■ 中国茶の種類 ■

■ Variety of Chinese Tea ■

茶具画像

■ 6大分類法+1

 中国茶の種類は一説によると2000種以上にのぼると言われています。これでは覚えきれませんので、製造段階の醗酵度によっておおまかに6種類に分ける方法が使われています。ちょっと面倒くさいですがこれさえ覚えればお茶博士へ一歩近づけます。ポイントは製造時の醗酵度と醗酵方法です。頑張って覚えましょう。

緑茶非醗酵茶殺青>揉捻>乾燥
青茶半醗酵茶萎凋>揺青>炒青>揉捻>乾燥
白茶弱前醗酵茶萎凋>乾燥
黄茶弱後醗酵茶殺青>揉捻>初コウ>攤涼>再コウ>悶黄>乾燥
黒茶後醗酵茶殺青>初揉>渥堆>復揉>コウ焙
紅茶完全醗酵茶萎凋>揉捻>醗酵>乾燥
茶外之茶茶樹以外から作られるお茶

 以下、それぞれ詳しく説明していきます。


■ 緑茶

 日本で中国茶というとすぐに烏龍茶を思い浮かべてしまいます。しかし、中国で最も生産量が多く最も消費されているのは緑茶です。一説では80%以上が緑茶だといわれています。もちろん日本の緑茶は中国から運ばれてきたものです。

 緑茶は茶葉をまったく醗酵させずに作った非醗酵茶です。日本の緑茶は蒸して作るのに対して、中国の緑茶は釜で煎ります。緑茶にはビタミンCが豊富に含まれており、お肌を綺麗に保ったり、タバコで破壊されるビタミンを補充してくれます。中国では一般的にガラスコップに入れて80度前後のお湯を注ぎ、茶葉が上下する様を見ながら飲みます。

 最も有名な緑茶である「龍井茶」(ロンジン茶)は淅江省杭州のものが最も有名であり、特に獅子峰で作られるものを最上とします。また「清明節」(4月6日もしくは5日)の少し前に摘む新芽が最も貴重とされ「明前」と呼ばれ最高級のものとされています。「龍井茶」は中国では11等級に分けられるが最上級のものはほぼ手に入らない。

殺青(さっせい)茶葉を釜で煎る事により茶葉の酸化作用を止め、醗酵を止める作業
揉捻(じゅうねん)醗酵を進ませるために手や機械で茶葉を揉む作業
乾燥(かんそう)茶葉を乾燥させる作業

 実際には上記の3段階をすべて釜の中で行なう「炒青緑茶」、乾燥を天日で行なう「晒青緑茶」、火であぶる「コウ焙」という方法で行なう「コウ青緑茶」の種類に分けられるが、どの緑茶がどの製法か、などという細かい事は覚えなくても良い。ただ、「コウ青緑茶」の良質のものが「毛峰」「毛尖」と呼ばれ、産地の名を冠して「黄山毛峰」などと呼ばれるのは覚えておいたほうが良い。

 なお、中国に日本のような蒸した緑茶がないかというと非常に少数派であるがあるのである。もともとは中国でも蒸したものが多数派であったが明代頃から廃れていき、逆に日本で昔の方法が残ったのである。福建省恩思の「恩思玉露」など。

 代表的なお茶:「龍井茶」「太平猴魁」「碧螺春」など


■ 青茶

 日本人にとって最も馴染み深い中国茶である烏龍茶。その烏龍茶は「青茶」に属します。青茶には「鉄観音」や「鳳凰単叢」「阿里山」などなど様々なお茶を総称する呼び名ですが、日本では何故かそれらをまとめて「烏龍茶」と呼んでいます。

 「青茶」は半醗酵茶であり、無醗酵の「緑茶」と、完全発酵の「紅茶」の中間に位置しています。原産地は中国大陸の「福建省」や「広東省」。また、独自の改良を加えた「台湾」も一大生産にのし上がり、今では台湾烏龍茶が最もおいしいという人も居るくらいです。醗酵度はそれぞれの種類によって違うのですが、大体、30%くらいのものが多いらしいです。15%程度の低い物から、台湾の「東方美人」のように醗酵度が70%もあるお茶も存在します。ここまで来ると、かなり「紅茶」に似通った味になります。

 歴史は古く10世紀以前から存在し、宋、明、清の各代を通して皇帝への献上物とされてきました。その後、イギリスなどに運ばれて、貴族社会で嗜好品として愛飲されたそうです。時は過ぎ、台湾と中国が分裂して以降、中国大陸から持ち出された「烏龍茶」に様々な改良を加えて、台湾が独自の「烏龍茶」を生み出していきました。

萎凋(いちょう)取立ての茶葉を日光と室内の2段階で並べて乾燥させて、醗酵を進めると同時に香を引き立たせる作業
揺青(ようせい)室内で竹の籠などに入れて茶葉を揺らしかくはんさせる作業
炒青(しょうせい)釜で茶葉を煎り醗酵を止めさせる作業
揉捻(じゅうねん)茶葉を揉むことにより、お茶の味をだしやすくする
乾燥(かんそう)茶葉を乾燥させて水分を抜く作業

 茶葉の形ですが、丸められた物と、そのままのものがあります。写真でも参考にして下さい。左が台湾「阿里山」の茶葉、右が中国「大紅砲」の茶葉です。

阿里山 大紅砲

 代表的なお茶:「鉄観音」「阿里山」「大紅袍」「鳳凰単叢」など


■ 白茶

 白茶は主に福建省で作られる、生産量が少ない非常に貴重なお茶。約900年以上も前から皇帝たちに愛されたお茶として歴史も古く名声も高い。

 摘み取った茶葉を重ならないように並べ月光で自然乾燥させるという方法で作られ、茶葉には白色の産毛(白毛)が生えていることで有名。

 一芯一葉の「白芽茶」と、一芯二葉の「白葉茶」の2種類に分類され、高級な白茶は「大白種」という茶樹から作られる。白茶には体内の熱を排出させる効果があると言われており、暑い日に好まれる。

萎凋(いちょう)茶葉が重ならないように並べ茶葉の水分を30%まで蒸発させることにより香を引き立たせる作業
乾燥(かんそう)荒茶を分別し、良いものだけを選んだ上で水分を約6%程度まで乾燥させる作業

 上記のように初期の段階で軽度の醗酵を進めることから弱前醗酵茶と呼ばれている。

 代表的なお茶:「白毫銀針」「白毫猴」「白牡丹」など


■ 黄茶

 非常に入手が困難といわれるお茶。白茶よりも古い唐の時代から、黄茶の代表茶である「君山銀針」「霍山黄芽」「蒙頂黄芽」などは存在が確認されています。唐の時代、湖南省洞庭湖にある君山という名の島で、毎年4キロ程度の「君山銀針」がすでに作られており、皇帝へ納められていました。また、清時代、「君山銀針」を気に入った皇帝が命じて40キロ程度を貢茶として納めさせていたそうです。

 代表格である「君山銀針」の茶葉が金色(実際には黄色)をしているので「黄茶」と総称するようになったと言われています。

殺青(さっせい)茶葉を釜で煎り酸化酵素の働きを抑え醗酵を止める作業
揉捻(じゅうねん)茶葉を揉みほぐすことにより醗酵を調整し、お茶の出を良くする作業
初コウ(しょこう)火であぶり乾燥させる作業
攤涼(たんりょう)まだ温かいお茶を重ねて置き、茶葉を冷やす
再コウ(さいこう)再度茶葉を火であぶる作業
悶黄(もんおう)温かく湿気がある段階でお茶を重ねてさらに醗酵を進める作業
乾燥(かんそう)茶葉を乾燥させて仕上げる作業

 初期段階で「殺青」を行い醗酵を止めており非醗酵茶のように思われるが、後で「悶黄」の段階に醗酵を進めているので弱後醗酵茶と分類されるています。

 黄茶には、芽だけを使った「黄芽茶」(「君山銀針」など)、若葉を使った「黄小茶」(「北港毛尖」など)、成長した茶葉を使った「黄大茶」(「霍山黄大茶」など)の三種類がある。

 かつての皇帝たちはガラスコップを使用しお湯を注ぐと微妙な動きを見せる黄茶の茶葉の動きを楽しんでいました。

 代表的なお茶:「君山銀針」「霍山黄芽」「蒙頂黄芽」など


■ 黒茶

 製造段階で人工的に菌を繁殖させて後醗酵させるので後醗酵茶と呼ばれます。特に有名なプーアル茶には、消化を強烈に促す作用があり、中国では「削胃」と呼ばれるほどの強烈さなので空腹時に飲むのは厳禁とされています。

 もともとは雲南省の「西双版納」(シーサンバンナ)に残っているような大型の樹から取れる茶葉を利用して作られていたが、現在では小型化され茶畑で栽培されるものから作られています。プーアル茶では他の茶と違い「陳年」と呼ばれる年月を経たお茶が好まれます。余談ですが新陳代謝と言われるように陳には古いという意味があります。

 黒茶には茶葉がばらばらの「散茶」と、きつく固めてある「緊圧茶」があります。また「緊圧茶」には円盤状の「餅茶」、お碗状の「沱茶」、四角の「磚茶」があります。なお、「沱茶」「磚茶」(せんちゃ)などは「晒青緑茶」を湿らせて緊圧させて作ることが多いようです。これは正式には「再加工茶」(後述)とされます。

殺青(さっせい)生茶を釜煎りし、茶葉の醗酵を止める作業
初揉(しょじゅう)茶葉を一回目に揉む作業
渥堆(あくつい)水分が残る茶葉を堆積させて積み重ねて、細菌を繁殖させ醗酵を進める作業
復揉(ふくじゅう)茶葉を二回目に揉む作業
コウ焙(こうばい)茶葉を火であぶり乾燥させる作業

 プーアル茶はかび臭いので嫌いだ、という言を良く聞きますがが、実際には本物のプーアル茶はかび臭くなどありません。中国では「渥堆」の段階で水をかけて雑菌(カビ等)の繁殖を早め、お手軽にプーアル茶を作るという悪質な製造をされている事がよくあります。しかし、本物のプーアル茶はそのような事をしてないので、カビ臭くなどありませんし、時間が経てば経つほど風味と味わいを増し、まろやかなお茶に仕上がっていきます。よって、プーアル茶ではビンテージ(「陳年」)の20年ものなどは非常に高価になります。なお、文化大革命時代にはほとんど生産されなかったため、ビンテージ物は非常に価値があります。

 すでにコレクターのアイテムとなっている「雲南七子餅茶」では、50年前のものは赤色の包装紙で包むというように年代によって包装紙の色を変えていますが、これも偽物が多いので注意してください。

 なお、中国では昔ながらの方法で作ったお茶を「生茶」と呼び、水などをかけて強制醗酵させたものを「熟茶」と呼び分けることもあるようです。

 代表的なお茶:「プーアル茶」「竹筒茶」など


■ 紅茶

 世界の三大紅茶を知っていますか?

  • 中国産キーマン紅茶
  • インド産ダージリン紅茶
  • スリランカ産ウバ紅茶

 誰がこの世界三大紅茶を決めたのかは知りませんが、キーマン紅茶は世界三大紅茶の一つです。紅茶というとインドの方を思い出す人が多い中で、中国産の紅茶はちょっとマニアックなものになってしまいました。

 中国の緑茶がイギリスへ運ばれる途中で高温多湿により醗酵してしまい紅茶が生まれたなどという話を信じている人がいますが、これはまったくの嘘です。中国にはそれ以前から紅茶が存在しました。

 紅茶のルーツは中国福建省で16世紀頃と言われています。しかし、19世紀にはインド・スリランカに持ち出されて生産されるようになり、中国のものよりも有名になってしまいました。紅茶は緑茶を作ろうとした人が醗酵させすぎて出来たなどというルーツがまことしやかにささやかれていますが、実際のところは不明です。

 中国紅茶の代表「祁門紅茶」はエリザベス女王が誕生日に飲む紅茶として有名であり、香はとても甘い香りがし、一般的に良いものは蘭の香がするといわれています。中国茶と紅茶の中間のような香がすると言われていますが、この香は確実に紅茶です。煙でいぶったような独特のスモーキー・フレーバーが有名であり、西欧ではこの香がエキゾチックだと受けています。

 一般的に、金色をした若芽(ゴールデンチップ)が多く含まれている物が高級品とされ、お湯を入れたときに湯面と茶杯の間にゴールデンリング(コロナ)が出るものが良いとされています。

萎凋(いちょう)天日もしくは室内で茶葉をしおれさせ乾燥させる作業
揉捻(じゅうねん)手や機械で茶葉を揉み、お茶の味を出やすくする作業
醗酵(はっこう)茶葉を醗酵させる作業
乾燥(かんそう)急速に温度を上げて醗酵を止め、低温でゆっくり乾かす

 中国紅茶には、昔ながらの独特の製法で手間をかけて作られる「工夫紅茶」、茶葉を乾燥させるときに様々な香をいぶってつける「小種紅茶」、茶がこなごなにくだかれている「紅碎茶」の三種類があります。「紅碎茶」には「茶葉」「碎茶」「片茶」「末茶」に分けられるが、これは欧米の紅茶のグレードの分け方である「ペコ−」や「オレンジペコ−」などを真似たものとされている。

 代表的なお茶:「祁門紅茶」「英徳紅茶」「正山小種」など


■ 茶外之茶

 茶樹は学名をCamellia sinensisという種類の植物であり、それ以外の植物を利用してお茶のように飲むものを「茶外之茶」と呼ぶ。

 代表的なお茶:「苦丁茶」「虫茶」(蛾の幼虫の糞を利用したお茶)など


■ その他-再加工茶について

 中国ではまだちゃんと出来上がっていない加工途中のお茶を「毛茶」と呼び、それをさらに加工して製品となる「精茶」が出来上がります。青茶の製造途中のものならば「青毛茶」などと呼んだりもします。「精茶」にするために行なう作業には、茶葉の大きさをそろえたり、製造段階で混じる小さな屑をふるいで落とす、などがあります。

 なお「毛茶」の段階で特殊な加工をするものを「再加工茶」と呼びます。「再加工茶」は六大分類の中には入りませんが非常に重要な分類方法なので覚えておいたほうが良い。

花茶 色々な種類のお茶に、花の匂いを吸着させた物を花茶という。代表格は「茉莉花茶」(ジャスミン茶)。茶葉と花の比率を3:1とするのが昔ながらの方法。歴史は以外に古く1000年以上も昔、南宋の時代からだという。また、花をそのままお茶のように飲む「菊花茶」(これは「茶外之茶」とするべきでしょう)もあります。「桂花烏龍」(再加工することにより青茶から花茶へ)のように烏龍茶をベースとするものもありますが、大体は緑茶をベースとしており、主産地は福建省。昔は、質の悪い茶葉を花の香でごまかすために作られていたという。
緊圧茶 上記しましたが、「晒青緑茶」などを湿らせてプレス加工したものです。このようなお茶を黒茶とするか再加工茶とするかは難しいが、どちらにも属していると言うのが正解でしょう。


参考文献
『中国茶の辞典』(成美堂出版編集部、成美堂出版、2000)
『中国茶の世界』(保育社、周達生、H6)