
種をまくとき、何か特別な処理が必要でしょうか?

ネペンテス ベントリコサ
|

ドロセラ アリシアエ
|
食虫植物の種子からの栽培は、簡単に発芽するものもあるし、まあまあ簡単なものから、ほとんど不可能に近いものまであります。
熱帯産の食虫植物の種は、発芽も最も簡単で時間も余りかかりません。それに、親株を育てるのと同じ条件で発芽します。これらの食虫植物は、親株を育てるのと同じ条件で発芽します。
まず親株を育てるのと同じ大きさの植木鉢を用意してください。そして、用土に種をまきます。このとき、覆土はしないようにして下さい。
通常の栽培と同じ要領で、明るい場所で用土が乾燥しないように管理してください。普通の園芸植物と比べて発芽には時間を要しますので、根気良く待ってください。
もし数週間以内に発芽したなら、ほとんどのベテラン栽培家は大喜びします。なかには発芽まで数ヶ月かかるものもあるからです。
たとえ発芽しなくても、私だったら 2年間は諦めません。「忍耐」がキーワードです。種をまいたら、その鉢のことは忘れてしまうことです。毎日毎日のぞいている鉢からは絶対発芽しませんよ。
それに対して、冬が非常に寒い場所で生育する食虫植物は、発芽させるのが困難です。なぜなら、秋遅くに発芽して、冬になって枯死してしまうようでは困るからです。
ですから、そういった植物の種をまくときには、冬が過ぎて春が来たから発芽しても大丈夫だよと、種に教えてあげる処理が必要です。

サラセニア プルプレア ヘテロフィラの実生苗
|
たとえば、サラセニア (Sarracenia) や、毎年雪の降るような寒冷地に自生する モウセンゴケ類 (Drosera) や ムシトリスミレ類 (Pinguicula) の種をまくには、発芽を促進するための冬化処理を必要とします。(なかには、何の処理もしないで発芽する種もありますが、処理を行なうことで発芽率がぐんと良くなります。)
冬化処理は種子を湿らせた状態で行ないます。(発芽まえには、水分を吸収させなければならないからです。)
私がお勧めする方法は、種を鉢にまいて湿らせ、成株が経験するのと同じように、冬の寒さに当てることです。数ヶ月の冬が終り、春になると、鉢から続々と発芽します。これがもっともエキサイティングな瞬間です。(時にはそのスリルに、座り込んでしばらく見とれてしまうことがあります。)
A. Ellison さん の研究によると、サラセニア (Sarracenia) の冬化処理は 4週間程度が最も好ましいそうです。それより短いと発芽は不完全になります。4週間より長い場合、サラセニア レウコフィラ (S. leucophylla) では発芽率が低くなりますが、他のもの(サラセニア プルプレア ベノサ (S. purpurea var. venosa)、サラセニア プルプレア プルプレア (S. purpurea subsp. purpurea)、サラセニア ジョネシー (S. jonesii) ) は、発芽が早まるそうです。(ただし、発芽率は高くなりません。)

たくさんのハエトリグサの種子
|
ハエトリグサの種子は、長さ約 1.5mm で、てかてかする黒い虫みたいです。右の写真を見て下さい。
ハエトリグサを種子から育てたいなら、上述したような冬化処理をする必要がありますが、ハエトリグサの実生苗は、2年後でも数cm 以下です。ですから、種子から育てたい特別な理由のない限り、無性生殖で増やした方が無難です。

ドロセラ ディクロセパラ
|
それでは、種子から育てるのが極めて難しい食虫植物はどうでしょうか? これには、乾季のある地域に自生している、塊茎ドロセラ (tuberous Drosera)、ピグミードロセラ (pygmy Drosera)、ビブリス (Byblis)、そして数種のウトリクラリア (Utricularia) があります。
なかには、非常に特殊な処理をしないと発芽しないものもあります。ジベレリンのような特殊な薬品を必要とするものもあります。私はあなたのことまで責任を取れないので、この薬品についてこれ以上話すのは止めにします。
種皮に傷をつけることで発芽するものもあります。ドロソフィルム (Drosophyllum) はこの処理が必要だといわれることがありますが、種子が新鮮な場合は処理なしで発芽します。
食虫植物の中には、自生地で時々起る山火事に適応しているものもあります。これらの植物は、山火事が起ったかのような効果を与えてやらないと発芽しません。
食虫植物栽培家の中には、鉢の上で火をたいてこの効果を与える人もいます。この処理は、私の手助けなしに、あなただけでやらなければなりません。あなたが火事を出して街を焼いても、私は告訴されたくないからです。
(しかし、少しだけヒントをあげましょう。ガソリンなどは使用せず、天然の燃料を使用すること、鉢を火の中に入れてしまうようなことはせず、温度が上がり過ぎないように注意することです。種を用土に色々な深さで植えておけば、そのうちのどれかは最適な温度になって発芽するでしょう。そして、燃やした後、水をかけて灰を洗い流します。この時、灰を全て流してしまわないように注意します。発芽に必要なのは、温度の上昇ではなくて、灰の中の成分だと思われるからです。また、屋内では絶対に行なわないようにして下さい。成人の監督なしに行なってはいけません。ぱっと燃やして、すぐに取り去ることです。)
最近、煙をしみ込ませた紙やペレット、水を使って、山火事で生ずる化学物質を再現しようとする実験が始められています。これらの方法はとても効果的であることが証明されています!
最後に、絶対に発芽しそうもない種子があることを付け加えておきましょう。
Allen Lowrie 氏の扱っている種子の多くは発芽しませんが、それは種子が悪いのではありません。こうした山採りの種子は人工的に栽培されたことがなく、発芽するためには何か特殊な刺激が必要だと考えられるのです。
たまたまこのような種子の発芽に成功したときは、本当に感激するものです。
食虫植物 FAQ インデックスページに戻る
このページの最終更新日 : 2000年10月 |
Original copyright (C) 2000, Barry Rice
Japanese version copyright (C) 2001-2006, JIPS
All images on this page are used by permission of sarracenia.com
|
|