多摩川散策日記2007年9月)

文と写真:上田大志

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9月1日 石田大橋下流(右岸)

曇り、涼しい。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会(鳴く虫を聴く会)。今回は「多摩川と語る会」のメンバーも参加された。育成地のカワラノギクは8月の猛暑で枯れてしまい、生き残っている株は発見できなかった。カワラナデシコはあちこちに咲いているが、高水敷の不法整地により生息地が狭められている。カワラケツメイは増えてきているように感じる。高水敷のあちこちでニセアカシアの林が大きく育っている。どうも様子の違う林があって見にいくと、ニワウルシ(神樹)だった。水辺で夕暮れを待っていると、アブラコウモリが空いっぱいに乱舞しはじめた。間もなく始まったマツムシとスズムシの演奏に、ああ今年も聴くことができてよかったとしみじみ思う。

  

 

9月3日 奥多摩

曇りのち晴れ。ミサゴ、トビ、クマタカ、キジバト、アオゲラ、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ホオジロ、カワラヒワ、シジュウカラ、カケス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

アシナガバチがマルハナバチを捕らえ、針を刺してしとめようとしているところに遭遇!マルハナバチは必死になってもがき、大格闘の末、脱出に成功すると大慌てで飛び去った。アシナガバチは疲れたのか、その場をとぼとぼと歩いていたが、しばらくして飛び去った。

 

9月4日 山口貯水池

キリキリッ!という声に湖面を見渡すと、アジサシがオオタカの幼鳥に追われていた。狩りに失敗した若いオオタカは今度はドバトの群れに突っ込み、騒ぎに気付いたハシブトカラスの群れに逆に追い回されてと元気いっぱいだった。

 

9月6〜7日 台風9号、関東地方を直撃

多摩川では上流域の降雨量が凄まじく、小河内では累加雨量が観測史上最大となる710mmを記録。ダム余水吐から緊急放流が行われたこともあり、調布市の石原では最大水位が6.02mと、一時は計画高水位をも突破するという記録的な出水となった。

 

9月8日 五日市

晴れ、暑い。五日市児童館の自然観察会。出水で川遊びはできず小庄の田んぼへ。子どもたちの関心はカエル&おたまじゃくしと、バッタ&コオロギに分かれたようだ。畦のカラムシにフクラスズメの幼虫がうじゃうじゃたかっていてゾッとする。児童館への帰り道、「真っ黒い」ヘビに出会う。シマヘビ?それともヤマカガシ?みんなで近づいたらすぐに逃げてしまった。

 

9月9日 睦橋下流〜多摩川中央公園(福生水辺の楽校「多摩川の達人になろう!」)

■ ■ 第6回「多摩川の自然〜川原の自然かんさつ」 ■ ■

今回は子どもたちと「多摩川で遊ぼう!〜バッタをゲット!」を楽しむ予定だった。しかし、6〜7日にかけて関東地方を直撃した台風9号の影響は凄まじく、この日のフィールドとなるはずだった福生南公園は土砂に埋まり、園内の通路が崩落して閉鎖。「バッタをゲット!」も中止となってしまった。「多摩川の達人になろう!」では、濁流いまだ冷めやらぬ多摩川を見ながら川の志民館まで歩き、自然の力を知る機会とした。

●参加された皆さんの声

・台風が過ぎたばかりの多摩川の様子を観察することができて、とても良い体験になった。南公園の道路が崩落していたのには本当にびっくりした。多摩川が“あばれ川”と言われていたことが納得できた。中央公園下の川原の草がすべて流されていたことや、公園の地面が酷く抉られている様子など、今日だから見られたことだと思うと、子どもたちの活動を中止したのが残念だった。いつもの川との違いをぜひ体感させたかったと思う。

2日前に台風9号は去り、青空の下で「バッタをゲット」を楽しみにして来たが、多摩川はまだ台風の後遺症の真只中だった。何と河川敷の道路が川の中に消えていた。水の力は凄い!

・いつも見ている川がすっかり変わっていてビックリした。こんなに変わってしまうとは自然の力は怖い。川に泥が堆積していたのにも驚いた。

・バッタなどの生き物が住みやすい環境は、人、子どもたちにとっても住みやすい環境だと思う。人類は他の生き物や子どもたちが住みやすい未来をつくっていかなければならないと思う。

  

 

9月10日 奥多摩

雨のち曇り。小河内ダムでは余水吐からの放流が続けられていた。国道411号は土砂崩落のため通行止めの区間も。丹波山へは深山橋を渡って小菅経由でないと行けない。クマタカ幼鳥が無事で何より。

 

9月15日 永田地区

晴れ、暑い。カワラノギクPJのA工区除草作業。先日の出水でC工区から下流は石河原になったが、A工区は植生が流失することもなく、水際部分が洗掘されて少し狭くなった程度。しかし、冠水したことによって植生が傾き、そこに流下物が絡んで作業はやりにくかった。また、細かな土砂が新たに堆積し、石が地面に埋もれてきている。やはり、植生が流失するほどの攪乱なしに石河原を維持していくことはできないと感じた。

 

9月16日 河口右岸

晴れ、猛暑。近く、いすゞ跡地のスーパー堤防工事が再開される。これに伴い、堤防沿いの樹木群が撤去されることになった。多摩川と都市とをつなぐバッファゾーンとして、工事終了後は速やかに緑地帯の復元を図ることが求められる。カワウ、アマサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、ムナグロ、アオアシシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、セグロカモメ、ウミネコ、ユリカモメ、キジバト、ヒバリ、ハクセキレイ、ドバト。

 

 

9月18日 野川(三鷹市大沢)

晴れときどき曇り。三鷹羽沢小3、4年生の体験学習「野川ワールド」。今年の収穫は、メダカ、モツゴ、コイ、タモロコ、グッピー(1)、ミナミヌマエビ?、アメリカザリガニ、タイコウチなど。乾いた手で魚に触れないように気を付けることが、生き物に対する思いやりの心につながっていくと実感した。

 

9月19〜20日 銀山平

快晴、朝夕は涼しいが日中は猛暑。ハチクマ、トビ、ハイタカ、ノスリ、イヌワシ、キジバト、ハリオアマツバメ、ヤマセミ、アオゲラ、アカゲラ、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ノビタキ、ホオジロ、ウソ、イカル、コガラ、ヒガラ、シジュウカラ、メジロ、カケス、ハシブトガラス。ルリタテハ、キベリタテハ。

   

 

9月22日 永田地区

晴れ、猛暑。カワラノギクPJのA工区除草作業。先週の続きとして、ススキの繁茂が目立つ上流側の除草を行った。

台風9号の通過から半月、多摩川の水量はほぼ通常時に戻ったように見えるが、白濁はいつまで続くのだろうか。イタチが水際の草木の間をすり抜けていく。柳山公園のヒガンバナが見頃を迎えた。

 

9月25日 友田町地先

晴れ。先日の出水でカワラノギクの自生地は流失し、生存を確認できたのは数株のみ。1株だけあったカワラハハコとカワラニガナ群落も消滅。ツミやサシバなどタカの渡りは十羽ほど。

 

9月28日 一之瀬高原

晴れ、暑い。ハチクマ、ノスリ、ヒヨドリ、ウグイス、メボソムシクイ、ウソ、コガラ、ヒガラ、ヤマガラ、メジロ、カケス、ハシブトガラス、ソウシチョウ。

 

9月29日 青梅市成木

雨のち曇り。青梅上成木森林環境保全地域の「東京グリーンシップ・アクション」。常福院の裏の森を歩きながら、ミズナラやブナの自然林、シカやリスの食痕などを紹介した。