2002.11.18
一色 浩

 
ギアチェンジ

 
最後にホ−ムペ−ジを更新したのが6月だから、すでに5ヶ月何もしなかったことになる。言い訳になるが、ここのところ仕事がとても忙しかったのも一つの理由であるが、なんとなく書きたい気持ちになれなかったのが真相であろう。
このような状況にもかかわらず、かなりの人が小生のホ−ムペ−ジを訪れてくれる。有り難い限りである反面、とても申し訳ない思いがする。きっと熱心に読んでくれる人もいるはずであるので、そのような人の気持ちにお答えしたいと思う。しかし、書くのがとても億劫でしょうがない。ついつい放っておく事になってしまう。
せっせと書いていた頃には、書くことがあまり苦にならないで、気軽に書くことができたが、改めて書こうと思うとなかなか筆が進まない。数行書くと、書くことがなくなってしまう。考えても何も出て来ない。職業作家だったらこんなとき、どうするのだろうか?書く気がしないなんてのんきなことは言っていられない。さだめし、苦しいものがあろう。その点、アマチュアは楽である。しかし、気分が晴れない。
会社を退職してから1年と数ヶ月になる。年齢的にはまだ60代に入ったばかりである。会社勤めを辞めたと言うことは、社会の第一線からは下がった場所にいると言うことであろう。自分がそう思わなくても、いやでも社会がそのように扱ってくれる。大きなお世話だと思うが、多勢に無勢で嫌でも認めさせられてしまう。
会社勤めをしていた頃は、本人の意思と関係なく、毎日いろんなことがあって、それなりに変化に富んでいたが、家で仕事をするようになってからは単調そのものになってしまった。家族との会話は,内容がほとんど変わらないし刺激もない。毎日欠かさずに散歩をしたり、図書館に行ったりするので、人と会うことは多いが、話をすることはほとんどない。テレビを見るといろんなことをやっている。衛星放送を見ると、世界中の出来事を詳しく知ることができる。しかし、基本的に自分とほとんど関係がないと言ってよい。
大きな才能に恵まれていたら、チャンス到来とばかりに、朝から晩まで倦むことなく自分の好きなことをするであろう。残念ながらそんな才能はないので、せっかくの自由な時間を活かすことができない。定年退職前は、晴耕雨読とか、趣味に生きるとか、誰の指図も受けないで自分のやりたいことに打ち込むなど、といろんなことを考えたが、現実はそんなに甘くない。
こういう状況が精神衛生上、好ましくないに違いない。毎日、毎日あくせく過ごすのもおかしいと思うし、ほとんど一人で刺激の少ない生活を送るのもよくないような気がする。さりとて、あくせく型の生活を求めてみても、いつかは静かな生活に戻らざるを得ない。もう少し静かな生活を続けたならば、静かでも充実した生活の仕方をつかめるかも知れない。そういう意味では,現在は過渡期にあるのであろうか?
現状を端的に言うと、古い価値観のままで新しい生活を送ろうとしていることであろう。ポイントは、量から質への転換であろう。一杯のお茶でも慌しく飲むのではなくて、じっくり味わうことに努めるべきであろう。会社勤めをしていると、自分の評価に関しては、他人がしてくれる部分の比重が大きい。会社を離れてしまうと、自分の評価はいやでも自分だけでしなければならない。しかし、ともすれば他人が自分に代わるだけで、相変わらず他人の目に見える自分の姿を評価するような形になりかねない。
これでは意味がない。しかし,だからと言って独りよがりの評価はさらによくない。社会性を失って嫌われるばかりである。そもそも評価なんて意味ないよと言うこともあろうが,そんなに超然と生きられるものではない。やはり、他人の目を大いに気にしながら、自分なりに生きていかざるを得ない。
年を取ると言うことは、死との距離が近くなることである。それならば身近に死を置いて生きているかと言うと、そうではない。まだまだ先のことと思っている。しかし、まったく考えない訳ではない。要するに、極めて中途半端である。昔の人はどうだったであろうか?もっと真剣に自分の死と言うものを見つめていたのではなかろうか?
生き方を変える上で、自分の死といかに向き合うかと言うことも大きなポイントであろう。死と向き合うことによって、生の意味が分かって来るかも知れない。今まで見えなかったような生の側面が見えてくるのではないか?大多数の日本人の例に洩れず、小生も宗教とは無縁の生活を送ってきた。若い時は、死ぬまで宗教とは無縁であろうと思ってきたが、ここらで大きく考えを変える必要がありそうである。
こんなことを書いているうちに、なんとなく気分が晴れてきた。人生においては、意識するとしないにかかわらず、何度か生き方を変えるべき時があるように思う。今の小生は、壮年から老年への転機だと思う。ギアチェンジをしないといけないわけだが、それが分からない。小生がいま置かれている状況は、そういうことではなかろうか?


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