食虫植物の殖やし方
田辺直樹
食虫植物の魅力にとりつかれて早いもので20年経ちました。思えば小学2年の時に植物図鑑に載っていたモウセンゴケやウツボカズラを初めて見たのがきっかけだったとおもいます。当時は買っては枯らしの連続で挫けたこともありましたが、栽培法の上達とともにその殖やし方について自分なりに色々研究しました。
食虫植物の栽培もある意味ではコレクション的な要素があり、設備や場所の充実とともにどんどん色々な品種が欲しくなるものです。念願の品種を手に入れたまではいいが、栽培方法については会誌の情報や参考書が頼りで、下手をすると枯れてしまったりします。1株しかない場合、枯れるとまた入手しなければならないわけで、10株あれば、よっぽどのアクシデントが無い限り安心出来ると思います。
これからの内容は食虫植物のうち殖やし易い品種を中心に、その殖やし方のコツを説明したいと思います.
(種子)
食虫植物に限らず、殖やす基本はまず種子からです。利点は一度に大量の品種を得る事が出来ることですが、欠点として親株になるまで時間がかかる事、発芽までの管理に注意がいる事などでしょう。温室があれば何時播種しても構いませんが、温室が無い場合には春に播種したほうが良いでしょう。耐寒性のある品種であれば冬まいても発芽は春に成ります。
用土は細かく刻んだ水苔かピ−トモスと砂をまぜたものでもよく、よく日光に当てて管理します。雨に当てると細かい種子が飛び散ってしまいますので注意を要します。2週間から1か月で発芽するでしょう。無事発芽し、ある程度成長したら大きめの鉢に間隔をあけて植え替えます。親株に成るまで相当時間の掛かるものもあり、気の短い人は止めたほうがいいかも知れません。
(葉挿し)
食虫植物の魅力はその葉が変形した捕虫葉に鑑賞価値があるものですが、葉挿しで殖えるというのもまた、食虫植物の大きな魅力だと思います。ドロセラなどの葉を本体からちぎり取り、湿った水苔の上に並べて置くだけです。利点は短期間で容易に増殖できる事で、欠点は親株本体から葉をちぎりとるという事は、人間にとっての胃袋を取るようなもので、親株が調子を崩す事がありますので、あまり葉を取りすぎたり、調子を崩している葉からは止めたほうがいいと思います。
ドロセラの葉挿しのコツは、小さい鉢に発泡スチロ−ルや鉢ガラは入れずに、水苔(刻まなくても平気です)を敷き、腰水にしてビショビショ状態にしておきます。そしてそこに葉を並べビニ−ルのコップをかぶせて湿度を高く保ちます。ビニ−ルのコップは通気をはかる為に2か所程穴を開けてやりましょう。時期は5月頃が良いようです。早ければ2週間で発芽、発根が始ります。発芽後の管理は種子の場合と同じです。当方では発芽するまでネペンテス 専用温室(0.5 坪アルミ製、冬期最低温度18度)の棚の下の薄暗い所に置いてあります。日光によく当てなくでも特に問題はありませんでしたが、一部の品種は日光によく当てたほうが良いと思います基本的には一枚の葉から一株発芽しますが、プロリフェラ、シザンドラ、フィリフォルミス、カペンシス などの葉の大きいものは一枚の葉より3株から5株発芽します。また、マダガスカリエンシスは発芽率 100%でよく増殖します。
ピンギキュラの葉挿しはあまりビショビショにしないで、少し湿っている程度で十分です。今年の春に入手したセルレアが調子を崩し、慌てて植え替えたのですがうまく行かずに、遂に思い切って葉を基部より5枚取り外して葉挿ししました。残念ながら親株は枯れましたが、5枚の葉より合計12株程発芽し、自分自身驚いています。メキシコ産のものは冬芽をほぐして葉挿しすれば沢山殖やすことが出来ます。ピンギキュラの葉挿しした鉢はネペンテス専用温室の日当たりの良い所に置きました。やはり、空中湿度を高くするのがポイントの様です。
(根伏せ)
ドロセラの一部で行なわれているようで、利点は葉挿しと同じで短期間で殖やせる事でしょう。欠点は特にありません。植え替え時に不要に伸び切った根を切り取り、水苔に埋めておくだけで2週間から1か月で発芽するでしょう。ただ、根伏せ出来る品種は別表の通り限られているので、それが欠点かも知れません。根伏せする鉢は普通に植え込む場合と同じ様に鉢ガラを入れ、水苔を敷き詰めて根を横にして埋め込みます。あまり過湿になると根が腐るので、うちでは腰水にしていません。湿度はあまり気にしなくても良いようです。品種による差もあり、ビナ-タ・エキストレマ はあまり発芽率は良くなく、発芽しても時間が掛かりますが、それ以外はよく殖えてくれます。
(ムカゴ)
ピグミ-ドロセラの専売特許で、日本では冬にムカゴをつくります。ムカゴができたらピ−トと砂を混ぜた用土に2cm 間隔でムカゴを並べます。覆土の必要はありません。親株と同様の管理で平気で、やがて発芽して1か月程で一人前になります。種子の一粒一粒を2cm 間隔で播く人はいないと思いますが、ムカゴを同様にすれば伊勢丹の展示品として出せるくらい立派なピグミ−ドロセラになりますので一度お試しあれ。
(挿し木)
主にネペンテスで行なわれており、前号の岡村氏の記事にあった通り、水挿し発根法が最も良い方法だと感じます。細かい手順は前号を参考にして頂くことにし、私なりに注意すべき点を申しますと、発根までは容易なのですが、その後の植えつけがポイントで、水苔以外は止めたほうがいいとおもいます。今年、ピ−トとバ−ミキュライトとパ−ライトの混合用土で植えてみたところ全滅しました。排水が悪く、用土が過湿になりすぎたためと反省致しました。
(株分け)
私はウトリキュラリアで行なっています。今年、ヘテロセパラを購入し、鉢一杯に葉が広がっていたので、小さい鉢に適当にちぎって植えましたが、その小さい鉢もすぐ一杯になってしまいました。成育するスペ−スがあればどんどん繁殖し、力強さを感じます。