U.reniformis U.calycifida U.alpinaの栽培方法

木村 隆良

● U.reniformis

 南米原産の着生種の大型Utricularia です。花茎が1mにも伸び、赤紫色の大型の花を着けます。下唇中央には黄色の2本の線が入ります。繁殖力は旺盛でややもすると増え過ぎるきらいがあります。直径15cmに及ぶ大きな蓮形の葉を着けます。  7〜8号鉢でこのような葉を林立させている様は温室内で存在感があります。地上部も大型ですが、地下部はさらに発達しており、サラセニアを除けば食虫植物の中で、一番発達した根部を持っています。鉢の中を直径1cm に及び主根が渦を巻き、所々から出た細い根に多数の捕虫器を着け小動物を捕らえ消化、吸収します。暑い夏には少し暑がりますが、枯れるようなことはありません。耐寒性は少しあります。

<育て方>

 水苔に植え腰水または潅水する。成育が旺盛なので年一回は鉢増ししないと根が植物を持ち上げたり、鉢底から根や花が出たり見苦しくなる。逆にこのような成育状態を示さず、初めのままのまとまった状態を維持しているならば、栽培、成長に問 題がある事を示しています。直径1cm位の根が鉢底へ鉢底へと伸び固まるので、上部が空洞になりがちです。植え替えの時、根鉢が高くなり納まりづらくなりますが、上部の空洞とか古い根の部分を抑え気味に、あるいは取り除いて植えると良い。2号ポット苗から3〜4年で7〜8号鉢サイズになるが、10号鉢ぐらいになると調子が落ちる。葉は直径15cm以上になる。

<使用する鉢>

 こだわらなくてよいが、樹脂、ビニ−ル製のものは鉢壁と根の抵抗が少ないためか、植物体の浮上が著しい。

<植える材料>

 砂系のものを避ければ問題はない。砂系のものを使用すると太い根先が伸びる時抵抗になる為か根が身長せず成育しない。

<開花>

 大型の花で花茎は1mになり立派であるが、開花は余り望めない。開花すれば種子は簡単に採れる。開花可能株が50鉢以上ある中で年に数本開花した事はあるが、例年チラホラで咲かない年もある。最小3号鉢で開花するが、大鉢になれば開花するとは限らない。花期は2〜3月から花茎を出し、4〜5月頃咲く。1花茎に5〜6輪の花が着く。自然には種子は実らないが、助媒してやれば簡単に種子が採れます。

<種子の播き方>

 鞘が茶色になり、しわがよってくれば完熟です。ある日突然鞘果し飛び散りますので注意が必要です。無数のけし粒より小さい埃のような種子です。播種床は一般的なものでよいが、親株になるまで数年かかるため増殖方法としては選択しない方が良いでしょう。

<殖やし方>

 種子からの成育は開花も去ることながら成育が遅いため、根伏せが良いでしょう。植え替えの時等に余分な根を切断して根伏せしますが、切り口から腐敗が始まり活着力が低い為、あまり細断しないほうが良い。できれば葉が1枚着くようにすればほぼ活着します。しかし急がないならば鉢底からはみ出した根(太いもの、タヌキモ状の細いものはダメ)を根伏せする程度にとどめるのが無難で、根の先端を使う方が活着率は高い。葉挿しもできます。しかし、葉の数より根の分量の方が圧倒的に多いので根伏せの方が良いでしょう。

<置き場所>

夏期は40度を超える温室内で栽培しています。冬期屋外では葉を落とし多少のダメ−ジを受けるが、枯れる事はない。5度〜10度もあれば充分です。夏期は従来問題なかったのですが、ここ2年程の暑さには根腐れを起こし、調子を落としたものは年2回の植え替えを余儀なくされています。(関西地方の例です)花期屋外の半日日陰に置いているものもありますが順調です。暖かい季節のみですが屋外で一日中日光に当てておくとがっしりとした葉になりますが、葉は余り大きくならず成長は遅れます。

<病気>

時々ウドンコ病の様なものを見ますが、葉を切り捨てておくと以後見かけません。

<害虫>

 時々新芽にアブラムシがつきますが、捕殺します。

<開花デ−タ> −平成8年−

1.栽培鉢内容(最小開花鉢サイズが3号鉢なので3号鉢以上を調査)

	 3号鉢	 4号鉢	 5号鉢	 6号鉢	 7号鉢	 8号鉢	  計	
	 21鉢	 13鉢	  7鉢	  2鉢	  5鉢	  3鉢	 51鉢	

2.開花鉢サイズと使用コンポストと花茎数

3号鉢 生水苔 3号鉢 生水苔 3号鉢 乾燥水苔 4号鉢 生水苔 7号鉢 生水苔 8号鉢 生水苔	  計	
  1本     2本     2本      1本      2本  	1本	  9本	

3.各開花鉢の中で最大の葉の長さを調べると、最小6cm、最大13cm。6cm以上の葉を持つ鉢は43鉢。43鉢中6鉢(14%)*6cm 以上の葉になれば開花するか?

4.コンポストが生水苔のものは12鉢。12鉢中5鉢(42%) *生水苔で植えれば開花するか?

5.開花鉢は6鉢   51鉢中6鉢(12%)   *3号鉢サイズになれば開花するか?

 以上ある程度成長すれば、どのような条件がそろえば開花するのかの調査ですが、そのほかいろいろなファクタ−がありますが、何が影響するのか研究の余地があります。

●U.calycifida

 ほぼ、Drosera 類と同じ扱いでよく、扱いやすい種類です。緑の葉に茶色の葉脈がくっきりと出た長円形の葉が次々でます 。良く育てば、3cm×5cm位の葉になります。成長が早く、種子から1年以内に開花します。ピンク色の花が1年中楽しめます。Utricularia 全般に言えますが、余り小分けにないで、大鉢仕立てで花茎を林立ちさせて楽しみます。

<種子の播き方>

水苔の表面をならし、適当にばらまきます。表面が劣化しないように工夫してください。種子の採取時期によるかどうか発芽の状態にばらつきがあるようで、たっぷり蒔いたつもりがまばらにしか発芽しないことがあります。大鉢仕立てにする場合を除き、5mm前後の葉になれば、早めに鉢上げしないと、鎖が絡んだような根ですので、根が傷みます。しかし切れてもさほど影響はありません。

<育て方> 

腰水または潅水します。日光は余り好まない様です。冬期10度前後あれば支障なく花期も暑がらない強健な種類で、ほおっておけば鉢底から根を出し、あちこち這い回って芽を吹き開花します。

<開花>

年中30c〜40cmの花茎が上り、1本に10〜20数個の花をつけるため、中型のUtricularia のわりには温室を彩ってくれ、年中楽しめる。なぜか花期には種子が取りにくい。

<殖やし方>

鉢壁からでる様になれば鉢増しする。成育と共に鉢内のあちこちから目を吹いて来るが、分けずらい上に根痛みするので、開花を待ち、種子を取る方が賢明です。

<病気>

でたことはありません。

<害虫>

アブラムシがつきます。

● U.alpina

 南米原産の大型着生種のUtricularia です。古くからU.montana の名で栽培されていました。地中にある2〜3mmの捕虫器で小動物を取り、消化吸収します。地下部の良く発達した種類です。夏期には葉落ちする事があるようですが、根部にラッキ ョの様な貯水球を持ち、地下部のみで夏を越し生きのびる様です。かなり普及しているはずですが、いざとなると入手難、高価です。同じ大型のU.renifdormis やU.longifoliaとくらべ、一番花付きが良く、親株になれば必ず大輪の花を咲かせ、繁殖力も旺盛です。チャレンジしてみる価値十分のひとつです。夏越しに問題がある事を良く耳にしますが、私の所では入手後、数年来途絶えることなくむしろドンドン増えています。あまり小鉢に分けないで7〜10号鉢の大鉢で花茎を10本上げて豪 華に楽しんでいます。

<育て方>

一言でいって一般のDrosera Utricularia と同じ栽培法で十分です。着生種ということで鉢の側面にわざわざ穴を開けたりしたこともありますが、どれだけ効果がありますか、またザルに植えた事もありますが、あちこちから根がはみ出し、根先が痛みますので余り関心しません。つまるところ駄温鉢(深い浅いは問わない)程度に植えれば無難なようです。ある植物園で超深腰水にして順調に成育しているのを見た事もあり、着生種ということにあまり気を使わなくても良い様です。しかし、振り返ってみれば入手当初あれこれやっていたころの方が花着きは良かった様です。生水苔で植えて時々潅水します。
この種は根部にラッキョの様な貯水球を持ちますので、水苔が白くなっても大丈夫です。1芽小鉢に植えておけば、ランナ−の様な根をどんどん伸ばし、所どころより芽を吹き、芽数が殖え、1年もすれば、5号鉢位になり、10cm位の紡錘形の肉 厚の葉が出る様になれば開花します。ひとつの芽から葉は4〜5枚でます。葉は初め内側に巻いています。成長とともに伸び始め、丸みを帯びていた葉先はやがて尖ってきます。この頃になると前述の貯水球の2cm×3cm位のものが芽の下に数個着きます。小さい葉にも1mm位の小さい貯水球が着いています。貯水球のない芽でも成育には関係ありません。

<使用する鉢>

余りこだわらない

<植える材料>

一番下に大きめのごろ石を入れ、生水苔で植えます。乾燥水苔でも構いません。そのほかの砂系のものは経験ありませんが、たぶんだめでしょう。

<開花>

3〜5cm位の葉の苗を1芽植えれば、1年で5号鉢があふれる位になり、2cm×10cm位の(最大5cm×20cm位になる)葉が出る様になれば、花茎が上がってきます。だいたい2〜3月頃です。1年中という記述を目にしますが、私の所では、数年来10数鉢栽培していますが、一度もありません。純白で下舌中央のみ黄色が入る5cm位の大型の花が1花茎に数個着きます。折しもこの時期はU.reniformisの開花時期でもあり、両者とも花もち良く、長期間温室を賑わしてくれます。自然に種子は実りませんが、助媒してやれば種子が取れます

<種子の蒔き方>

 鞘が茶白になり、しわがよってくれば完熟で、ある日突然飛び散りますので注意が必要です。無数のケシ粒より小さい種子です。1果で7〜8号鉢一面に蒔けます。播種床はDrosera などと同じ各自好みのコンポストで十分で、簡単に発芽します。  葉長2〜3cmになれば鉢上げできます。急ぐならば1cm位でもできます。要はいつ行っても差し支えないという事です
 ただ、あまり遅くなると根が絡み合って大変です。発芽するとすぐに貯水球を着けます。1年で開花するという記述を目にしますが、少し無理でしょう。

<温度>

一般種のDrosera Utricularia と同居している40度を超える温室内で夏に弱るという事は皆無で、葉落ちすらしません。冬期は12〜20度位の所に置いていますが、限界は7〜8度でしょう。5度になれば貯水球は腐ります。

<病気>

時々ウドンコ病がでますが、薬剤をかければ治ります。花の時期は早めに治しておかないと、花に出ると、蕾のままで開花しません。

<害虫>

アブラムシがつきます。