食虫植物の雑草化栽培
田辺 直樹
食虫植物というのは他の一般的な植物に比べてはるかにデリケ−トで手間のかかる植物であり、とても放任栽培に耐え得るものではありませんが、いくつかの品種については、放任栽培が可能です、というよりも、放任栽培したほうが成績もよいものがありますので、ご紹介します。
(1)D.burmanii
これは園芸店でも良く売られているものですが、1年草なので種子を採らねばなりません。その種子を用意した新しい鉢にパラパラと蒔くと、2〜3週間で発芽が始まります。ところがその鉢を置いた環境がD.burmaniiにとって良い環境であれば問題ないのですが、意外と余り良く育たないもので、経験のある方も多い事でしょう。偶然にも隣の鉢に種が飛んで、勝手に発芽したものはとても威勢がよく、「ブルマンニ−」とラベルまでさしてある新しい鉢では、余りうまく育っていない。どうしてなのか? 結論から言えば、この植物の栽培は難しいのです。用意した新しい鉢に種を蒔くと、意外と密に蒔いてしまい、大量に発芽はするものの、あまり大きくならないのです。この植物の栽培のポイントは、植え替えを極端に嫌う事と、乾いた用土を好むの2点です。私はこの植物の種子を蒔く場合に、あえて新しい鉢は用意しません。当方にはブルマンニ−と書いたラベルを差している鉢もありません。温室内の例えばD.capensisやP.primulifloraの鉢等に「鬼は外」の要領で適当に蒔くのです。するとその蒔いた鉢の内、Burmaniiにとってベストな環境のものだけが、元気に親株まで成育してくれます。当方の経験ではピグミ−ドロセラの鉢に居候しているものが、結構ご機嫌の様です。また、温室内のいたるところで、burmaniiの種子が飛び散り、あちこちで勝手に成育しいています。また最近では戸外にまで進出しており、春になると勝手に発芽してきます。1年草であるこの植物を毎年手間をかけずに楽しむひとつの方法ではないかとおもいます
(2)Bybris liniflora type
これもburmaniiと同様に管理しています。最近はオ−ストラリアより様々なバラエティ−が導入されていますが、雑草化できるのは基本種のみです。当方の温室内はもちろんの事、戸外にまで進出して、薄紫の花を咲かせています。この種は植え替えを嫌い、用土は常に湿っている方が良く、burmaniiと混じって生える事はありません。秋になると種が大量に採れるので、勝手にこぼれさせています。冬もそのまま外に置いたままですが、春になると大量に発芽、自然選別されていおり、本当に手間のかからない種類であります。なお、温室内のものも同じサイクルで、冬に発芽した事はありあせんでした。
(3)P.lusitanica
和名をヒメムシトリスミレといい、こいつも温室の内外問わず、種子で勝手に殖えてくれます。成育条件が良いと1株から2〜4本ぐらい連続して花茎をあげ、次々開花してくれます。種子も自家受粉で大量にとれますので、本当に雑草化します。湿潤な用土が適しますので、深めに腰水します。なおP.sharpii も同様でよくDrosera の鉢の方隅でひっそりと開花しているものです。
(4)日本産ミミカキグサ3種
ミミカキグサ、ムラサキミミカキグサ、ホザキノミミカキグサのうち、当方の戸外の栽培場ではムラサキミミカキグサが異常繁殖しています。モウセンゴケやインタ−メディアの鉢からウジャウジャとはびこっています。鉢のみならず水盤の中からも発芽しており、見応え充分です。繁殖力は余り強くありませんが、10月中旬になれば、ひっそりとミミカキグサやホザキノミミカキグサがポツリポツリと咲き始めます。これらのミミカキグサもそれ専用の鉢は存在していません。モウセンゴケ等の鉢に勝手に居候しているのです。八丈島の一正園からサラセニアを購入すると、その鉢からムラサキミミカキグサが発芽したという経験のある方も多いと思います。
(5)U.striatula(マルバミミカキグサ)
これは温室内で大繁殖しています。秋になると一斉に開花し、種子をつけますので、回りの鉢にどんどん進出します。気を付けて見ていないと回りの鉢が全てstriatula になってしまいます。とくに他のUtricularia と混じってしまい、分離が困難になってしまいます。なお、U.sublada、pendatactila、 bisquamata等も同様に種子繁殖しますので、要注意です。
また、longifolia,reticulata,sandersoni等は種子ではなく、地下茎によって隣の鉢に潜り込みますので、注意しましょう。
(6)D.indica
当方では20年以上前に千葉県茂原で採取したD.indicaの種子により毎年発芽・開花しております。他の鉢にまで種子が飛んで雑草化するほどではありませんが、毎年必ず発芽してくれます。よく発芽はするけど大きくならないという話を聞きますが、原因は空中湿度が足りないからで、水槽等で人口的に湿度を上げるよりも、鉢の回りにタヌキモの水瓶を並べると驚くほどうまく育ちますのでやって見て下さい
(7)Pygmy Drosera
10月から1月にかけてムカゴがついている状態の鉢に水やりや風により、ムカゴが隣の鉢に飛んでしまいます。一見見分けのつきにくい仲間ですので混ざってしまうと収拾がつきません。とくにleucoblasta.manniana,oreopodion やpygmea,omissa ×occidentalis,occidentalis 等は混ざるとまず見分けは困難です。またpulchella を花の色別に管理していても、自然に混ざってしまい。orangeflowerの鉢からwhiteflower が咲いたりします。ムカゴをつけたら早めに採取するか、類似する種類同士を近くに置かない事です。
(8)オオバナイトタヌキモ
タヌキモ類の栽培は当然にその種類ごとに容器を分けて栽培するわけですが、どういうわけかオオバナイトタヌキモはあちこちに大繁殖します。当方でもムジナモの容器になぜか侵入してきて、ムジナモの成育スペ−スを阻害してしまいますので、早めに除去します。真夏には黄色い花を一面に咲かせるのですが、他の容器にどうして侵入するのかいまだによくわかりません。
(9)D.capensis・spatulata
最近はさまざまなタイプが導入されていますが、どのタイプでも種子が勝手にこぼれ落ちて、回りの鉢から実生苗がたくさん生えてくるものです。当方ではalbaとallredが雑草化しています。これらを1株ずつ別の鉢にちゃんと植えてやると順調に育ちます。また、同様の管理で栽培可能なspatulata もあちこちに進出します。特に奄美大島産、徳之島産、沖縄産白花、やtokaiensisはよく繁殖しますが、不思議と千葉茂原産のものは、雑草化するような事はありませんし、他のspatulata の系統よりも作りにくい様な気がします。
以上、説明してきた種類はどれも栽培容易かつ入手も容易で、ややもすると駄物扱いされがちですが、これらの種類が雑草化する環境こそが食虫植物の栽培に適した環境である事を忘れないで下さい.P.lusitanica,U.striatula が枯れる、あるいはオオバナイトタヌキモが殖えないようでは、環境づくりにもうひと工夫必要でしょうし、また、これらが満足に育てられないうちに、珍品、難物に手を出す事は厳に慎みたいものです。