食虫植物の枯らし方

〜私の失敗自慢〜

田辺直樹

 食虫植物の栽培は他の植物に比べるととても特殊な環境に成育している事もあり、とてもチュ−リップと同じ感覚で栽培出来るものは少ないと思います。大事なのは栽培する環境であり、例えば次の通りです。

 <日照> 日光には十分当てる方がよいのか、それとも半日陰、もしくは午前中だけ、遮光の必要は?

 <腰水> 何cmぐらいの深さがよいのか? 腰水してはいけない品種は?

 <用土> 水苔、ピ−ト、パ−ライト、バ−ミキュライト、鹿沼土、軽石 等どれが適切か?

 <湿度> 空中湿度はどれくらい(%)あれば? 

 <温度> 最低温度は・・・凍らせても平気なのか? 温室の必要は? 夏の暑さは、

 上記の条件に更に季節による変化も加わると、例えば夏は遮光して、冬は良く日に当てるとか、冬は腰水を控える・・等等 厳密に言えば品種毎に違うわけで、栽培管理は大変な仕事です。しかし、植物というのは適応性に幅がありますので、ある程度の温度調整や工夫で大抵のものは作れます。これからお話するのは私が今までに枯らしてしまった品種を中心にその問題点などを考えていきたいと思います。

(1)サラセニアの失敗

 @ 病気

 春先にサラセニアの新芽にアブラムシがよく着きます。専門的な事は解りませんが、それが原因で葉が不自然によじれてしまい、いわゆるウイルスという病気です。一度こうなったら治った試しはありません。私は手持ちの10株全てに感染し、全滅してしまいました。(10年前)もし、1鉢でも不自然によじれた葉を見つけたら、隔離して、新鮮な水苔で植え替えてしばらく様子を見て、それでも治らなければ思いきって捨てて下さい。対策としては、アブラムシ用の薬品を3月頃に鉢にパラパラと蒔けば平気でしょう。プルプレア、プシタシナは意外と病気に強いと思います。

 A 根腐れ

 昨年の夏から秋にかけて、我が家のサラセニアは夏の暑さによる腰水の水温上昇による根腐れにより、ルブラ、ミノ−ル、ベニゴロモ、エドジマン、シラナミが枯死しました。8月は旅行で留守の日が多かったため、水切れを防ぐ意味で深く腰水しておいたので、水温もお湯になっていたと思われます。教訓としては、深く腰水するのであれば水温上昇に気をつける。毎日散水できるのであれば、腰水しない方がいいかも知れません。同じ事がハエトリソウにも言えると思います。

(2)ドロセラの失敗

 10年くらい前の話ですが、ピグミ−ドロセラを水苔で植えて、ネペンテスと同じ条件で栽培していた事がありました。最初は元気に成育していたのですが、やがて姿を消しました。ピグミ−ドロセラの自生地の様子(行った事はありませんが)から、水苔ではなくピ−ト、軽石、パ−ライトなどの混合がよく、空中湿度もかなり低くても平気のようです。冬の最低温度も5度から7度くらいで平気です。日光に良く当てて、乾燥気味に作れば良いと思います。また、ミニアタは夏の暑さに弱いらしく、昨年の夏に無事休眠に入ったミニアタはそのまま永眠してしまいました。                                         

 ドロセラにもいろいろありますが、一般的にドロセラはそのまま栽培しているとだんだん茎が成長し、植物体そのものが浮き上がってきます。例えば、ブルマンニ−、カペンシス、アデラエ、ロツンディフォリア、インタ−メディア等経験があると思います。そのままにしておくと株が弱るので、ピンセットでグイッと水苔の中に押し込んでやると元気を回復します。アデラエは茎が成長し株が弱って来たら、ちょっと可哀想ですが、植物体の上に水苔を敷きつめてしまいます。1か月程で新しい目が出てきて元気な姿を現します。カペンシスは最近色々なタイプが導入されているようですが、アルバと称する葉も花も白いタイプがあります。昨年の夏に直射日光に当てたところ1日で調子を崩してしまい、慌てて温室内に取り込みました(我が家の温室の全てに夏のみ遮光(30%)をしております)またオ-ルレッドフォ-ムと称する植物全体が真っ赤になるタイプがあるのですが、温室内で遮光していたら赤く成らずに、普通のカペンシス になってしまいました。そして、9月の終り頃には古死てしまい、レッドフォ-ム がデッドフォ-ム になりました。

 プロリフェラやシザンドラは夏の暑さに弱く、また日光を好みません。5年前はそんな事も知らず、日光に充分あてて栽培し、調子を崩して枯らしてしまっていました。今では、ネペンテス専用温室の棚の下の日陰に1年中置いています。夏もそのままですが、不思議と枯れません。高湿度を維持すれば、意外と丈夫なのかも知れません。                                   

 球根ドロセラは昨年の7月中旬まで元気で良く開花していたのですが、夏の暑さが原因か、日光に当て過ぎたのが原因かイシモチソウを除いて全て枯れてしまいました。私のこれからの研究課題であります。

(3)ネペンテスの失敗

 ネペンテスは吊り鉢にするものですので、鉢の中は良く乾きます。水やりをうっかり忘れると気がついた時にはしおれている事もあり、下手をすると枯死します。対策としては鉢の底には鉢ガラや発砲スチロ−ルを入れずに底まで水苔にする事、素焼き鉢ではなくプラ鉢にすることです。それから、株の根本付近にいつまでも古い葉を残しておくと、散水時にその葉が邪魔して、鉢に水がかからずに水切れで失敗した経験があります。

(4)ピンギキュラの失敗

 北アメリカ産のものは余り失敗はないのですが、メキシコ産のものはいろいろ失敗しました。モラネンシス、ギプシコラ等のグル−プです。ポイントはあまり過湿にしない事で、ピ−ト、バ−ミキュライト、パ−ライトの混合用土が適していると思います。そして、腰水も程々にして、直射日光はやめた方がよく、ギプシコラは半日陰、それ以外はガラス越しの光りで午前中のみにしています。また、直接雨に当てることも良くないようで、エセリアナ に雨が直接当たり、葉がバラバラになってしまいました。

さらに、冬には冬芽を作らせる事で、11月になったら散水を控えて乾燥気味に作り、腰水もやめてしまいます。やがて冬芽を作りますのでそのまま10度くらいに保温して越冬させます。この時期は増殖の時期でもありますが、温室内はナメクジが多いので、葉挿し苗を食害されない様に気をつけてください。今年もギプシコラの細長い葉をナメクジに食べられました。平皿にビ−ルを入れて夜に温室内に置けば、朝、ナメクジが溺れています。(本当です)

 夏の暑さに弱いとされるレプトセラス、グランディフロラ は全然平気で、調子を崩したのはコルシカでした。8月には早々に冬芽になり、9月中旬に再び成育を始めてしまい、開花はせずに10月初旬に再度冬芽となり、そのまま枯死してしまいました。                                    

(5)ウトリキュラリアの失敗

 ミミカキグサの仲間(レチキュラタ、サンダ-ソニ-等)は平鉢に水苔で植えて深く腰水し、日光に良く当てれば栽培は容易ですが、すぐに鉢いっぱいに葉を広げたところで、花茎が伸びてきます。可憐な花が咲きますが、そのままにしておくと、植物体が弱ってきますので、4等分ぐらいに株分けして鉢数を殖やしましょう。特にレチキュラ-タ、グラミニフォリア、サンダ-ソニ-は成長が早いのですぐ鉢いっぱいになってしまいます。ストリアツラは繁殖力旺盛で、種子でどんどん増殖します。昨年ポリポンフォリックスの種子を蒔いた筈の鉢にストリアツラが出現し、また、昨年会員H氏から入手したコルヌタの鉢からも突然出現しました。何年か前になにかの原因で全滅させてしまった事があるのですが、翌年の春に全然違う鉢から出現したこともあり、その生命力は目を見張るものがあると思います。

着生種(レニフォルミス、ロンギホリア等)は夏の暑さに弱いものが多く、余り強い日光を好みません。今年の夏に10鉢以上あったレニフォルミスが暑さの為に7鉢も枯れてしまいました。また冬の寒さに弱いものもあり、カリキフィダは一昨年の冬に寒さの為に4鉢全部枯れたにがい思い出があります。

(6)ダ−リングトニアの失敗

 10年以上昔に園芸店で購入しましたが、夏に見事に枯れました。夏の暑さに弱いのですが、私はそれ以来手掛けていません。理由はただ一つ、買っても枯れるからです。冷房装置があれば話しは別ですが、私のレベルで夏の暑さに弱い品種で工夫してもダメなものは始めから手を出さないことです。ですから日本産のムシトリスミレ やヘリアンフォラ は冷房装置を整えてからのお楽しみにしております。

 食虫植物を入手し、その後何らかのアクシデントにより枯死させてしまった経験はどなたにでもあることと思います。枯れた時に初めてその植物の弱点なりコツの様なものを感じる訳で、失敗は何らかの教訓になっている筈です。私も、今まで何株いや何百株枯らしたか解りません。会誌にも開花報告やうまく育っている時の栽培報告は頻繁にあるのですが、枯れました・・という報告は余り目にしません。私も入会したての頃は、良く枯れてしまい、自信をなくし、自分を責め、『もう食虫植物なんかやめようか』と思った時もありました。枯らす事を薦めるつもりはありませんし、枯れたらまた買えばいいやという安易な考えも歓迎されません。しかし、枯れた時にこそ、その品種の特徴なり、自生地の状況なりを調べて、栽培設備を整えて、更には分譲者への問い合わせ等をして、『今度は絶対枯らさないぞ!』と心に誓って再度チャレンジする姿勢が大事だと思います。最後に品種毎の栽培のポイントを一覧表にしてみました。学問的なものではなく、あくまで私の栽培環境をまとめたものです。やや大胆にグル−プ分けをしており、本来であれば品種毎に若干の違いはあるものですが、ある程度の目安になれば幸いです

 品種名

 場所

 日照

腰水

冬期の保温

湿度

 用土

 ドロセラ

 ロツンディフォリア・インタ-メディア・アングリカ

オボバタ・フィリフォルミス・アンフィル・アンテルム

 1年中戸外

 充分

 普通

  なし

気にしない

 水苔

ピ-ト+川砂

 スパスラタ・ナガモト・カペンシス・ハミルトニ-

カピラリス・ネオカレドニカ・マダガスカリエンシス

モンタナ・クネイフォリア・ナタレンシス・ディルシアナ

 温室

 充分

 普通

 最低15度

 充分

 水苔

 アデラエ・プロリフェラ・シザンドラ

 温室

 日陰

しない

 最低15度

 充分

 水苔

 ピグメア・プルチェラ・ニチズラ・パレアケア

 温室

 充分

しない

 最低7度

 不要

ピ-トパ-ライト等

 

 シャ-ピ-・ルシタニカ・プリムリフロラ・イオナンサ

 温室

 充分

 普通

 最低15度

 充分

 水苔

 モラネンシス・ギプシコラ・エセリアナ・アグナタ

エ-レルサエ・ゼチュリ-

 温室

 午前中

浅めに

 最低10度

 充分

軽石鹿沼土

 グランディフフロラ・レプトセラス・コルシカ

 戸外

 午前中

 普通

 なし

 充分

 水苔

 レチキュラタ・グラミニフォリア・ヘテロセパラ・

サンダ-ソニ-・コルヌタ・スカンデンス

 温室

 充分

深めに

最低15度

 充分

 水苔

 ストリアツラ・ディコトマ・ビスクアマタ・トリカラ-

プレロンガ・プレヘンジリス

 温室

 充分

普通

最低15度

 充分

 水苔

 ロンギフォリア・レニフォルミス

 温室

 半日陰

しない

最低15度

 充分

 水苔

 ネペンテス 全種

 温室

 充分

しない

最低18度

充分100%

 水苔

 サラセニア 全種

 ベランダ

 充分

 する

 なし

気にしない

水苔・軽石

 セファロタス

 温室

 充分

 する

 最低15度

  充分

  水苔