多摩川散策日記2004年10月)

文:上田大志

 

 

10月1日 友田/大丸堰周辺

快晴、暑い。

午前中、青梅市友田町(圏央道橋上流右岸)のレクリエーション広場で1時間ほどサシバの渡りを観察。天気が良すぎて太陽がまぶしかったが、上空をゆっくりと舞う10〜20羽の群れを5回確認することができた(友人の話では先月28日に800羽近くも!見られたとのこと)。

その後、いつものように大丸堰へ。もう水の濁りはない。やはり渡りのルートからは外れているのか、サシバは1羽しか確認できなかった。先月29日に小雨模様にもかかわらず17羽も見られたのは、ゴミ焼却場の上空だけに(人工的に)上昇気流が発生して、そこに集まったからということではないだろうか。カワウ(数百)、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、オオタカ(成鳥)、サシバ(1)、キジバト、アマツバメ、カワセミ、コゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月2日 大丸堰周辺

快晴。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イカルチドリ、キジバト、アマツバメ、カワセミ、ヒバリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月3日 東青梅

東青梅市民センターの主催事業「探検!私たちのふるさと〜みんなで探そう身近な鳥たち〜」が行われ、市内の小学(4〜6年)生、19名が参加した(筆者は野鳥観察を指導)。予定では野鳥を観察しながら市民センターから風の子太陽の子広場、さらに永山ふれあいセンターまで歩き、昼食後ふれあいセンターでバードカービングをすることになっていたが、今日は朝から本降りの雨。市民センター裏の霞川でちょっと観察をした後、野鳥の話やゲーム、バードカービング(水上清一さん指導)は市民センターで行った。

根ヶ布の森の観察会に参加したよという子や、通っている学校が愛鳥モデル校だよという子もいたが、みんな学校の授業ではあまり外に出ていないようだった。青少年委員や市民センターの方と、子どもたちにもっと自然から学ぶ機会をつくってあげたいねという話の中で、次回は霞川に入って魚を観察するという企画にしませんか、という案が出た。地域の声が市や学校にはたらきかけをつづけていくことが大切だと思う。

 

10月6日 大丸堰周辺

晴れ。3日の朝から3日間降り続いた雨が上がった。鳥たちもあまり餌がとれずに腹をすかせていたのだろう。今日は朝から賑やかだ。昼前には林の向うに十数羽のタカ柱が見られ、午後にはオオタカがカラスたちの目を盗んで林縁にやってくると、スッ・・・と音もなく滑空して川原に舞い下りてカワラヒワ大の小鳥をゲット。それに気付いたカラスたちに囲まれると、獲物をつかんで森の中へ。日が暮れて帰り支度をしていると、ミサゴもやってきた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、ミサゴ、トビ、オオタカ、サシバ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、キジバト、アマツバメ、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月7日 羽村大橋下流/大丸堰周辺

快晴、爽やか。福生市松林会館の事業で、年配の方を対象とした健康的な歩き方講座「さつきひろば」に同行し、かに坂公園付近の土手を歩きながら、サギ・セキレイ類などの野鳥や道端の野草を観察した。身近な自然のおもしろさを少しでも伝えることができただろうか。もし今日をきっかけに多摩川を歩くようになる方がいたら、これほど嬉しいことはない。

午後は大丸堰へ。夏鳥のチュウサギがまだ残っている。ミサゴが30cmほどの魚を捕らえるのを見ることができた。

 

10月8日 大丸堰周辺

雨の中、常連のバードウォッチャーが6人もやってきた(一番乗りは僕だった)。みんな口々に「今日はオレだけだろうと思ったんだけどな(笑)」。今日はミサゴが3羽も出現。川の上で繰り返しホバリングして魚を狙っていた。いつものオオタカが林縁に止まり、獲物を待つ姿を間近に観察することもできた。カワウ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、ミサゴ(3)、トビ、オオタカ(成鳥)、キジバト、アマツバメ、カワセミ、コゲラ、ツバメ、ハクセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月9日 午後、台風22号が関東地方を直撃した。多摩川流域各地の累加雨量は250mm前後に達し、田園調布観測所では19時過ぎに危険水位まで達する大きな出水となった。

 

10月10日 永田地区

曇り。カワラノギクPJの除草作業(2日目)。増水のピークからは1m近く下がったようだが、永田橋を渡ってカワラノギクの実験区に行くまでの河川敷は水浸し。実験区(A工区)自体は無事だったが、この様子だと昨年12月に見つけた群生地は大きな被害を受けたことだろう。水が落ち着いたら見に行ってみよう。

 

10月11日 大丸堰周辺

曇り。カイツブリ、カワウ、ゴイサギ若、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、トビ3+、ハヤブサ1+、チョウゲンボウ2+、イソシギ、キジバト、アマツバメ、カワセミ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月12日 宿河原(SFR講習会)

曇りときどき雨。RESCUE3JAPAN主催のSFR( Swift-Water First Respander)講習会を受講。多摩川はまだ1mほど増水していて流れも速かったが、川での安全確保と万一の事故に備えた初期対応について、せせらぎ館でレクチャーの後、宿河原堰下流の多摩川で実習が行われた。川で活動する機会の多い私だが、安全に対する意識を新たにした思いである。

 

10月14日 大丸堰周辺

曇り、肌寒い。今回の出水で関戸橋下流の地形はかなり変わった。まだ水位が高いのではっきりしないが、新たな丸石河原ができ、澪筋も変化しているようだ。堤防では今年3度目の除草作業が行われている。在来植物の多くが花期を終えたので、府中市郷土の森上流に設定した除草方法の実験区間でも、今回は肩掛け式の機械による刈り取りをお願いしてある。カイツブリ、カワウ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、キジ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、チョウゲンボウ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、アマツバメ、カワセミ、コゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月15日 大丸堰周辺

快晴。明け方の気温(府中)は10。この秋一番の冷え込みとなった。夕方は是政橋のはるか先に見える新宿の都庁ビルが夕陽をあびて燃えるように輝いていた。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、オオタカ、チョウゲンボウ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月16日 大丸堰周辺

曇り、肌寒い。セイタカアワダチソウ花盛り。犬の散歩をしていた方から、「是政の渡し」(1回5銭だった)、「鮎漁」(ハヤも竹の笊に入れて売り歩いていた)、「砂利掘り」(下河原緑道は砂利運搬鉄道の跡)」など、昔の多摩川の話を聞くことができた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、トビ、オオタカ、カワセミ、ツバメ、ヒヨドリ、モズ、カワラヒワ、ムクドリ、オナガ、ハシブトガラスなど。

 

10月17日 秋川合流点〜昭和用水堰〜滝山丘陵

快晴。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。福生からバスで高月へ。辺りにはいまや貴重な存在となったのどかな田園風景が広がり、田んぼでは刈り取った稲の脱穀作業が行われている。ボロボロになった「多摩川自然観察路」の標柱を横目に昭和用水堰前の川原へ。調査中なのか羽にマーキングされたカワラバッタがいる。オオタカがチョウゲンボウに追われる。小川の水辺にはサクラタデが咲いている。林の中に入ると空気がひんやりと気持ち良い。頂上は滝山城跡。北面の展望を楽しみながら昼食。気づくとアケビの実がたくさんなっている。帰りは反対側に下りて、またバスに乗って八王子へ。

 

10月21日 大丸堰周辺

台風22号の通過から十日、多摩川の流れもようやく穏やかさを取り戻したと思ったら、また台風(23号)。「20府県で56人が死亡、29人が行方不明」(朝日/21日夕刊)となる甚大な被害を与えた。多摩川でも雨は19日朝から21日未明にかけて降り続き、流域の累加雨量は200mm前後に達したが、幸い警戒水位には至らなかった。

21日朝、多摩川は当然まだ濁流なのではっきりとはわからないが、大栗川合流点上流の澪筋はかなり右岸に寄ったように見える。大栗川の水は早くも澄みはじめている。河原に避難して?いた数百羽のカワウが、水面を蹴って一斉に飛び立った。カワウ(数百)、ダイサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、キジ、トビ、オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、セグロカモメ、ユリカモメ、アマツバメ、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月22日 大丸堰周辺

快晴。風もなく暖かな一日だった。ジョウビタキ初認。カワウ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、ミサゴ(1)、トビ(6+)、オオタカ(2+/成・若)、チョウゲンボウ(2+)、ユリカモメ、カワセミ(3+)、コゲラ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ(:初)、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月23日 多摩川水源

晴れのち曇り。自然環境アカデミーの「多摩川の源流へいこう」に参加。拝島駅から貸切バスで作場平へ。紅葉シーズンの日曜とあって、駐車スペースはすでに満車。木々の紅葉を眺めながら、ヤマブドウの実を拾ったりしてヤブ沢峠経由で笠取小屋へ。小屋前の広場は大勢のハイカーで賑わっており、源流研究所の中村さんら何人もの知人と出会う。気付けば辺りはシカの糞だらけで足の踏み場もないほど。前回8月末に来たときには、ここまで多くなかったように思うが(気付かなかった?)。度重なる台風の通過後にもかかわらず水干は干上がっており、すぐ下の水場(事実上の多摩川のはじまり)から豊富に湧き出しているのとは対照的だった。帰路は一休坂を下山。

 

10月25日 大丸堰周辺

晴れ。多摩川の水量はまだかなり多く、堰中央部のゲートは5門とも倒されたまま。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、カモsp、トビ、イソシギ、キジバト、アマツバメsp、カワセミ、ヒバリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月25日 羽村

羽村堰の下流ではむら自然友の会が育てているカワラノギクが衰退してきているように見える。この夏の猛暑で枯れたのだろうか。カワラノギクはその生息適地(丸石河原)を求めて移動していく植物なので、一箇所で長く育てるのは難しいのかもしれない。投渡堰は3門とも取り払われたままで、上流側の土砂を浚渫中。流れはまだ白濁しており、小河内ダムの緊急放流が続いていることを思わせる。堰の上流にもカワラノギクがあるが、これはもう完全に花壇だ。丸石河原は水を被ったようだが、カワラニガナが増えつつあるのが幸い。

 

10月25日 多摩川上流部

昨年末に見つけたカワラノギク群生地を見に行く。(おそらく9日の)出水でメインの群生地はその何割かが流失し、残りの部分は周囲が削られて中州状になっていて近づけなかったが、遠目にもかなりの数のカワラノギクが咲いているのを確認することができた。一段高い場所にあったため幸い流失を免れた300株ほども満開。

 

10月27日 大丸堰周辺

曇り。郷土の森前の土手で草刈りが行われている。今日は北風が強く真冬のような寒さだったが、ワシタカ類を6種類も観察することができ、特に上流から下流、低空から高空まで、縦横無尽に飛び回るハヤブサには大いに興奮させられた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コジュケイ、ミサゴ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、イソシギ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月28日 大丸堰周辺

快晴。早朝の気温(府中)は5。ぐっと冷え込んでくるのを待っていたかのように、冬鳥たちが続々と集まってきた。今日はワシタカ類6種類に加えて、夕方にはコミミズクまで観察することができた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、オシドリ、マガモ、コガモ、カルガモ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、ユリカモメ、コミミズク、アマツバメ、カワセミ、アオゲラ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

10月29〜31日 NACS-J自然観察指導員講習会を受講

千葉県君津市の清和県民の森をフィールドに、NACS-J((財)日本自然保護協会)自然観察指導員講習会が2泊3日の日程で行われ、これまで自分が身近でありふれた自然を観察していなかったことと、「体験第一、解説は二の次」ということを理解していなかったことを痛感した。また、私のモットーでもある「自然かんさつからはじまる自然保護」は、あせらずにゆっくりと浸透させていくことが大切だと感じた。

参加者(60人)と講師・スタッフを合わせて80人以上の方との交流を通じ、すばらしい3日間を過ごすことができたことに対して、全員にお礼を申しあげるとともに、1978年以来今回で357回目の開催となったこの自然観察指導員講習会が、今後より一層開かれることを願っている。