多摩川散策日記2005年4月)

文:上田大志

 

 

4月1日 東久留米

家の前の桜がようやく咲きはじめた。

 

4月1日 一之瀬高原

晴れ。林道の脇にはまだ雪が残るが、谷間ではミソサザイが元気に囀っている。

 

4月2日 新宿御苑

曇り。NACOTの観察会下見。新宿門を入って右へ。ラクウショウの気根がにょきにょきと生えている様子はとにかく印象的。ミズキの枝から水が滴り、林に入るとクサイチゴやセントウソウが咲きはじめていた。野鳥はコゲラ、ヒヨドリ、ツグミ、アオジ、スズメ、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラスなど。

 

4月6日 大丸堰周辺

晴れ、汗ばむ陽気。崖線林の桜にも増して、コブシの花が清楚で美しい。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、エナガ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ヤマガラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

4月7日 根ヶ布

晴れ、汗ばむ陽気。数種類の菫やネコノメソウの花、ノスリのランデブー飛行など、里山の春を楽しむ。ところが昼前になって南風が強まると、そこらじゅうから黄色い煙が巻き上がり、観察どころではなくなってしまった。

 

4月8日 大丸堰周辺

晴れ。多摩川沿いの桜が満開。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ホオジロ、アオジ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

4月9日 新宿御苑

晴れ、暖かい。NACOTの自然観察会。予想通りすごい人出だったが、花見客がほとんどだったので、観察フィールドの母と子の森は比較的すいていた。暖かな日が続き、季節が一気に進んだ。この1週間でハクモクレンはすっかり散り、桜は満開になり、ムラサキケマンが咲いた。楓やコナラも芽吹いてきた。

 

4月10日 河口右岸

晴れ、強い南風に桜吹雪が舞う。NACOTの観察会下見。潮干狩りをする親子や自然観察グループ、野鳥を観る人などで賑わう干潟で、穴から出て活発に活動している大小さまざまのカニや、ゴロタ石にへばりついているフジツボの仲間などをじっくり観察した。水面に浮かぶスズガモの群れの中に、隠れん坊するようにキンクロハジロが数羽。ユリカモメは冬羽から夏羽へ衣替えの真っ最中。メダイチドリの群れが飛びまわっていたが、シギ類の姿はまだ見られなかった。

 

4月15日 大丸堰周辺

晴れ、暖かい。水辺でカジカガエルが鳴きはじめた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、トビ、ハヤブサ、イソシギ、キジバト、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、セッカ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

4月16日 大丸堰周辺

曇り。カントウタンポポが花盛り。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、オオタカ、イカルチドリ、イソシギ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、セッカ、ツグミ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

4月17日 多摩川中央公園周辺(「多摩川の達人になろう!」第1回講座)

晴れ。連続講座「多摩川の達人になろう!」(主催:福生水辺の楽校運営協議会)がはじまった。毎月1回、フィールドワークを中心に多摩川の自然や歴史を再発見する全12回の講座で、地域の環境学習を活性化させるとともに、京浜河川事務所多摩川上流出張所の敷地内にオープンした交流拠点「川の志民館」の活用についても考えていく。

初回のテーマは「多摩川とは?〜源流から河口まで138kmの概要」。地域の方を中心に23名の参加があり、開館したての川の志民館で、流域、水辺の楽校、自然環境などについて、多摩川の源流から河口までの写真をスライドショーで見せながら紹介した。その後、多摩川中央公園を横切って川原に出て、今後のフィールドとなる多摩川を観察した。最後に、各自が気付いたことや多摩川への想いなどを書いて発表しあった。

* * *

●多摩川への想いなど

・観察できた野鳥は、イカルチドリ、タヒバリ、コサギ、ツバメなど。イカルチドリが巣づくり中のようなので注意が必要だ。

・観察できた植物は、クサノオウ、ヘビイチゴ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、ハリエンジュ、シロバナタンポポなど。一概に外来種が悪いとは言えない。ハリエンジュは緑の木陰をつくっている。

・石河原が広がっている。

・河原にガスボンベが散乱している。

・イカルチドリの卵を見てみたい。

・多摩川の水が随分少ない。

・川底の石の表面が汚れている。もう少し水量が多ければ、この汚れは解消されるのでは?

・地元の私たちは、「川の志民館」から対岸に歩行者専用道路ができて、二宮神社方面を散歩コースにしたい。

・好天のため、中央公園の利用者が多かった。

・多摩川で魚とりをしている家族がいた。

・川底の汚れが気になった。

・どちらに流れているのかわからないような穏やかな流れが、大雨が降ると大きなブロックをも押し流す力をもつ流れになることが実感できた。

・イカルチドリ、タヒバリが見られた。

・春の野草として、ヒメオドリコソウとホトケノザの違いがわかった。クサノオウの花がきれいだった。

・河原の石にもいろいろな種類があることがわかった。

・河原の公園は整備されている。

・多摩川の水量が予想していたよりも少ない。

・家の周辺では聞かない鳴き声の鳥がいた。

・ゴミが散在している。

・バーベキューの残骸あり(マナーの問題)。

・イカルチドリ、カジカガエルを見たい。

・カエルの声が聞こえた。花もいろいろあったが名前が覚えられない。変わった石もあった。

・川がきれいですこしびっくりした。

・石油化石原料のゴミが目に付いた。

・多摩川の川辺に立って、春の気を大いに吸収できた。

・いたるところにゴミが多い(人のモラルの問題)。

・カジカガエルの声が聞こえたとのこと。清流が戻ったと思って良いのだろうか。

・今まで河原を何も注視せずに歩いていたが、植物、石ころ、鳥などをよく見ると、勉強になることがわかった。

●講座への要望など

・草花、石、樹木の名前などを知る機会がないので、これからの勉強が楽しみだ。

・話がとてもよくわかった。今後の回が楽しみだ。

・持ち物を明記してほしい。

・多摩川と平井川の合流地が五日市線の鉄橋の下で、河口から50km地点にあたることを知った。

・左岸、右岸についてわかった。

・暑い季節に実施する講座では、特に暑さ対策が必要だ。

・多摩川の清流や人との共生について学ぶ場なので、講座参加中の喫煙は自重してもらいたい。

・源流を見たい。

・最初の講座のスタートがうまくきれたと思う。

・観察用具など用意すべきものがあったら教えてほしい。

・皆さんの同意があるなら、参加者の名簿(住所、電話など)、各々の得意、関心分野を知りたい。

・サラリーマンから自然人に生き返った。

・多摩川って長いなと思った(全部で138km、福生水辺の学校で河口から50km)。

・植物、鳥、石などを知り、人を創る。次の講座が楽しみだ。

・草花や鳥、魚などの資料として、絵や写真があると家に帰ってからも見られるので、ぜひ用意してほしい。

・期待以上のプログラムだった。

・多摩川の現状の問題点、良いところ、悪いところが明確になるとより身近になると思う。良いところをより良くし、悪いところを改善するなどを自分なりに考えることができるようになりたい。

・見たり、聞いたり、歩いたり(体験)することを期待している。

・他にも参加したい人がいるのだが、これから参加することはできるか。

・動植物プランクトンの観察がしたい(小中学生の深い関心があるので)。

* * *

筆者も多摩川がテーマとはいえ、全12回もの連続講座をコーディネートするのは初めてであるが、まずは良いスタートがきれたと思う。次回(5月22日)のテーマは「多摩川の水質〜パックテスト&水生生物による健康診断」。

 

4月18日 大丸堰周辺

曇りときどき晴れ。コイの産卵がはじまった。クビキリギスの声も。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イソシギ、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、セッカ、ツグミ、エナガ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

4月19日 青梅、日の出

晴れ、暖かい。ヤマツツジが咲きはじめた。トウキョウサンショウウオが孵化寸前。幼生が卵のうの中で動き回っている。

 

4月23日 河口右岸

晴れ。明日の「干潟を守る日2005」自然かんさつ会の最終下見。潮の引き具合や活動範囲などを確認した。ハマダイコンが満開。華やかな夏羽のカンムリカイツブリ。先日までたくさんいたユリカモメは北へ旅立ったようで1羽も見られず。

 

4月24日 河口右岸

晴れ。干潟を守る日2005・自然かんさつ会「干潟の生きものたち〜多摩川河口編」には35名(NACOT13名)の参加があった。目指す多摩川河口干潟は、集合場所の小島新田駅(京急大師線)から歩いて15分ほど。春の大潮の干潮時、天候にも恵まれて、すでに干潟は潮干狩りをはじめ大勢の人で賑わっていた。

3グループに分かれて早速観察を開始。土手を下りて、満開のハマダイコンの花を見ながら浜辺に出るが、いきなり干潟に踏み込むのではなく、そっとそっと近づく。行く先をよく見ると、干潟に小さな穴がたくさん開いていることに気付く。しばらくじっとしていると、そこから小さなカニ(コメツキガニ)が顔を出し、やがて次々と穴から出てきて、干潟を歩き始める。ところがこちらがちょっと動いたりすると、サッと一斉に穴の中に隠れてしまう。少し遠くに目を移すと、はさみを上下に振りながら、激しくダンスをしているチゴガニや、両眼を潜望鏡のように垂直に立てて様子を窺っているヤマトオサガニ、がっしりしたはさみを持ったアシハラガニなど、何種類ものカニがいることに気付く。他にも、砂を少し掘ってみると、味噌汁に入れるアサリくらいもある大きなヤマトシジミがごろごろ出てきたり、石をちょっと持ち上げてみると、ザリガニに似た格好でぶよぶよしていて弱々しいニホンスナモグリが隠れていたり、フジツボの仲間がびっしりついた岩に水をかけていると、蔓脚をヒョロヒョロと出しはじめるなど、どれも印象的な生きものばかり。

昼食後、土手にフィールドスコープを並べて野鳥を観察。人が近づかない中州の干潟でエサを探すチュウシャクシギとアオアシシギをじっくり観察することができた。メダイチドリの群れも見られたが、シギ・チドリ類の姿は少なかった。ちょうど春の渡りの時期なのだが、今年は遅れているのだろうか。

最後に各自が気付いたことや干潟への想いなどを付箋に書いてマップに貼り、発表しあった。

* * *

今回の観察会では、大都市の中のオアシス=多摩川河口干潟をじっくり観察し、その豊かさを充分に感じてもらえたと思う。ただ、成り行きにまかせた進行に終始したため、だらだらとした印象を与えてしまったかもしれない。また、自由に観察する時間と説明する時間を決めて、メリハリをつけて活動すれば良かったと思う。特に最後の振り返りのときに、参加者どうしが情報共有・意見交換する時間をとれば良かったと反省している。他にもアンケート等で貴重な意見をたくさんいただいたので、今後の観察会企画・運営に活かしていきたいと思う。

さて、ここに連絡橋をつくるという羽田空港の神奈川口計画だが、多摩川の自然への影響も考慮してトンネル案も検討しているとのことである。この事業による自然環境への影響予測は難しいかもしれないが、ぜひとも綿密な環境調査を行い、このわずかに残された干潟が保全されることを願わずにはいられない。そもそもこの計画は空港の国際化に伴うもの。そのために生命のゆりかごである干潟の環境を損ねたとあっては、日本が世界中から批判されてしまうことだろう。

 

4月26日 大丸堰周辺

晴れのち雷雨。コアジサシが舞い、オオヨシキリ鳴く季節になった。昨秋の出水で侵食された水際にロープを張る作業が行われている。災害復旧工事がはじまるのだろうか。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、トビ、ハイタカ、コチドリ、コアジサシ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ツグミ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アイガモ?、ドバト、ガビチョウ。

 

4月28日 野川公園

快晴、夏日。自然観察園には、いまや東京近郊の里山ではまず見ることのできない様々な草花が咲き乱れ、まさに夢のような世界が広がっている。今日は福祉施設の自然観察会に参加。一面の緑につつまれて、陽春の一日を楽しんだ。

 

4月29日 大丸堰周辺

快晴、真夏日。フジの花。ハリエンジュの芽吹き。ウシガエルの声。大きなアオダイショウが気持ち良さそうに泳いでいる。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、ハイタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、コアジサシ、キジバト、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、モズ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ツグミ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アイガモ?、ドバト、ガビチョウ。

 

4月30日 根ヶ布

晴れ。夏鳥たちが一斉にやってきた。これからも毎年、この歌声を聞くことができる根ヶ布の森を守っていきたい。アオサギ、コジュケイ、トビ、ノスリ、ツツドリ、コゲラ、ツバメ、ヒヨドリ、ヤブサメ、ウグイス、センダイムシクイ、クロツグミ、キビタキ、オオルリ、ホオジロ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス。