食虫植物 FAQ 日本語版

自生地にそこにはまだ生えていない食虫植物を植えた方がいいでしょうか?

Dionaea and Drosera
カリフォルニアのハエトリグサと
アフリカナガバモウセンゴケ

 ICPSの公式な立場は、たいていの場合、外来種(その土地原産でない植物)を植えるのは好ましくないということです。彼らの植物の保護に関する声明は、そのウェブサイトで見る事が出来ます。(“外来”という言葉は、その本来の意味で使われています。すなわち、“どこか他の場所で生じたもの”という意味です。)

 TNCでは、外来種、とりわけ侵入種は特に重要な問題で、侵入種プログラムを立ちあげて、彼らの保護区において、これらの種をコントロールしようとしています。彼らはそれに関する十分な根拠をもっていて、侵入種による在来種の絶滅が、自生地の破壊に次いで二番目に大きい絶滅の原因だということです!(あなたは外来種に関するFAQ項目も見たいと思うことでしょう。)

 これは多くの食虫植物ファンにとって、デリケートな問題です。私は、一連の例をあげて、関連する事項について注意深く定義することによって、もっと明らかに問題にアプローチできると思います。

セクションT: シチュエーション
(太字の用語はセクションUで定義されています)

  1. 植物をその自然の分布範囲外に植えること
    アフリカナガバモウセンゴケ
    Drosera capensis
     もし植物を植える場所が、その植物の自然の分布範囲外だったら、あなたは明らかに遺伝的な問題について心配する必要はありません。しかし、その土地の植物との交雑が問題にならないか確認して下さい。適法性害虫の持ち込み侵入種の問題、そして科学の問題についても問題がないか確認して下さい。美学の問題故意ではない結果についても考慮して下さい。

  2. 植物をその植物の自然の分布範囲内に植えること
     あなたが、適法性遺伝的な問題害虫の持ち込み、そして科学に関する様々な問題に取り組んでいるとして、故意ではない結果の危険性も考慮して下さい。あなたの計画が、自生地復元プランの一環であることを期待します。

  3. 保護の形として
     もしあなたが植えようとしている植物が絶滅の危機に瀕していて限られた自生地しかない場合でも、あなたは下に記した関連事項全てについて良く検討しなければなりません。責任を持った行動をして下さい。
     野外(その植物の通常の分布範囲の外)に植物を植えることを正当化するのは困難です。たとえ栽培下でうまく育っていてもです−−−野外に植物を植えることは、植物を温室内で育てることほど人工的なものなのです。このことに注意して下さい−−−野外でアフリカナガバモウセンゴケ(Drosera capensis)や、ウトリクラリア スブラタ(Utricularia subulata)のような普及種を植えることは正当とは認められません。それらは侵入種と見なされ、それらを植えることは弁護の余地のないことです!

セクションU: 問題点の定義

美学の問題
 多くの人々は単純にその土地原産ではない植物が生えているのを見たくはないものです。もし私が、アリゾナ州のサボテンの森の中を歩いているとして、そこでアフリカ原産のトウダイグサの木を見たいとは思いません!それは魅力のないものです。
 私は、サボテンとその自生地を、そのもの本来の手を加えられていない美しさという点で評価したいと思います。同様に、サラセニア(Sarracenia)の自生地に生えている南アフリカ産のモウセンゴケは、安っぽいアクセサリーのようなもので、自生地本来の美しさを損なうものです。それは生物学的な汚染と言えます。

遺伝的な問題
 ひとつの種の中でも色々なバリエーションがあることは良く知られています。サウスカロライナ州産のサラセニア フラバ(Sarracenia flava)は、フロリダ州南部産のものとは異なっています。実際に、隣り合った湿地に育つ個体群が異なっていることもしばしばあります!
 もしあなたが、新しい自生地に植物を植えるならば、その地域の植物の天然の遺伝子プールを乱すことになるかも知れません。また、あなたの植えた植物の花粉を媒介する昆虫が、近所の自生地まで飛んでいく可能性はありませんか?このような花粉の交換によって、その地域の植物に元々ある遺伝的な多様性が乱されることでしょう。

交雑の問題
 あなたがニュージャーシー州の松林に(そこの原産ではない)サラセニア ミノール(S. minor)を植えたと仮定しましょう。そこはサラセニア プルプレア(S. purpurea)の原産地の中です。花粉を媒介する昆虫があなたの植物を訪れ、元々自生する植物に花粉を運び、交配種が作られます。これらの交配種は、最後には戻し交配され、遺伝子プール全体が汚染されるでしょう。たった1本のサラセニア フラバ(S. flava)が及ぼすダメージを考えてみて下さい。それらはゆくゆくはサラセニア ルブラ ジョネシー(S. rubra subsp. jonesii)の残りわずかな個体群に影響を及ぼすのです!

侵入種の問題
 お分かりのように、ほとんどの場合、食虫植物をその自生地に戻して植えるというのは良い考えではありません。しかし最悪なのは、自生地に“侵入種”と呼ばれる植物を植えることです。侵入種は自生地の先駆植物となって増殖し、それらをコントロールしたり除去したりするのは非常に困難です。
 私はサラセニア(Sarracenia)が侵入種であるという考え方は想像できません−−−それが侵入種として問題となるには、成熟して増殖するのに時間がかかり過ぎるからです。しかし、アフリカナガバモウセンゴケ(Drosera capensis)やウトリクラリア(Utricularia)のような植物は、自然の環境にはいると除去するのが非常に困難です。私はこれらの植物が外来種として生育し、自生地に大きな茂みを作っているのを見たことがあります。それらが優勢となった自生地を完全に破壊することなくしては、決してそれらの植物をコントロールできないのではないかと思います。残念なことです。

適法性
 誰か他の人の所有地に植物を植えるとなると、明らかに法的な問題が発生します。なぜあなたは、誰か他の人の所有地に植物を植える法的な権利があると思うのですか?その土地が政府のものであろうと、私企業のものであろうと、個人のものであろうと、植物を植えるのは非合法です。公園のような自然のままの場所も、あなたが園芸の神様を演ずるためのアリーナではありません。

害虫の持ち込み
 自生地に返された植物は、一緒に温室で発生する害虫を持ち帰るかもしれません。私は、カリフォルニア州のメンドシナに植えられたダーリングトニア(Darlingtonia)の個体群が、温室で発生したアザミウマにひどく寄生されているのを観察したことがあります。このようなダメージは、自然に生えているダーリングトニア(Darlingtonia)では見たことがありません。
 これらのアザミウマが、次は自然に生えているダーリングトニア(Darlingtonia)を攻撃するよう進化していく可能性はないでしょうか?おそらく既にそうなっているでしょう−−−節足動物は素早く進化して新しい変種になる能力に長けていることが知られています。このケースでは、幸いなことに、付近にダーリングトニア(Darlingtonia)の自生地がなかったために、被害が広がりませんでした。
 しかし、もし誰かがアザミウマに感染したサラセニア(Sarracenia)をダーリングトニア(Darlingtonia)の自生地に植えたとしたら、アザミウマは容易な足掛かりを得ることになるでしょう。自然の捕食者どころか、アザミウマは野生の食虫植物を滅ぼしてしまうかも知れません。

科学の問題
 もしあなたが誰にも言わずに植物をその自生地以外の場所に植えたら、後でそれを見つけた生物学者を混乱させることになるかも知れません。(例として)その学者は、サラセニア プルプレア(Sarracenia purpurea)がどうやってミズーリ州までたどり着いたか、不思議に思うことでしょう。誰かがその植物を植えたということが分かるまで、研究のための時間と努力が無駄に費やされることでしょう。
 例えば、最新の Flora of California (The Jepson Manual) では、ドロセラ リネアリス(D. linearis)がカリフォルニア州で(人為的に)見つかったとしてリストアップされています。しかし、これは明らかに誰かが植えた アフリカナガバモウセンゴケ(D. capensis)の誤りです−−−能力の劣る自然主義者が アフリカナガバモウセンゴケ(D. capensis)を発見し、それが南アフリカ産の種とは考えずに、カリフォルニア州で発見された思いもよらぬ北米産の種であると決めてかかったのです!どれだけ多くの人々がこの誤った報告に混乱させられることでしょう?

故意ではない結果
 これは暫定的な問題で、種の導入に伴うその他の危険全てを含有します。不注意に種を導入しないで下さい−−−自生地の破壊のもっとも大きな原因は、そこに新しい種を導入したことによる在来種の絶滅なのです。(このページの一番上にある声明を読み直して下さい!)多くの外来種は、強い動機を持って導入されますが、生物学的な大惨事を巻き起こすのです。自然の環境の中で、創造の神を演じるのはやめてください。
 例えば:新しく導入した植物が他の植物と取って代わることがあります−−−あなたがどこに外来種を植えても、在来種が取って代わられるのです。おそらく稀少な蘭はもう足掛かりを得る事が出来ないでしょう。おそらくデリケートなシダもです。イネ科の植物のようなつまらない種でさえもです。
 もうひとつの可能性として、その地域に住む稀少な昆虫も、あなたの植えた食虫植物の餌食となって、その昆虫の自生地の一つが絶滅するかもしれません。
 これらふたつは私の作った話ですが、故意ではない結果の危険性についてまじめに考えて下さい。

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このページの最終更新日 : 2000年11月 Original copyright (C) 2000, Barry Rice
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