多摩川散策日記2004年2月)

文:上田大志

 

 

2月1日 大丸用水堰上流

晴れ。4羽のカラスに追われたノスリが、仕方ないなといった感じで中州のハリエンジュに舞い降りる。すかさずカラスたちも同じ木に舞い降りてギャーギャーわめきたてるが、ノスリはピクリともしない。カラスたちはノスリの強さを知っているのだろう。あきらめて帰るのも早かった。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、ミコアイサ、トビ、オオタカ(若鳥)、ノスリ、イカルチドリ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月3日 大丸用水堰上流/ガス橋/等々力

曇り。午前10時現在、高水敷保護工事は中断されたまま。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、コガモ、オカヨシガモ、キンクロハジロ、ミコアイサ、オオタカ(成鳥)、ノスリ、イカルチドリ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

午後は「リバーシビックマネージャーの集い」に参加。ガス橋周辺(左岸)は高層マンションの建設ラッシュ。それもそのはず、そこは「下丸子地区スーパー堤防」整備の真っ最中なのだから。一体どこに自然が残っているのだろうか、と言わんばかりの状況で、もしいつか多摩川全域がこうなってしまったら・・・と考えると言葉も出ない。私は自然保護の立場から、スーパー堤防や緊急用河川敷道路に対しては全面的に反対である。しかし、沿川に多くの人が生活している多摩川にとって、“安全なまちづくり”は重要な課題であり、それらを全面的に否定することはできないのかもしれない。仮にそうだとしても、スーパー堤防を造るときに土手の在来植物が回復できる工夫をする等、可能な限り自然を守っていく方策を考えたい。

この後見学した「とどろき水辺の楽校」には、都市部を流れる川で、人が自然と共生していくためのヒントがあると思う。

 

2月7日 南武線鉄橋〜大栗川合流点上流/第14回多摩川流域セミナー

晴れ。「府中野鳥クラブ」の観察会に参加。クズの繁茂でオギ原が減ってきていること、オオタカの狩りのようす、子育て中の野鳥に対して配慮すべきことなどを情報交換する。“一本道”のつきあたりであたたかいコーヒーをごちそうになる。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、ミコアイサ、トビ、オオタカ(成鳥および若鳥)、ノスリ、オオバン、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

午後は、東京農業大学グリーンアカデミーホールで行われた、第14回多摩川流域セミナー「多摩川をどう変える?!ステップバイステップみんなで育てる多摩川〜多摩川水系河川整備計画・市民行動計画のフォローアップ〜」(主催:多摩川流域懇談会)に参加。国土交通省京浜河川事務所から「河川整備計画フォローアップレポート(案)」が示され、多摩川市民フォーラム運営委員会から「市民行動計画」の総括・見直しに向けての提案があった。その後の自由討論で、このセミナーの「多摩川をどう変える!?」というテーマに対して出された、「自然を人間の都合だけでつくり変えようとしているようで不安だ」という声が印象に残った。

 

2月8日 大丸用水堰

晴れ、多摩川ふれあい教室へ。定例自然観察会「多摩川の鳥を見に行こう!〜冬鳥編」。期待していたカモ類は最後の方でちらっと見られただけで、子どもたちは川の中に入ってゴミ拾いを始めてしまった。

 

2月8日 大丸用水堰上流

郷土の森上流の高水敷保護工事は中断したまま。フェンス内は静まり返っていて、かえって不気味だ。それとは別に、ハリエンジュ林のすぐ上流の土手(32.9km付近)で何やら工事が始まり、高水敷に小型バックホーが2台置かれている。看板を見ると「CCTVカメラ設備工事」とある。この件についての情報提供は受けていなかったので、早速河川管理者に問い合わせる。自然への影響や情報提供の有無以前に、河川管理者の中で情報が共有されているのかが気になる。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、マガモ、コガモ、オナガガモ、ミコアイサ、コジュケイ、トビ、ノスリ、イカルチドリ、イソシギ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月11日 大丸用水堰上流

晴れ。「一本クルミ」前のワンドでコサギの群れが小魚を追い回している。カワウ、コサギ、ダイサギ、コガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、ノスリ、キジバト、タヒバリ、ツグミ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月14日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かい。高水敷保護工事が再開され、重機が地面を掘り返している。カワウ、ダイサギ、コガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、イカルチドリ、セグロカモメ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

 

2月15日 河口右岸

晴れ、暖かい。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。

多摩川に着いたときはちょうど満潮で、干潟は帰り際になってちょっと出てきた程度だったが、ヨシ原のオオジュリンやホオアカ、川面のカイツブリ類やカモ類など、多くの野鳥を観察しながら、大師橋から水準拠標までの散策を楽しんだ。特に、魚を狙って悠然と飛ぶミサゴをゆっくりと見られて、大満足の一日だった。

しかし、残念ながら明るい話題ばかりではない。「羽田空港の再拡張・国際化に伴って、多摩川の河口に連絡橋をつくる構想があり、今年5月に閉鎖されるいすゞ自動車川崎工場の跡地が利用されるらしい」という話を矢萩さんから聞いたのだ。帰宅後、さっそくインターネットで検索してみると、2月13日付毎日新聞(神奈川)の記事に、

・川崎市側にも出入国ゲートを新設する「神奈川口」構想について検討する第1回協議会が12日に開かれ、国土交通大臣、神奈川県知事、横浜市長、川崎市長が出席した。

・連絡橋について、今年中に構想の方向性を決めるよう提案があった。

・「トップ会合」を3〜4ヶ月ごとに定期開催することが合意された。

・『09年の開港に合わせて連絡橋も架けなければならない』

・『橋は400億円かかると技官から話があった』

とあり、急を要する深刻な事態にあることがわかった。特に、400億円という数字が出ていることから、すでに具体的なルートが考えられていることがわかる。

もし、多摩川の河口に橋がつくられてしまったら、生態系保持空間にも指定されている干潟とヨシ原と、そこに棲息する動植物をはじめ、大都会の中に残された貴重な自然に悪影響が出ることは避けられないだろう。さっそく川崎市民をはじめ多くの方に問い合わせをして、さらなる情報収集をすることにした。

カイツブリ、ハジロカイツブリ、カンムリカイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、ミサゴ、トビ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、ハクセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ホオジロ、ホオアカ、オオジュリン、スズメ、ムクドリ、メジロ、ハシブトガラス。

 

2月17日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かい。ずっと雨が降っていないので、多摩川は減水著しい。CCTVカメラ設備工事の土砂掘削は終了したようだ。高水敷保護工事は土砂掘削の真っ最中で、堤防上には立派な看板が出現した。工事のモニタリング調査も始まり、調査担当者と情報交換をする。カワウ、コサギ、ダイサギ、コガモ、トビ、オオタカ(若鳥)、チョウゲンボウ、イカルチドリ、キジバト、ヒメアマツバメ、コゲラ、タヒバリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月19日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かな日が続いている。多摩川の土手にはオオイヌノフグリやホトケノザが咲きはじめ、ヨモギの若葉も顔を出した。モズのペアが鳴き交わしている。一瞬、ヒバリの囀りも。

猛禽類の生息状況について調査担当者と情報交換をする。昆虫の生息調査についても話題に。多摩川におけるカワラエンマコオロギやマツムシなどの分布をきちんと調べておきたい。

カワウ、コサギ、ダイサギ、コガモ、キンクロハジロ、オオタカ(成鳥および若鳥)、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

2月21日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かい。CCTVカメラ本体が取り付けられ、設備工事は終了したようだ。ヒバリとホオジロが囀り、モンキチョウも舞いはじめた。カワウ、コサギ、ダイサギ、コガモ、キンクロハジロ、オオタカ(成鳥)、ノスリ、イカルチドリ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

2月22日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かい。ウグイスが囀り、タネツケバナが咲きはじめた。カワウ、コサギ、コガモ、キンクロハジロ、トビ、オオタカ(成鳥および若鳥)、イカルチドリ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

 

2月25日 上河原堰

晴れ、暖かい。TRMの活動支援。調布市立第三小学校の3年生が、野鳥観察、植物観察、水質検査の3グループにわかれて、地元市民の方を講師に体験学習をした(僕は水質検査のお手伝い)。多摩川、府中用水、水道水の3種類の水を用意して、その中からひとつを選んでパックテストをやってもらったが、僕の予想に反して、水道水を選んだ子が多かった。「どうして?」と聞くと、「ふだん飲んでいる水がどんな水なのか知りたいから」と答えが返ってきた。

 

2月26日 大丸用水堰上流

晴れ、暖かい。土手にカワラナデシコが芽吹いてきた。若いオオタカが2羽、追いつ追われつ元気に飛び回っている。今週も高水敷保護工事のモニタリング調査が行われている。ここ数年、多摩川でオオタカを見かける機会が増えた。かれらのすみかである里山が減っているサインでないと良いのだが・・・

カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、ヒドリガモ、コジュケイ、トビ、オオタカ(若鳥2)、ノスリ(成鳥および若鳥)、チョウゲンボウ、オオバン、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月28日 野川(兵庫橋〜神明橋)

晴れ。富士観会館の跡地で、27階建て・高さ93.7mという高層マンションの建設工事が始まった。二子橋下流の石河原は、ゆっくりと歩いたらいろいろな発見がありそうだ。

今日は野川流域連絡会「野川現場見学会(第2回)」。兵庫橋から上流に神明橋まで、野川沿いに約5kmを歩いた。

国道246号の高架をくぐると河川内浄化施設がある。野川にラバーダムを設け、取水した水を高水敷の地下につくられた浄化施設に送り、礫間接触酸化によって浄化した後、野川に戻す。瀬と淵がある自然の川の自浄作用を利用したもので、野川の他にも平瀬川、谷地川、根川につくられている。しかし、この数年はすぐ上流で河川改修工事が行われている関係でラバーダムが下げられたままになっており、使用されていない。

ヘルメットを被って工事現場へ。「野川下流部整備事業」は、50mm/h規模の降雨量に備えた河川改修(野川ではこの区間を除いて整備済)。東京都第七建設事務所の案内で、河道付け替え工事のようすを見学する。護岸に使う木工沈床は、檜原村など多摩地域の山林で発生した間伐材でつくっているとのこと。

新吉沢橋から上流は改修が終わっており、川沿いに遊歩道が整備されている。仙川の合流部にはコンクリートの落差がある。魚などが溯上することはできるのだろうか。

架け替え工事中の天神森橋、補強工事中の新井橋を過ぎ、次大夫堀公園へ。園内には民家や水田など、かつての農村風景が再現されており、野川から取り入れた水を礫間浄化して、復元した次大夫堀(六郷用水)に流している。

世田谷通り(中之橋)は、交通量が多い上に道路がカーブしていて見通しが悪く、直接横断するのは危険。信号機までは150mほど歩かなければならない。橋の下に遊歩道を通すべきだという声も。

小田急線鉄橋の上流は、第一期野川流域連絡会(生きもの分科会)で生物調査に取り組んだところ。神明の森みつ池からの湧水も流れ込んでいる。

神明橋で解散。この付近には川沿いのフェンスがなく、気軽に水辺に下りることができる。野川下流部にこうした場所は少ない。

解散後、野川緑地広場の緑化センターで開催されている写真展「野川と崖線」(主催:野川とハケの森の会)を見学。なお、野川流域連絡会の次回の会合は4月16日、現場見学会は5月に予定されている。

 

2月29日 多摩川上流部

曇りときどき晴れ。「カワラノギク・プロジェクト」の活動日。昨年12月に発見した群落(自生地?)と、高水敷の“花壇”で人工的に管理されているカワラノギクを見学し、「自然にはできるだけ手を加えずに、カワラノギクが自らの力で生きていくためのお手伝いをする」という基本理念を確認した。