■ 「茶壷」を買おう!! ■

■ Let's get a good [Cha Hu] ■


 「茶壷」は、実用的な使い方以外にも、鑑賞に値する、すなわち所有する喜びを感じさせてくれるアイテムであると言えます。形は多岐にわたり、また価格の差もかなり大きくなっています。自分が買える値段のものから、最上の物を選ぶにはそれなりの「眼力」が要ります。そこで、ここではどのようなポイントをチェックしつつ茶壷を買ったら良いのかについて考えてみましょう。




■ 1、形状

 「茶壷」の形はとても重要です。「茶壷」の良し悪しを決定する最大のポイントは「幽雅」であるかどうかという点に集約されます。パッと見た目に趣があるかどうか、自分の目で確かめましょう。この「眼力」を養うには、多くの「茶壷」を見ることです。すばらしい「茶壷」を多く見ることにより、どのような茶壷が良いかという目が養われます。ちなみに、作家が手作りした物と量産品などは、慣れれば一瞬で分かるようになります。あまりにも違いすぎます。

 あと、つくりが精細であるかという点もとても重要です。以下の点をチャックしましょう。ちなみに、作家ものだと、全てが完璧に作られています。ほんの小さな雑な点でもあったら、それは作家ものではない(贋物)と考えて間違いありません。

  • フタがちゃんと本体とピッタリ合うか、隙間があってカチカチいわないか
  • 前から見て、ちゃんと左右対称になっているか
  • 表面にこまかいキズが無いか
  • その他の細かい点が雑に作られていないか
  • 水の出る所と、本体のふたの部分、取っ手の部分が一直線になっているか
  • 三平


    ■ 2、泥の質

     形状と同じくらい重要なのが、胎土の質です。中国「宜興」の「紫茶壷」がどうしてこれほど有名かと言うと、第一にすばらしい泥が取れるからです。見分け方は、初心者には難しいと思います。ただ、これも多く見ることによって「眼力」が養われます。眼力を養うためには、胎土の良い「茶壷」と量産品を並べて見比べて見るのが一番です。一目瞭然です。写真では素晴らしさは分かりません。実物を見ましょう。

     以下に「宜興」の代表的な泥の種類を挙げておきます。何かの参考にしてください。

    紫泥
    紫泥
    緑泥
    緑泥
    紅泥
    紅泥(朱泥)

    ■ 3、音

     「紫砂壷」は”火の芸術である”とよく言われます。それぞれの泥には最適な焼き上げの温度があります。この絶妙な火の温度で焼かれた物が、最高の「茶壷」である、と言えます。この焼き具合を見分けるコツには、音を聞くという方法があります。

     左の手のひらの上に「茶壷」の本体を載せます。右手でふたを持って、本体を軽くたたいてみます。この時、「キンキン」と高い金属音がする物は高い温度で焼かれている物です。「カンカン」という音がするものは最適な温度で焼かれたものです。「コンコン」と鈍い音がするのは低い温度で焼かれたものです。

     ただし、土の種類によっても音が変わります。あくまでも目安として考えてください。台湾の「茶壷」は比較的高い温度で焼かれている、などの特徴もあります。

     高い温度で焼かれた物は「気孔」がかなり小さくしまっており「養壺」がしにくく、低すぎる温度で焼かれた物は「気孔」がちゃんとしまっておらず水が染み出す可能性も有ります。

    叩いてみる
    本当はちゃんと左手の手のひらの上に「茶壷」を置きましょう!!


    ■ 4、実用性

     忘れてはいけないのが実用性です。手になじんで、持ちやすいかというポイントはとても重要です。また、実際に水を入れてみて、水を出してみるのも重要です。良い「茶壷」は、水の出方がとても綺麗です。綺麗な放射状を描いて水が出ます。また、90度まで「茶壷」を倒してみて、中の水が蓋からこぼれてくるような「茶壷」は、あまり良い「茶壷」とはいえません。これは形状にもよりますが、なるべくこぼれない物を選びましょう。

     購入前に、試させてもらうのはとても重要です。試させてもらえないなら、買わない、くらいの考え方のほうが良いでしょう。

     
    水の出


    ■ 5、コレクション

     「茶壷」をコレクション対象としてみるならば、作家の名前がとても重要です。作家の名前は自分で苦労して覚えるしかありません。ここで個別の作家の名前を載せることはしませんが、リンクのページに作家の名前が載っているページを紹介しているので、確認してみて下さい。

     実際には、作家の肩書き(「職称」)の方が重要でしょう。

    中国工芸美術大師中国の人間国宝。茶壷だけに限らず様々な分野の人が認定されています
    江蘇省工芸美術大師江蘇省が認定する
    江蘇省工芸美術名人江蘇省が認定する
    高級工芸美術師江蘇省が認定する
    工芸美術師 
    助理工芸美術師 
    工芸美術員 
    技師駆け出し。販売店が店オリジナルの「茶壷」などをこういう人たちに頼んで量産してもらうことが多いようです

     上に行くほど格が上と言うことになります。北京で買うならば、江蘇省工芸美術大師のもので3万5千元程度(「宜興」で買うなら1万5千元〜、1元=13元くらいで計算してみて下さい)くらいです。後は「職称」に関係なく形が面白かったり、良い土を使っていたりすると助理工芸美術師の作品でもかなりお高い値段をつけます。昨日、北京でラクダの形をした「茶壷」を見かけました。工芸美術員の作品でしたが、お店の人曰く「ラクダ型の茶壷を作ったのは彼が初めてで、彼の特徴だから」ということでかなり高めの値段が付いていました。

     日本ではこれらの作家物をさがすのは苦労すると思います。あったとしても、ものすごい値段がついているはずなので、無理をせず、肩書きにこだわらず自分の気に入った物を買う、という姿勢でいったほうがよいのかも知れません。


    ■ 最後に - 私の場合

     私の場合は以下のようにして買います。何かの参考になるでしょうか?

    胎土の質を見る
    手に持ってみて音を聞いてみる
    価格を聞く
    形を見る
    作家名を見る
    水を入れさしてくれるなら試してみる
    値切る(中国語)

     やっぱり「養壺」して育ちが速いかというのが最大のポイントです。しっかり土の質を見ましょう。その後、手にもってみると色々な事が分かります。そして、それに見合う価格かどうかお店の人に尋ねてみます。この3つのステップで買うかどうかの99%が決まると言っても過言では無いでしょう。値段が物の割には高いと思っても、この人口の中国、この機会に買い逃がしたら次に来た時にはもう無い、というのが基本なので、買ってしまうことがあります。実際に私は、買わないで家に帰り、考え直して買いに言ったらすでに無かったという苦い思いを何回もしているので・・・

     あとは、値切るまでの前ふりで、もったいぶって試したりしてみます。ちなみに、私は作家物では無くても、胎土の質が良ければ迷わずに買います。ので、「茶壷」がどんどん増えていきます・・・

     20万円くらい”授業料”を払えば、「茶壷」の何たるかが分かってくるのではないでしょうか?まあ、最初は1万円以下の物を幾つも買って、「養壺」してみて、いろいろと経験値をアップさせるのが一番です。