。すでに18時前。デジカメで停泊状況の写真を撮っているのですが、それも不可能。
慌てて燃料の補給とエンジン、リギンの点検。

夕食は、千葉県南部名産「さんが焼き」。アジとネギを味噌でたたいたものをこんがりと焼いた素朴な魚肉ハンバーグ。
ご当地では、さんが焼きのペースト状のものをスーパーで購入することができます。

夕食後は、徒歩10分の銭湯「松の湯」へ。船に帰ると、すでに20時を回っていました。

明日朝には前線が南下して大陸からは高気圧が張り出してきます。今降っている雨も朝には止む見込み。
でも強い高気圧からの吹き出しの風で明日の波・うねりの予報は1.5メートル後2.5メートル。北東の風がやや強め。
朝の状況で、朝市にいって勝浦一日見物になるか、小湊へ進んで日蓮上人誕生の地「誕生寺」を散策するか、それとも
千倉まで進むか考えたいと思います。


港の写真が撮れなくて・・・・・・・・・
九十九里浜沖のメスシイラ。すぐに逃がしてあげました。


10月16日(月) 千葉県 勝浦港 ⇒ 千葉県 小湊漁港
出港モードで起床4時。キャビンから顔を出すと、しとしとと降る雨。関東南部は、高気圧が張り出してもシアライン
といって局地的な前線の雲が出来やすく、この雲は一般的な雨雲とは違って東から西へ動くという複雑な動きを
します。関東南部に高気圧の南側の前線の雲が掛かっていると思われますが、雲が北東から南西へと流れている
ので、前線の雲と同時にシアラインによる雲も形成されているはずです。ならば、この雨、予報では朝のうちまで
ということでしたが、結構しぶといかもしれません。

ひとまずいつもの5時過ぎ出港は取りやめて女房と二人で勝浦名物の朝市へ。少々時間が早すぎたのか、道端で
はおばちゃん達が雨をしのぐ露店のテントを準備しているところ。朝の漁港の様子は見ているので、朝一番の魚は
まだ並んでいないはず。でも昨日取れたての野菜が格安で並び始めていました。

1時間ほどで船に戻ってパンとコーヒーの簡単な朝食。雨は霧雨に変わりましたが、空は相変わらず真っ黒な重い
雲に覆われています。アメダスを見ると、風は北東3〜6メートル。アメダスの降水量では、降水を観測していません。
アメダスの観測可能範囲以下の雨になっているということ。
予報通りこの雨が止むと、次には高気圧からの吹き出しの北東風が強まることが予想されます。
今日、このまま勝浦で過ごしてもよいのですが、すでに名物の朝市も見てしまったので、どこまで進むかが思案のし
どころ。海上保安庁のテレホンサービスでは、勝浦灯台で北北東の風5メートル。野島崎も北北東の風3メートル。
野島崎までは快適な風。でも大島では北東の風12メートル。洲崎も北北東の風11メートル。
野島崎を回り込むことはできますが、洲埼では、真向かいの風が10メートル以上も吹いています。
また、テレホンサービスによると野島崎の天気は雨。野島崎の手前の千倉まで進もうかという気持ちもありましたが、
ここまで来て雨はゴメン。
そこで、たった8.5マイル先の小湊まで進んで、日蓮上人誕生の地、誕生寺と、鯛が保護されていて、まるで池の鯉
のように観光船の周りに集まってくるという鯛の浦を見物することにしました。

勝浦出港7時35分。勝浦湾を出て後ろを見ると、ちょうど勝浦の上空に雨雲がかかって結構強い雨が降り始めた模
様。このタイミングで出港しなければ、くじけて勝浦で一日を送ってしまっただろうなと思いながら浜行川岬を通過して
小湊のある内浦湾入り口の入道ヶ埼へ。昨日同様黒潮の影響を受けて対地速度4.5ノット。相変わらず霧雨が降っ
ているので、わずか8.5マイルにセールを揚げるのも面倒になって機走で走り早くも9時20分小湊漁港入港。
北側と南側の二つに分かれている漁港のうち、観光船の発着場のある南側の船だまりの北側の工事船岸壁になん
なく横付けすることができました。
港の前と横には巨大観光ホテルが立っていてまさに観光地の港。

こうして南房総をクルージングするのは初めてですが、今まで走ってきた海と比較してもかなり美しく、そして港も多く
走りがいのある海。これからも時々足を延ばしてみたいと思いましたが、ふと思い出したのが船検のこと。
東京湾の限定沿海では勝浦付近まで行くことができないのです。横浜から60マイル弱で大島などとほとんど変わら
ないのに、ここまで来るには臨時検査を受けるか、高い沿海の検査を受けねばならないのです。今回の沿海検査が
切れてしまったら・・・・・・・・・・。まったく不思議な制度です。

早速、誕生寺観光。平日ですが、おばちゃん観光軍団で一杯。そのまま小湊の町を散策しましたが、ものの一時間で
すべてを終了してしまうほどの規模でした。
船のすぐ前の観光鮮魚売り場「ウオポート」で鯨の刺身を購入。宮城県の鮎川と同じツチクジラですが、鮎川より若干
安くなっています。南房総も数少ない捕鯨基地のあるところ。

船に帰ると厚い雲がようやく薄雲に変わり、北東の風が吹き始め、港の周りの山の木々を大きく揺らしています。
まあよかったか?

午後は、このところずっとサボっていた「今日のKasayan週間版」をアップ。

晩飯はツチクジラの刺身で一杯。この楽しみももうすぐ終わると思うと寂しくなります。
明日の予報では始め北東がやや強め。でも弱まる方向なので、実況次第では東京湾へ入ることも可能です。
風の神様に微笑んでもらってなんとか野島崎、洲埼をこえられると良いのですが。
でも・・・・・・・・・・千倉もいいな・・・・・・・・・・?


小湊漁港


10月17日(火) 千葉県 小湊漁港 ⇒ 千葉県 千倉漁港
ひょっとしたら今日はいよいよ東京湾・・・・・・と思う気持ちがそうさせたのか午前3時起床。でもなにやら風が山の
木々を揺らす音がします。港内で北の風5メートル前後。関東南部に弱い低圧部が形成され東の海上を進んでい
るため、ミニミニ西高東低の気圧配置になって北よりあるいは北西の風になっています。でも、この低圧部が東へ
遠ざかり、西の気圧の谷が接近するにつれて風は緩み、東よりに変わるはず。海上保安庁のテレホンサービスで
は、伊豆大島で北東9メートル、洲崎北北西10メートル、野島崎北西7メートル。洲崎の真向かいはかなり辛いの
で、出港時間を7時に遅らせて風の弱まるタイミングで館山を狙う作戦にしてキャビンでコーヒータイム。

ところが、隣の作業台船に横付けしていた漁船の船長が、船を着けるのでどいてくれないかと言ってきました。
ハテ?昨日ここは漁船が来ないとの話を聞いていたのだけれど・・・思ってあたりを見回すと、クーラーボックスを肩
にかついだつり人が一人。どうやらこのつり人を乗せるために足場の悪い台船から船を移動したいということらしい。
漁船が漁のために漁港をおもいっきり使うのなら、使わせていただいている身としては、なにはともあれ船をどけま
すが、たった一人のつり人を乗せるためにどけとは・・・・・・・。活気の無い市場を見れば、この漁港がすでに漁を投
げ出して即現金収入のある游漁船中心になってしまっているのがわかります。やっぱり関東に帰ってしまったんだな
と思いながら、文句をいっても仕方が無いので船を出したKasayan。どうせ、舫いを解いたのならとそのまま出港5
時30分。女房がキャビンから顔を出して「小湊、良かったけれど、後味悪い!!」。

風は北北西7メートル。右斜め後ろから風を受けて対水速度6ノットオーバー。ブローで9メートルほどの風が来ると
一気に7ノット以上まで速度が上がります。潮にさからっているものの対地速度も6ノットをキープ。一時間もしないで
鴨川にさしかかると山の切れ目から北西の風10メートル前後。吹き出しの風ですが、沖に3マイル以上出している
ので、横からの波がスプレーになって真横から頭に降りかかります。久しぶりに潮気のある走り。
引いていたケンケンにはシイラが掛かっていますが、取り外す余裕もなく、そのままひきずったまま。

和田沖にさしかかると波が落ち着いて一目散に野島崎の東の白浜へ。まだ7時半。相変わらず対地速度は6ノット。
思いもかけず、早めに出港してしまったので、気になるのは野島崎を廻りこんだあとの洲埼の風。走りながらテレホ
ンサービスを聞くと、洲崎は北北西の風11メートル。早すぎる!!!!このまま行けばあと3時間で洲崎に差し掛か
ります。ここまで来て洲埼で真向かいの風と波にどったんばったんするのは避けたいところ。
目の前の千倉へ入港して2時間も待てば風も収まると判断して、一旦千倉に入港することにしました。

千倉港の入り口は岩礁地帯と定置網があって入港が難しいところ。まず、港の北にある白いアンテナ塔の根元にあ
る二つの赤い標識が縦に重なる位置になるように進路を調整しながら定置網をさけて岸よりに接近。進路295度。
そして、左に見える港口にある導灯の光の色が白く見える進路240度で港へ進入。左にずれると緑、右にずれると
赤に見えます。和歌山県の周参見港と同じですが、左側の岩礁の上で白い波が立っていてかなり血圧が上がりまし
た。港の南側にあるサーウェストヨットクラブの迫地の隣の岸壁に横付け。
この港もごたぶんにもれず、動きそうな漁船がほとんどなく、市場もまったく活気がありません。

停泊してものの30分もしないうちに漁師の身なりをした老人が一人自転車でやってきました。
岸壁の使用料3000円とのこと。11時くらいには出て行くかもしれないとの話をしましたが、一旦停泊してしまったら
支払わねばならないと言います。東京湾付近では、漁港に停泊すると3000円ほど漁協に徴収されることがよくあり
ますが、たった3時間で3000円?。シャワーやその他の設備の整ったマリーナならいざしらず、公衆便所が一つあ
るだけで、工事の砂ホコリの舞う岸壁に横付けしただけで・・・・・・・・・・。よく話を聞けば、一旦3000円を払えば、2
〜3日はそのままで良いとのこと。この先にある妻良漁港などでは、スターンアンカーで船を留めただけで一泊500
0円を毎日徴収されるとのことですが、それに比べればマシか。小湊に続いて千倉でもガッカリ。ここは関東!!!
瀬戸内海方面ではマリーナに停泊したって停泊料はこんなにしません。Kasayanはある意味で地元海域の人間なの
で、こういった事情も知っていますが、知らずに停泊した船や避難した船からもこうやって金を徴収するのなら、二度
とこの港へ入港する気にはなれないでしょう。千倉は、漁業不振の打開策として、プレジャーボートの係留を受け入れ
始めているとの話は以前から聞いています。その港でもこの状態。一般に言われるようにプレジャーボートのマナー
の悪さなどの問題も大きいと思いますが、なにかやるせない心境。
日本周航をしている船のほとんどが関東海域を避けて、伊豆大島方面に進んでしまうのが分かります。

こんなことがあってドッと疲れてしまったKasayan。11時までに風が落ちたら出港しようと思っていましたが、そのまま
千倉で一泊することにしました。ホームポートまで50マイルを切っているので、あとはワンレグも余裕で可能。
午後は、2時間も昼寝をして、徒歩20分の民宿「ひまわり荘」で入浴500円也。

今夜は気圧の谷の影響で雨。明日は一時的に冬型の気圧配置になって北西の風が強め。
明後日には早くも回復するので、明日一日は千倉で残りわずかのクルージングの日を過ごしたいと思います。


千倉漁港の入り口 

 


 

航海日誌週別目次に戻る

 

表紙に戻る