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【9月13日(水)〜9月19日(火)】

9月13日(水)  青森県 八戸港 日和待ち
今朝も朝から雨模様。9日から降り始めた雨は延々5日目になりました。
秋雨前線は相変わらず頭の上。レーダーアメダスで雨雲の様子を見ても、男鹿半島から下北半島にかけて雨雲
の帯がかかっています。風は相変わらず東から北東。
一方、台風14号は人の歩く速度でゆっくりと北上。数値予報の結果がようやく安定してきて、どうやら朝鮮半島の
付け根に向かって進み、大陸の縁にそって北東進する可能性が高くなってきました。

今日もひたすら日和を待つKasayan。キャビンの中は、梅雨時と同じじめじめ状態。上流から流れてくる水の水温
が低いようで、喫水付近から下は、いたるところで結露。もともとそれほど結露する船ではないのですが、床板をめ
くると、一面に大粒の水滴がついています。まるで水が外からにじみ出ているよう。昨日までシャフトのPSSの下に
水がたまって、水漏れしているのかと心配していましたが、よく観察してみると結露した水がPSSの下に流れて給っ
てしまったことが分かりました。女房は、新聞紙をいたるところに貼り付けて結露対策。
Kasayanもキャビンの壁を雑巾で拭き掃除。気が付くと、吐く息が白く見えています。八戸はもうすっかり秋の様相。

午前中、雨の止み間にKasayan一人で昼のおかずの買出しに、いつもの朝市へ。カンパチの刺身大皿一杯で200
円。大きなカレイの塩焼き、それも目の前で炭火焼きしたもの200円にて購入。たった400円で二人分の贅沢な昼飯
のおかずをGET。生活するにはまったくをもって良いところです。
帰り道、むつ湊の駅前で献血車がとまっていたので400ccを献血。このところの怠惰な生活でやや太り始めたような
ので、約400グラムの減量?献血記念のタオルまでお土産に持って帰艇。

午後になって、くもり空になったので、女房と二人で八戸の中心地までウォーキング。
女房は、美容院で髪をカット。Kasayanは100円ショップで電池等の消耗品を購入し、さらに、どんどん読み終えてしま
う本を古本屋で調達。帰りは雨が降り出したのでバスに乗車。

夕食は船でささやかにチゲ鍋。八戸では、もう鍋物が美味く感じられるくらいの肌寒さです。

夕食を終えたところで、お隣の漁師グループが風呂から帰ってきたので、毎日恒例の天気予報検討会開催。
実は横抱きをさせてもらってから、朝と晩の2回、ダウンロードした天気図をプリントアウトしてお隣の漁船に届けて
いたのですが、台風が接近したここ数日は、天気図を囲んでまるで検討会のようになっています。
お世話になりっぱなしのKasayanにできる唯一のお返し。

明日は、前線が津軽海峡付近まで北上して、一時的に晴天が訪れそうですが、その後には台風14号が温帯低気圧に
なって寒冷前線を伴い近づいてくる予想。どうやらこの前線が通過するまではまだまだ前進不可能。
今日、たまたまラジオで、江戸時代に青森の米を太平洋経由(東回り)で江戸に運ぶには30日から40日かかったという
話を聞きました。それを考えれば、この台風シーズンにこれだけの足止めはあたりまえ・・・・・・かも。
台風崩れの低気圧があまり猛威を振るわないことを祈るKasayanです。


9月14日(木) 青森県 八戸港 日和待ち
今朝は、久しぶりの青空。秋雨前線がやや北上して、太平洋高気圧が張り出してきたための、つかの間の晴天。
ただ、真向かいの南風がやや強く、前線の位置、高気圧の張り出し次第でころころと変わりやすい不安定な状態。
早いところ、台風14号が通り過ぎて、一時的とはいえしっかりとした晴天が訪れて欲しいのですが、台風は九州の
西でのたりのたり。週間天気図では、台風が北海道方面を通過するのが19日前後。
そろそろ八戸も飽きてきたというのが本音。このつかの間の晴天に一気に宮古まで進むべきかという誘惑もありま
すが、久慈への足止めの可能性がある以上、ここはぐっとこらえて本命のチャンスを待つことにしました。
東海でここ数年来の大雨が降るような状態ということは、東北北部のこの状況もここ数年来という異常な状況なんだ
と思えば、長期の日和待ちも納得することができます。でも19日前後に本命のチャンスがくるかと言えば、それも変
動の要素十分。待てば海路の日和あり・・・・か。

相変わらず、午前中は読書。毎日文庫本一冊を読み終えるペース。船が重くなるので、出港までにはある程度処分
しなくてはと思うほど本が増え始めています。おとなりの漁船は、カジキのはえ縄の準備に余念がありません。
女房が梨をむいて差し入れ。
日中は、強い日差しに久しぶりの半袖。ソーラーパネルの充電もバッチリです。

Kasayanは、また近くの測候所へ。今日はいつも天気図をダウンロードしているサイトの調子が悪いらしく、六コマ
と呼ばれている週間天気図を見ることができず、ちょっと拝見に。
前回同様、とても親切に天気図を見せてくれました。本来コピーサービスをしていないのですが、六コマの天気図を
コピーしていただき、周辺に位置するアメダスの風の表示傾向について教えてくださいました。さすが国民の気象庁。

あとは夕方、徒歩15分のスーパーと銭湯に行っただけで早くも今日一日が終わり。
八戸滞在ももう半月。時化も辛いけど、日和待ちの辛さもそろそろ出てきました。
明日の晴天に隣の突棒漁の漁船は一日だけ出港の予定。早起きして船を移動させなくちゃ。


9月15日(金) 青森県 八戸港 日和待ち
台風14号が片付かないうちに台風17号が発生してしまいました。それも超高速で明後日には東海地方に上陸
の恐れ。ちょうどその頃14号も温帯低気圧になって沿海州方面を北上。あきれて笑ってしまうくらいの状況です。
ここ八戸は、昨日の予報では晴れるはずでしたが、相変わらずの東風が止まず、一日中、メガネに水滴が付く
ような霧に覆われていました。朝、出漁する予定だったお隣の突棒漁船も出漁取りやめ。漁師さんも「こんなことは
そうめったに無いね〜。もう倒産。夜逃げだね」とあきらめ顔。

昨日の今日のKasayanをそのままコピーペーストしたくなるような読書の一日。
それでも、少しは運動せねばと午後、八戸港を見渡せる防波堤の先まで散歩。今停泊している川筋では風がほとん
と吹き込みませんが、八戸港の沖は東風が8メートル前後。この付近で東風が吹くと、波が高くなるため、防波堤に
は白波が砕けています。また、風が強い割には霧が濃く、視程は1マイル前後。沖の霧はさらに濃いようです。
長袖でも寒い上に霧で服はしっとりと湿ってしまったので、早々に退散。
敬老の日でお休みのむつ湊の市場を回って船に帰りました。

お隣の漁船では、ずっと作業をしていたはえ縄の準備を終えて暇そうにタバコを吹かしています。
漁師さん二人とデッキに座って四方山話。北海道で鰹が採れるようになり、同じ漁場ではカジキ、マカジキの魚影が
見えているようなので、台風が通り過ぎたら北海道まで行くとのこと。また、イカも北海道で採れ始めたので、八戸付近
のイカ釣漁船も北海道へ向かうとのこと。おかげで、漁船の数が減って八戸で一番安全と言われているこの川筋も混
まなくて済みそうです。

午後5時のアデスタイム。漁師さんが見守る中、予報と台風進路図のダウンロード。午後3時発表の進路図で17号が
東海方面に上陸することが分かり、漁師さんも頭を抱えて「どーしたもんか」。笑いしか出てきませんでした。
当然、明日も南風が強く、波高は2.5メートル。引き続き霧も深くなりそうです。

数値予報計算結果を見ると、14号に吹き込む湿った空気の流れを、さらに17号がポンプとして手助けするため、東海
から伊豆諸島方面、そして関東東部にかけては、明日の夜からあさってにかけて大雨になりそうです。
まったく信じられないような異常気象。久しぶりにテレビをつけてニュースを見ていると、もと職場の同僚が大雨を伝える
ニュース項目に出演していました。このところの異常気象で顔が少しやつれている様子。こうして日和待ちしているのも
辛いですが、仕事をしていても辛いんだろうな・・・・・・・この天気。台風見舞いに塩ウニでも送るとしますか。

晩飯時、お隣の漁師さんから取れたての戻り鰹の刺身を皿一杯頂きました。脂がのっていてこれまた絶品。
天気図一式と簡単な解説で鰹をGET。この関係もまんざら悪くはないな・・・・・・と思ったらちょっと不純かな?


9月16日(土) 青森県 八戸港 日和待ち
八戸は朝から抜けるような青空。でも太平洋高気圧の縁を吹き上がる南風がやや強めに吹いています。
このため、午前中から気温がぐんぐんと上って真夏に逆戻り。朝一番で天気図をダウンロードすると、明日17日
夜には、日本海を進む台風14号崩れの低気圧と、台風17号の挟み撃ちになる予想。でも幸い、直撃は防げま
した。運がよければそれほど強く風が吹かずに済むかもしれませんが、油断禁物。
朝一番で隣2艘の漁船と天気検討会。すっかりあきらめモードで皆笑いしか出てきません。
朝、宮古を出港した漁船からの連絡では、沖は時化で引き返したとのこと。漁師さんも、これほど長い日和待ちは
初めてとのことでした。まさに異常気象。

午前一番で、近くの南部せんべい工場へ。かつての職場へ台風と大雨見舞いのせんべい送付。小さな工場です
が、南部せんべいにポピュラーなゴマに加えて、サキイカを載せたイカセンベイ。エビを入れたイカセンベイなどが
あってバラエティー豊富。おまけに壊れせんべいをサービスにつけてくれました。

そのまま、徒歩15分のスーパーへ昼の買い物。ご自由にお持ちくださいの氷をちょっと多めに頂いて帰艇。

船に帰って、明日の強風に備えて増し舫いをとっていると、お隣の漁師さんがあまりの手持ち無沙汰と暑さに上半
身裸で暇つぶしの来艇。いつものようにデッキに腰掛けてお茶を飲みながらの世間話。デジカメの話になったので、
デジカメで漁師さんの船を写真に撮ってA4にプリントアウトしてプレゼント。大喜びで船に持ち帰り、お礼にまたまた
鰹の切り身を頂いてしまいました。

午後3時には、早々に銭湯へ。風呂に浸かったあとは、番台の前でビン牛乳を飲みながらテレビでオリンピック観戦。
オリンピック開催中には横浜へ帰れると思っていたのですが、こうまで遅くなるとは・・・・・・・。
船に帰ると、どの漁船もテレビをつけてオリンピックを観戦しているようでした。

夕方、もう一度天気図をダウンロード。台風の進路と接近のタイミングは変わらず。ただ、週間天気図を見ると、
19日から3〜4日ほどは、いよいよ秋の移動性高気圧が日本を覆う見込み。もう少し我慢すれば、前進を開始する
ことが出来そうです。なにか先が見えてきたような気持ち。
明日から明後日にかけて、台風通過・・・・・・今度は無事故でふんばるぞ!!!!
でも、これから女子柔道の表彰式だけは見ておこう。


漁師さんにプレゼントした写真。舳先と見張り台にいるのが
漁師さんの息子二人。若き後継者はシャイで茶髪のジャニーズ系。
二人の前途に幸あれ。


9月17日(日) 青森県 八戸港 日和待ち
八戸は、朝から曇天。ただ、南から湿った空気が流れ込んでムシムシとしています。
台風17号は、伊豆諸島付近を通過して明日の朝には三陸沖を北上する見込み。今日一日は、大きな影響は
出ない見込みですが、夜から明日午前中にかけては西よりの風が強まる予想。
今日日中に台風対策をしておく必要があります。

午前中は、いつものように読書と漁師さんとの四方山話。漁師さんのシャイな息子たちもKasayanの船になつ
いてコクピットで一緒にお茶会。若き後継者は今時の茶髪の青年。ピアスまでしてとてもオシャレ(古いかな?)
ですが、とても純朴そのものでした。

午後からは、小雨が降ったり止んだりの不安定な天気。お隣の船が水場のある岸壁まで水くみに出かけるとの
ことで久しぶりに船を移動。スピードメーターの水車にゴミがついているらしく速度が表示されず。
帰ってきた漁船に再び横付けをした後、スピードメーターを取り外しての掃除。船底に貫通しているセンサーを
抜く必要があるので、手早くセンサーを取り外してダミーの取り付けましたが、噴出した水はバケツ半杯。何度
やってもあまり気持ちの良くない作業です。
センサーは潜るたびに掃除をしていたのですが、長い日和待ちの間に小さなフジツボやゴミが巻きついていま
した。

次は台風対策。舫いをしっかりとダブルでとって、ブームをロープでしっかりと固定。予備の大型フェンダーをポ
ンプで膨らませて、漁船の間に追加セット。今回は、舫いをウインチにリードしています。

夕方、2杯隣の稲荷丸さんの提案で、宴会をすることに。めったにない長期の日和待ちのうっぷんを晴らす会を
やろうということになって、Kasayanも含めてご近所4艘、突棒漁船の春日丸さん、イカ釣漁船の東海丸さんなど
の船が持ち寄りの宴会。脂の沢山のった鰹の刺身、タタキをメインに、なんと鯨のソテーまで。三陸は鯨漁でも
有名なところですが、ここで食べることができるとは思ってもいませんでした。
ビール、焼酎、日本酒、にワイン。まあよく飲むはよく食うは・・・・・・・・・。
まさにうっぷんを晴らす会となりました。

午後11時。西の微風は吹いていますが、ほとんど無風。台風は東よりに進み、暴風域が東北地方にかかる恐れ
は無くなっていますが、嵐の前に静けさ?このまま朝を迎えて欲しいと祈るKasayanです。

 
夕方見えた虹                             うっぷんを晴らす会 春日丸船頭(左)話が面白い!!


9月18日(月) 青森県 八戸港 日和待ち
台風は足早に三陸沖を通過して北海道の東へ。西の風が強く、近くの丘の上の木々が大きく揺れていますが、
この川沿いはまったく風が吹かず、まさに十和田湖。地元警戒船の船長の話に従ってこの場所に避難したの
は、大正解。台風が目の前を通過しているにも関わらず、湿ったバースマットを外に乾すことができるくらいです。

午前中は、コクピットロッカーの整理と乾燥。ロッカー内の壁面が結露してその水がPSSの下に流れ込むほど
なので、この晴天に拭き掃除。沢山詰まった荷物を全部外へ出してロッカーに全身を押し込んで、乾いた雑巾
でゴシゴシ。すぐに雑巾がびっしょりになるくらいの結露。ついでに、ウォーターロックを綺麗に拭いてCRC666
を吹きかけ、溶接部分に対水グリースを塗って錆びの対策。エンジンの後ろ側も綺麗に掃除。
バッテリーの液面OK。オイルの量と色OK。ベルトOK。漏水、オイル漏れ無し。エアーフィルター良し。
カップリングゴム剥離無し、カップリングネジ緩み無し。エンジンマウントゴム剥離無し。ギアオイル量、色OK。

20日使わなかったオートパイロットも接続して動作チェック。さらにコネクターに接点復活材を塗布。
VHF、アマチュア430、144MHz、HF通信機動作OK。予備ハンディーGPS動作OK。

リギン関連は目の届く部分の腐蝕、クラック等全て無し。動作部分にCRC666、グリース塗布。ハリヤードの磨れ
無し。アンカーウェルを開いてアンカーロープの虫干し乾燥。

何度も点検してきましたが、ここでもう一度再点検。出港したい気持ちが大きく沸きあがってきました。

夕食を終えて女房がコインランドリーに行っている間に2艘隣の漁師さん一家3名が来艇。
船頭である父親と奥さん、そして船頭見習の長男。酒を飲むと暴れるので一切酒は断っているという父親の要望で
コーヒーとお茶で歓談。暴れられたらGoldenWistaria号は沈没するだろうなと思われる豪快で筋骨隆々な突棒漁師。
一家で旅をして操業しているので、家に帰るのは一年に2〜3ヶ月くらい。一年のほとんどをメカジキ、マカジキを追っ
て北は北海道から南は千葉の銚子まで移動しているとのこと。漁師の生活の話、水揚げと収入の話など、いままで
あまり良く知らなかった漁師の生活の一旦を、船頭、そして家族の視点から教えてもらうことができました。

明日は、風が収まるものの、波はまだ高め。漁師の観天望気によれば、明日は沖へ出れば出るほど北西が強めに
吹いているはずとのこと。数値予報のデータでは、八戸付近はちょうど強風の境目。観天望気もあなどれません。
また、海上保安庁の通報では、今日の夕方で尻屋崎では波4メートル、うねり3メートル。明日、この波が一気に収まる
可能性は少ないので、出港確率20パーセント。明日、実況次第で昼前に久慈へ向かっても良いかと思いますが、ここ
まで日和を待ったので、慌てずもう一日様子を見て、明後日大本命の晴天に、南の潮に乗って、55マイル先の宮古を
狙うつもりです。


9月19日(火) 青森県 八戸港 ⇒ 岩手県 久慈港
午前4時半。隣の漁船のエンジン音で起床。と同時に目覚ましが鳴り響き思わず飛び起きたKasayan。
お隣の突棒漁船春日丸の突然の出港。昨日、漁に出るか否か悩みに悩んでいた船頭は出漁を決意したようで
す。慌てて船を放して見送り。10日間に渡って横抱きさせていただいたお礼もそこそこに手を振って別れました。
いったんさらに内側に停泊していた稲荷丸に横抱き。実況次第で出港するつもりだったので、ドキドキしながらア
メダス風向風速と実況天気図をダウンロード。風は南西、吹き出しの微風。移動性高気圧に覆われて天気は上々。
あとは波だけ。5時の気象庁予報では、青森県三八上北地方は1.5メートル。岩手県沿岸北部は2メートル。
まあまあの波。あとはうねりだけが心配ですが、防波堤の外へ行ってあまり高いようならば引き返せば良いし、途
中、八木港や種市など避難港もあるので、いざとなれば入港すればよいと判断して6時45分出港。
宴会を開いていただいたり、一緒にラーメンを食べにいったりと大変お世話になった稲荷丸の手すりにお礼の置手
紙を貼り付けました。

八戸港内は出る船、入る船でそれはそれは賑やか。100トンクラスの巻網漁船や小型のイカ釣漁船が港内といえ
ども全速力。広い港内ですが、まさに大時化状態。時折バウが波に突っ込んでコクピットまで波が打ち込みます。
こちらもエンジン回転数3000回転まで上げて全速力で港外へ脱出。港外の工事現場では、10日前に一度横抱き
させていただいた警戒船がまさに警戒中。オレンジのライフジャケットを着た船長がブリッジから出てきて手を振って
くれました。

鮫角の灯台を大きく離して南下開始。風は南西〜西。ややのぼり気味のアビームで帆走。潮が1ノット程度で押して
くれるので、対地速度は6ノットをキープ。久々のクルージングはやっぱり良い。ずっと停泊していた船も何か生き生
きとしているように見えます。船はやっぱり走らなくちゃ。
種差海岸の緑の大地を右手に見ながら一路久慈へ。刺し網がいたるところにあってスキーの大回転のように蛇行。
うねりは1〜2メートル程度ですが、周期が長いのでエレベーターのように上下するだけで特に問題なし。
大きなトロール船は、うねりで上下しながらバウが大きくガブッています。小型船有利の波。

午前9時半、早くも八木港沖通過。携帯が鳴って置手紙をしてきた稲荷丸さんから電話。うねりと波、風の様子を伝
えるとこれから出漁するとのこと。入港もKasayanと同じ久慈港。アマチュア無線の430MHzをお互いに聴取しなが
らの航海になりました。速度は相変わらず落ちず、時折6ノット近くまでスピードが出ます。このままなら、宮古も狙え
るかも知れない。

久慈湾まであと6マイルのところからうねりが高くなってきました。向かいの南からのうねり。周期が短くなって、船が
上下する頻度が高くなって乗り心地の悪いこと。おまけに風は南東にシフト。南へ流れる潮に向かって南風が吹くの
で、うねりの上に小刻みな悪い波が立ってますます走りにくいのなんの。おまけに真登り。宮古へ行こうという欲も消
え失せて早く久慈に入港すべくエンジン回転数2800回転。久慈湾北側に大きく張り出した大作根という暗礁を大き
くかわして、その先にある定置網をさらに大きくまわり、真東から久慈港へアプローチ。
12時、停泊しているイカ釣漁船の後ろの小さなスペースに横付け完了。

久しぶりの航海でストレス解消しましたが、
久々の緊張にどっと疲れて、バースに寝転びながら、僚船とカジキの情報をやり取りする無線に聞き耳を立てていま
した。「メカ(メカジキ)、06度2分、8度4分いねーべさ」「あ〜いたいたとおもったらミンク鯨でねーの」「マンボウは見
たけどちゃっこいちゃっこい」。ただ、聞いているだけでもわくわくするような会話。
「ヨットさ〜ん(Kasayanはこう呼ばれている)だめだね〜。もう倒産ですわ。油も買えんです」とお呼びがかかり、マイク
を握りながら励ますKasayan。

午後3時。エンジン点検と、給油をしていると、イカ釣漁船の船長がやってきてイカを15ハイ頂きました。

贅沢ながら新鮮なイカに少々飽きがきているKasayan。今回は、そのほとんどを開いて一夜干しにしました。
アラの部分は八戸で作り方を教えていただいた「イカのアラ汁」に。それでも余ったイカは塩辛に。
キャビン中イカ臭いGoldenWistaria号。

夕方、稲荷丸さんから無線連絡。カジキが一匹も取れなかったとのこと。長い日和待ちのあとのこの状況に声も沈み
気味。酒を飲まない船長のために、入港したら羊羹でも持って励ましに行くとしますか。


久慈港のイカ釣漁船とライフラインに干したイカ

 


 

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