多摩川散策日記2003年9月)

文:上田大志

 

 

9月4日 大丸用水堰上流左岸

晴れ。土手の草刈りが終了した。レンリソウ群生地も含め、辺りの草は一様に短く刈り込まれてしまったが、5株のカワラナデシコだけは残された。今後、前もって提案ができるように、具体的な調査計画をたてたい。

若いオオタカが1羽、目の前をサッと過った。先月郷土の森内で保護し、残念ながら命をおとした幼鳥の兄弟であろうか。

カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、オオタカ(若鳥)、キジバト、ツバメ、セグロセキレイ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル、ドバト。

 

9月6日 第13回多摩川流域セミナー/浅川合流点上流

13回多摩川流域セミナー「私の考えるTRM〜実践をふまえて〜」(主催:多摩川流域懇談会)が昭島で開催され、地元市民の案内で多摩川(あきしま水辺の楽校周辺)の現地見学をした後、多摩川上流処理場(見学者室)でシンポジウムを行った。はじめに、国土交通省京浜河川事務所から「多摩川水系河川整備計画の事業メニューごとの進捗状況」と「多摩川流域リバーミュージアム(TRM)中間報告」について経過説明があり、続いて、「私の実践がTRM(流域各地の取り組み)」と題して、あきしま水辺の楽校(西山さん)、かわさき水辺の楽校等々力校(鈴木さん)、山のふるさと村(小林さん)、川崎市立日本民家園(増渕さん)、自然環境アカデミー(島田さん)、多摩川を飲める水にする会(和波さん)が、それぞれの活動発表を行った。また、「TRMのしくみづくりに関する市民提案」も2例され、これらを踏まえて、ディスカッション「私の考えるTRM」が行われた。多摩川流域リバーミュージアムを実現させる、つまり流域各地でTRMを意識した活動が行われるようになるためには、今後相当のPRを行っていく必要があるだろう。

セミナー閉会後、多摩川の自然を守る会「鳴く虫を聞く会」に参加。スズムシとマツムシの演奏に心身ともに癒された。この会の活動に参加するといつも、みんな心から多摩川のことが好きなんだなあと感じることができて、ホッと心が安らぐ。好きだから参加する、大切にしたいもののために活動する。これが市民活動の原点であろう。しかし、このことが現在の川づくりの議論には欠けていないだろうか。

 

9月8〜10日 岩手(安代)

馬淵川に流れ込む安比川の源流(鍋越川)でイワナを釣る。あまりの魚影の濃さに禁漁区かと思ったほどで、20センチほどのイワナ(アメマス)は何匹釣ったかも覚えていない。尺を少し切るくらいの幅広ヤマメにも驚かされたが、昔は東京近郊の川もこうだったに違いない。この地域の名産である満開のリンドウ畑を眺めながら、静かな北東北の旅を満喫した。

 

9月11日 大丸用水堰付近

快晴、猛暑。キィキィ・・・という声に空を見上げると、チョウゲンボウとカラスがけんかをしている。驚いたことに相手を攻め立てているのはチョウゲンボウの方である。マンション屋上のアンテナからカラスを追い払おうとするが、カラスの方もここが気に入っているとみえて、すぐに舞い戻ってくる。こうして10分以上も闘っていたが、この後どうなったのだろうか(急ぎの用事があり、残念ながら現場を後にした)。

中秋の名月を眺めながら、虫の音に聞き入る。護岸工事の終わった郷土の森上流の草原では、今年もマツムシとカンタンの声を聴くことができた。

 

9月13日 大丸用水堰上流

晴れ、猛暑。多摩川ふれあい教室へ。コサギ、ダイサギ、マガモ、カルガモ、イカルチドリ、キジバト、コゲラ、ツバメ、コシアカツバメ、セグロセキレイ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル。ミシシッピアカミミガメ。

 

9月14日 大丸用水堰上流

晴れときどき曇り、多摩川ふれあい教室へ。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジバト、ツバメ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、アヒル。

今日は定例自然観察会「多摩川の虫たちを観察しよう!」。暑く騒がしい日中、みんなで虫あみを振り回して“バッタとり”に終始してしまったが、昆虫観察→発見を通して、身近な自然に対する関心と理解を深めるきっかけにすることができたと思う。ゲットしたのは、ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、ナキイナゴ、コバネイナゴ、オンブバッタ、セスジツユムシ、ヒメギス、ツヅレサセコオロギ、エンマコオロギ、オオカマキリ、コカマキリなどなど。最後に虫の音のCDを使って、「ぜひ今度は夕方以降にマツムシやカンタンの演奏を聴きに来てください」と呼びかけた。

 

9月15日 大丸用水堰上流

快晴、猛暑。多摩川ふれあい教室へ。コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、コジュケイ、イソシギ、キジバト、セグロセキレイ、ヒヨドリ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル。アレチウリの繁茂が目立つようになってきた。

開館前、子どもたちとガサガサをする。しばらく雨が降っていないので、多摩川は減水気味。一本クルミ前の伏流水もちょっとヌルヌルしていたが、アブラハヤ、ジュズカケハゼ、ヌカエビなど湧き水らしい生きものを観察することができた。

 

9月18日 大丸用水堰上流

晴れ、暑い。堰下のプールでカマツカが昼寝をしている。ところどころ地面が見える草地では、たくさんのトノサマバッタが飛び回っている。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イソシギ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル。

 

9月20日 大丸用水堰

雨、多摩川ふれあい教室へ。カワウ、コサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、イソシギ、ハクセキレイ、シジュウカラ、ハシブトガラス、アヒル。

 

9月21日 大丸用水堰

雨、肌寒い。多摩川ふれあい教室へ。カワウ、ゴイサギ(親子)、コサギ、カルガモ、コシアカツバメ、ハクセキレイ、スズメ、シジュウカラ。

台風15号の通過に伴う、多摩川流域の累加雨量は、小河内118mm、多摩川上流出張所123mm、多摩出張所101mm、浅川橋127mm、田園調布出張所53mm。

 

9月23日 永田地区

晴れときどき曇り。「カワラノギク・プロジェクト」の活動日。

実験区では、10月上旬に京浜河川事務所(の委託業者)が30cm以上の植物を抜き取るので、それを前に、30cm以上のカワラノギク(今秋に開花する個体)やメドハギなど、残したい植生をビニールテープでマーキングした。また、巻尺で10m×10mずつ区画をつくり、ロゼット個体を含むカワラノギク実生の総数を数えた。嬉しいことに、実験区には僕の予想を遥かに上回る数のカワラノギクが育っており、作業には15人ほどが参加したが、朝から始めて夕方までかかっても数え終わらないほどであった。今秋、そして来秋はもっと・・・、川原が一面薄紫に染まる日も夢ではないかもしれない。

一方、自生地の方は、今秋開花する株は育っているものの、ロゼット個体がほとんど見当たらない。今後がますます心配である。

 

9月27日 大丸用水堰上流

晴れ、多摩川ふれあい教室へ。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、イソシギ、コゲラ、ハクセキレイ、モズ、カワラヒワ、シジュウカラ、オナガ、ハシブトガラス、アヒル。

 

9月28日 大丸用水堰〜関戸橋上流

快晴、爽やか。多摩川ふれあい教室へ。銀色の若いオギの穂がみずみずしい。オニグルミの木をドシーンと蹴ったら、熟した実がバランバランと落ちてきた。郷土の森のマテバシイも落ちはじめた。カワウ、コサギ、ダイサギ、カルガモ、トビ、オオタカ(若鳥)、イソシギ、キジバト、カワセミ、ツバメ、セグロセキレイ、モズ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス、アヒル。

ニセアカシア林で、またしても弱っているオオタカの若鳥を発見!8月3日に保護(同13日に死亡)した個体より一回り大きい。10mほどまで近づくと、バタバタと元気なく羽ばたいて10mほど移動し、こちらをじっと見る。これを何度か繰り返していたが、やがて自動車道路を越えて、郷土の森に逃げ込んだ。この個体もうまくエサがとれずに弱ってしまったのであろうか。それであれば自然の厳しさではあるが・・・

夜は聖蹟桜ヶ丘駅前の関戸公民館で「多摩川流域ツバメ集団ねぐら調査連絡会」の会合があり、今年度調査の振り返り、調査結果のとりまとめ、今後に向けての課題などについて話し合った。駅前広場のケヤキが、ムクドリとスズメの「集団ねぐら」になっているのが印象的だった。

 

9月29日 秋川(秋川橋上流)

快晴、TRMの活動支援で秋川へ。大田区立矢口西小学校の5年生100人が、水生昆虫観察、水質検査、水の流れ観測の3グループにわかれて体験学習をした。僕が担当したのは水質検査コース。クリーンメジャーやパックテストの使い方を覚えてもらったが、一番伝えたかったのは、みんなが「絶対に入りたくない!」と言う、地元ガス橋付近の多摩川との違い。水温は18℃と冷たかったが、自由時間にはみんな大喜びで川に入り、泳ぎだす子もいて、水のきれいさを全身で感じることができた。また、僕にとってはつまらないバーベキュー広場にすぎない川原も、下流部の都会からやってきたみんなにとっては、「川にこんなにたくさんの石があるなんて!」と新鮮な感動を与えてくれる場所だったのだ。