多摩川散策日記2005年10月)

文:上田大志

 

 

10月1日 大丸堰周辺

快晴。オニグルミの実が熟して落ちはじめた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、キジバト、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月2日 大丸堰周辺

快晴、真夏日。メドハギの花が終わり、セイタカアワダチソウの花が色づいてきた。コセンダングサの花にヒメアカタテハが集まっている。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、ヒバリ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月3日 大丸堰周辺

曇りときどき晴れ。キクイモの花をツマグロヒョウモンの♀が訪れている。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月4日 大丸堰周辺

曇り、肌寒い。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、オオタカ、セグロカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、セグロセキレイ、モズ、スズメ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

キンモクセイが香りはじめた。

 

10月7日 高水山、岩茸石山

曇り。イノシシの群れが地面を掘り返した跡、シカに樹皮が剥ぎ取られたリョウブを見る。常盤林道から名坂峠へ登る登山コースが整備されていた。ヤマドリ、サシバ、アオゲラ、ヒヨドリ、ホオジロ、イカル、ヒガラ、メジロ、カケス。ツリバナの実。秋に聞くシカの声はとにかく寂しい。

 

10月10日 大丸堰周辺

雨、肌寒い。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ヒメアマツバメ、カワセミ、アオゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、メジロ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

 

10月11日 大丸堰周辺

曇り一時小雨、肌寒い。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、シジュウカラ、カケス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月12日 大丸堰周辺

曇りのち晴れ。ワシタカ類を7種確認。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、サシバ、チョウゲンボウ、イソシギ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月13日 友田

晴れ。タカの渡りはもうおしまいのようだが、20羽、30羽と群れて南へ向かうヒヨドリはとにかくたくさん見た。きちんと数えたわけではないが、正午までに1000羽以上は見たのではないだろうか。この辺はヒヨドリの渡りルートでもあるようだ。カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、ノスリ、キジバト、カワセミ、コゲラ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ超多、モズ、メジロ、ハシボソガラス。

 

10月15日 青梅(成木)

曇りときどき晴れ。青梅上成木森林環境保全地域で都民ボランティアによる環境調査活動があり、筆者は鳥類を担当した。

今回は徒歩で上成木ふれあいセンターから名坂峠へ登り、関東ふれあいの道を通って大滝保全地区へ。同地区をじっくり観察した後、常盤林道へ下り、ふれあいセンターまで戻ってくるというコース。山麓の集落にはヒヨドリが多く、川沿いにはキセキレイやカワガラスの姿も。山道に入って稜線にかけては、ヒガラ、ヤマガラ、メジロを主体に、カケスやアオゲラなども観察できた。沢筋ではタカ類に襲われたと思われるイカルの羽毛も発見したが、最大の収穫は、岩の上にたたずむニホンカモシカを間近に見られたことだ。

いまは夏鳥が去り、冬鳥がやってくるまでの鳥の少ない時期だが、季節ごと、そして毎年、同じフィールドをみていくことで、生きものの生態や自然環境の変化など、いろんなことがわかってくると思う。野鳥を含む動植物にとって棲みやすい森を保全していくためには、継続的な調査が欠かせない。

 

10月16日 羽村大橋〜五日市線鉄橋

雨のち曇り。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。玉川上水沿いのムクノキに、ドバトが群がって実をついばんでいる。羽村大橋の下を流れる多摩川の河床は、砂利が流失し、茶色の土丹が剥き出し。カワラノギクが咲きはじめ、自生地の無事も確認。コシオガマの花も。ピラカンサのトンネルを抜け、実験区を見て、永田橋を渡り、柳山公園で昼食。多摩橋をくぐり、いつも福生水辺の楽校で遊んでいる多摩川中央公園前の川原を観察して解散。

 

10月17日 大丸堰周辺

雨、肌寒い。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、オオタカ、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

今年3月に現地説明を受けた大丸用水堰(左岸側)の魚道設置工事が始まるということで、都(農業振興事務所)および施工業者とともに再度現地確認を行った。搬入路を短くすることで、高水敷植生へのダメージは少なくて済みそうだが、工事範囲近くの中州や水面を利用している野鳥への影響が心配される。

 

10月19日 永田橋上流

曇りのち晴れ。福生市公民館松林分館の「生きがいと健康をつくろう」講座に同行し、柳山公園から永田橋を渡って植物や野鳥などを観察しながら高水敷を散策した。植物:クマノミズキ、ススキ、クサギ、クワ、セイタカアワダチソウ、オオブタクサ、ハリエンジュ、オニグルミ、ヌルデ、ヤマノイモ、ヘクソカズラ、アレチウリ、コセンダングサ、ノブドウ、ノコンギク、ツリガネニンジン、テリハノイバラ、カワラノギク、鳥:アオサギ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、ガビチョウ、カワセミ、ダイサギ、虫:コバネイナゴ、ツマグロオオヨコバイ、オンブバッタ、ナガコガネグモなど。

 

10月20日 大丸堰周辺

快晴、爽やか。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ノスリ、チョウゲンボウ、キジバト、カワセミ、ヒバリ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アイガモ、ドバト、ガビチョウ。

 

10月21日 大丸堰周辺

曇りのち晴れ。オオタカの幼鳥が自分を取り囲んでギャアギャア騒ぎ立てるカラスの群れに反撃!群れから少し離れた1羽にサッと襲いかかった。旅の途中のノビタキがセイタカアワダチソウの花の上を行ったり来たり・・・虫を捕まえているのだろう。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、イソシギ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ノビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月22日 葛西臨海公園

曇りときどき小雨。ソニーの歩きing大会にNACOTも協力してミニ自然観察会を行った。観察会は受付順に10名ほどを1グループとして、園内を歩きながらの植物観察と定点での野鳥観察を組み合わせて行い、親子連れを中心に300名ほどの参加があった。筆者は野鳥観察をサポートし、午前はウオッチングセンターの観察デッキ、午後は汐風の広場前の海辺にスコープを並べて、参加者に覗いてもらいながら、湾岸で見られる野鳥を紹介した。冬の東京湾の風物詩‐スズガモの大群がやってきた。ミサゴが杭の上にとまり、その雄姿を存分に見せてくれた。カイツブリ、カワウ多、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ多、ミサゴ、オオタカ、オオバン、アオアシシギ、ウミネコ多、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ムクドリ、メジロ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月23日 永田橋周辺(「多摩川の達人になろう!」第7回)

快晴。多摩川の河原植物に焦点をあて、河川環境の変化について学んだ。多摩川では、カワラノギクをはじめとして、カワラニガナ、カワラハハコ、カワラヨモギ、カワラナデシコ、カワラケツメイ、カワラサイコなど“カワラ”と名のつく植物が激減している。その原因はいろいろあるだろうが、丸石河原が減少したことが大きいと考えられている。いまは草木が生い茂っている河川敷もかつては一面の石河原だったと聞く。今回は永田地区の礫河原再生実験区を見学した。ここでは、カワラノギクを保全・復元するために、研究者と市民が協働でカワラノギクを育成し、その生態を研究している。造成地に種をまいてから4年半、今年開花した数万株が見頃を迎えていた。カワラノギクやカワラニガナは、常に自然の力=出水によって新たにつくられる丸石河原を求めて移動していく植物である。人間が手を加えることなく、かれらが自然状態で生息地を広げていけるような豊かな河川環境が回復することが望まれる。

* * *

●参加者の声

カワラノギクの保全活動について

・カワラノギクが人の手で再生させなくてはならないほど減ってしまったことを知った。

・普段は入れない礫河原再生実験区に入って、カワラノギクの生態や生息環境を観察することができて良かった。

・カワラノギクの自然再生事業に興味がある。種ができる時期にもう一度来てみたい。

A工区の植生管理(雑草の抜き取り)には相当の人手が必要とのことなので、自分も協力したい。

・絶滅の危機に瀕した生物を保護するには大きなエネルギーが必要だ。

A工区から飛んだカワラノギクの種が下流に着き、花を咲かせている姿に感動した。

・人が管理しなくても自然にカワラノギクの生息地が広がるようになると良い。

・カワラノギクが自然状態で生息できるような多様性のある自然が回復すると良い。

・カワラノギクが上流の青梅の方まで広がってきて欲しい。

*河原の自然環境

・河原に砂地の面積が少なく、多くの植物が茂っていた。

・河原らしい姿が少ない。

・川らしい自然を取り戻すためには洪水が必要だ。

・カワラノギクが丸石のゴロゴロしているところに生育することを知った。

・カワラノギクの実験区でも他の河原植物は見つからなかった。

・相変わらずセイタカアワダチソウやコセンダングサが多い。

*その他

・好天に恵まれ、気持ちの良い川歩きを楽しむことができた。

・身近な河原でカワラノギクの観察ができて良かった。

・カワラノギクは写真で見たことはあるが、実際に見たのは初めてだった。

・カワラノギクの一生がよくわかった。

・カワラノギクとノコンギクやススキとオギの見分け方がわかった。

・ツリガネニンジンの花を初めて見ることができた。

・生のクルミを食べたのは初めて。自然のものを食べると自然にグッーと近づいた感じがする。

・普段は小さな川で活動しているので、多摩川のダイナミックさに驚いた。

・多摩川の水がとてもきれいだった。

・今が一番多摩川らしい季節だと思う。

 

10月25日 大丸堰周辺

快晴、暖かい。ジョウビタキが到着。その初認日は毎年ほぼ同時期で、ヒッヒッ・・・という声で、もう10月も終わりだと気付く。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ツミ、チョウゲンボウ、ヒメアマツバメ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ノビタキ、ホオジロ、ホオアカ、スズメ、カワラヒワ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月26日 滝山丘陵

曇り。福生市公民館松林分館の「生きがいと健康をつくろう」講座。今回のテーマは「滝山丘陵をたんけん?」。睦橋からバスに乗って滝で下車。いまや多摩川流域ではほとんど見ることのできなくなった貴重な水田地帯が広がり、稲刈りの終わった田んぼの畦にはヒガンバナの群落も。花は終わり、しおれた茎の根元から新しい葉が青々と伸びはじめている。歴史を感じる林縁の道を、シロヨメナやヤクシソウの花、ヤマノイモのむかごなどをかんさつしながら登っていくと、程なく滝山城跡。北面の展望を楽しみ、霞神社前の広場で昼食後、子どものころに山野でどんな遊びをしたか語り合いながら、林の中を歩き回った。イイギリが赤い実の房をたくさんつけていた。

 

10月29日 多摩川水源

毎年恒例となった自然環境アカデミーの「多摩川の源流へ行こう」。

7月に地震が原因と思われる土砂崩れで谷が埋まり、おいらん淵のところで国道が通行止めに(祟りだ・・・)、当分の間は通行できないという噂を聞いて、今年は塩山側からのルートしかない→中央高速は混む→塩山駅集合にしようか、と考えていたところ、幸い9月に復旧したので、いつものように青梅街道経由で行けることになった。8月には、福生水辺の楽校の連続講座「多摩川の達人になろう!」で多摩川の源流のひとつ‐小菅川に行ったときに、今度はぜひ最初の一滴を見たい!という声が多数あり、今回はこの講座から6名の参加があった。

そして当日の朝、集合時刻間際にJR青梅線が事故で止まってしまった。秋の日暮れは早いので、あまり遅れると多摩川の水源‐水干(みずひ)まで行けない。集合場所の拝島駅近くの人には歩いて来てもらったり、遠くの人にはバス(登山口まで貸切バスで往復した)の通り道で待っていてもらうことにしたりと、参加者全員の協力で、わずか20分遅れで出発することができた。

途中、奥多摩湖で一息入れた後、登山口の作場平でバスを降り、いよいよ水干を目指して水源林のハイキング。ヤブ沢経由で笠取小屋を目指す。木々の紅葉&黄葉を眺め、ふかふかの落ち葉を踏みながらの山歩きは実にいいものだ。約2時間で笠取小屋に到着。主人の田邉静さんによると、この秋は毎週末1〜2グループの泊り客があるとのこと。アカデミーでも今度は泊りがけで行きたいものだ。気軽に行けるのも良いが、ここの本当の良さは日帰りでは味わえないと思う。

さて小屋から水干までがまた素晴しい。多摩川、荒川、富士川の分水嶺となっている高原は、時間があったらのんびりしたいところだ。たどりついた水干は岩が湿っている程度だが、ここから100mほど下ると、岩の間からこんこんと清水が湧き出していて、多摩川138kmのはじまりを実感することができる。このほんものの源流水は最高に美味い。荷物が重くなっても空のペットボトルに詰めて持ち帰る価値があると思う。

帰路はやはり紅葉&黄葉を楽しみつつ一休坂コースを下山した。秋から冬の日帰り登山は時間的制約もあり、水源の自然にどっぷり浸かる、とまではいかなかったが、心配された天候も何とか持ち、全員無事に帰ってくることができた。多摩川の水源、何度でも行きたい所である。

 

10月30日 青梅〜羽村市地先の多摩川

曇り。カワラノギクPJで、数箇所の自生地を観察した。ある自生地は、これまでそのメインだった小高い場所からタネが飛んで、石河原に群落が広がってきている。ロゼットの数が多く来秋が楽しみだ。別の自生地は、出水のたびに侵食されて、その面積はかなり狭くなっていたが、目算数千株が密に咲いている。ロゼットも見られるが、シルトが堆積し草原化してきているのが気になる。出水でつくられた周囲の礫地に広がっていくと良いのだが、流失してしまうものも多そうだ。近くでノコンギクの変種コンギクを見かけたが、これは野生のものではないかもしれない。また、グラウンド前の花壇から逃げ出したカワラノギクが、周囲の石河原に広がってきているのを確認した。

 

10月31日 青梅永山丘陵

曇りのち晴れ。イヌシデとアカシデ(葉と実)、ヤブムラサキとムラサキシキブ(葉)、コウヤボウキ(花)、キチジョウソウ(花)、ヤブミョウガ(実)、ヤブラン(実)、フユイチゴ(葉)など。