多摩川散策日記2005年8月)

文:上田大志

 

 

8月1日 大丸堰周辺

晴れ。スコープで対岸を望むと、土手のカワラナデシコが開花したのがわかる。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、オオタカ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月2日 小菅川源流

晴れ。「多摩川の達人になろう!」の下見に出掛けた。小河内ダム、小菅フィッシングヴィレッジ(水の館)に寄った後、小菅川源流の雄滝と白糸の滝へ。沢沿いは涼しく、飛沫のほとばしる滝の側は長くいると寒いくらいだった。深緑のシオジ林、ギンバイソウやノリウツギの花が咲き、タマアジサイの花をヨツスジハナカミキリが訪れている。林道ではオオムラサキやスミナガシなどの蝶を見ることができた。帰りは小菅の湯、山のふるさと村、奥多摩ビジターセンターに寄り、それぞれで知り合いに出会い、近況など語り合った。

 

8月6日 秋川(五日市)

晴れ、猛暑。五日市児童館の「少年探検隊」。あゆみ橋から沢戸橋まで秋川の流れの中を3km近くもバシャバシャとさかのぼり、最後は大岩の上から淵に飛び込もう!というもの。道具はゴーグルひとつだけ、まさに自然体験そのものの楽しい内容だった。こんな遊びがどこでもできるようになると良いのだが。

 

8月7日 大丸堰周辺

晴れ、猛暑。ミンミンゼミとアブラゼミに交じって、「シャン、シャン・・・」と大きな声が聞こえてくる。クマゼミが東へ分布を広げてきている。カワウ、ゴイサギ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、オオタカ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

 

8月9日 大丸堰周辺

曇りときどき晴れ。カワウ、ゴイサギ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、オオタカ、キジバト、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月13日 大丸堰周辺

曇り。カワウ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、セッカ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月14日 大丸堰周辺

晴れ、猛暑。水際に白鷺の群れが舞い降りた。スコープを覗くと何と6種類もの鷺の混群で、お互いにコミュニケーションをとりあいながら行動を共にしているのだった。カワウ、ゴイサギ、アマサギ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月15日 大丸堰周辺

晴れ、猛暑。サシバが4羽、ぐんぐん高度を上げた。南へ帰る日も近い。カワウ、ゴイサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、サシバ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月16日 大丸堰周辺

雨(雷を伴い時折激しく降る)ときどき曇り。

川が増水すると、上流からペットボトルや発泡スチロールの食品容器などがどんどん流れてくる。川原にポイ捨てされるゴミの多さを実感する。流されてその場からはなくなっても、分解されることのないこれらの人工物は、下流の川原や海岸に流れ着いて蓄積され、地球を蝕んでいくだけである。

立ちくらみを覚えてしゃがみこんだ。体の揺れは止まらない。と、誰かが「地震だ!」と叫んでいた。宮城県では震度6弱を記録したとのことである。

カワウ、ゴイサギ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、キジバト、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ヒヨドリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アイガモ?、ドバト、ガビチョウ。

 

8月17日 日野用水堰周辺(右岸)

晴れ。国土交通省京浜河川事務所より、日野用水堰上下流の中州にあるハリエンジュ等の倒木が出水時に流されると危険なので除去したいとの連絡があり、その計画について現地協議を行った。当該地はいずれも生態系保持空間に指定されている自然豊かな場所だが、特に堰上流の中州は人の立入りが少なく、野鳥の楽園になっている。大型ゴムボートで中州をまわると、ヒメガマの群生するワンドは思いのほか奥深く、(ヘラ鮒釣りの台がつくられていたが)生態系保持空間と呼ぶに相応しい空間が広がっていた。視察の結果、堰上流については、中州の奥にある倒木まで流される危険性は低いと思われることもあり、中州の内部には立ち入らずに水際の倒木のみを除去することになり、計画にあった集積所もつくらないことになった。堰下流については、冠水頻度が高く、出水時に倒木が流されるとすぐ下流に八高線鉄橋があり危険だということで、計画通り除去することになったが、立木の伐採は行わないことを確認した。

 

8月18日 小菅

晴れ。レンゲショウマとフシグロセンノウが花盛り。上空ではハチクマが“万歳”を繰り返していた。

 

8月20日 大丸堰周辺

晴れ、猛暑。

センニンソウが咲きはじめた。昨年よりもクズの繁茂が著しく、実験区間も背丈の高い草に覆われている。カワラナデシコの花は盛りを過ぎ、郷土の森は終日の蝉時雨。

アオスジアゲハ、ベニシジミ、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、キリギリス、エンマコオロギ。

カワウ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、オオタカ、ツバメ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アイガモ?、ドバト、ガビチョウ。

 

8月21日 福生水辺の楽校「多摩川で遊ぼう!」

 晴れ、猛暑。絶好の水遊び日和。福生水辺の楽校では毎月1回、多摩川をフィールドに野外遊びや自然観察を行っているが、中でも夏休みの「多摩川カッパまつり」は目玉イベント。この日は市内の小学生30数名が集まった。

 午前中は、篠竹を竿に黒川虫(トビケラの幼虫)を餌に瀬に入って、あんま釣りに挑戦。川底の丸石に足をとられながらも、オイカワ、カワムツ、ウグイなどを20匹近くゲット!1人で3匹釣り上げた子もいた。また、大きなペットボトルを並べてガムテープでまとめて、いかだもつくった。

 午後は、そのペットボトルいかだを川に浮かべて競争(もちろん全員ライフジャケットを着用)。ところが(予想通り?)子どもたちはいかだそっちのけで泳ぐのに夢中!やがて次々とコンクリートブロックの上からカワウソのように飛び込みはじめた。これが一番楽しいのだ。水中マスクを着けて潜ると、ギバチやジュズカケハゼも遊んでいる。自然豊かな福生水辺の楽校。こんな遊びのできる川が増えることを願っている。

 ところで、“テトラポッド”などのコンクリートブロックは、速い流れが岸にぶつかる場所に護岸として敷設されるもので、流れの中でこれに引っ掛かると体が水圧で吸い付いて脱出できず溺れてしまうという恐ろしいものなので、本来この近くで遊んではいけない。しかし、ここでは河床が下がったためかそのすべてが水上に出ており、流れも緩やかなのでその心配はない。だが、これもいまだけと考えるべきで、出水などですぐに非常に危険な場所に変わる。イベントの最後に市の担当者から、「台風がくると川の流れはすぐに変わるので、この前ここで遊んだから大丈夫と思わずに、必ず安全を確かめてから遊ぼう」と注意があった。この日僕が一番感動したのはこのときである。福生水辺の楽校では、子どもたちに楽しくまた危険でもある川とうまく付き合っていく力をつけさせようとしている。

 

8月23日 多摩川中央公園周辺

 晴れときどき曇り一時雨。福生市環境課主催の「環境学習教員研修」(総合的な学習の時間研修会)。この日は市内の小中学校の先生方20名が参加し、自然環境アカデミーでは「フィールドで学ぶ」をテーマに、中央公園周辺の多摩川を例に、実際に野外でどんなことができるのか、また注意すべきことは何かなど、その場所の自然環境や季節を活かした活動を紹介した(野外実習として午前中は野外活動時や水辺での安全対策、簡単な水質の調査法、水生昆虫や魚、午後は原っぱや雑木林での自然観察など)。その後川の志民館で、自分たちが福生の多摩川を題材に授業をするという設定で、プログラム案を4グループに分かれて作成・発表してもらった。早速9月から始めたいという声も多く、活発な福生の環境学習がより活性化するきっかけになればと思う。

 

8月26日 大丸堰周辺

曇りのち晴れ、猛暑。明け方に台風11号が千葉県を通過した。多摩川流域の前日朝からの累加雨量は、小河内186mm、多摩川上流(出張所)157mm、多摩(出張所)140mm、浅川橋137mm、田園調布(出張所)119mm。朝のうち、緊急補修工事で踏みつけられた交通公園前の高水敷は水浸しだった。カワウ、ゴイサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、キジバト、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月27日 青梅(成木)

曇り。青梅上成木森林環境保全地域で、都民、NPO、企業、行政が連携して緑地等の保全に取り組む「東京グリーンシップ・アクション」の活動があり、親子連れ30名ほどが間伐体験や自然観察などを行った。自然環境アカデミーは自然観察のサポーターとして、昆虫や野鳥の解説をしたり、フィールドサイン探しを促したりした。台風11号の影響で、成木川は流れ込む小さな沢まで増水していた。この保全活動によって、保水力があり、多くの生き物にとって棲みやすい森が再生されることを願っている。

 

8月28日 小菅川源流(「多摩川の達人になろう!」第5回)

多摩川の水がどこから流れてくるのか、その源流のひとつ小菅川を訪ね、豊かな自然環境にふれながら、森と水の大切さについて学んだ。多摩川の源流域に広がる「水道水源林」は、東京都が100年以上も前から管理してきた。

福生駅からマイクロバスに乗って、まずは小河内ダム(奥多摩湖)へ。貯水率は26日に台風11号が通過して4%ほど増え、81%になっていた。ダムの上から149m(=ダムの高さ)下を見おろしながら、渇水時に行われる緊急放流や利根川水系のダムとの関係など、水道水源確保の問題について考えた。

小菅川の上流にある雄滝へは、トチノキやシオジなど大木の息吹を間近に感じながら、美しい天然林の中を歩いていく。シオジの丸木橋を渡ると雄滝。真ん中に大きな岩を挟んで、2本の流れが豪快に落ちてくる、勇壮かつ神秘的な滝だ。

林道を少し戻って白糸の滝へ。36mの高さからひと筋の流れがすがすがしく流れ落ち、とても優美な趣き。花盛りのクサギの木に集まってきたクロアゲハを観察したり、ミヤマクワガタを見つけたり、クズの花で“ファンタグレープ”の香りを楽しんだりもした。

帰りは白丸ダムに寄った。お目当ての魚道はメンテナンス中で水が流れていなかったが、近くで見学してその規模の大きさを実感し、人と自然との関係について意見交換することもできた。

見どころを駆け足で辿るだけになってしまったが、森と水の大切さについて学ぶという目的は達せられたように思う。また参加者からは、「今度はぜひ笠取山の水干へ行ってみたい」という意見が多く寄せられ、この秋、この講座を担当している自然環境アカデミーで企画しようということになった。

* * *

●参加者の声

*水源林

・源流ならではの巨木林相を観察し、水に対する認識を新たにした。

・ブナ林と同じ役目をする水源のシオジ林を始めて見て、巨木や自然を大切にしなくてはならないと思った。

・奥多摩を代表するシオジ林と“緑のダム”、言葉も印象的だった。

・水源の原生林に感銘を受けた。シオジやトチノキの大木に驚いた。特にシオジの丸木橋が印象的だった。

・数百年を経た巨木が森林を守っている姿に感動した。

・源流の森のにおいがとても印象に残った。

・水源林から水が湧き出ていてその保水力に驚いた。

・東京都の水源林は自然が守られているなと感じた。

*川と滝

・川の水量が豊富で滝も迫力があり、すばらしい眺めだった。

・水源探訪は初体験。沢を分け入って水が湧き出しているところを想像していたが、勢い良い水量に驚いた。

・滝の近くで思わず川の水を飲んでしまった。体にすっと入っていく感じだった。

・雄滝、白糸の滝の美しいイオンを浴びて水源林の大切さをあらためて感じた。

・楽しく明るい源流の旅、水の源は涼しく、雄滝、白糸の滝のすばらしさは驚きばかりだった。

*生き物

・ミヤマクワガタが観察できてうれしかった。

・山道に落ちていた大きな骨はいったい何の動物だろうか。

・クサギの花の周りにクロアゲハが群舞していた。幼虫の食草が近くにあるのだろうか。

・草木の名前を少し覚えた。

・植物の種類も多く楽しめた(トチノキ、シオジ、ホオノキ、ブナ、リョウブ、ヤシャブシ、サワグルミ、クマシデ、モミジガサ、ギンバイソウ、ツリフネソウ、ハエドクソウ、タマアジサイ、カメバヒキオコシなど)。

・観察できた昆虫:クロアゲハ、カノコガ、カワゲラ(成虫)、ミヤマクワガタなど。

・観察できた野鳥:カワガラス、ホオジロ、カケス、トビ、イワツバメなどを見ることができた。

*白丸ダムの魚道

・白丸ダムの魚道見学も良かった。自然の愛護をしみじみと感じた。

・白丸ダムの魚道の規模とその工事費の額に驚いた。

*感想・要望など

・個人ではなかなか行くことのない水源を見ることができて良かった。さすが自然がいっぱいだ。

・白糸の滝の滝口に大きな淵があると案内板に書いてあったが、滝の上の源流まで行ってみたい。雄滝の上、大菩薩峠まで行きたかった。

・ぜひ笠取山の水干にも行ってみたい。

・新鮮限りなき空気が人間を呼び戻してくれた。

・途中の道が細くて大変だったが、もう一度ゆっくりと来てみたい。ぜひまた企画してほしい。

・今回はいつもより時間が長く楽しく、リフレッシュできた。

・奥多摩の山にふれとても楽しい一日だった。

・曇り空で涼しくて楽だった。

 

8月30日 大丸堰周辺

晴れ。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、キジバト、アマツバメ、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。