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【9月6日(水)〜9月12日(火)】

9月6日(水)  青森県 八戸港 日和待ち
前線上を進む低気圧のため、朝から雨。南東の風が弱くやや霧も出ていますが、視程は1マイル程度。
無論、出港はしませんが、日課になっている午前4時半の天気チェック。

台風14号に加えて、台風15号、16号まで発生してしまいました。南の海上は今年一番の台風のデパート。
こうなると、数値予報の計算結果も大きく変動することが多く、これから台風がどのように動くかはまったく検討
もつきません。気象庁の発表する予想進路も台風をあまり大きく動かしてはおらず、上空の気圧の谷の進み具
合で、突然大幅に速度を上げた形で発表してくる可能性があります。
しかし、向こう2〜3日は直接の影響は無いと判断。

それでは東北北部の天気はと言えば、これまた非常に複雑。太平洋側に秋雨前線が停滞。今日雨を降らせて
いる秋雨前線は、一旦東の海上に遠ざかる傾向ですが、北海道の北を通過する低気圧から伸びる寒冷前線が
日本海を南下していて、明日の日中に東北を通過する予想。気象庁予報から判断すると、気象庁としては、東北
北部を通過する前線の影響を小さく評価しているようで、天気の崩れは小さく、風もさほど強まらないと考えている
ようです。でも寒冷前線の通過には変わりは無く、前線の後ろにはこの季節にしては強い寒気があって、過小評
価は怪我のもとになりそう。日本付近は、大陸の高気圧と太平洋高気圧にはさまれて、基本的に気圧の谷の状態。
予報も紙一重で外れてしまいそうです。

ということで、台風進路が定まらないうちに、50マイル先の宮古港までの間で足止めを食らうことを極力恐れる
Kasayanは、この3つの台風のうち、問題の14号と15号の進路が安定して計算され、なおかつ大陸の高気圧が
移動してくる気配が見える来週中ごろまでは、このまま八戸でじっと様子をうかがうことにしました。
荒天帆走の技術をしっかりと体に叩き込んでいれば、多少の風が吹きたっても宮古まで進めるのでしょうが・・・。
技量の無さがつくづくいやになります。

八戸での長期生活を覚悟して、霧雨の中、舫いの点検に外へ出ると、ちょうど抱かせてもらっている警戒船の船長
が、孫を連れて船の見回りに来たところ。昔の漁師仲間から採れたてのイカをもらったとのことで、2ハイを分けて
頂きました。このところすっかりイカのさばき方に慣れてしまったKasayan。手際よく開いてコリコリのイカソーメンに。
贅沢な朝食を、頂きます!!!!というところで携帯が鳴りました。
女房の両親から。実は昨夕、暇になったからひょっとして夜行で八戸まで行くかもしれないと電話があったのです。
夕方だったので、まさか夜行でくるはずは無いだろうと思っていたのですが、「今、むつ湊の駅」とのこと。
イカソーメンを冷蔵庫に入れて、女房と駅まで迎えに行き、船に取って返して、作りたてのイカソーメンで久々大人数
の食事となりました。出港いらい5ヶ月近く。やはり心配で顔を見たかったようです。
約2時間ほど、話をしたあと、早々に青森県の観光に出かけていきました。

両親を送ったあと、駅の近くの本屋へ。KAZI誌にこのHPの紹介が掲載されたとのことで、ドキドキしながら立ち読み
すると、「あ〜出てる!!!」早速購入。これから「今日のKasayan」を書くにも緊張しそう。入港後、疲れて書いている
ときは、書きっぱなしで、誤字脱字の見直しもしないでアップしていたのですが・・・・・・・・・。
また、KAZI誌には「のんびり」と書いて有りましたが、Kasayanとしてはこれでも自分の技量に合った最高の速度で進
んでいるので、恥ずかしいやら、情けないやら。長距離航海者とも書かれていましたが、毎日の動きはたった30マイル
から40マイル。おまけにちょっと心配になればすぐに日和待ち。

午後から、初めて八戸の街の中心地まで探検に。八戸は八戸駅が中心地ではなく本八戸の駅が中心というややこしい
所。さらに本当の中心地は、本八戸の駅から徒歩15分。デパートが建つ都会を歩きましたが、函館のような観光地と
言うわけでもなくすぐに飽きてしまったKasayan。女房も、「物を買わないならつまらないね〜」。晩のおかずを買って早々
に船に引き返しました。

つつましく、船でハンバーグの夕食。これから銭湯へいって後は寝るだけ。
しばらくはGoldenWistaria号の航海記も、函館と同様、観光記になってしまいそうです。


むつ湊駅前の市場、こんな店が何軒も立ち並びとても安い!!

9月7日(木) 青森県 八戸港 日和待ち
予定通りの日和待ち。恒例のように、警戒船の船長に手を振って見送り、さらに巻網船の出港を見送って朝の
行事は終わり。おじやと、イカの醤油漬け(350円)で、シンプルでも八戸らしい朝食を終え、ラジオを聞きながら
早くも朝寝。こんなことでいいのかしら?

昼前から、台風進路の検討。
いよいよ数値予報の計算結果に大きな変化が見られ始めました。あとから発生した台風15号から日本に接近。
あさって夕方以降、鹿児島付近に接近または上陸、日本海に抜ける公算。その後については、多少の変動が
あるものの、Kasayanの考えでは、前線に乗って北上した後、男鹿半島付近に再上陸。下北半島付近を通過し
て再び太平洋に抜ける予想。最悪の場合、八戸の頭上を抜けることになりそうです。
再上陸の位置が大きくずれて欲しいな〜と思いつつも、対策方法を検討。
現在、停泊している船だまりは、先日の風、15〜20メートルの経験から考えて、多分大丈夫。でも、さらに安全
を考えると、もっと奥に入って東に面した丘の裏側にあたる川奥に入ったほうが良いと判断。
明日にでも移動して、水深を確認するとともに、良い場所を確保しておくことにしました。

ならば、もう一度、川沿いを偵察しておこうと、でかけようとしたとき、先日、強風の中、鮫地区から移動するときに
舫いをとってくれた漁師さんが現れました。船に呼んでお茶を飲みながら相談。なんとその漁師さんは偵察しようと
していた川沿いの、それも狙っていた位置に船を置いているとのこと。「あそこは、いままでどんな台風が来ても
大丈夫。うちの船のところに来て横抱きしな」とのありがたいお言葉。今日は、穏やかな天気でしたが、この漁師さん
もKasayan同様に、前線通過を恐れて今日は出漁しなかったとのこと。お互い日和待ちの暇つぶしに世間話。
昔潜水夫をしていて75メートルまで潜っていたこと。今は、30メートルまで潜ってウニを一日500キロも採ること。
久慈港では台風は避けきれないこと・・・・・・・・・。Kasayanにとって、初めて聞く潜りのプロの世界の話を聞かせて
いただきました。そこに、隣の巻網漁船の船主さんも加わって、巻網の話。網の直径が500メートルになること。
いわしを採って煮干にする方法のお話しを拝聴。お二人ともヨットに大変興味があるようなので、エンジンからセール
から風に向かって走る方法などを説明しました。
あっというまに午後の時間は流れて夕方。船乗りが時化の時に四方山話をして過ごすことをスピンナヤーンという
のだそうですが、まさにそんな時間でした。

日が落ちる前に先ほど教えていただいた移動先の船を確認しておこうと、女房と散歩がてらの偵察。
まさに最高の位置にその船は停泊していました。また、船の乾舷の高さがGoldenWistaria号とほぼ同じ。船が揺れ
てもお互いに干渉してトラブルを起こすこともなさそうです。あとは水深だけが心配。
その船からやや川下も偵察。すると、宮古港から来ているカジキの突くきん棒漁の漁船が停泊していました。
これから向かう宮古の情報を得ようと、一声。宮古のマリーナの入港の方法。マリーナに停泊できなかった場合の
停泊場所まで丁寧に教えてくださいました。また、ヨットで来ていることを話すと、この川の停泊場所の水深について
心配してくれて、自分の船に抱けば良いとのありがたいお言葉までいただきました。
さらに驚いたことに、昨日、北海道の釧路を出港したときに、あの有名な「どんたく」が入港しているのを見たとの
話をしてくれました。どんたくが紋別を先月21日に出港したことを紋別のヨットマンから頂いたメールで知っていまし
たが、どうやら釧路で台風の通過を待っているようです。世の中狭いな・・・と思うと同時に、奥尻で引き返したのは
正解だったと確信しました。どんたくより10日遅れで進んでいたので、もしあのまま前進していたら今ごろはまだ網
走かせいぜい根室あたりだったかも。

明日の段取りを考えながら帰艇しようと歩いていると、後ろから来た車がクラクション。
先ほどの漁師さん。船まで車に載せていただき、さらには、「鍋を持ってきて・・・・」
八戸名物「いちご煮」を鍋一杯いただきました。この「いちご煮」はアワビとウニだけを塩で煮てシソをいれただけの
シンプルな汁物。観光みやげ用の缶詰は見たことがあるのですが、ウニやアワビを採る漁師が作る本物のいちご
煮は初めて。早速食べてみると、ウニやアワビが沢山入って贅沢の極み。塩だけで味付けをした汁にはダシが染
み出して、なんともいえない磯の味。お金では味わうことのできない素晴らしい味を堪能させていただきました。

お世話になりっぱなし。お礼をしたくてもできない辛さ。海では本当に助け合い。でも、これから先、自分が受け入れる
立場になって何ができるのか・・・・・。

明日は、早めの台風体制。しっかり段取りを踏んで、今度はのんびりと強風が過ぎ去るのを待てるようにしなくては。


ウニとアワビたっぷりの「いちご煮」


9月8日(金) 青森県 八戸港 日和待ち
台風の動向がまたまたおかしくなりました。9日に鹿児島に接近すると思われた15号のコースが大きくスイングして
台湾方面に向かいはじめました。大陸からの高気圧に進路を阻まれ、14号との相互作用を起こし、藤原の効果と呼
ばれる二つの台風が反時計回りに進むという現象を起こし始めたと思われます。
日本付近の谷に乗らなかったのは幸いでしたが、あとは残る14号の進路が心配です。場合によっては太平洋側を
北東進することも考えられますから、まだまだ油断はできません。
昨日は、数値予報のデータが安定して進路をはじき出し始めたと思いましたが、まだまだ不安定。
一方、東北、北海道方面には、北に中心を持つ高気圧が移動してきて、北東または東の風が吹き始めました。
ヤマセが吹いては前進できず。念のため、今日はさらに安全な川奥の船だまりへ移動しておくことにしました。

午前4時。巻網漁船が出漁するので、漁船が引いている小船がGoldenWistaria号にぶつからないか心配で、早起き。
コクピットを見るとビニールの包みが一つ。あけてみると、煮干が沢山。昨日一緒にお茶を飲んだ巻網船の船主さんが
置いていってくれたようです。出漁する巻網船団に大きく手をふって見送り。
この煮干、そのまま食べてもまったく苦味が無く、香ばしい上物。昨日聞いた話では、巻網で採ったいわしを船主さん
の家で自ら煮干にしているとのこと。まさに自家製の煮干をいただいてしまいました。

午前8時、行き交う大型漁船の引き波がおさまったところで舫いを解いて移動開始。その前に、抱かせていただいて
いた警戒船にご挨拶ができなかったので、しかたなく置手紙を残してきました。

昨日、目処をつけておいた川をさかのぼると、水深が急速に浅くなって2メートル前後。干潮なので、2メートル以上の
水深を保っていれば、GoldenWistaria号の停泊は可能。測深器とにらめっこで2ノットで川をさかのぼっていると、
昨日、声をかけておいた宮古からの突棒漁船の船長が大きく手を振ってくれました。漁船の手前で水深2.4メー
トル。ここが限界と、そのまま横抱きさせていただきました。

突棒漁の漁船は、八戸と襟裳岬のちょうど中間あたりまで行って操業するため、台風にはことのほか敏感になって
いて、Kasayan同様、今回の台風デパートが閉店するまでここで待機しているとのこと。
まずは、船に招いてお茶を飲みながら雑談。ヨットのキャビンに大変興味があるらしく、外から見たよりずっと広いと
感心されていました。また、Kasayanも、モリでカジキを突いて採る勇壮な突棒漁の話を大変興味深く聞かせてもらい
ました。夏場は、6月に宮古を出港して、釧路から八戸の間の海域でカジキを採り、盆に家にも帰らずに船で生活。
10月にようやく宮古へ帰るとのこと。船の舳先で重い大きなモリを持ってカジキを追いかけ、体一つで400キロもの
カジキにモリを突き立てる船長の体は、まさに筋肉隆々。オリンピックの槍投げ選手もたじたじのたくましさでした。

午後、船長が知り合いのイカ釣漁船からイカをもらってきておすそ分けをいただき、またまたKasayanはイカを5ハイも
さばくことに。あまりの量の多さに、透き通ったイカの半分を、贅沢にも塩辛にしてしまいました。これで酒の肴には欠く
事がありません。

夕方、天気図をダウンロードするついでに、海上保安庁の海面水温図をダウンロードしてプリントアウト。
天気図一式と、海面水温図、海流図を突棒漁船の船長にお返し。
そのまま、晩御飯におよばれして、女房が作ったご飯とおかずを持参の持ち寄りパーティーになりました。突棒漁船の
デッキにゴザを広げ、さらに隣の漁船の船長も一緒に車座になって賑やかな晩御飯。
夫婦船の奥さんが作った料理はまさに漁師の料理。イカの内臓を使ったかき玉汁にイカの刺身。さらにカジキの尻尾や
えら、そしてヒレなどの「あら」を煮付けた料理は本当の絶品。魚屋では絶対に買うことも出来ないし、料理屋でもそう簡
単には食べられない代物。一生の思い出になりました。

台風の動きが定まらず、かなりの長期戦が予想されますが、このまま台風が全部西へ進んでしまうことを祈りつつ、
これから銭湯へ行こうと思います。


夜のGoldenWistaria号と突棒漁船


9月9日(土) 青森県 八戸港 日和待ち
台風14号は、ゆっくりと発達しながら、北上。15号は、藤原の効果によって南下。
一気に動き出すのはまだまだ3日ほど先になりそうです。

一方、東北北部は、秋雨前線が停滞。前線上に低気圧が発生して今夜には津軽海峡を抜ける見込み。
朝から、どんよりとした雲に覆われて、午後から雨が降り出す予想。レーダーアメダスで雨雲の様子を見ると、す
でに岩手県南部まで強い雨雲が北上しています。
さらに、低気圧の通過にともなって、夕方以降東風も強まりそう。まだまだ出港できる状況にはなりません。

また台風14号がポンプの役割をして、太平洋高気圧の縁沿いに湿った空気を日本に送り込むため、各地で大雨。
ラジオを聞いていると気象庁からは大雨に関する情報まで発表されたことを告げていました。

それでも5時に起床。朝食前に停泊場所から徒歩5分の朝市へ。道端にゴザを広げて野菜やら魚を売っている
お婆さんでいっぱい。女房の両親にも海産物をクール宅急便で発送。さらに晩御飯にウニ丼をするべく牛乳ビン
一本分の塩ウニを購入しました。破格の1000円也。

船に戻って、昨日作っておいたイカの塩辛で朝食。女房はコインランドリーへ洗濯に。Kasayanは芝刈りではなく
このところサボっていた「今日のKasayan」週間版を作成してアップ。
そこへ、横抱きさせていただいている突棒漁船の船長登場。日和待ちの暇つぶし。キャビンでコーヒーを飲みな
がらパソコンで天気図を取るデモンストレーション。気象ファックスのように時間に縛られず、必要な天気図だけを
好きな時にプリントできることにとても驚かれていました。

次は、Kasayanが突棒漁船の見学。使いやすいレイアウトのブリッジ、機関室にある6気筒ターボ付きの大型デ
ィーゼルエンジン、4畳ほどの生活スペースなど、始めてみる漁船の内部に見入ってしまいました。この突棒漁船
は珍しい夫婦舟。船長がモリでカジキを突くときには、奥さんが操船するというもの。5ヶ月も各地の港を渡りあるく
ため、生活スペースもまるで小さなアパートのよう。平らな床にカーペットを敷いて小さなちゃぶ台まで置いてあり、
長期の船旅を実感させます。こうして旅をしながら魚を採る生活もあるのだということを知り、妙な感動を覚えました。

午後からは大粒の雨。キャビンの中でひたすら読書。夕方からは南東の風が強まってゴーという音を立てています。
先日の強風でクリートを飛ばしているのでちょっと不安になるKasayan。でも今回は「八戸の十和田湖」と言ってもよい
程の安全な川筋に停泊しています。風はあっても波は無し。ここなら大雨でよほど増水でもしない限りは大丈夫なはず。
それでも一応舫いを点検して、舫いはウィンチに巻きつけておきました。

明日は、午前中まで雨。明後日も雨の降りやすい状況。南に下がった台風15号も再び東へ進路を変える可能性がでて
来ています。そうなると、勢力を増して14号を追う形で日本を目指すことだってあるかもしれません。
まったく台風のもてあそばれているようです。


突棒漁船のブリッジ・・・・・一度漁に連れて行ってもらいたいな・・・・


9月10日(日) 青森県 八戸港 日和待ち
気圧は昨日から1021ヘクトパスカルのまま。綺麗な前線帯が形成されていて、今日は、一日中雨。
昨日の予報では、一時的に前線が弱まって午後からくもり空になるはずでしたが、結果的には前線が弱まらず、
まるで梅雨のような一日でした。ただ午前中は、東風のヤマセが強かったものの午後には弱まり強風、波浪注意
報は解除。濃霧注意報だけが残っています。

一方、台風14号は、相変わらずゆっくりと北上。午後発表の00Z(午前9時を初期時間とした数値予報)でもあさ
って夜にようやく沖縄本島付近に進む予想。週間予報支援図によれば、そのまま西にそれて黄海か朝鮮半島付
近に進むことになっていますが、計算結果はまったくの不安定。台風が沖縄に迫り、気象庁からは、毎時間台風
の現在位置が発表され、3時間に一度予想進路が発表されていますが、気象庁も本音のところ、48時間以降は
まったく予想ができないといったところでしょう。
元の職場の同僚達が長引く台風体制で疲れた顔をしているのが目に浮かびます。

Kasayanも今日一日、キャビンの中に缶詰。朝ご飯に「塩ウニまぜご飯」を食べたあとはひたすら読書。
ラジオだけがキャビンに響いていました。

午後、一時的に雨が止んだタイミングで徒歩10分の八戸測候所へ。ちょうど三八上北地方の注意報が切り替わ
り、バタバタしているところを頼み込んで、GPVの風データの閲覧。データのある限りヤマセの東風が吹きつづける
見込み。さらに先の予報を見ようと思いましたが、ごたぶんに漏れず測候所には必要最小限のデータしか送られて
おらず、あさって以降のデータはまったく無い状態。財政削減とはいえ、気象データをここまで削ってよいのかと思う
ほどのデータの少なさ。これだったらインターネットのほうがよっぽどデータがあると思われます。
今後、各地の測候所が次々と閉鎖されて、地方気象台だけが残ることになるのでしょう。アメダスやひまわりなどの
自動観測や、コンピューターによる数値予報の発達によって、金のかかる人間を減らそうとする理由もわかりますが、
こうして各地の空の下を航海していると、やはり人の目にかなうものは無いと実感します。
各地の測候所がこれからも地域の天気を見る眼として、そして地域の開かれた天気相談の場として存続することを
願わずにはいられませんでした。
当直職員がようやく落ち着いたところで歓談。御前崎でもそうでしたが、週末の当直はたった一人。仕事が大変な旨
嘆いていました。でも、地元のデータを毎日見ている人とあれこれ相談できるのはとても心強く、また伺うことを伝えて
退散。

明日も前線は同じ位置に停滞して雨模様の予想。台風14号と連動した雨模様なのでどちらも片付かなければとても
前進できる状況にはなりません。ちょうど一昨年、那須で大雨があって那珂川が氾濫したときと同じ状態。
今回は、東海地方を中心に大雨になりそうです。静岡方面ではどこかで土砂災害が起こっても不思議では無いほど
の大雨。美しかった伊豆の安良里、遠州灘の西風が止むのを待っていた清水や御前崎。災害がなければよいので
すが。


雨の八戸 突棒漁船のに抱かせてもらっている状態


9月11日(月) 青森県 八戸港 日和待ち
台風14号の動きはまるで亀のように遅く、また台風15号も一旦南に下がったものの、Uターンしてまた北上する
気配まで見せてきました。短期予報よりもさらに広い範囲の数値予報計算結果(週間予報に使われるデータ)では、
昨日、今日と14号は西にずれて大陸方面に進む方向で計算されるようになりましたが、これも15号とのからみで
いまいち信頼性に欠けています。またまたお手上げという状態。

また、秋雨前線も台風14号とセットになって大活躍。東海方面では、昨日の計算通りの大雨となっているようですが、
こちら東北方面でもいたって活発。今日の八戸は、一日中どんよりとした雲に覆われて日中は霧雨が降ったり止ん
だり。日の落ちるころからしっかりとした雨。東北南部の福島県には大雨洪水警報。青森を除いた東北各地にも大雨
洪水注意報が発表されています。
東よりの風も止まず、明日、明後日と、津軽海峡の東に低気圧が発生して波の高い状態が続きそう。

今日、ここ八戸からそれほど遠くない北海道浦河の沖で、大型底引き網漁船が転覆。14人が行方不明になりました。
さらに、これから通過する予定の岩手県の沿岸でも小型刺し網漁船が転覆。老練の漁師が遺体で発見されました。
これらの情報に横抱きさせていただいている突棒漁船も沈痛な面持ち。今日も出漁を見合わせています。
当然、Kasayanも予定通りの日和待ち。これで八戸生活も12日目にとなります。函館の長かった日々と同じ長さ。

午前中の雨が上がったチャンスに近くの本屋へいって本を買い込み、またまたキャビンで読書の一日。
運動不足の時間が流れていきます。女房は、運動を兼ねて、傘をさして徒歩15分のスーパーへ買い物へ。
なにもしないままに一日が過ぎてしまいました。

明日も一日雨の予想。引き続き太平洋側を中心に大雨が続きそうですが幸い青森県は大雨にはならない見込み。
でも、上流の雨量監視はまめに行って、停泊している川の増水だけには気をつけたいと思っています。
そして、どうせ日和待ちが続くのなら、これまで集めてきた港の入港方法、停泊位置、水場の位置、買い物の場所、
銭湯の位置と定休日などの情報をそろそろHP用にまとめ始めようと思います。


9月12日(火) 青森県 八戸港 日和待ち
昨夜は、北東の風が吹いて、風がマストを鳴らしていましたが、ここはまったく波が立たず、まさに十和田湖。
ただ、上流で雨が降っているので、川は茶色に濁って、ゴミが沢山流れてきます。もし台風がきた場合、風につ
いては問題なさそうですが、川の増水が心配です。完璧な停泊地はなかなか無いものです。

午前中は、ひたすら雨。沖は波が3メートル。周囲の漁船もほとんど動きは無し。
お隣の突棒漁船も「まったく商売上がったり」と空を見つめています。

Kasayanも昨日に引き続きキャビンに缶詰。ボチボチと今航海で得た停泊場所の情報をまとめはじめました。
すでに入港した港は68港。全ての港で停泊状況を様々な角度からデジカメで撮り、可能な場合には港の入り口
の様子も撮ったので、写真の量は膨大。まずは写真の整理から始めました。
でも写真を見たときの常で、すでに4ヶ月以上も前の写真を見ると、つい懐かしく見入ってしまい作業になりません。
毎日毎日空を見上げながら、あっというまに時間が過ぎていましたが、こうしてみると、本当に沢山の港に入るととも
に多くの方々にご迷惑をおかけし、またお世話になってきたと実感しました。
港の写真を見ると、それぞれの港の様子、走ってきた海の様子がありありと目に浮かびますが、それと同時にそこ
で会った多くの方々の顔も目に浮かびます。航海は同時に人との出会いでした。

午後はまた読書。このところ日差しに恵まれず、太陽電池の充電が少ないようなので、エンジンを回して充電。
このところ走っていないので、船底の汚れが気になります。速度計は無事作動。川の流れがあるので0.5ノットを
示しています。

夕方、隣の漁船から「お椀をもって来て」の声。イカのアラで作った味噌汁をいただきました。
イカの足の付け根、イカのモツと大根だけの味噌汁は生まれて初めて食べましたが、これが絶品。
是非明日にでも作り方を教えていただくつもり。

週間天気図を見ると、この先、まだまだチャンスは訪れそうにもありません。
台風が日本海あるいは大陸沿いを北上。それとともに温帯低気圧化しますが、ちょうどメイストームのような
状況が予想されます。波も風も落ち着くのは19日前後になるかも。また、明日、明後日も秋雨前線は頭上に停滞。
9月は台風の通過待ちが多くなると思っていましたが、これほどまでに足止めを食らうとはまったく予想もしていません
でした。でも昔の北前船が20日前後も日和待ちしたのはあたりまえ。昔の船頭のように芸者を上げて遊ぶわけには
いきませんが、明日の雨の止み間にもう一度、測候所へ行ってみようと思います。


イカのアラ汁  見た目は悪いけれど絶品

 


 

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