多摩川散策日記2003年8月)

文:上田大志

 

 

8月2日 大丸用水堰上流

晴れ、関東・甲信地方梅雨明け。ツクツクボウシ初聞き。ツバメのねぐら調査へ。先週(7月27日)100羽ほどが塒入りした中州の一画には、1羽のツバメも飛来せず。どうやら塒変えをしたようである。原因はわからない。カワウ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、イソシギ、キジバト、ツバメ、セグロセキレイ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

 

8月3日 大丸用水堰上流/上河原堰上流

晴れ、暑い。多摩川ふれあい教室へ。ヘクソカズラとガガイモが花盛り。センニンソウが咲きはじめた。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イソシギ、キジバト、ウグイス、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、ガビチョウ。郷土の森園内で、衰弱してうずくまっていたオオタカの幼鳥(チョウゲンボウかと思った)を保護し、自然環境アカデミーの野村さん(東京都鳥獣保護員)に見に来ていただく(お忙しいところありがとうございました)。どこかを怪我しているようすはなく、巣立ち後うまく餌がとれずに弱ってしまったようだとのこと。早速知り合いの獣医に診せてくださるとのことなので、あとは経過を見守りたい。

 夕方はツバメのねぐら調査で上河原堰上流へ。送電線のカワウは104羽。沖合の中州では、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、ゴイサギが仲良く羽を休めている。19:00、それまでまったく気配がなかったのに、突然四方からツバメが集まってきて、300羽ほどが上空を舞いだした。その後(僕の視界内における)ツバメの数は増えも減りもせず、15分ほどの間に、ここで調査を行ったいずれの日(7/16、19、24)にも塒入りが確認された左岸寄りの小さな中州のヨシ原に順次塒入りした。また、このヨシ原では多数のオオヨシキリ(幼鳥?)を確認した。

 

8月4日 ガス橋〜等々力(10〜14km付近右岸)

快晴、猛暑。多摩川と語る会「第4回多摩川アゲイン〜朝露を踏んで多摩川を歩こう」に参加。朝6:40に平間駅に集合し、「アミガサ事件」や「有吉堤」の話を聞きながら多摩川へ。堤防にはシマスズメノヒエとセイバンモロコシが茂り、水際にはびっしりとアレチウリ。そしてゴルフ場とグラウンドとマラソンコース。何とかならないものだろうか…。カワウ、コサギ、ツバメ、モズ、オオヨシキリ、セッカ、スズメ、ムクドリ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト。

 

8月5日 夕方から夜にかけての豪雨で多摩川が増水し、「多摩川関戸橋花火大会」の打ち上げ作業をしていた花火師ら34人が中州に取り残され、ヘリコプターで救助される(全員無事とのこと)

 

8月7日 黒目川(朝霞)

晴れ。朝霞市生活環境課の主催で「夏休みこども水辺教室」が第三中学校前の黒目川で行われ、小学(5、6年)生11人が、水質調査、ゴミ拾い、ガサガサを体験した。みんなでゲットした魚は、オイカワ、ギンブナ、ドジョウ、メダカ、ヌマチチブ、ウキゴリ、スミウキゴリ、マハゼ。ウキゴリ類の多さに驚いた。投網でアユ、マルタウグイ、ボラを捕まえたスタッフもいた。

 

8月9日 大丸用水堰上流

台風10号が日本列島を縦断中。風が強い!

多摩川ふれあい教室のある府中市郷土の森博物館は、到着早々に臨時休館になってしまった。ニセアカシア林に出ると、何とそのうちの1本が目の前で根元から倒れてしまった。樹高に対して根が浅いとはいえ、こんなに簡単に倒れてしまうとは…。倒れた木が堤防の天端を塞いだこともあり、すぐ河川管理者に連絡すれば良かったと悔やむ。マガモ、カルガモ、ツバメ、セキレイsp、スズメ。

風雨は夕方になって治まり、東の空には虹も。多摩川流域の累加雨量は、小河内87mm、多摩川上流出張所117mm、多摩出張所47mm、浅川橋70mm、田園調布出張所20mmと、かなりばらつきがあったが、山沿いを中心に大雨になった。また8日、東京都水道局から、大雨に備えて小河内ダムの緊急放流(100㎥/s)を行うとの発表があった。

 

8月10日 大丸用水堰上流

快晴、猛暑。多摩川ふれあい教室へ。今日は定例自然観察会「多摩川の水中探検をしよう!」。台風一過の青空に恵まれたが、本流での水中観察はおろか、石河原の伏流水でガサガサをすることもかなわず。コンクリート護岸上に残された文字通りの水たまり(ときどき雨水が供給されて長らく干上がっていない)で、ゲンゴロウの仲間やヤゴなどを観察した後、教室に戻って、水中観察やガサガサの魅力、川で野外活動をする際の注意点などを話した。

やっと夏らしくなってきたと思ったら、もう土手にツルボが咲きはじめた。ゴイサギ、ササゴイ、コサギ、アオサギ、カルガモ、イソシギ、ヒバリ、ツバメ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ドバト。

 

8月14日 大丸用水堰

雨、肌寒い。多摩川は増水してササ濁り。カワウ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イソシギ、ツバメ、コシアカツバメ、スズメ。

 

8月17日 大丸用水堰上流

曇り一時雨、多摩川ふれあい教室へ。14日朝から17日朝にかけて3日間、雨が降り続き、降り始めからの累加雨量は小河内134mm、多摩川上流出張所215mm、多摩出張所214mm、浅川橋224mm、田園調布出張所298mmに達した。多摩川は増水しているが、濁流というほどではない。クズ、センニンソウ、ツルボの花。カワラナデシコも1株。

土手のショウリョウバッタたちに異変が!草にしがみついたまま死んでいるものが数十匹。生きているものも、みなよたよたと元気がなく、元気に飛び回っているものはまったく見られない。まるで疫病のようである。冷夏で彼らのエサとなるイネ科の植物に異常がおき、それを食べてやられたのだろうかと考えたが、イナゴやキリギリスは元気である。また、この現象はここだけなのか。上・下流の土手で同じことがおきていないか、全国各地ではどうなのだろうか?

カワウ、ゴイサギ、コサギ、マガモ、カルガモ、コジュケイ、コゲラ、ツバメ、セッカ、ホオジロ、スズメ、メジロ。

なお、3日に郷土の森で保護したオオタカの幼鳥は、応急処置の後、放鳥へ向けて専門家のもとでリハビリを受けていたが、残念ながら13日に死亡したとのこと。

 

8月20・21日 二子橋上流右岸

毎年恒例の「夏休み多摩川教室」。僕ら多摩川センターの企画・担当コーナーは「クリーン多摩川大作戦!」。昨年と同様、来場者に川原からゴミをひとり3つ以上拾ってきてもらった。2日間のゴミの集計結果(個数)は多い順に、ビニール類380、花火378、食品の容器・包装144・・・。昨年1だったタバコの吸殻は106で5番目。実際にタバコのポイ捨てが減っていれば良いのだが・・・。ビニール類は、増水時に流されてきたと思われる、草に絡まったものが目立った。誰もが目に付いたゴミを自由に拾っているので推測でしかないが、実施時期が昨年より約1ヶ月遅かったことで花火の燃えカスが目に付いた。「ゴミを拾い始めたらやめられなくなった」という女の子4人組が、バーベキューをしていた学生グループと協力して、“タマちゃんゴミ袋”山盛りのゴミを何度も集めてくれた。

富士観会館が取り壊されている。その跡地には高層マンションの建設計画があるという。

 

8月22日 浅川合流点上流右岸

晴れ、猛暑。カワラナデシコが満開。クズの花、土手のツリガネニンジンも見頃。川原の一画でカワラケツメイを20株ほど発見。

草原のバッタたち(ショウリョウバッタも)は元気に飛び回っているので一安心と思ったら、土手はショウリョウバッタの死骸だらけではないか!どれもボロボロになっていて、同じ時期に災難に遭ったようである。郷土の森前の土手と共通点がないかと辺りを見回してみると、堤内側に桜並木が続いていることに気付く。ひょっとすると最近、桜毛虫退治の薬剤散布をして、その影響かもしれないと思ったが、それなら桜並木にいるアオマツムシの方がやられそうだし、ショウリョウバッタの主食はイネ科だと聞いている。誰かが土手に薬を撒いたなどとは考えたくないし・・・。それにしてもなぜショウリョウバッタなのだろうか。

オオフタバムグラが繁茂してきた。カワラハハコが2本しか見つからないが、暑さで頭がボーッとしてきたので諦めて帰る。

 

8月23日 大丸用水堰上流/上河原堰上流

晴れ、猛暑。多摩川ふれあい教室へ。9日の台風で倒れたニセアカシアを切り出して腰掛けがつくられている。土手に元気なバッタたちが戻ってきた。カワラナデシコの開花株も5株ほど見つけたが、土手は間もなくまた草刈りの時期。すでに天端直下の草は刈られている。目に付いたカワラナデシコだけでも残してもらわなければ・・・。カワウ、ササゴイ、コサギ、アオサギ、カルガモ、コジュケイ、コゲラ、ツバメ、セキレイsp、ヒヨドリ、オオヨシキリ、ホオジロ、スズメ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル(♂1)。

夕方はツバメのねぐら調査で上河原堰上流へ。左岸寄りの小さな中州のヨシ原には、18:30から18:45にかけて約350羽のツバメが塒入りした。

 

8月24日 大丸用水堰上流

晴れ、猛暑。多摩川ふれあい教室へ。カワウ、ササゴイ、ダイサギ、ホオジロ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、ドバト。

 

8月26日 兵庫島河川公園/狛江水辺の楽校/かわさき水辺の楽校/滝合水辺の楽校(予定地)/あきしま水辺の楽校/福生南公園

曇り。昨年(6月)に引き続き、国土交通省京浜河川事務所の主催で「川の通信簿」による親水空間の点検が行われ、兵庫島河川公園、狛江水辺の楽校、かわさき水辺の楽校、滝合水辺の楽校(予定地)、あきしま水辺の楽校、福生南公園の6地点をマイクロバスで回った。

兵庫島河川公園…一昨年の出水時に水際が洗掘されてできた小さなワンド状の窪地が埋められてしまった。自然による環境の変化を受け入れず、コンクリートの親水施設に固執し続ける姿勢は疑問だ。

狛江水辺の楽校…夏のオギ原は踏み跡を外すと大変。まさに“探検”だ。竹本さんによると、「現在河川敷一帯にアレチウリが繁茂してきており、オギなど在来の植物が減少している。そのアレチウリの除去作業に追われて、なかなか散策路のメンテナンスまで手がまわらない状態だが、散策路は人が迷わずに歩ければ良いと思うので、草刈りなど必要以上に手を入れることはしない。また清掃活動は毎週(日曜に)行っている」とのこと。この考え方こそ、水辺の楽校の“多摩川モデル”だと思う。

かわさき水辺の楽校…整備が終了して半年が経ち、辺りは草に被われてきたが、人工的な水辺公園であることに変わりはない。そして何よりも、多くの人が水辺の楽校とはこういうものだと信じ込んでしまうことがおそろしい。

滝合水辺の楽校(予定地)…浅川は急流河川。水際はコンクリート護岸で固められ、高水敷は狭い。しかし水の流れは変化に富んでいる。

あきしま水辺の楽校…きれいな水と緑につつまれた自然環境。これ以上の財産はない。木道デッキの整備された人工ワンドではなく、自然の川そのものが楽校だ。

福生南公園…自動車用通路が川沿いに公園の奥までのびている。街中の公園が河川敷につくられただけで、親水という意識自体が感じられない。利用者の多くも川原に出て遊んでいる。そこには多量のゴミも放置されていたが・・・。

 

8月28日 大丸用水堰上流左岸

曇り。土手に出ると、目の前でまさに草刈りが行われているではないか。慌てて京浜河川事務所に「カワラナデシコを残して刈ってもらえないか」と電話をかけるも、担当者は留守。多摩出張所の連絡先を尋ねる時間もなく、草刈り車両はカワラナデシコに迫る。草刈りをしている人に「この花は多摩川ではとても貴重なものなので、これだけは残してほしい」とお願いし、何とか5株のカワラナデシコが刈られるのを防ぐことができた。もし多摩川に着くのがあと1分遅かったら…というタイミングであった。

多摩川の自然を守る会では、“多摩川らしい”土手の自然を考え、河川管理者に対して草刈りの時期・回数・方法などについて具体的な提案をしていくために、来年度より3年計画で堤防植物の調査に取り組む。しかし、ここのカワラナデシコやレンリソウはすでに絶滅寸前の状態にある(と思う)。調査をしているうちに1本もなくなってしまった…となっては困る。とりあえずの方法として、範囲を限って、それらの植物を残して草刈りをするように要望することも必要ではないだろうか。

 

8月30日 大丸用水堰上流

曇り、多摩川ふれあい教室へ。キクイモが咲きはじめ、オオブタクサの花粉も飛びはじめた。ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イソシギ、キジバト、ヒバリ、セグロセキレイ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。