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【8月23日(水)〜8月29日(火)】

8月23日(水)  函館港 休日兼日和待ち
昨夜、渡島北部では、大雨洪水警報が発表されるほどのまとまった雨になりましたが、函館は午前3時頃に
ぱらぱらと雨が降っただけ。今日の日中も時折不穏な雲がかかってきたものの、夏の強い日差しが雲間から
照り付け、暑い一日になりました。午前中の津軽海峡は、全般に南東の風。でも弱い前線位相が抜けた午後
からは、南西の風に変わってきました。東風だと雲に隠れる函館山も午後からは綺麗に顔を出しています。
海上保安庁の通報では、龍飛崎、大間崎では10メートル前後と、やや強めに吹いていますが、明日は太平洋
高気圧が張り出して、この風も弱まってくる見込み。また、この状況、3日くらいは続きそうです。

待てば海路の日和有り。明日朝の実況で最終判断をして、いよいよ北海道を後にして、下北半島大畑港へ
向かうつもり。

・・・・・・で、今日は、予定通り、出港前日の航海モードへ戻るためのリハビリの一日。
きっちりと午前4時起床で天気図解析。江差の南西に強い雨雲のエコー。洗濯はちょつと心配。
午前中は、キャビンで航海計画の見直し。津軽海峡の潮をもう一度検討してGPSのインプットを再確認。
エンジン周りももう一度点検、さらに舫いやフェンダーもガチガチの停泊体制から出港しやすい体制に変更。

一仕事終えて、遅い朝食兼昼食。
昨日買っておいた毛蟹が登場。食べる前に記念撮影をしようと思っていたのですが、準備完了とともに二人の手
が伸びて、あっというまに足先だけ残して見るも無残な姿に。
残ったカニの足先は、キッチン鋏で綺麗に開いて、味噌仕立てのカニ汁に。そして、ご飯はイクラ丼。
最後に北海道の味覚三昧をすることになりました。

午後は、買い置きの食料の買い足しを行ってのんびりと2時間昼寝。
夕方から、青空が広がって、さわやかな秋の空が広がってきました。
夕方5時、本日最後の天気図解析と予報チェックですが、特に力が入ります。
午前中の予報では、朝方まで南西がやや強めに残る予報でしたが、午後5時の予報では朝から穏やかな予報に
変わっていて、津軽海峡の波も1.5メートルのち1メートル。久々に津軽海峡の波も1メートルまで落ちていました。
このまま、計算通りの素晴らしい天候が続いてくれるように祈るのみ。

今日は、このあと銭湯に行って、軽い夕食を食べて眠るだけ。
いざ出港となると、いっそ本州が涼しくなるで北海道に残りたいような気持ちになりましたが、津軽海峡は一週間後
くらいから秋雨前線が停滞するような気配。ヤマセが吹いては状況はまた悪くなってしまいます。
今、根室方面ではいよいよ秋刀魚のシーズンが始まっているようですが、秋刀魚が南下するちょっと前を三陸を満喫
しながら、ゆっくりと南下したいと思います。


イクラ丼とカニ汁  北海道さよならの味覚!!!になるかな?

8月24日(木) 北海道 函館港 ⇒ 青森県 大畑港
昨夜は、珍しく無風の函館。南西の風が入ったためちょっと蒸し暑く、また、久しぶりの出港を控えてなかなか寝付かれな
かったKasayan。それでも午前4時起床。

プログノ(数値予報天気図)を見ると、昨日と同様、北海道南部は南から太平洋高気圧に覆われて穏やかな晴天。
高気圧からの吹きだしの風が高気圧の張り出しに従って南西から西へ変わる予想。
ただ風の強さが微妙なところで、北海道の北にある低気圧(低圧部)の強さと動き次第で吹きだしの風もやや強めになるた
め、見極めが難しいところ。そこでCWW(サイバーウェザーワールド 潟Eェザーニューズ)のHPにある釣予報の風の予想
を参考にすることにしました。このデータ、気象庁が発表する20キロメッシュのGPVデータというコンピューターの生データ
を、さらに5キロメッシュに計算したもの。地形の効果もある程度考慮されていて悩んだときには以外と使える代物。
単なる釣予報といってあなどれません。・・・・・・・・・・で、風の強さは、午前9時以降7〜10メートルと、ちょっと強めになる予想。
ただ、西または南西ならば、アビームで走れるのでリーフをすればなんとか逃げ切れると判断。

5時、気象庁の予報を確認。北海道渡島地方は南西の風。青森県下北地方は南西の風のち西の風。特に強く吹くとは
電文に書かれていません。等圧線の混み具合からみれば妥当なところ。CWW通り吹きだしが9時前後なら急いで出港してし
まうに限ります。5時20分、11日間滞在した函館出港。隣のヨットのY氏が起きてきて、舫いを解くのを手伝ってくれました。
スターンから取っていた舫いは11日間海水に浸かっていてすっかり海苔臭くなっています。改めて長期滞在を実感。
じっと見送ってくれているY氏に大きく手を振って一路、函館港外へ。

函館山周辺は、1メートル前後の南の微風。でも吹きだしに備えてワンポンのメインで機帆走。
今日は、まず、函館山を通過した後、できるだけ沖だしして反流を避け、一気に津軽海峡の東流に乗って波の悪い大間崎を
避けて東へ進み、目的地の大畑港がほぼ真南になるところで南下し再び反流の影響を避ける作戦。

函館山を過ぎてしばらくは反流につかまったものの、予定のコースより約1マイル沖に出たところで海流に乗って対地速度
8ノット。汐首を過ぎるころからはますます潮が早くなり、対地速度は新記録の9.9ノット。
Y氏にドライブに連れて行ってもらった恵山岬をバックに記念撮影。
遠くに本州最北端の大間崎弁天島の灯台を見ながらあっというまに大畑港の北10マイルへ到着。
進路をいきなり70度も曲げて大畑へ。

大畑へ近づくにつれて反流の影響が出始めて対地速度は5ノット前後。でもCWWの予報どおり、西風が吹き始め、やがて
10メートル前後まで。横からの風なのでアビームで速力アップ。対水速度は6.5ノットキープで対地速度も5ノットを切りません。
ただ、潮に逆らう風になったため、波が悪く、ローリングが辛い。オートパイロットも蛇行開始。
10メートル程度の風ならば、ホームポート周辺ではちょっと面倒だなくらいで走れるのですが、潮が恐ろしくきつく、まったく初め
て体験する場所では、かなり怖い。快走しているにも関わらず、今航海、久々にちょっと足が震えている自分に気づきました。
でも女房に悟られないように、ライフラインにもたれかかってアクビをしてみせるKasayan。

大畑港に近づくにつれて、下北半島の山のブランケットになって西風が弱まり、12時前に大畑港入港。
海上保安庁のテレホンサービスを聞くと大間崎西南西の風13メートル。恐るべし本州最北端大間崎。

船にいた漁師さんに声をかけて、市場のまん前の防波堤に横付け。Kasayanは寝不足と疲れで2時間の昼寝。
女房はその間、早速、探検。銭湯2軒、スーパー2軒、いずれも徒歩10分を見つけてきました。

夕方、ご飯の支度をはじめていると、船の前に車が止まってダンディーなおっさん。「どこから?どこへ?」のいつもの質問。
大畑一本釣り協議会という名刺とともに、ご当地では「ふくらぎ」と呼ぶブリの子供をドサッとデッキの上に投げてくれました。
おかげさまで晩御飯はふくらぎの刺身とカマ焼きのフルコース。

夕飯後は、銭湯へ。
暗い漁港に帰ると、漁港の片隅から鐘の音。消防車にしてはサイレンが無いし・・・・・・・・・・・。昨日Y氏が、下北半島の
マリーナで鈴の音が聞こえる、という怪談めいた話をしてくれたのを思い出してしまいました。
そういえば、大畑港は遠くにあの恐山が見えるのです。おー夏の怪談!!!!!

明日は南西の風のち南の風。尻屋崎を過ぎて、久々の太平洋に出てから南が強くなると結構きつい。
南の吹きだし、そして強さにまた朝4時から頭を悩ませることになりそうです。
そして、台風10号崩れの低気圧が日本海北部を北上。動向次第では、白糠、あるいはむつ小川原で日和待ちの可能性も
出てきました。どちらの港も風呂がなく、むつ小川原に至っては、ただの草原があるだけ。人によっては、日本で一番寂しい
港と言い切ります。賑やかな函館に長く居すぎたので、これもまた良いか?


 
下北半島 大畑港                           ブリ頭をカマ焼きに

8月25日(金) 青森県 大畑港 日和待ち
午前4時。海上保安庁のテレホンサービスでは、龍飛崎南西11メートル。これはいつものこと。大間崎南西9
メートル。朝にしてはちょっと強めかな?尻屋崎西南西8メートル。ここ数日の朝の風速では一番強めかな?

下北半島攻略のため、一昨日からまとめてあるプログノ(数値予報天気図)一式を、エクセル上に並べて貼り
付けて傾向の比較。一日おきに約6時間、台風10号崩れの低気圧の日本海北部への北上のタイミングが
早まる計算になっています。気象庁予報も、25日の予報を、昨日午前中は「夕方からくもり所により一時雨」、
昨夕は「午後からくもり所により一時雨」に早めて、さらに今朝はさらに「くもり昼前から所により一時雨」に
して発表してきています。せめて2日半は安定して欲しいと思っていたのにたった一日半の平穏。

かなり早めに低気圧が進み、前線が津軽海峡付近に形成されるタイミングが早まると、南西から南へ変わった
風の吹きだしが早まり、尻屋崎をまわって、太平洋を南下する逃げどころの無いところで、かなり辛い思いをす
る可能性もあります。たとえ半島東岸の白糠漁港に入ったとしても、今夜、津軽海峡に形成される前線によって
足止めの可能性大。この港、過去の情報や、函館でお世話になったY氏の情報からすると、うねりがそのまま入
り、停泊しているだけでも辛い港とのこと。さらに、まったく何も無く、風呂など夢の夢。前線の停滞と強さ次第では、
数日足止めされる恐れも。

でも、早めに出港すれば、多少苦労しても尻屋崎を越えるチャンスでもあるため、下北半島東岸で停泊生活に
不便をしても進むべきかと思いっきり悩むKasayan。
動き出してからまだたった一日。寂しい下北半島を早々に抜けて三陸のリアス式海岸を小さく飛び石のごとく
クルーズしたいという欲求との戦い。
アメダスを見ても陸上ではほとんど微風域。レーダーの映る雨雲はまだ日本海遥か遠く。

・・・・・・・・・でも、山口県江崎の漁師さんに言われた「悩んだら出ない」の言葉を思い出して5時半、日和待ち決定。
海峡も横断したんだし、次に2日間の安定したチャンスが訪れるのを待つことにしました。
台風12号発生の気配も見えてきた天気図。発生しても西へ進みそうだけど、これから悩むことが多くなりそうです。

日中は、女房と交代で街の散策。大畑の駅は、本州最北端の鉄道の駅。小さな駅ですが、意外と立派。
買い物についても、数えただけでも大小のスーパーが5軒。銭湯が2軒で、むつ市へのバス、鉄道の便が結構頻繁。
下北半島の北側と言えば、失礼ながら本州の北の「はずれ」というイメージが強かったのですが、夏の暑さも手伝って
思いのほか明るいイメージに感じられました。

午後、船の位置をずらして舫いを取り直していると、昨日とは別の漁師さんが来て、ヨットの構造、スピードなどについて
あれこれ雑談。「ちょっと待ってろや」の言葉のあと、生きたイカを5匹下さいました。
昨日に引き続き魚をもらってばかりのKasayan。女房の目にモノモライが出来て目薬を差すはめになったのは、貰い物
ばかりしているせいでしょうか。

早速、キューキューと鳴くイカ(生きたイカは鳴くんですよ)をKasayanがキッチン鋏でザクッと料理。
寄生虫の見分け方を小泊の漁師さんに実演付きで教えてもらっていたので、その方法を思い出し、吸い付く足と格闘
しながらイカ刺しに。
北海道の福島港で頂いたコリコリとした採れたてのイカのイカソーメンのあの歯ざわりがよみがえりました。
晩御飯は、残りのイカで炊き込み御飯とバター焼きそして煮付けのイカのフルコース。
至福のひと時・・・・・・・・・・・。

今日、メールをチェックすると、北海道は増毛のベテランヨットマンN氏からメールが。
白糠港の揺れのひどさは時化ていなくてもクリートが吹っ飛ぶほどのひどさとのこと情報をいただきました。
もし、今日出港していたら、たいして強く吹かなかったようですが、朝からの南風で、白糠の誘惑に負けて入港し、
下り坂の天気に日和待ちとなって、とんでもない苦労をしたかも。
今日の選択は正解だったと思うことにして、明日の天気テロップ203「くもり時々雨」は恐山方面の温泉ツアーに
するつもりです。

 
Y氏が送ってくれた函館出港時の写真              生きたイカを刺身に・・・・透き通った身が最高!!!


8月26日(土) 青森県 大畑港 日和待ち
今日は、低気圧が北海道を通過して東北北部には秋雨前線がゆっくりと南下。すぐ目の前の北海道では大雨
となって各地で大雨警報が発表されています。また、昼前からここ大畑でも南西の風が強まって青森県は県全
域で強風注意報。ということで予定通り日和待ち。

昼飯に大畑名物イカ墨ラーメンと思って街中のラーメン屋へ。ところが、この店ではイカ墨ラーメンは扱っておら
ず、仕方なしにイカの唐揚げ定食を注文。揚げ物は船で出来ないので、これまた怪我の功名。美味い。
腹が一杯になったところで、予定通り恐山の手前、薬研温泉に行こうと思い大畑駅到着12時ちょうど。
ところが、次のバスがなんと14時50分発。薬研温泉発の大畑行き最終が16時15分なので、次のバスを待った
としても温泉にいられる時間は一時間そこそこ。
これではどうしようもないので、下北半島の中心地、むつ市まで足を延ばすことにしました。

バスに揺られて30分440円也。途中、尻屋崎が間近に見え、思わず緊張した目で偵察。
むつ市の中心といっても、4階建てのダイエーと松木屋というスーパーとデパートの中間のような店、そして200
メートル四方に飲み屋や小さな店があるだけ。ぶらぶらと散歩をしていると、下北交通の田名部駅とむつ下北観
光物産館「まさかりプラザ」を発見。この「まさかりプラザ」、下北半島がちょうどマサカリの形をしていることから
名づけられたとのこと。立派な建物に土産屋が入り、ホールなどがあるものの、くつろぐスペースは無し。
ホール内の観光協会の窓口で風呂に入れるところを聞くと、徒歩15分のむつグランドホテルにある斗南温泉を
進めてくれました。

斗南温泉、入浴料500円也。大きな露天風呂や電気風呂(本当にビリビリと感電する)、サウナがあってとても良
い温泉なのですが、今まで出来たて、格安、最新の温泉を多く体験してしまったので、ちょっと高めかなという感覚。
露天風呂で空を見ているうちに、風が南西から北西に変わり、風がやや涼しくなってきました。

田名部駅前の100円ショップで、消耗品の買い足しをして、帰りは本州最北の鉄道、下北交通大畑線に乗車。
勿論単線、旧国鉄のディーゼルカー一両のワンマンカー。これが今日のメインイベント。
車窓から見える景色は、原野そのもの。下北半島を車で走ると、道路に沿って民家があるものの、鉄道の線路沿
いには、駅周辺を除いて民家などまったく見えません。
気候の厳しさゆえ、このような寂しい場所になっているのでしょうが、一種独特の霊気まで感じるのは恐山の為でし
ょうか。これから走る海岸線の寂しさが想像できました。

帰艇後、17時の予報チェック。前線は岩手県付近まで南下してやや弱まる傾向。ただ、八幡平付近では降水も
有りそう。青森県はといえば、明日は晴れ。風も収まって北西のち東。波も1メートルの予想となっています。
前線が近くにあるときの予報は非常に難しく、外れる可能性大。でも風波が弱まることだけは確かなようです。

前線が近くにあるため、この安定も長続きはしない見込み。下北半島の東岸を一気に抜けるのはあきらめ、停泊
条件の悪い白糠漁港を避けて、寂しくても停泊条件の良いむつ小川原まで一気に進み、八戸まで25マイルを進む
チャンスを待つことにしました。風呂もない耐乏生活ですが、一週間は風呂に入れない登山に比べれば楽なもの。
明日の尻屋崎が暖かく迎えてくれることを祈っておやすみなさい。


本州最北端の駅大畑駅とディーゼルカー


8月27日(日) 青森県 大畑港 ⇒ 青森県 むつ小川原港
秋雨前線は、東北南部に停滞。青森県は、北から張り出す高気圧に覆われて穏やかな陽気になるはず。
ただ、高気圧から吹き出す東よりの風の影響で、東岸は雲が多く、やや愚図つくところもありそう。
とりあえず出港決定。

ホップステップで日和待ち無しで八戸まで行くことはあきらめたので、その代わり日和待ちが可能な揺れない
安全な港に入港する必要が出てきました。大畑から37マイルの白糠漁港は、港湾案内にも載っていて、
距離もちょうどよく、一見停泊には問題がなさそうに見えますが、これまで入手した情報は4対1で停泊には不
向き。唯一安全そうなのが、白糠漁港の南約11マイルにあるむつ小川原港。
核廃棄物の積み出しや、再処理核燃料の荷揚げに使われ、時々ニュースでも登場する港ですが、砂浜に掘り
下げて作られた港で、倉庫などの建物もなく、立派な岸壁の周りはただの荒れ果てた草原。
買い物も水の補給もできないとのことなので、水、食料ともに大畑で満載して万が一とんでもない長さの日和待
ちになっても生活に困らないように準備をしました。

午前5時20分出港。南の微風の中、メインのみの機帆走で13マイル先の尻屋崎を目指します。
津軽海峡は東流ですが、下北半島の岬は凹になっているため西へ流れる反流の影響を受けて対地速度4ノット。
3時間ほどねばって尻屋崎に近づいたところでようやく本流にのって一気に尻屋崎を通過しました。
尻屋崎は、本当に何も無い寂しい岬。鋭くとがった岬の先の海には大きな岩。そして、南側には大根という暗礁。
大廻をして暗礁に立っている白い陸標を慎重に南へ回りこむと、津軽海峡が終わってそこは太平洋。
いきなりうねりが船を上下。潮岬以来の太平洋に身の引き締まる思いがします。

親潮の反流を避けるため、2マイル以上陸から離して南下を開始しましたが、どうも親潮又は南下する津軽海峡
からの流れはさらに沖を流れているらしく、1〜1.5ノットの反流につかまって対地速度があがりません。
さらに向かいの南東の風が吹き始め、空は一面に重苦しい雲に覆われてしまいました。
18マイル先にある白糠漁港方面は低い雲に覆われて見ることさえ出来ず、時折スプレーを浴びながらじっと機
帆走。白糠漁港が見えるころになってようやく反流が弱まって対水速度と対地速度が一致するようになりました。
察するに、水深100メートルが南流と北流の境目になっているようです。
時折、思いついたように小雨が降って、オイルスキンを着たり脱いだり。

白糠からむつ小川原港までの10マイルは、風もやや弱まり、ジブを開いての帆走。クローズですが、連れの潮に
も乗って快走。気分が良くなってむつ小川原港の手前に尾駮(おぶち)という小さな漁港があるので探検のため入港。
この港、港湾案内にも載っておらず、海図でも小さく表示されているだけ。頼りはGPSの海図と測深器。
函館でお会いしたY氏と、停泊地開拓のため検討してみる価値があるかもしれないと話をした港で、運がよければ
むつ小川原港よりも便利かと思ったのですが、うねりが入りやすく、唯一うねりの入りにくい岸壁も定置網用の漁船が
贅沢に占領していて停泊不可能。周りに民家もなく、ここも今までみた漁港の中でもっとも寂しい漁港。原発関連で
むりやり作ったと思われる、一目で税金の無駄遣いと感じられる漁港でした。

しかたなくセールを下ろしたまま2マイルほど走ってむつ小川原港入港。
噂に聞いていた以上に本当に何も無いところ。以前訪ねたことのある恐山の荒涼とした雰囲気と一脈通ずる気
がしました。下北半島、陸に恐山あり、海にむつ小川原港あり。
停泊許可を求めるにも行くところも見当たらずガラガラの岸壁の適当な場所に船を横付け。

今航海デイランでは最も長い58マイルにKasayanはしばらくぐったり。女房は探検したくてもするところも無いので
キャビンとデッキの掃き掃除。夕方になってようやく起きだしてエンジンや各部分の点検と給油を終えるとなにもする
ことがなく、早々に焼肉の晩御飯となりました。
単パンとTシャツではちょつと肌寒く感じられる夜。妙に冷たい南風が強まってスターンのフラッグがバタバタと
音を立てはじめました。

あ〜早く寝よ。


尻屋崎の先端の先端。左側が太平洋。


8月28日(月) 青森県 むつ小川原港 日和待ち
午前4時に目がさめたものの、マストをビュービューとならす風の音に天気図を取る気も起こらずそのまま2度寝。
8時に再び目を覚まし、FSAS(予想天気図)をダウンロードすると、岩手県付近まで南下していた秋雨前線が、
再び津軽海峡まで北上する予想。今日日中、頭の上を前線が北上して南東の風が一日強めに吹きそうです。
・・・・・・・・携帯電話が通じることだけが幸い。おかげで、天気図を見ることもできるし、メールのやり取りも可能。
近くに核燃料の再処理施設が建設されているためでしょうか、携帯電話のアンテナだけが、ぽつんと丘の上に建っ
ているのが見えています。

な〜んにも無いむつ小川原港で、予想通りの日和待ち開始。
風の音だけが妙に寂しく聞こえるので、ラジオをつけましたが、地元の放送さえノイズ交じりで受信状態悪し。
9時以降は、自衛隊の三沢基地が近いため、朝から頭上を戦闘機がひっきりなしに通過してラジオの音もかき消
されんばかりの騒音公害。
しかたなくラジオを消して、読書に専念。

横付けしている岸壁は、本船用の岸壁なので、潮が引くとまるで絶壁。太平洋に出て、干満差はここ下北半島では
およそ1メートル前後。干満差3〜4メートルの瀬戸内海を思い出せばなんのことはないのですが、暇つぶしも兼ねて、
潮が満ちたタイミングで、舫いを「いってこい」の形にして干潮の出港に備えました。

午後もひたすら読書とこの先の港への入港方法の予習。

船の整備も昨日中に終えているので、午後も何もしないままキャビンで時が流れていきます。
昨日同様、夕方5時に早々に夕食を終えて、いつでも寝られる体制。

明日の予報は、西の風のち東の風。朝のうち、西が少し強いかもしれませんが、吹きだしの風でなおかつアビームな
のでまず出港できそう。ただ、引き続き前線が付近に停滞しているので名物の霧だけが心配。
明日は24マイルほどの航程ですが、無事前進できることを祈って、今日も早く寝ることにいたします。



な〜んにも無いむつ小川原港


8月29日(火) 青森県 むつ小川原港 日和待ち
一時も早く脱出したいむつ小川原港。港としては、揺れもなくて停泊には向いているのですが、最も近い民家まで
5キロ。そこまでの道のりは雑草生い茂る砂利道。これでは日和待ちにはあまりに辛い。
・・・・・・・で、午前4時に起きだして、天気図ダウンロード。
秋雨前線、もう少し弱まる予定だったのだけど、まだしっかりご健在の模様。
キャビンを出ると北東の風8メートル前後。どんよりとした黒い雲が空を覆っています。追い風なので、多少波が
悪くても八戸まではたったの24マイル。なんとかなるだろうと出港準備。

ちょうど、隣に停泊している夫婦舟の刺し網漁船が帰港。いきなり30センチクラスのヒラメを2匹頂きました。
また、10センチほどのヒラメの子供を10匹もおまけにつけてくれました。
砂漠のような港に、まさにオアシスのような漁船!!! 夫婦して大きな声で「ありがとうございました」

さて、出港と思いきや、いきなり風が10メートル前後まで強まって、大粒の雨が・・・。
そんなはずは・・と思いながら、レーダーをダウンロード。六ヶ所村付近にはたいしたエコーは観測されていません。
アメダスを見ても周辺では全て0ミリ。風も3メートル前後ばかり。
海上保安庁の通報では、約30マイル北の尻屋崎でも東北東の風4メートル。かなりシャープな現象が発生している
ようです。八戸までうまくいけば5時間前後の航程。そんなに急いで出港する必要も無いので、しばらく様子を見る
ことにしました。エンジンをかけたまま、午前8時、雨の降り方は依然強いまま。風は東に回ってきました。
まだアビームの風。

午前9時、雨は霧雨になってきましたが、風は真向かいの南東に。尻屋崎の風も東南東8メートルにアップ。

午前10時。タイムリミットと考えていた時間。レーダーをダウンロードすると、見事六ヶ所村に雨雲のエコー。
目的地の八戸周辺にもエコーが観測されています。また、アメダスを見ると下北半島東岸の風は全て南東の風。
さらに大粒の雨がデッキを大きな音で叩いています。戦意喪失。キャビンに閉じ込められた二日目の日和待ちが
決定してしまいました。

午前11時の予報を取ると、明日は、前線が弱まり高気圧の圏内になるものの、前線位相が残って雲が残り、
にわか雨も。さらに波高2メートルの予想。あまり条件が良いとはいえません。思いっきり落ち込むKasayan。

でも気を取り直して、今朝頂いたヒラメで宴会をすることにしました。
女房と二人で、大きなヒラメ二匹を刺身におろしてビールで乾杯。
まさに今朝採れたてのヒラメ。味のほうは言葉に言い表せるはずがありません。とても食べきれる量ではなく、
まさに「誰か来ませんか〜」という気持ちでしたが、泣く泣く残りを醤油に漬けて、晩ご飯に「贅沢ヒラメ茶漬け」を
作ることにしました。また、縁側がたっぷり残った3枚の背骨の部分も塩焼きに。「贅沢ヒラメエンガワの塩焼き!!!」
ヒラメの子供たちは、内臓を抜いて塩をふり、干物にしてしまいました(でもこの天気で乾かない)。

結局雨が上がったのは午後3時半。風は相変わらずの真向かいの南東。

宴会を終えてからは、明日こそ八戸へと祈りつつ、FSAS(予想天気図)、数値予報データ一式を解析。
11時の予報と大して変わらず、前線位相は残る見込み。ただ、南東の風がそれほど強く吹くとは思えません。
そして17時の気象庁予報を確認。波高は1.5メートルに下げて発表してきましたが、風については引き続き
やや強めの見解のまま。

台風12号が九州の南西をゆっくりと北上し始めました。朝鮮半島に進む見込みですが、そのあと、勢力が衰えるものの、
津軽海峡方面に進んでくる公算が高くなっています(気象業務法があるので、これは予報ではなくKasayanの独り言)。
大きな問題にはならないと思うのですが、万が一を考えて、できるだけ南下しておいたほうがよさそう。
明日、多少風が強めでも、八戸まで進みたいと思います。でも強すぎたら・・・・・・?
明日の朝、悩もう!!!


刺身になる前のヒラメ・・・・今朝採れたて!!!!


 


 

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