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【7月26日(水)〜8月1日(火)】

7月26日(水)  石川県 七尾港 ⇒ 新潟県 能生港
七尾で中4日を過ごし、昨日は大雨洪水警報。でも今日は大陸から張り出してきた高気圧に覆われて穏やかな
一日。太平洋側はうねりが高いようですが、日本海の波浪実況はベタベタ。遅れ気味のスケジュールを一気に
取り返すべく今日の航程は富山湾を一気に渡り、新潟県の能生まで51マイル。平均5ノットで走っても10時間強。

4時起床でアメダス風向風速を確認。能登半島、富山湾、新潟県とも全て3メートル以下の微風。
念のため海上保安庁の通報で舳倉島と佐渡の風を確認しましたが、いずれも5メートル以下。
出航準備を全て終え、エンジンを温めながら午前5時気象庁発表の予報も確認。
今日、明日は石川、富山、新潟3県いずれの海域も波高0.5メートル。
絶対安定の天気ですが、帆走はあまり期待できそうにありません。吹くときは吹きすぎ、吹かないときはまったく吹かない
のが日本の天気。

5時15分出港。楽しい思い出一杯の七尾湾を出るまで6マイル1時間少々。久々に日本海の外海へ。
ずいぶん長いこと取り付いていた能登半島ともこれでさようなら。あとは直線45マイル。ほぼ真東の進路。
北風2メートル。ジブを開いて帆走3ノット。エンジン半開で6ノット。逆潮があって対地速度は4.9ノット。
漁船もまったく見当たらず、本船もなし。動いているものはGoldenWistaria号だけ。

時折、体長5センチほどのトビウオの子供が、船の前を横切り、まるで小さな模型飛行機のよう。
親のトビウオは、100メートル前後も滑空するのですが、子供のトビウオはせいぜい5メートルか10メートル。
かわいい姿をカメラに撮ろうとしましたが、タイミングが難しくて断念。

大口、小口の入り口がはっきりとわかる能登半島七尾湾口が見えなくなる頃、黒部川河口と後ろにそびえ、沸き立つ雲
を頭に載せた北アルプスの山麓が見えてきました。
アルプスの山々が一気に日本海に落ち込んでいる険しい親不知の海岸を遠めに見ていると、北東の風が吹き始め、
糸魚川にかかるころには4メートル前後に。あわせて連れ潮にも乗って、対地速度は7.5ノットまで。
見る見る景色が変わって目の前に能生の港が現れてきました。

能生付近の海岸は、別名、長野県の海と呼ばれるほど、海の無い長野県の、特に北信地方の人間が海水浴に訪れるところ。
長野育ちのKasayanも昔、町内会の夏の旅行や、小学校の夏の遠足で、何度か訪れたことのある海。
なにか自分の田舎に帰ってきたような気がします。
小さい頃は、特に綺麗な海という印象は無かったのですが、改めて船で訪れてみると、なんと美しい海。

機走が多く、最後に北東が吹いたので、思わぬほど距離が稼げて8時間45分の航海を終えて14時30分。能生港入港。
漁協でも快く岸壁を指示してくれて無事横付け。
燃料を補給し、エンジンの点検を終え、水を汲んで、メールチェックと予報を確認するともう17時を回っていました。

そこで、嬉しいメール到着。うっかり保存し忘れた22日の日誌。
同じクラブ(YBC)のK氏ご夫婦が、わざわざ、プリントをタイピングして送ってくださいました。
これで、週間版の穴埋め可能。

17時の予報でも引き続き明日も同じような天気が続く見込み。
当初、能生の次には30マイル先の柏崎を予定していましたが、このところ佐渡は荒れはじめると3〜4日は荒れている様子。
絶好のチャンスを逃さないためにも、明日は45マイル走って一気に佐渡小木港を目指したいと思います。


北アルプスが一気に日本海に落ち込む親不知の海岸と積乱雲


7月27日(木) 新潟県 能生港 ⇒ 新潟県 佐渡小木港
今日の「今日のKasayan」、プロバイダーのサーバーの調子が悪く、FTPが接続できないばかりか、メールも取れない
状況。アップできないかもしれないと思いながら書いている次第。

昨日、一気に50マイル。今日も晴天と微風の絶好の前進チャンス。大陸から張り出してきた高気圧のため、航海中も
涼しいのが幸い。計画では、柏崎へ進んでから佐渡へ渡るつもりでしたが、このチャンスに一気に佐渡を目指すことに
しました。

4時起床で航海準備。天気図を解析し、5時の気象庁予報を確認したあと即出港。5時2分には新しい予報をウェブ上で
見ることができるインターネットのなんと便利なことか。
進路はひたすら一直線の25度。佐渡島小木港。北東の微風でクローズギリギリの風向。エンジン半開でジブを展開。
昨日と同じ潮に乗って対地速度7ノット弱。このままなら45マイル7時間を切るかもしれないと思っていると、次第に潮
がなくなり対地速度5.5ノット。風がやや強まってきましたが、セーリングで3.5ノットなので、引き続きエンジン半開。

20マイルばかり走った日本海の真中。前後左右、海しか見えなくなったとき、進路左前方から青い物体がプカプカ。
ボートフックでゴムボートをゲット。海水浴に来た人が流してしまったと思われます。泳いでアンカーを打ちに行くとき、
アンカーを乗せて運ぶのに便利だろうと早速コクピットロッカーに収納。思わぬ収穫。

10時佐渡島を視認。キャビンで読書をしていた女房もコクピットへでてきました。
・・・・・・・とそのとき、バッッスススという大きな音がして、エンジン音低下。すかさずスロットルをニュートラルへ。
これはただ事ではありません。藻を絡めたのならもういやというほど経験しているのですぐにわかります。
恐る恐る船尾を見ると、1メートルほどロープのようなものが流れています。
背筋に冷たいものを感じながらも冷静に、冷静にと自分に言い聞かせ、セールダウン。いつものように海パンに履き替え、
命綱をつけて水の中へ。ロープではなく、どうやら捨てられた魚網の破片がからみついているよう。まるで魚網の団子。
とても手で取り除ける状態ではありません。
そこで、出港前、こんなこともあろうかと準備していたロープも切れるサバイバルナイフ(1000円)を取り出し、シコシコと
切断作業。揺れる船底に時々頭を打ちつけながら苦闘5分。やっとプロペラを裸にすることができました。
プロペラとシャフトを入念に点検。幸い異常なし。
コクピットに引き上げた魚網の量はゴミ袋一杯。おまけにハングル語で書かれたお菓子の袋まで絡み付いています。
これまで藻をからめて、何度も潜ってきましたが、まさか今までで一番陸から遠いところで最悪のものを絡めてしまうとは
思いませんでした。

北東は相変わらず弱く、一時的に吹いても4〜5メートル。ただ、潮と反対の風になるせいか、波が悪い。
時折スプレーを浴びながら小木港入港13時。
作業台船が止まっている岸壁の一番奥に横付け。
目の前の水面では観光用のたらい舟が4〜5隻漂っています。ついに佐渡へ来た〜という雰囲気。

着岸直後の習慣にしているエンジン点検で、インペラ付近から20ccほどのわずかな漏水。
どうやらインペラを回転させる軸のオイルシールから海水が少々漏れている疑い。出港前に新品のシャフトとオイルシール
にしてきたので、ちょっと不思議。綺麗に水をふき取ってエンジンをかけるも再び漏水は発見できず。
エンジン下に白いウェスをひいて、明日の航海中に漏水の原因を追求するつもり。

徒歩15分には、温泉「おぎの湯」500円なり。展望浴場からは、小木漁港と日本海が一望。
夕飯のおかずにはイカの一夜干しと、店のおばちゃん手作りの茄子の漬物。
明日は午後から雨雲が東進して、下越地方は夜から雨模様。
風、波は穏やかなので、早朝出発で38マイル。佐渡を早々に切り上げて新潟へ向かうつもりです。

 
佐渡 小木港 向こうにたらい舟がいますが良く見えなくてごめんなさい。    魚網とハングル語の袋 


7月28日(金) 新潟県 佐渡小木港 ⇒ 新潟県 新潟港(西港)
この2日間久々に好天が続いて約100マイルの距離をかせいでいますが、今日も引き続きクルージング日和。
動けるときには動き、空が怪しいときにはピタッと止まる。早きこと風の如く、動かざること山の如し。だっけ?
4時起床、出航準備、5時の予報を確認後出港。すっかりパターンができていて3日連続5時15分出港。

今日は、弱い前線が石川県から富山県にかけてかかっていて、ゆっくりと東進する予報。
つまり、Kasayanの後ろを前線が追いかけてくるかたち。というわけで、雨に追いつかれないように早い出港。

佐渡小木港沖の東の空は青空、まさに太陽が昇ったところで、ちょうど進路81度の位置に太陽が重なって、太陽から伸びる
光の線がGoldenWistaria号の前に道路のように延びています。
一方後ろの西の空には、前線にともなう高層雲が一面に広がってじわじわとこちらを追いかけているよう。
ゴジラのテーマソングがつい口をついて出てしまいました。
でも、追われるときに限って、潮は逆潮。昨日エンジンが不調たったので、原因を確かめるべく機帆走にしているのですが、
対地速度は4.6ノットより上がらず。佐渡周辺では対馬海流の反流が流れているようです。
イライラしながら前進2時間。赤泊港の沖を通過して佐渡にもやがかかってくるころ、ようやく対水速度と対地速度が一致。
鉄下駄が脱げたように景色が変わり始めました。

・・・・・・・と、もうすっかりおなじみのバスッという音。そして迷わず潜水。藻ではなく、ビニールの荷造りロープが絡まっていました。

佐渡周辺の海はとても綺麗なのに、人工的な漂流物多し。海流が一気に佐渡海峡に集まってくるからなのでしょうか?

佐渡が見えなくなるタイミングで弥彦の山陰が見え始め、対地速度も6.5ノット前後まで上がり遠くに新潟の高層ビルの影が
見え始めました。久々の大都会。ちょっと懐かしいような怖いような。
鳥取、金沢でみたような港の西側の海に数キロも伸びた長い防波堤を回りこんで入港。
出港前からHPを通じて新潟の情報をいただいていたT氏が紹介してくださった新潟のヨットの世話役M氏に電話。
そのまま信濃川をさかのぼれとの指示。
指示どおり、1.5ノットで流れる川を鮭のようにさかのぼって30分。佐渡汽船の発着場を越えて、ようやく万代橋のたもとの
ヨットだまりを発見。M氏が大きく手を振って停泊場所を教えてくれました。

M氏から新潟海洋帆走クラブのフラッグをいただき、帰港後、YBCの旗を送ることを約束。
風呂の場所、ガソリンスタンドの場所を教えていただき、さらに新潟の観光パンフレットまでいただきました。
山口県から始まった日本海お世話になりっぱなし野郎はまたもお世話になりっぱなし。
1時間後にはクラブの顧問のN氏までいらっしゃいました。
木の立派な表紙がついているクラブのゲストブックを出していただいて、うやうやしく記帳。4月に下田でお会いしたシングルハンダー
「てるてるぼーず」のH氏の書き込みを見て、とても懐かしい気持ちに。
彼とは、御前崎で再び出会い、遠州灘オーバーナイトで分かれてからメールのやり取りをする仲。今は高知。

夕方にはT氏がお子さんを連れて来艇。初めてお会いしましたが、思っていたとおり、とても優しいおとうさんでした。
お食事に誘われましたが、すでに買い物が終わっていたのと、明日のはや立ちに備えて風呂、洗濯をすませる必要があったので、
残念ながら実現せず。来年の夏、陸路新潟を訪ねてT氏の船「てっちり」に乗せていただくお願いをし、握手でさようなら。
私にとって、山口県から始まった日本海アンカーレッジネットワークの新潟の重鎮でした。

船内で晩飯を済ませると19時半。風呂まで徒歩10分。併設のコインランドリーで汗をかいた衣服を洗濯。
飲み水のポリタンクを新しい水に入れ替え、ようやく落ち着くと、もう21時半でした。

明日は、微妙な天気。上空に寒気が入り込んでおり、西日本には台風6号からの暖湿流が流れ込み、新潟はいったいどの程度
不安定になるかが頭を悩ませるところ。30マイル先の粟島というちいさな島をめざしています。
明日朝の実況分析がカギを握りそう。また4時起床になりそうです。

 
佐渡小木港外 朝日の道                      新潟 信濃川万代橋のたもと 


7月29日(土) 新潟県 新潟港 日和待ち
釣り舟が全速力で信濃川を下っていく引き波で船は大揺れ。バースから転がり落ちるのではないかと飛び起きたのが
午前4時。外を見ると、どんよりと重そうな雲が空一面。早速レーダーを見ると、佐渡から新潟にかけての海上に
かなり発達した雨雲が東進中。新潟から次の目的地である粟島の間は、少なくともこの先3〜4時間、強い雨が降る
ことになりそう。女房を起こして、外に干してある洗濯物の取り込み。キャビン一杯に洗濯物がぶら下がったタイミングで

大粒の雨が降り出しました。とりあえず出港は見合わせて天気図とレーダーアメダス短時間降水量予測を解析。
少なくとも午前10時頃までは雨が降ったり止んだり。昼前に出港するとなると、粟島入港は午後4時か5時前後。
このところ、連続で長距離を走っていたので、この際日和待ちにすることにしました。

午前6時、Kasayanと同じクラブで、同型のリベッチオ26ftに乗っているN氏の奥方に電話。女房と仲良し。
実は、新潟で時間ができたなら、新幹線で遊びに行きたいという連絡があったので、このタイミングしかないと早朝にも
関わらず日和待ちの報告。ご主人のN氏は今日、東京湾の保田へクルージングとのことで絶妙タイミング。
そして、再び爆睡2時間半。

9時に起き出して、空を見ると、西の空から青空が見え始めていました。どうやら雨雲が通過した模様。
神戸で購入したCD-RWにパソコンのバックアップを取っていると、もうN氏の奥方から電話。
東京と新潟もずいぶん近いもの。ヨットで2時間半ならせいぜい13マイル前後。
複雑な気分。女房が新潟駅まで迎えに出て、キャビンで一休み。
旅行カバン一杯に、御菓子やパン、葉書、紅茶、コーヒー・・・・・・・・・。船の中は一気に食料豊富になりました。
嗜好品が増えると、心にゆとりができるもの。感謝、感激。
Kasayanはヨットで留守番、女房とN氏の奥方は昼食と新潟見物へ。

午後3時、女房が船に帰ると同時に今度はKasayanが散歩へ。徒歩10分にダイエー新潟店と伊勢丹デパート。
15分で新潟駅。恐ろしく都会な場所。
食品売り場に行くと、食べたいものばかり。横浜では見慣れた光景ですが、久しく簡素な生活をしていたので、とても新鮮。
都会の物の多さが実に過剰であるか、物が都会に集中してしまっているかを実感しました。

台風6号は弱ってきていますが、明日以降、進路を北東に変えて日本海を進みそう。
新潟から山形にかけての海にたいした影響がなければよいのですが。
いよいよ本格的な台風シーズン。台風7号も発生したし、8号が出来る気配も・・・。
台風をやり過ごす港と前進のタイミング。頭を悩ませることが多くなりそうです。


新潟に舫う      遠くのアンテナは放送局NT21(テレ朝系列)


7月30日(日) 新潟県 新潟港 ⇒ 新潟県 粟島港
信濃川のモーターボートはまったくルール無用の暴走族。全速力で万代橋を通過していくため、午前4時から
狭い川の中はどんぶり鉢をひっくり返したような荒波。小さなGoldenWistaria号は前後左右に大揺れ。

台風6号は、ようやく動き初めて朝鮮半島方面を経由して日本海北部を北東進する見込み。
明日、明後日にかけて、すくなからぬ風、波の影響はあるものの、5月のメイストームほどではないと判断。
万が一、今日の目的地である粟島でやり過ごすことになっても、十分に持ちこたえられるはず。

ひき波がひどいので、5時の予報を確認して、早々に出港。
およそ2マイルほど、信濃川を下って新潟港を出るのですが、一番外の防波堤を出るまで、ひっきりなしに
モーターボートが追い越していくため、ひき波を乗り切るだけでバウデッキがスプレーで濡れるほど。
ただ川の流れが1.5ノットほどあるので、30分ほどで静かな日本海へ。

セールアップして機帆走1時間。そよそよと東の風が吹き始め2〜3メートル。アビームに風を受けてエンジン半開
対地速度6ノット。今日は、まったく流れ藻も漂流物もなくて快適な航海。
進路23度で15マイルほど走ったところで海流に乗ったらしく、対地速度7.4ノット。
新潟東港の高い煙突が靄に隠れて見えなくなると同時に、前方から粟島が姿をあらわし始めました。

平均速度6ノット以上で11時前、粟島港入港。新潟で事前に聞いていた岸壁はガラガラでなんの悩みもなく横付け。
島は、夏休みの海水浴シーズンで本土からの観光客で賑わっていました。
早く到着したので、エンジン点検、軽油補給等、やるべきことをさっさと片付けて船の周りで海水浴。
驚くことに港内といえども4メートル以上もある海底が透けて見えるほど。日本海に入ってから水が綺麗なことに
感動していましたが、粟島ほど透き通った水を見るのは初めて。
新潟で、粟島では漁港の岸壁でサザエが取れるよ・・・という話をきいていたので、軍手をはめて潜水。
生まれて一度もサザエなど採ったことの無いKasayanですから、まさか取れるはずがないとあきらめていましたが、
30分ほどで立て続けに7個もゲット。通りがかりのおっさんに「あわびも取れるよ・・」と言われて必死になりましたが
これは初心者Kasayanには不可能なことでした。
採ったサザエは15分後にはコクピット上で壷焼きに。漁港に泊めた船の横の岸壁でサザエを採ってすぐに壷焼きとは
まさにクルージング天国。新潟のヨットマンが羨ましい!!!!
しかし、美味かった〜!!!!

岸壁のすぐ隣、徒歩1分には、昨年12月に完成したばかりの村営の温泉、「漁火温泉、乙姫の湯」500円也。
温泉につかって、大広間でくつろいだ後、近くの食堂で粟島名物「わっぱ汁」を堪能。
筒型の桶「わっぱ」に、ミソと水、ソイとカワハギの塩焼き、ネギを入れ、そこに真っ赤に熱した石ころを入れて一気に
沸騰させるという豪快な料理。まさに日本海の味。
この粟島にもう2〜3日滞在したくなってしまいました。

でも、台風6号は速度を速めて日本海を北上する予想。明日のタイミングを逃すと、明後日は波が高めで前進が一日遅れそう。
明日昼までに南風が強まらないようであれば、山形県の酒田を目指して出港予定。
まあ、運悪く日和待ちになっても天気は晴れだし、水は綺麗だし、今度はアワビをゲットして刺身で食すといたしますか。

 
日本海に浮かぶ小島 粟島遠景                  粟島漁港岸壁でKasayanが採ったサザエを壷焼きに


7月31日(月) 新潟県 粟島港 ⇒ 山形県 酒田港
昨夜、粟島の岸壁で、懐中電灯を持って海を照らすと、サザエがうじゃうじゃ岸壁の水際まで這い上がって、
手を伸ばすか、たも網があればいくらでも取れる状態。でも昼間7個も食べてしまったので、そのまま残して
おきました。まさかサザエが手づかみでとれるなんて・・・・。日本にもそんなところがあったんですね。
夜空の星は、周りに都会の明かりが無いので一段と数が多く、まさに星降る夜でした。

午前4時起床で天気解析。台風6号が弱まりながらも日本海方面へと進むので、吹き込む南風が東北南部日本海側に
どれだけ影響するかが頭を悩ませるところ。500Hpaまでしっかりと背の高い太平洋高気圧が北日本に張り出して
いますが、この張り出し具合が少しでも緩んだりすると日本海に進む台風崩れの低気圧の影響をもろに受けて
南風が強まります。実際、西日本方面では、日本海側でも南が強く、アメダスを見るとその影響は、能登半島付近まで
進んでいます。能登半島といえば、ついこの間まで滞在していたところ。
プログノ(コンピューターの計算結果の天気図)では、ギリギリ東北地方日本海側には影響がないはず。
思いっきり悩んだあげく、5時発表の気象庁予報をサイコロにすることに。気象庁発表予報には、波が1.5メートルと
昨日より少々高めの予想にしていますが、風は南としているものの、「やや強く」も「強く」も予報文にはついていません
でした。サイコロはGOサイン。5時半出港。

万が一、南が一気に吹き出すと怖いので、出港時点からワンポイントリーフ。でも港外はまったくの無風。
機帆走でトロトロと進路048度へ。能登半島を過ぎてから、出港後、変針点なし。一本のコースが多いので走っていると
少々飽きがくる。

3時間ほどで、粟島がもやの中に消えると、入れ替わりに真正面、進行方向に鳥海山が姿をあらわしはじめました。
さすが2000メートル以上の山だけあって頂きには残雪が残っています。
まっすぐ鳥海山をめざしてひた走り。
やがて、陸沿いの山が無くなり、砂浜の続く庄内平野が広がります。
すると、ようやく弱い南風。雲ひとつ無い夏空で、気温は急上昇。扇風機を回してもキャビンの中はすでに気温39度。
女房も珍しくコクピットに脱出。セールの影に隠れて暑さをしのぎます。
日本海の前線と低圧部に太平洋高気圧から空気が流れ込みフェーン現象が発生したはず。

結局、風は強まらず、12時、酒田港防波堤を回りこみ入港。九頭竜川河口の福井港や信濃川河口の新潟港同様に
最上川の河口にあるこの港ですが、護岸工事で河口からは切り離されていて流れにさからう必要はありません。
一番奥の小さな川の河口で架橋工事をしている作業岸壁に横付け。作業のおっさんに声をかけると、問題なし。
目の前1分にコンビニ。徒歩7分に大きなスーパーとスパガーデンという温泉リゾート4時間500円。コインランドリー1分。
環境は抜群。船でゆっくりしようと思いましたが、すでにキャビン内は40度のサウナ状態。
片付けを終えると、船の戸締りをして、スパガーデンに脱出。温泉につかり、冷房の効いた大広間で昼寝2時間。
ちなみにこのスパガーデン。午後8時半から12時間コースというものがあって、一人2000円で風呂に入れて仮眠室で眠ること
もできます。久しぶりに涼しい夜を過ごしたくなって誘惑されますが、我慢我慢。

でもこの暑さに船に帰ってご飯を炊く気がしなかったので、そのまま温泉内の食堂で、山形名物「冷やしラーメン」と「イカの煮付け
定食」で夕飯に。この冷やしラーメンは、冷やし中華とは異なり、普通のラーメンのスープを冷やして氷を入れたようなもの。
意外と美味く満足。

日が落ちた午後7時過ぎに船に戻って、ようやくエンジンの点検、軽油の補給を終えることができました。
でも午後8時を過ぎてもキャビン内は30度。パソコンを打ちながら裸の体から汗が湧き出します。
これから地獄の夜を迎えることになりそうです。

PS,私が今航海に当たって参考にさせていただいたHPの作者、ヨット「スターダスト」(諸磯)のY氏からメールを頂き、
現在、クルージングで函館滞在中とのこと。Kasayanより先をすすんでいた、「どんたく」(静岡重須)「楽々」(長崎)「岳洋」
(東京)等のヨットが函館に集結しているお話しを聞きました。北海道はこのところ雨ばかり。梅雨が無いといわれていますが、
本州が梅雨明けするころ、雨が降りやすいくなることも。先を進んでいた皆さんは、きっと函館で日和待ちをしているのでしょう。
Kasayanはやや計画より遅れ気味ですが、期せずして、ちょうど梅雨前線を追いかけるかたちになってラッキーだったかも。
これから北海道で、同じ目的で走っているヨット仲間に会えるかもしれないと思うと、とても楽しみです。


鳥海山の写真がうまく撮れず、酒田港の写真も暗かった。
無理やり補正して明るくしたので、画質悪し。



8月1日(火) 山形県 酒田港 ⇒ 山形県 飛島港
夜中は幸いにしてバウ側からそよ風が吹いて、キャビンの空気の流れも良く、熟睡。
午前4時半起床。台風6号くずれの低気圧と前線の影響が気になりましたが、南風の影響は今朝も能登半島まで。
新潟県下越以北は穏やかな天気ですが、昨日同様猛暑の予想。

少しでも涼しいうちに航海を終えようと、わずか20マイルの距離にもかかわらず5時半出港。
昨日よりくっきりと鳥海山が右手にそびえ立っています。視程は非常に良く、40マイル前後。
港外へ出ると、南はもやっているものの、北方は遠くまで見渡すことができ、男鹿半島の姿まで見ることができます。
そして、前方329度には、お盆を海に浮かべたように平たい飛島の姿が。

鳥海山からの下ろし風と思われる北東風3〜4メートル。ジブを開いてセーリング開始。5ノット前後で快調に前進。
連れ潮も手伝って対地速度は6ノット。およそ半分の10マイルばかり走ったところで風が落ちてメインのみの機帆走。
ケンケンを流しましたが、ウミネコが急降下して疑似餌に飛びつくので、万が一鳥が釣れては困るとすぐに中止。
見る見る島が大きくなり、わずか4時間の航海を終えて、9時半入港。

この島の漁港は大きく4つに分かれていて、一番南側、定期船桟橋のある港の漁協で勝浦地区を指示されました。
テトラポットと防波堤が入り組んでいてまるで迷路のような水路を抜けて移動するのですが、水深は3メートル前後。
3メートル以下でアラームが鳴るように設定した水深計はピーピーと鳴り続け、数字を女房に読ませながら前進。
水が透き通り、海底が見えるので余計恐怖心があおられますが、なんとか無事着岸。
漁港の周りには素朴なたたずまいの民宿が立ち並んでいました。

今日も、午前中から気温上昇。もやいを取り終わり、あと片付けを終えると、すぐに暑い船から退避。
島の情報を探るのと、昼食をかねて民宿の食堂でラーメンの昼食。このラーメンが予想外に美味い。
ラーメンフリークのKasayanですが、日本海の孤島で思わぬ発見。

飲料水とトイレはフェリー乗り場の横の公園でOK。フェリー乗り場には無料の貸し自転車。この自転車に乗って3分の
海水浴場へ。岩場の海水浴場で、水は先に訪れた粟島同様透き通り、シュノーケリングで、海中の魚たちやキラキラと光る
海草に思わず見とれてしまいました。
海水浴場には自由に使える水シャワー有り。風呂代わりに全身をしっかり洗い、女房も水で洗髪。
人気の無い海水浴場ならではの荒業。

日本海に浮かぶ孤島。このような機会がなければ、存在を知ることも無かったでしょうし、一生訪れることもなかったでしょう。
夕涼みに遠くに浮かび上がった鳥海山を見ながらしみじみと考えこんでしまいました。

明日は、今日の2倍以上、45マイルを走って、男鹿半島まで進む予定。
天気は今のところ問題なし。夕方から涼しい風が吹き出してきました。海水浴の心地よい疲れと涼しい風に良く眠れそうです。

 
酒田港沖から見た鳥海山                      飛島まで5マイル お盆を浮かべたような小さな島



 

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