多摩川散策日記2004年8月)

文:上田大志

 

 

7月31〜8月1日 御岳山〜海沢三滝

多摩川の自然を守る会、夏の水源合宿。

ケーブルカーで山上に上がり、御嶽神社への道筋に立ち並ぶ宿坊の一軒、登奈利荘へ。15時半、通り雨が止むのを待って外に出ると、向かいの山に一瞬虹が。長尾平分岐から七代の滝へ向かうが、思いのほか距離があり、天狗岩を経て宿に戻って来たときには夕闇が迫っていた。夕食後、夜の自然観察。カンタンのルルル・・・という声が、明日は満月という月明かりに冴え、はや秋の訪れを感じさせる。夏の大三角やさそり座などを眺めながら、山上の夜の涼しさを楽しんでいると、杉林の奥からギュルギュル・・・とムササビの声が。昼間見つけた木のうろのミツバチの巣では、蜂たちが巣の入り口に集合して、さかんに羽を震わせている。

翌朝4時半、早朝観察。よく晴れて暑くなりそうだ。ビジターセンターの脇から富士峰公園を一周。有名なレンゲショウマの群生地は、ちょうど花が咲きはじめたところ。今日からレンゲショウマまつりも始まり、大勢の人がやって来ることだろう。この場所以外ではほとんど見られないというのが気になるが。朝食後、海沢三滝へ向けて出発。昨年は雨のため、篠さんと2人だけで下山したコースだ。山道を大楢峠まで1時間半かけて下り、さらに砂利道を30分ほど歩いて滝の入り口へ。連日のにわか雨で沢の水量が増え、険しい海沢探勝路歩きは大変だったが、何とか全員が大滝まで歩き通した。昼食後、林道を奥多摩駅へ。

キジバト、ホトトギス、アオゲラ、コゲラ、ツバメ、キセキレイ、ヒヨドリ、ミソサザイ、ヤブサメ、ウグイス、クロツグミ、オオルリ、ホオジロ、カワラヒワ、イカル、ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、カケス、ガビチョウ。

 

8月2日 大丸堰上流

晴れ、風あり。カワウ、ゴイサギ、ササゴイ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、キジバト、ヒメアマツバメ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月3日 根ヶ布

晴れ。松の木の下で“エビフライ”を10個もゲット。リスがまつぼっくりを夢中でほおばっているようすが思い浮かんで微笑ましい。オニヤンマが峠を行き来している。ツクツクボウシが張り合って鳴いている。鳥たちの子育ての時季が終わりに近づいたのだろうか、野鳥の声はほとんど聞こえない。

 

8月4日 多摩川水源

晴れ。先日スズメバチが襲ってきた犬切峠。今日も2〜3匹が様子を窺いにきたが、攻撃的ではない。林道に下りようとした鹿が慌てて斜面に戻っていく。

コウリンカとマルバダケブキが満開。水干の岩にはタマガワホトトギス。キオンが咲きはじめ、涼風が吹き抜ける高原にはススキの穂も出てきた。その他、ノコギリソウ、ウスユキソウ、ヒヨドリバナ、ヨツバヒヨドリ、シシウド、シモツケソウ、カワラナデシコ、フシグロセンノウ、イブキトラノオなどの花。   

アサギマダラ、クジャクチョウ、キベリタテハなどの蝶が舞っている。

ヤマドリ(親子×2)、ハチクマ、クマタカ(2)、アオバト、ホトトギス、コゲラ、ツバメ、ミソサザイ、ウグイス、メボソムシクイ、アカハラ、コマドリ、ルリビタキ、キビタキ、ホオジロ、アオジ、ウソ、コガラ、ヒガラ、カケス、ハシブトガラス、ソウシチョウ。

 

8月6日 国分寺/上河原堰上流

晴れ、暑い。「お鷹の道・真姿の池湧水群」の湧く国分寺崖線。現在、このすぐ上で建設が進んでいる8階建てマンション「国分寺ゼルクハウス」をめぐり、湧水と自然景観、歴史的景観を守るべく、地域住民らが開発業者に対し工事の差し止めと原状回復を求め国分寺景観裁判が行われている。今年3月の提訴から2回の公判を経て(次回は9月2日)、8月6日午後、原告側の要請を汲んで東京地裁の裁判官3名による現地視察が行われた。

昨年末から始められた建設工事は、すでに8階部分の枠組みができるまで進み、崖線の緑の上にその異様な外観を晒している。毎日ペットボトルやポリタンクを持って水を汲みに来る人が絶えず、環境省の「名水百選」にも選定されている真姿の泉の湧水量は今年に入って激減し、お鷹の道沿いの元町用水は浅くよどんでいる。これは降水量が少ないからだという見解がある。しかし、湧き口のすぐ上の地下に103本もの杭が打ち込まれたことによる影響もあるのではないだろうか。

この日は原告団に支援者を加え総計75名が参加、報道関係を含め100名近くの方々が見守る中(「名水と歴史景観を守る会」発表)、関係者の現状説明を受けながら、都立武蔵国分寺公園ふれあい橋工事現場→“真姿の泉・お鷹の道史跡武蔵国分寺同七重塔跡と歩き、日本ペンクラブ常務理事の高橋千劔破(ちはや)氏も激励に駆けつけてくださった。僕もこの裁判の行方を見守っている多くの市民のひとりとして、少しでもお手伝いができたらと思っている。

夕方は上河原堰上流のツバメ調査。7/17には手前の小さな中州に1400羽ほど、沖合の中州に400羽ほどが塒入りしたが、7/25の花火大会後はどうなっただろうか。結果は、19時前後に手前の小さな中州にやはり1400羽ほどが塒入りした。一方、沖合の中州には飛来せず(昨年のようにヨシ原が刈り取られるようなことはなかったが)。

 

8月7日 青梅(上成木)

曇りのち雷雨。青梅上成木森林環境保全地域で「東京の山で遊ぼう〜集まれ!キッズ☆山をまもり隊」が行われ、親子連れなど40名ほどの参加者が、東京の山と林業の話、間伐デモンストレーション見学、のこぎり体験、チロリアン渡りなどのプログラムを体験した(筆者は山歩き途中での自然観察をサポート)。雷が鳴り出したので、森のコンサートは下山後、ふれあいセンターに戻ってから行われた。この保全地域での活動は、東京都、市民、NPO、企業、森林組合、ボランティア団体、音楽家、消防署など、多くの人々が協力し合って行われている。森林環境を回復し、それを保全していくには、たいへんな時間がかかる。この取り組みがずっと継続されることを願っている。

 

8月8日 大丸堰

晴れ、暑い。イヌ?キクイモが咲きはじめた。先月末のまとまった降雨で、多摩川の水量は回復し、水際のヌルヌルも洗い流された。堰中央のゲートが閉められて、水が川幅いっぱいに流れている。堰下の浅瀬に集まったサギ類を観察していると、護床ブロックの上にオオタカが舞い下りた。

 

8月11日 多摩川水源

曇りときどき晴れ。前日にかなりの雨が降ったようで、沢の水が増え、山道はぬかるんでいる。60〜70mほど先に2頭の鹿を見つける。僕に気付くと顔を上げ、まっすぐな視線でじっとこちらを見ている。やがてピョッ!と鳴くと、小走りに笹薮の中へ消えていった。ヤマドリ(2)、ハチクマ、ノスリ(2+)、クマタカ、アカゲラ、コゲラ、ミソサザイ、ヤブサメ、ウグイス、メボソムシクイ、センダイムシクイ、アカハラ、コマドリ、ルリビタキ、オオルリ(幼鳥♂)、ホオジロ、ウソ、コガラ、カケス、ハシブトガラス、ソウシチョウ。

 

8月13日 大丸堰上流

晴れ、暑い。実験区間のカワラナデシコの多くが盗掘されてしまった。人目につくところに咲いていたので、摘み取られる心配はあったが、根こそぎ持っていかれるとは・・・。「きれいね」と眺めていた人や写真を撮っていた人も、さぞかしがっかりしたことだろう。カワウ、ゴイサギ、ササゴイ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ?、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、イソシギ、キジバト、アオゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月16日 大栗川合流点周辺

晴れ。前日の雨で、多摩川は水量豊富、ササ濁り。カワウ、ゴイサギ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ、カワセミ、ツバメ、イワツバメ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

 

8月17日 大丸堰上流

曇り。カワウ、ゴイサギ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ?、カルガモ、コジュケイ、トビ、イソシギ、キジバト、アオゲラ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ウグイス、セッカ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月18日 一之瀬高原

曇りときどき晴れ。雨は止んだが、水源の山は濃い霧に包まれ展望はきかない。下山すると同時に晴れ間が広がってきたので、峠で鷹の観察をする。頭上をハリオアマツバメがシューッと通っていく。帰り際、裏山の木をかじっていた大鹿を犬に追わせてきたという地元の方に会う。2頭の犬は疲れ果てたようすで、肩で息をしている。聞けばイノシシとハクビシンにも頭を悩ませているとのこと。現在、奥多摩では急増するシカの森林食害が深刻な問題になっており、先月には食害によって裸地化した斜面が豪雨で崩壊するという災害まで起きている。

 

8月20日 北浅川

晴れ、猛暑。八王子市小中学校初任者研修のサポート。川をフィールドにした体験学習をテーマに、室内でグループワークをした後、現地でガサガサ、水質検査、河川敷の観察などを行った。

 

8月21日 大丸堰周辺

晴れ、爽やか。カワラバッタ(2+)を発見した。カワウ、ゴイサギ(幼)、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ?、カルガモ(14)、イソシギ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月22日 五日市線鉄橋上流

晴れときどき曇り。「福生水辺の楽校」のオープニングイベント「多摩川カッパまつり」が多摩川中央公園前の多摩川で開催され、地元の小学生など60名ほどの参加があった。子どもたちは6つのグループに分かれて、川渡り、アンマ釣り、川原の昆虫観察、ストーンアートなどを楽しみ、午後にはペットボトルを使っていかだをつくり、川くだりにチャレンジした。

余計な整備をせずに、自然そのままの多摩川で遊び、学ぼうという基本方針が良い。どこの川でもこうありたいものだ。

 

8月23日 是政

曇り時々雨、肌寒い。丸石河原で、数は多くないもののカワラバッタの生息を確認。地元小学校の実験地のカワラノギクが数本育っている。雨の中、藪を通って全身ズブ濡れになったので、ゆっくりと観察する余裕がなかった。

 

8月24日 大丸堰周辺

晴れときどき曇り。ツルボとセンニンソウが咲きはじめた。カワウ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ?、カルガモ、トビ、イソシギ、キジバト、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月25〜26日 多摩川源流域

概ね晴れときどき曇り。しかし霧や夕立に悩まされた2日間だった。水源の山々はもうすっかり秋。満開のススキが波立ち、赤トンボの群れが山を下りていく。オオカメノキが赤い実をつけ、ミネザクラの葉が色づき始めている。ルリビタキの囀りが聞こえなくなり、メボソムシクイとウソが行く夏を惜しんでいる。クマタカが原生林の木々の間を縫って飛んでいる。鹿の食害は年々深刻になるばかりのようだ。夜になると、ドーン・・・空砲が谷間に鳴り響き、地元の方が見回っているのか、「ほら!あっち行け!」という声が聞こえてくる。ヤマドリ、ハチクマ、ノスリ、クマタカ、アマツバメsp、アオゲラ、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、メボソムシクイ、アカハラ、コマドリ、ルリビタキ、エナガ、ホオジロ、ウソ、コガラ、キバシリ、カケス、ソウシチョウ。ノコンギク、アキノキリンソウ、タチコゴメグサ、ダイモンジソウ、ヤマトリカブト、タカネサギソウ?などの花。

 

8月30日 大丸堰上流

曇りときどき小雨、蒸し暑い。多摩川は水量豊富、ササ濁り。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ(雑種?)、カルガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ(成鳥)、イソシギ、キジバト、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

8月31日 根ヶ布

曇りのち晴れ、猛暑。台風16号による昨夜の強風で、まつぼっくりがたくさん落ちたことだろう。ひょっとするとリスに会えるかもしれないゾ、と根ヶ布の森へ。あるある、松の木の下はエビフライだらけ!10個や20個という数ではない。でも来るのが遅かった。辺りにはかれらの影も形もない。きっと早朝に何匹も集まって大宴会をしていたんだろう。いつかそんなようすを見てみたいものだ。ちょっとだけでいいから・・・