多摩川散策日記2006年6月)

文と写真:上田大志

 

 

6月3日 笠取山

晴れときどき曇り。自然環境アカデミーの「多摩川の源流へ行こう!〜新緑の笠取山へ」。毎年行っている10月末の紅葉は素晴しいが、その頃は日が短いので笠取山山頂まで行けず、「水干まで来てもう少しなのに残念」という声もあった。それならばと、新緑に溢れ、夏鳥たちの声が賑やかな時季に企画した。アズマシャクナゲの花が見頃であることも期待して・・・

集合はいつも通り7時に拝島駅。日帰りなので本当はもう少し早い方が良いのだが、遠方からの参加を考えるとこれが限度。貸切バスに乗り込み、奥多摩湖を経て2時間半で登山口の作場平に到着。バスを降りるや、「ピッコロロ・・・」コマドリの声が耳に飛び込んできた。ここは山梨県(甲州市)の一之瀬高原。先ほどまでどんよりと曇っていた空に晴れ間が広がり、爽やかな風が吹き抜ける。谷間に響くコマドリやミソサザイ、エゾムシクイなどの声に聞き惚れ、タチツボスミレやニリンソウ、オオカメノキなどの花を見ながら、沢沿いの山道を登っていく。笹の茂った林の奥で鳴いている鳥たちを見つけるのは難しいが、高い梢でさえずるオオルリの姿を見ることができた。クリンソウは茎を伸ばしはじめたところで花はまだ。ヤブ沢峠まで登って一息。ミズナラ林に針葉樹が目立つようになり、メボソムシクイの「チョリチョリチョリ・・・」という涼しい声に癒される。笠取小屋前の広場で昼食を食べて、いよいよ水干、笠取山へ。月末にはレンゲツツジの花が彩る高原はまだ早春の趣き。ミネザクラの花は散って間もなく、空気はひんやりとしていて、すでに初夏を迎えている下界との季節の違いに驚かされる。

いつもは水干を見た後、少し下で湧き出している多摩川の最初の流れを味わうのだが、今日はそのまま笠取山山頂を目指す。岩のゴツゴツした最後の登りは少々きついが、満開のアズマシャクナゲのトンネルを抜けて、「あともう少し!」と、全員歩き通した。

「多摩川の源流へ行こう!」と言っても、水干、笠取山を訪ねるだけでなく、一之瀬高原周辺で水源林の動植物をじっくり観察したり、民宿や山小屋に泊まって、夜や早朝の自然観察をしても楽しいだろう。今後も季節を変えながら継続していきたいと思う。

 

 

6月4日 福生南公園周辺

曇りときどき晴れ。「ふっさ環境フェスティバル」。自然環境アカデミーのメンバーとして、筆者はガサガサと自然かんさつを担当した。ガサガサには、常連の子どもたちのほか、川で魚とりをするのは初めてという親子も大勢参加し、シマドジョウを中心に、ジュズカケハゼ、アブラハヤ、アカザなどをゲット。サナエトンボ類、コオニヤンマ、ハグロトンボなどヤゴの体つきの違いに驚いていた。自然かんさつの方は参加者が少なかったのが残念だが、ありふれた草木をじっくり観察するのも楽しいものだ。

 

6月6日 小菅ほか

早朝、東久留米の自宅で「チョリチョリチョリ・・・」という声で目覚めた。外を見ると、目の前の桜の梢にメボソムシクイが来てさえずっている。先日の笠取山をはじめ、すでに繁殖地の亜高山帯に着いている時期なので、ちょっと遅れてしまったようだ。

今日は福生水辺の楽校の「多摩川で遊ぼう〜夏休み源流体験!」の下見で小菅村へ。多摩川源流研究所の中川さんにフィールドを案内してもらった。冷たい沢の中をさかのぼり、ヘズリもある源流体験は、普段川に接していない子にとってはかなりスリリングなはずだ。

 

6月7日 かに坂公園上流

曇りときどき晴れ。福生六小5年生の「川の生きもの調べ」学習。当初は自然環境アカデミーへの依頼だったが、福生水辺の楽校でサポートすることになって、地域の皆さんや漁協、市環境課の方々も駆けつけてくれた。また、公民館松林分館の「あそびを発見しよう!」に参加している子もいた。こうした動きを広げ、地域の環境学習を支えていきたい。

 

6月10日 大栗川合流点

晴れときどき曇り。カワウ、ゴイサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、ホトトギス、ヒメアマツバメ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、(アヒル)、ドバト、ガビチョウ。チョウゲンボウは今年も無事に巣立ったようだ。

 

6月17日 金比羅山

曇り。五日市児童館の少年探検隊。金比羅山は五日市小の子どもたちにとっては何度も登っている学校の裏山だが、今日は地形図を見ながら道のない尾根を歩き、藪をかき分けて山頂を目指した。「えっ、ここに出たんだ!」、2時間ほどの探検は新鮮な体験だったようだ。神社の広場で昼食後、1時間ほど自由遊びの時間にしたら、みんな鬼ごっこや虫探しに夢中になっていた。五日市少年探検隊では、自然の中で遊ぶ楽しさを友だちや下級生に伝えられるジュニアリーダーを育てていきたい。

 

 

6月18日 上河原堰上流〜宿河原堰上流

雨。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。上河原堰の上流にはオギ、ヨシの茂る中州が点在する。あちこちからオオヨシキリの声が聞こえてくる。そろそろツバメの集団ねぐらにもなる野鳥の楽園だ。下流の人工ワンドは出水で形を変えながらも残っている。土手にはネズミ・ホソムギが目立つが、ネジバナやカワラサイコが見頃。クララやウマノスズクサ、そして全国的にも絶滅が心配されているノジトラノオも発見。雨が強くなったので、あいとぴあセンターのロビーで昼食。午後は多摩水道橋を渡り、かわさき水辺の楽校が活動しているビオトープ池を見て解散。窮屈だった登戸駅が改装され、JRと小田急線がデッキで結ばれた。カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、イカルチドリ、コアジサシ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、オオヨシキリ、セッカ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

6月22日 大栗川合流点

曇り。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、エナガ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ヤマガラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、(アヒル)、ドバト、ガビチョウ。

 

6月23日 野川(三鷹市大沢)

曇り。羽沢小5年生の体験学習。今回はモツゴとギンブナの幼魚が多く、メダカは少なかったが、腹部に卵をつけたメスが1匹。おたまじゃくしのようなナマズの幼魚やハグロトンボのヤゴも人気だった。メダカの観察を通して、水生生物の生態と野川の水環境との関係や、その変化について考えていくようにしたい。

 

6月24日 永田橋上流

曇り。カワラノギクPJでA工区の除草作業を行い、目立つイタドリを刈り取った。ヨモギの繁茂が気になる。この実験区の役割は、種(しゅ)としてのカワラノギクを保存することと、カワラノギクをはじめとする河原植物の生態を知ることだろう。カワラノギクを保全していくためには、ここの個体群が元気なうちに、野生復帰について具体的に考えなければならないと思う。

 

6月25日 多摩川中央公園周辺(「多摩川の達人になろう!」第3回)

楽しい川での活動には必ず危険が伴う。だからといって、あれもこれもダメと禁止ばかりしていては、楽しくないばかりか活動そのものができなくなる。川で活動する際にはどのような危険があり、どうすればそれを回避できるかを知り、万一トラブルがおきてしまったときにも、的確な対処ができるようにしておくことが重要なのだ。

今年も夏本番を前に、川での体験活動の普及に取り組んでいる倉持武彦さんに水辺の安全確保について指導していただいた。まず川の志民館で、安全管理の考え方について事例を挙げながら、「あなたならどうする?」という対応の仕方やファーストエイド、服装・持ち物などについて学んだ後、河原に出て、どのような危険があるのか全員でフィールドをチェックした。午後は実際に川の中に入って、流れの強さや川底の感触を確認するとともに、瀬の横断とスローバッグによる救助法を体験した。最後に今日の活動を振り返り、各自が「ヒヤリ!ハッ!」としたことをまとめた。

刻々と変化する自然の中で、さまざまな状況に対応することは容易ではない。しかし、安全への意識が高まることは、同時に余裕を持って子どもたちを見守り、楽しく活動できることにつながるはずだ。

* * *

■参加者の声(今日の活動であなたが「ヒヤリ!」「ハッ!」としたことは何ですか?)

●川原を歩いていて・・・

・やぶ漕ぎのとき、草のつるが多く、足に絡みついて非常に歩きづらかった。

・ツルヨシに足をとられ、転びそうになった。

・草のつるに引っ掛かってつまづいた。

・ビン、カン、ハリガネなど、ケガの元が多くあった。

・ジャカゴの鉄線が引っ掛かる。

・川原(水際)を歩いているとき、踏み込んだ石がぐらつき転びそうになった。

・大きな石がグラグラして、足をひねって捻挫しそうになった。

・川原を歩いていて、石が動いてハッとした。

・おしゃべりしながら歩いていて注意力に欠け、石につまずいた。

・川原の石でつまずいた。

●川の中に入ってみて・・・

・水中の石がヌルヌルしていて滑りやすかった。

・川を渡るとき、石がヌルヌルしていて足元が定まらず、身体のバランスを崩しそうになった。普段川に入るときは滑り止めのついている渓流靴を履いているので気にならなかったが、履きものによって随分感じが違う。

・浅瀬横断のとき、腰より下の深さだが、大きな石がグラリ、ヌル。足を滑らせてヒヤリ。

・川底が滑って身体のバランスが崩れ、転びそうになった。

・川の底が滑り、バランスを崩しかけた。

・半世紀ぶりに浅瀬(腰の深さ)を横断したが、滑って転ばないように注意した。

・川を横断するとき、途中で流れがきつくなって不安になった。

・川を渡っているとき、思いのほか深くて、思わず何かをつかもうとしたが、川にはつかむものがないことを改めて思い知った。

・陸から見て想像していたよりも川の流れは深かった。

・鉄橋の橋げた周りのよどみは見た目よりも深かった。

●「スローバッグレスキュー」の体験で・・・

・スローバッグが思うように投げられなかった(特に2投目)。万一のときにはパニックになると思うので、日頃の心掛けと練習が大切だと思った。

・スローバッグを投げたが、流されている人まで届かなかった。万一のときに子どもを助けられるだろうか。

・スローバッグが流されている人まで届かなかったり、届いても首に巻きついてしまったりした。

・スローバッグがあらぬ方向へ!これでは流された人は溺れてしまうかもしれない。投げる際のコントロールが難しい。使うことのないように、危険の予防が一番!

・スローバッグを投げるコントロールが難しい。

・流される体験で、ロープをつかむ側の対応も意外と難しい。

・ライフジャケットを着用しても、いざというときに身体が空を見るように浮くだろうか。

●その他・・・

・見た目にはきれいな川の流れだが、危険がいっぱい。

・川原は自然のもの皆のものなので、自分たちが何かをしようとするときには、そこに住んでいる生き物のことやそこで遊んでいる人の安全なども考えないといけないと思う。

 

6月29日 大栗川合流点

晴れ、真夏日。オオタカのハンティングと餌運び。カワセミの巣立ち。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、コアジサシ、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。