千葉県・茨城県の自生地報告

〜残された自然を求めて〜

田辺 直樹

千葉県の自生地については、有名な成東、茂原の他にもいくつかの自生地の調査ができました。また茨城地方の自生地についても会員の森本氏、小山氏、佐藤大作氏の協力のお陰でいくつかの自生地の調査を行うことができましたので、この場を借りて御礼申し上げると共に、詳細を報告いたします。

  1. 県内唯一の自生地 

 千葉県成東市へは5月のイシモチソウの時期にしか行く事が出来ませんでした。イシモチソウは千葉、茨城地方ではここでしか見られない大変貴重な存在でありますし、茂原から八積にかけて至る所に群生していたのはもう20年以上も昔の話になってしまいました。

 5月21日(日)の見学会のこの日は良く晴れ渡り、イシモチソウの白い花も一斉に開花し、誠に見事な情景でした。イシモチソウの他にもコモウセンゴケ、モウセンゴケも元気よく成育しており、ナガバノイシモチソウも発芽して間もない極小苗をいくつか確認できました。ここ成東ではホザキノミミカキグサ、ミミカキグサも夏から秋にかけて確認する事ができます。

 千葉県茂原市の尼が台公園内にある人口の湿地(昔は自生地であった)にコモウセンゴケ、池の中の至る所にタヌキモが自生しています。タヌキモの自生地は県内ではここでしか確認する事は出来ない貴重な存在であります。昨年はナガバノイシモチソウも多数確認できたのですが、今年は1株も見つける事が出来ませんでしたまた、茂原のもうひとつの自生地(水口方面)については、ちょうど台風の去った次の日で自生地自体が水没しており、立ち入る事が出来ませんでしたが、草友の調査報告によるとミミカキグサしか確認出来なかったとのことです。茂原一帯はまだまだ捜せば自生地はあると思いますので、今後調査をするつもりです。

2、珍奇!垂直に切り立つ岸壁に自生 

 20年程前に千葉県銚子市のチョウシタヌキモの自生地を確認し、浅瀬の沼地に大量に自生していたのですが、昨年の10月1日(日)にいってみた所、すでに水質悪化のために絶滅しておりました。ここは、鉄バクテリアが良く繁殖している所で、沼全体が赤茶色に染まっていたのですが、今ではドブ臭い匂いがするただの水たまりと化していました。

 そこから車で30分程の自生地は町の天然記念物に指定されており、私も最近初めて知りました。ここの特徴はほぼ垂直に切り立った斜面にモウセンゴケ、シロバナミミカキグサが自生している事で、大変珍しい所です。 

 斜面の頂上からは湧き出る清水が流れ湿潤な環境を作っており、斜面は岩で出来ており、その岩に苔が繁殖し、至る所にシロバナミミカキグサやモウセンゴケが自生しております。しかもそのような斜面が数百メ−トルも伸びており、端から端まで歩くのに、1時間以上かかりましたが、とても奇妙な自生地で、今までの常識では考えられない気持ちでとても感動しました。

 ひとつ不思議に感じたのは、人間の手の届く所にはほとんど自生していない点です。これは人間により採集されてしまったと見るのが自然の様な気がします。あるいは、本能で人間の手の届かない所へ成育場所を移動したのでしょうか?特にシロバナミミカキグサは種苗業者のリストでは2千円で販売されており、穿った見方かも知れませんが、採集は厳に慎んでほしいものです。

3,失われ行く自生地

 茨城県の鹿島地方では3年程前までは、あちらこちらに自生地があったのですが、乾燥化により今では一か所になってしまったようです。残された最後の自生地は、膝ぐらいまで草に覆われており、その中に埋もれる様にしてモウセンゴケやコモウセンゴケが自生しておりました。コモウセンゴケがとても大きく成育しており見事でした。コモウセンゴケは草に覆われてほぼ日陰の状態ですが、帰ってそれが幸いしているのか、直径5cm以上ありました。

 又、ナガバノイシモチソウも数株しかありませんでしたが、大きく成育し白い花を咲かせておりました。かなり乾燥している様で、このまま放置すれば、いずれ絶滅の道をたどるのは時間の問題のような気がします。余談ですが、この場所は茸狩にも最適な場所の様です。

4,足の踏み場もない程に!

 茨城県水戸市の中心からから車で約30分程の所にあるこの自生地は、ミミカキグサ、ムラサキミミカキグサ、ホザキノミミカキグサの3種が混生する場所で、かなり水位の高い所に3種が混じって当たり一面に大群落を作っており、しばらく声が出ませんでした。まさに「足の踏み場もない」とはこの事で、踏まずにはいられない程びっしりと生えていました。また、数は少ないですがモウセンゴケやコモウセンゴケも生えていました。かなり水位が高く、長靴がないと歩けない程なのですが、水苔が大群落を作っているのにも驚きでした。

5、森の中のモウセンゴケ                                   

 その場所から車で10分程離れた自生地はとても奇妙な所でした。普通、食虫植物の自生地と言えば、日当たりの良い湿地というイメ−ジですが、ここの自生地はその常識を覆すに十分な環境でした。

 その場所とは、森の中なのです。辺り一面が木に覆われて日照はごく僅かの木漏れ日程度しかないと思われます。そんな環境の中にモウセンゴケが力強く自生しているのにはおどろきです。

 地面は湧き出る清水があちこちで湿地を作り、その中に生えています。土は鹿沼土や桐生砂の様な目の荒い砂で出来ております。シロバナミミカキグサが自生していた古い記録があるので、辺り一面を捜しましたが、モウセンゴケしかありませんでした。モウセンゴケは日照不足のせいか青白く、9月中旬にしてはまだ種子も出来ていない所を見ると、若干成育が遅れている様に感じました。

 以上が昨年の自生地調査の報告です。茨城と銚子の自生地については詳しい場所の記載はしない事にしましたが、理由は言うまでもないと思います。自生地の消滅の原因は100 %我々人間により行われている事実を忘れてはなりません。

 国内の自生地調査は海外のそれとは違い、珍しい品種の発見や採集が目的ではありません。栽培品を見るのとは一味も二味も違った感動を得る為だと私は考えます。そして、これらの自然が永久に残る事を切に願うばかりです。なお、他の会員や山野草の会の方からの情報によると、千葉県や茨城県内にもまだまだ自生地があるそうで、間を見つけて調査をしていきます。

 なお、自生地調査の為の7つ道具を列挙しておきますので参考にしてみて下さい。         

1.自家用車 

2.地図(出来るだけ詳細なもの)

3.長靴(藪の中、沼地等へは必需品です)

4.虫よけスプレ−(自生地は蚊が多い)

5.薬(バンドエイド、虫さされ用の軟膏)

6.撮影道具(カメラ、ビデオ)

7.弁当(自生地での食事はまた格別です)

 なお、採集する場合は、ビニ−ル袋、小さいシャベル、ピンセット等があると便利ですが、採集は最小限度に止め、できれば種子を採る様にし、くれぐれも自然破壊をしない様に注意しましょう。

 また、天然記念物指定の場所や町や地域で保護されている場所での採集はしてはいけないことは言うまでもありません。