日陰で育つ食虫植物

〜栽培スペ−スの工夫〜

田辺 直樹

  昨今の厳しい日本の住宅事情で食虫植物の栽培スペ−スを確保するのは大変であり、広い庭に温室がいくつもあるのが理想ですが、マンションやアパ−トのベランダで細々とやっている会員も多い事でしょう。立派な設備があれば、珍品、難物が何でも育つというものではありません。私の友人でアパ−トの自室を温室がわりにしてしまい、また狭いベランダでも工夫して多くの種を栽培しています。その工夫のひとつとして日陰のスペ−スの有効利用があります。多くの食虫植物は日光によくあてて栽培するのが当たり前になっていますが、どっこい日陰でも十分育つもの、あるいは日陰でないと具合が悪い種類もあります。

(1)P.lusitanica

 前回の『雑草化栽培』で説明しましたが、この種は日陰でも充分、開花結実してくれます。とくに湿度を上げてやると、日向のものよりも大型に成長します。

(2)P.sharpii

 この種はメキシコ産なのですが、栽培方法は熱帯ドロセラに準拠して、年中高温多湿の環境で栽培しますが、日光によくあてるよりも、日陰で空中湿度の高い場所を好みます。よく種子を飛ばして雑草化するのですが、日陰を好んで大型に成長しているのを良く目にします。 (3)D.schizandra

 ドロセラの中では人気NO1であり、当方では外国からも注文が来るくらいすごい人気なのですが、枯らす人も多く、分譲についてもちょっと考えてしまいます。栽培環境が充分整っていないのか、テキストどおりにやっていないのか分かりませんが、この珍品は日陰で育てる代表選手であると思って下さい。

 うちではネペンテス専用温室(0.5坪アルミ製)の棚の下に置いています。用土は水苔でもOK、砂利系ブレンドでもOKで配水良く植えます。腰水もしていますがあまりビショビショにはしないで、触って湿っている程度にします。あとは鉢ごと、ビニ−ルカップをかぶせて高湿度を保持します。ビニ−ルカップには空気口を2か所程開けてください。ネペンテス専用温室の棚の下にはD.prolifera やネペンテスの実生小苗も置いていますが、成育は順調です。日光は朝日だけがほんの数時間当たるのみで、1日中温度変化の少ない環境になっています。夏の暑さに弱いとされていますが、当方では真夏も同様の管理で、何の障害もなく夏を越します。ポイントは温度変化を少なく(つまり日陰に置く)して、空中湿度を保持することです。                                        

(4)メキシコ産ムシトリスミレ

 moranensis,esseriana,ehlersae,gypsicpla に代表されるグル−プですが、これらの仲間は日光に良く当てても栽培できますが、日陰でも充分成育します。特に栽培スペ−スで悩んでいる方はこれらの仲間は日陰に片付けましょう。できれば朝日がすこし当たる位の場所が望ましいでしょう。これらは昼は活動をしないで、夜活動するCAM植物であるといわれているため、夜に霧をかけたり、ハイポネックスなどを葉面散布すると絶大な効果があります。また、水苔で固めに植えこみます。洋ランの栽培経験があれば、それと同じ要領で固く詰めます。ちょうど雑巾を強く絞った感じです。腰水はしないで、上から散水または霧を夜にやります。                    

(5)日本産ムシトリスミレ

 当方では日本の早出峡、八方尾根、赤城山、秋田駒ケ岳などのムシトリスミレを産地別に管理していますが、特に早出峡の自生地を見て思ったのですが、完全に北側の斜面に自生しているのです。日光はほとんど当たっていないと思います。したがって当方では朝日が少しだけあたる玄関先にこれらの植物をおいていますが、毎年開花し、増殖しています。

(6)モウセンゴケ・コモウセンゴケ

 日本の自生地を見るかぎり、モウセンゴケやコモウセンゴケは日陰でも充分成育しているのを確認できます。これは栽培下でも同じことで、日陰で育てると大型に成長し、葉は青白く見栄えはしませんが、ちゃんと開花して種子もできます。

(7)ミミカキグサ類全般

 ミミカキグサ類は日陰で管理している人も多いでしょうが、それは誤りで、日光に充分当てないと開花してくれません。特にdichotoma やheterosepalaなどは充分日光に当てるべきでしょう。ただ、ほとんどの種類は日陰で管理しても成育上の障害はないと思われます。
reniformis.alpina.longifoliaなどの着性種は日陰でも平気です。栽培スペ−スを更に工夫するのであれば、ドロセラ等に同居させることも考えてはいかがでしょうか?あるいはU.striatula 等は雑草化させる事です。

(8)タヌキモ類                                       

 フサタヌキモ、コタヌキモ、ヒメタヌキモは日陰で管理しています。逆にそれ以外は充分日光に当てて管理しています。

(9)D.burmanii

 雑草化栽培でも説明しましたし、海外の自生地報告でも明らかなのですが、日陰でも充分成育ししかも大型になります。たしかに日光に良く当てれば赤く色づき鑑賞価値も高まるのですが、日陰で高湿度でも充分大型に成育し、開花・結実してくれます。ぜひ、日陰で雑草化させてみましょう。

 以上が日陰栽培可能な品種です。こうしてみると結構あるもので、工夫次第では限られたスペ−スでかなりの種類が栽培可能となりますので、各自で工夫してみてはいかがでしょうか。          

 またサラセニア全種、ドロソフィルム、ピグミ−ドロセラ、ムジナモ等は充分日光に当てないと、成育不良を起こし、やがて枯死しますのご注意ください。