多摩川散策日記2005年11月)

文:上田大志

 

 

11月1日 大丸堰周辺

快晴。2月末から姿を見せていなかった、あのオオタカの雌が戻ってきた。かなり高齢のようで、みんなで無事を祈っていただけに、喜びもひとしおである。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ツミ、ハイタカ、チョウゲンボウ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月4日 大丸堰周辺

快晴。ツグミが到着。総合学習で連光寺小の子どもたちがやってきたので、カワセミやジョウビタキ、タカ類などをじっくり観察して、自然環境と生きものの関係について考えてもらった。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月5日 手賀沼

快晴、暖かい。5、6日と「ジャパンバードフェスティバル2005」が開催され、自然環境アカデミーでは昨年に引き続き、デジカメ&デジスコ写真による手賀沼生き物マップをつくった。

ミサゴが何度も水しぶきをあげてダイビングし、捕らえた大きな魚を杭の上に運んで食べるようすをじっくり観察することができた。ダイサギが湖面に並んだ杭の間に張られた網(何の漁具だろうか)の上に佇み、小魚が水面近くに上がってくるや、その長い首を伸ばし一瞬の早業で捕らえていた。ボートが近づくとガァーと大きな声を出して飛び立ち、しばらくするとその場に戻ってきてまた小魚を狙うのだった。それを何度も繰り返していた。

カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、オナガガモ、ミサゴ、ハイタカ、チョウゲンボウ、オオバン、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、モズ、シジュウカラ、その他コブハクチョウ、カナダガン、シナガチョウ、アヒルなど。

 

11月7日 永山丘陵/狭山丘陵

晴れ。青梅一小の野外学習で永山丘陵へ。ちょっと頑張って根ヶ布の森まで歩くと、タヌキやテンの糞、リスがまつぼっくりをかじったエビフライ、イノシシが地面をほじくった跡、猛禽が白鷺を食べた跡など、動物たちのフィールドサインがたくさん見つかる。フユイチゴが実をつけはじめた。

午後は狭山丘陵へ。ゴンズイの実が熟して弾けた。ヤマウルシの紅葉。

 

11月8日 大丸堰周辺

快晴、暖かい。ハリエンジュが黄葉してきた。タヒバリが到着。大丸用水堰(左岸側)の魚道設置工事が始まり、郷土の森前の堤防で搬入スロープづくりが行われている。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、チョウゲンボウ、カワセミ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、エナガ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月9日 大丸堰周辺

快晴。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ツミ、ハイタカ、ノスリ、チョウゲンボウ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月12日 大丸堰周辺

晴れ。魚道の本工事はまだ。3月に閉所された東京都府中青年の家が取り壊されている。

 

11月13日 大丸堰周辺

快晴。タヌキの兄弟が大ゲンカをしている。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イソシギ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月14日 大丸堰周辺

曇り、寒い。猛禽類の死骸があり、羽を持ち帰って調べてみるとトラフズクのものだった。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イソシギ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

11月16日 狭山丘陵

快晴。福生市公民館松林分館の「生きがいと健康をつくろう」講座。今回は野山北公園から六道山へ狭山丘陵のハイキング。「里山民家」の奥に広がる宮野入谷戸では、ボランティアの手によって水田や雑木林が維持されている。六道山の展望台からは360度の眺め。ノスリやオオタカが何羽も飛んでいる。帰りにはみかん狩りも楽しんだ。天候に恵まれ、楽しい一日だった。

 

11月20日 五日市線鉄橋〜拝島橋(左岸)

晴れ。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。

熊川駅は片側ホームの小さな駅。単線のJR五日市線にはローカル線の趣きが残っている。奥多摩街道を横切って河岸段丘の上に出る。西〜南面の展望が開け、奥多摩から丹沢方面の山並みを楽しむ。線路脇の土手ではノハラアザミがまだ花盛り。陽だまりにはツマグロヒョウモンの姿も。

程なく多摩川に出る。土手下の草かげにアワコガネギクがひっそりと咲いている。堤防上を下流に歩く。桜並木の紅葉よりも丸石河原と河畔林の景観が気になる。特に対岸は年に何回かは歩いておきたい場所だ。上空で2羽のノスリが輪を描いている。睦橋を越えると福生南公園。川寄りに高水敷の奥まで自動車用通路が整備されているのでのんびり歩けない。少し行くと広大な丸石河原に出る。この辺は出水のたびに流れが大きく変わるが、広々とした川原があることは変わらない。下流までずっと歩いて行けそうだが、昭和用水堰の手前に澪筋があって渡れない。いまは草むす九箇村用水樋管(取水口跡)の脇に、多摩川鳥獣保護区「特別保護地区」の看板を見つける。多摩川一帯は全域が鳥獣保護区に指定されているが、以前、この辺りはその特別保護地区に指定されていた。鳥獣の保護又は鳥獣の生息地の保護を図るため特に必要があると認める区域(『鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律』第29条より)として、自然の改変に対して強い規制力のある特別保護地区がどのように指定され、そしてなぜ解除されたのかをきちんと検証しておきたい。

昭和用水堰で昼食後、午後はさらに下流へ。マユミの薄紅色の実が熟して割れ、赤いタネが顔を出している。この辺はエノキやムクノキも多く、小鳥たちのレストラン街になっている。足元にはナンバンハコベも咲いている。初夏にはカワラサイコの花も楽しみだ。そして水辺は、象の足跡化石も出た第三紀露頭の不思議な眺め。それが対岸の河畔林や丘陵と調和して、いつ来ても時間を忘れさせてくれる。いつも楽しみにしている沼地は干上がっていたので、ちょっとヤブコギをして探検。コガマの穂をほぐして風に飛ばして遊び、タコノアシやフトイを見つけたりして、楽しいひとときを過ごした。

今日の終点はコゴメヤナギの木立が目印の拝島自然公園。多摩川を離れて奥多摩街道へ。拝島駅行きのバスまでは少し時間がある。拝島大師に寄って行こう。

 

11月27日 多摩川河口右岸(「多摩川の達人になろう!」第8回)

晴れ。羽田空港に面し住宅や工場が密集する大都市の中に残されたオアシス‐多摩川河口を訪れ、人と自然のかかわりについて考えた。

福生からJR青梅線、南武線、京急大師線と乗り継いでやってきた多摩川の河口。到着するや、ミサゴが上空から水面にダイビングして大きなボラを捕らえるシーンを目撃!フィールドスコープを覗いてみると、カンムリカイツブリやカモ・カモメ類などがたくさんいる。ここは干潟やヨシ原の広がる生き物たちの楽園。しかし、羽田空港の再拡張・国際化に伴う「神奈川口」構想によって、連絡道路の整備も計画されている。

今回は北から渡ってきた冬鳥たちの観察をメインに、新たな開発の進む市街地にも目を向けながら、河口原点手前の右岸下流端から産業道路駅まで歩いた。残念ながら潮時が悪く、干潟に下りて観察することはできなかったが、第5回で行った源流と今回の河口を“体感”したことで、普段接している福生付近の多摩川の位置付けや価値を再認識することができたのではないだろうか。

* * *

●参加者の声

・多摩川の河口に来たのは初めて、想像していたよりも川の景観を残していた。

・川岸にヨシ原が広がり、生き物が生息していてうれしい。

・ヨシ原が広がっていたが、他の生き物の種類は多いのだろうか。

・ヨシを“よしず”などに利用した方が環境の浄化になるのではないだろうか。

・広いヨシ原と水辺の鳥の多さに感激した。

・水鳥をたくさん観ることができて良かった。

・水鳥をもっと近くで見たかった。

・思っていたよりも鳥が少なかった。

・ミサゴがボラを捕まえて飛び上がったのには驚いた(残念ながら大きすぎたようで落としてしまった)。

・水面を大きなボラが飛び跳ねていた。

・漂着ゴミの多さに驚いた。

・長靴でズボズボ入って生き物がたくさんいるイメージを持っていたが、潮時が悪く干潟の観察ができなかった。

・普段見ている福生・羽村付近の多摩川と違い、ニセアカシアが1本もないのが印象的だった。

・いすゞ工場跡地と川が同じ高さに見えて驚いた。

・人がもっと関心を持ってこの生き物の生活の場を維持していくことが必要だと思う。

・人が川に関わり、感じたり知ったりする機会を増やしていきたい。

・多摩川河口に残されたヨシ原、再び戻らぬ多摩川の自然をこわすな!

・貴重な干潟を大切にしたい。

・多摩川最初の一滴から138km、河口までたどりつけて良かった。

・よく歩いた・・・

 

11月30日 高尾山

晴れ。福生市公民館松林分館の「生きがいと健康をつくろう」講座。

前回高尾山を訪れたのは、学生時代にムササビの観察で。つい先日だと思っていたのに、気が付けば十数年の月日が流れている。当初は日陰沢からのコースを考えていたが、ゆっくり自然観察をする時間をとり、かつ山頂まで歩きたいということで、行きはケーブルカーを利用することにした。

ケーブルカーを降りてまず目に付くのが、圏央道と中央道が交差する八王子Jctの建設現場。山が切り崩され、そこに巨大な人工物がつくられているようすを目の当たりにする。僕も各地の高速道路を利用するが、自分で運転していて怖いと感じるのは、トンネルや橋梁などは一瞬で通過してしまって、よほど印象的な景色でもないと、そこにどんな自然があったのかを考える時間がないことだ。

タコ杉の先で参道を離れ、静かな4号路に入る。ここのイヌブナは黒い樹皮と根元からひこばえが生長しているのが特徴的。実が地面に散らばっているようすを見ると今年は豊作のようだ。そして山道の真ん中にテンの糞を発見。まさにイヌブナの実を食べたようす。以前も書いたが、NACS-J自然観察指導員講習会を受講したときに講師の方から聞いた話を思い出す。それは「高尾山に行ったときに、坂道の真ん中にテンの糞があるのに気付いて観察していたら、そこへ植物観察グループの人が20人くらい通りかかったが、誰も気付かずに行き過ぎた」というもの。そんなときに「ワッ、これなんだろう!」と気付く人を増やすことが、自然保護教育に携わる僕の役割だと思っている。

みんなが気付いたものをかんさつしながら、2時間以上かかってようやく山頂に到着。紅葉シーズンとあって平日でも人が多い。高尾山は観光地というイメージがあるのか、カップルやサークルなど若い人が多いのに少々驚く。丹沢〜富士山方面の展望を楽しみながら弁当を食べ、帰路は谷筋の紅葉を堪能しつつ6号路を下山。