多摩川散策日記2005年1月)

文:上田大志

 

 

1月2日 大丸堰周辺

快晴。朝はこの冬一番の冷え込み(-4)となり、大晦日に積もった雪も残っていたが、風がなかったので日中は暖かく感じた。頭のあたりが白っぽいタカを遠くに見つけてミサゴだと騒いでいたら、チュウヒとのこと。経験不足を痛感した。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、トビ、オオタカ、ノスリ、チュウヒ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、オオバン、ユリカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、スズメ、アトリ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

1月3日 大丸堰周辺

晴れ。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、キジ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、オオバン、セグロカモメ、ユリカモメ、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、カシラダカ、スズメ、カワラヒワ、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

1月4日 睦橋〜羽村大橋

晴れ。カワラノギク・プロジェクトでタネの採取(2日目)。実験区の続きをして自生地へ。途中、高水敷の広範囲にわたって、実験区から折り取ってきたと思われるカワラノギクの結実株が何百本も打ち捨てられていた。誰かがこの場所にカワラノギク群落をよみがえらせたいと思ってしたことなのだろうが・・・。

播種・植栽によるカワラノギクの育成方法、自生地の扱い、遺伝子等々、カワラノギクの保護についてはいろいろな考え方の人がおり、すでに流域各地でさまざまな活動が行われている。今日も自生地で誰かが研究のために付けたと思われる新しいマーキングを見つけた。この絶滅が危惧される植物の保護について、関心を持つ多くの人たちが集まって話し合い、保護のあり方について合意を目指すことが必要ではないだろうか。

解散後、永田橋から睦橋まで歩いたが丸石河原を調査する時間はとれず。カワウ、ダイサギ、アオサギ、トビ、ハイタカ、ノスリ、イソシギ、キジバト、カワセミ、コゲラ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、シメ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

1月7日 大丸堰周辺/宿河原

快晴、暖かい。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ミコアイサ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサ、イカルチドリ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ヤマガラ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

夕方は所用で宿河原(せせらぎ館)へ。堰下のカモ類は、マガモ、コガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロなど。

 

1月8日 お台場海浜公園

晴れときどき曇り、寒い。来月行われるNACOTの東京探検観察会の下見でお台場海浜公園へ。ユリカモメをはじめとする数種類のカモメたち、海面に浮かぶスズガモの群れ、カワウのコロニーになっている“鳥の島”、物欲しげな眼でこちらを見つめるオナガガモ、園内の木の実をついばむヒヨドリ、芝生を歩き回るタヒバリ、常緑樹の茂みに出たり入ったりする賑やかなメジロなど、冬の野鳥を観察。陽だまりではヒメオドリコソウが咲きはじめていた。カンムリカイツブリ、カワウ、オナガガモ、スズガモ、イソシギ、セグロカモメ、ウミネコ、ユリカモメ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、スズメ、メジロ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト。

 

1月9日 大丸堰周辺

晴れ。観察した時間が短かったので確認できた野鳥は少なく、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、トビ、オオタカ、イカルチドリ、イソシギ、ユリカモメ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、エナガ、ホオジロ、スズメ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト。

 

1月10日 大丸堰周辺

晴れ。熟した蒲の穂がほぐれて風に舞っている。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、ヒドリガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、タゲリ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

1月13日 稲城市大丸地先

快晴。月末に行われる「多摩川を題材とした環境学習」研修会の下見。稲城長沼駅から大丸用水や住宅地の中に残された田んぼなどを見ながら、ワークショップ会場となる稲城六小へ。大丸谷戸川(米軍多摩弾薬庫方面から流れてくる水路)が校内(校舎のすぐ脇)を流れている。水質も問題だが、コンクリート三面護岸が残念。校庭はもうスーパー堤防の上で、多摩川へのアクセスは抜群だ。昨年春に緩傾斜堤&緊急用河川敷道路工事が実施され、キレイに整備された公園、植樹された桜の列、芝養生中の土手など、周辺におもしろいものは何もないが、高水敷に下りて水際の方に歩いていくと、広いオギ原や丸石河原、池などが健在でうれしかった。当日はみんなでこのフィールドを歩いた後、室内で学習プランをつくり発表しあう予定。

コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、トビ、ノスリ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ドバト。

 

1月16日 睦橋〜八高線鉄橋(左岸)

前日から冷たい雨が降り続き(一時みぞれも)、流域の累加雨量は雨の上がった夕方までに50mm前後に達した。もしこれがすべて雪だったら記録的な大雪になったことだろう。今日は河辺の多摩川で行われる野鳥観察会に参加する予定だったが、この雨で中止になったので、多摩川の自然を守る会の定例自然観察会に向かう。

・昭和用水堰下流の枯れ野原が焼けた。河原植物もみられるところで気になるが、今後植生がどのように回復していくのか、他の場所と比較して見ていきたい。

・梢にイカルの群れがやってきた。

・対岸の河畔林にオオタカとノスリがとまっていた。途中に道路やグラウンドもあるが、滝山丘陵とつながった空間には、いろいろな生きものが棲んでいそうだ。

・湿生植物のみられる沼地は健在だった。

・拝島橋下流の土手は、遊歩道としてニセアカシア林の中の小道までキレイに舗装されてしまった。

・昨秋の出水で人工ワンド内に土砂が堆積した。

・日野用水堰は左岸側の改修工事(補修&魚道設置)が進んでいる。

・堰周辺の土手際にびっしりと家が建てられた(これからもどんどん増えそう)。

・成隣小学校の前を流れる昭和用水沿いに大げさな遊歩道が整備されつつある。

・カワウ、アオサギ、カモsp、トビ、オオタカ、ノスリ、セグロカモメ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、イカル、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

1月20日 大丸堰周辺

晴れ。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カモsp、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、エナガ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。ノスリがネズミを捕らえた。

 

1月21日 大丸堰周辺

晴れ。昼前から北風強まる。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カモsp、キジ、トビ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

魚捕りに夢中になっていたコサギの群れをオオタカが襲い、1羽が捕まった。難を逃れた仲間たちは、しばらくの間その上で輪を描いて飛んでいた。隊列を整えていたのだろうが、むかし、それは別れのあいさつだという話を聞いたことがある。

中州の原野や崖線林にまで人の立入りが目立つ。常連のバードウォッチャーの何人かが「野鳥のサンクチュアリーとして、多摩川に何箇所か立入り禁止区域を設けても良いのではないか」と言っている。同感である。

 

1月22日 河口右岸

晴れ。北風が吹き荒れ、観察を楽しもうという状況ではない。昨年閉鎖されたいすゞの工場が解体されている。この跡地を利用して「神奈川口連絡道路」をつくるつもりなのだろうか。大都市の中に残された貴重な自然を守るため、橋ではなくトンネルにしてもらいたいものだ。水準拠標付近の干潟は、干潟というよりも砂浜といった感じで、硬くしまっていて歩きやすいが、生きものの姿はほとんどみられない。ハジロカイツブリ、カンムリカイツブリ、カワウ、コサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、スズガモ、トビ、チョウゲンボウ、セグロカモメ、ユリカモメ、ハクセキレイ、タヒバリ、ツグミ、オオジュリン、スズメ、ドバト。

 

1月23日 四谷堰下流(右岸)/府中四谷橋下流(左岸)

曇り、寒い。

国土交通省京浜河川事務所による四谷堰下流の河道整正計画(高水敷掘削)の件では、2003年10月4日に現地で僕ら自然保護団体との間で意見交換が行われたが、それから1年以上経過し、一部計画が変更になったこともあり、再度現地協議の場が持たれた。計画の大きな変更点は、掘削面の勾配を1:2から1:10へと緩やかにするというもの。これによって出水時に高水敷の冠水頻度が上がり、河床の低下が緩和され、また石河原の形成が促進されることが期待できるという。治水面だけでなく、長期的に見れば環境の面でも良いと思われるということになるが、掘削される範囲そのものは広がることになった。全員で掘削計画範囲を歩いて確認したところ、河原植物群落などにかかることがわかったので、再度掘削ラインの変更を検討してもらうことにした。また、高水敷の植生に極力ダメージを与えないために工事作業全般を澪筋側から行うことを確認した。今回の工事では、使われなくなって久しく、洪水時の流下阻害になっている下堰跡も撤去される見通し。

その後、府中四谷橋下流に移動。ここも同様に河岸を緩勾配で掘削する予定だが、近接する高水敷のヨシ・オギ原には、毎年ツバメの大規模な集団塒が形成されていることから、多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査連絡会などと協議が進められてきた。その現場を確認した。工事はツバメが集団塒を形成する前、3月末までに終了させる予定とのこと。

カワウ、コサギ、アオサギ、コガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、チョウゲンボウ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ドバト。

 

1月28日 大丸堰周辺

晴れ。多摩川の水は、あちこちで行われている護岸工事の影響で濁っている。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、(カモsp)、コジュケイ、トビ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサ、オオバン、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、(アカハラorシロハラ)、ツグミ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ヤマガラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

1月29日 大丸堰周辺

曇り、寒い。郷土の森の梅が咲いてきた。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、オオタカ、ノスリ、イカルチドリ、イソシギ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、シロハラ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

1月30日 稲城市大丸地先

晴れ。北風が強く寒い。

「多摩川を題材とした環境学習研修会」には、小中学校の先生を中心に30人以上の参加があり、稲城六小前の多摩川を歩きながら、オギ原、石河原、ワンドなど自然の財産の活かし方や、川へのアクセスなどについて考えた後、室内でグループワークを行い、各自が学習プランをつくって発表しあった。

カワウ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、トビ、イソシギ、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ドバト。

なお、前半のフィールドワークで私が伝えたこと(多摩川で野鳥観察をするときのポイント)は、

・児童に「あれ何?」と聞かれても、鳥の名前を即答しない。→体の色、大きさ、かたち、行動、鳴き声、飛び方などに着目して、「どこで、どんな鳥が、何をしていたか」を観察する。

・姿は見えなくても、鳴き声によって鳥の存在に気付くことも多い。→目だけでなく耳でも観察する。

・鳥の生活の場に近づいて(場合によっては踏み込んで)観察していることを認識する。→そっと観察する時間をとる。人の接近により鳥が飛び立つことで、その存在に気付くことも多い(当日も高水敷から水際に近づいた際に、足元からカワセミが飛び去った)。

・多摩川では、夏より冬の方が生息している鳥の種類が多く、また草木が枯れるため観察しやすい。→冬は野鳥観察に最適の季節といえる。

・はじめての活動などで、「とにかく多摩川で鳥を見たい」とき。→水辺でサギやカモ類、カワウなど、大きくて動きのゆっくりした鳥を探すと見つけやすい。

・双眼鏡を使うときは、児童に使い方をわかりやすく伝える。→絶対に太陽の方を見ない、眼幅とピントの調整など。

観察の一手法として>

・オギ原、石河原、水面、林などの河川環境の違いや、上流〜中流〜下流で、観察できる鳥が変わるか。→生息環境について考える。

・季節によって観察できる鳥が変わるか。→留鳥、夏鳥、冬鳥などを確かめてみる。また、同じフィールドで観察を続け、記録を積み重ねることによって、いろいろなことがわかり、川の環境全体を考えることにつながる。