多摩川散策日記2003年6月)

文:上田大志

 

 

6月1日 大丸用水堰付近(左岸)

曇りときどき雨、のち晴れ。多摩川ふれあい教室へ。昨日の雨による濁りと増水は治まりつつあるが、水際に近づくとドブ臭い。石河原の伏流水が生き返った。堰下ではササゴイがピョンピョンとブロックを飛び移りながら魚を狙っている。コマツナギが咲きはじめた。カワウ、ササゴイ、コサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、トビ、コチドリ、コアジサシ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス。

 

6月5日 大丸用水堰付近(左岸)

晴れ。「河口から33km」の標柱を境に、その下流側の土手はすでに草刈りがされているが、上流側はまだ。ヒメジョオンが満開。テリハノイバラが咲きはじめた。

 

6月7日 多摩大橋〜日野用水堰上流(44〜45km付近)

日野用水堰。改築工事が終わり、辺りに静かな自然が戻ってきた。サナエトンボの羽化に見入る。

八高線鉄橋下流の川原。駐車場とグラウンドのある対(左)岸は家族連れや若者グループなどで賑わっているが、右岸側にも子どもたちが自転車で遊びに来ている。

八王子処理場前。土手ではブタナが満開。モトクロッサーはいなくなったが、ラジコン飛行場は相変わらず。あのように本格的なものが通行人にぶつかったらと思うとゾッとする。八高線と多摩大橋の手前でUターンしているが、架線や車に衝突するおそれもある。

多摩大橋。上流側橋梁の建設が始まった。左岸へ。

多摩川上流処理場からの排水路。この時期の楽しみはカルガモの親子。子ガモがまだ小さくてかわいい。

堰上流につくられた“ワンドビオトープ”。先月開校した「あきしま水辺の楽校」の中心地である。周辺には木道が整備され、多摩川らしい生態系の保全とその観察の場所という位置付けのようだが、人工的過ぎる感は否めない。あきしま水辺の楽校とは、子どもたちが特定の目的にとらわれず自然の川と思う存分ふれあえる、この地区の多摩川そのものであろう。

カイツブリ、カワウ、ササゴイ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ(多)、キジ、ノスリ、チドリsp、キジバト、ホトトギス、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、オオヨシキリ(多)、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ドバト、ガビチョウ。

午後は「第2回多摩川水辺の楽校交流会」(主催:多摩川市民フォーラム)が行われ、「多摩川と生きる昭島市民の会」の案内で現地見学をした後、多摩川上流処理場の会議室で情報交換会が持たれた。

「馬入水辺の楽校」(相模川/平塚)、「かわさき水辺の楽校」、「あきしま水辺の楽校」、「川原で遊ぼう会」(平井川/あきる野)、「霞川くらしの楽校」(霞川/青梅)、「砧・多摩川あそび村」(世田谷)、「自然環境アカデミー」(福生)から、これまでの取り組みと今後の抱負が述べられ、一昨年12月の第1回に引き続き、多摩川近隣の水辺の楽校に関わる市民どうしの交流を深めた。

 

6月8日 大丸用水堰付近

晴れ、暑い。多摩川ふれあい教室へ。カワラサイコが咲きはじめた。

今日は定例自然観察会「多摩川の生きもので健康診断をしよう!」。堰下の平瀬で水生生物を採取、観察し、川の中の生き物から多摩川の水質、河川環境を考えた。

浮き石を持ち上げると、ヒゲナガカワトビケラの幼虫がぞろぞろ出てくる。水のきれいな羽村付近まで行けば必ず目にする川虫だが、ここ府中では最近までほとんど見ることができなかった。エルモンヒラタカゲロウやカワゲラの仲間など、きれいな水に棲む虫たちも次々と見つかる。

この場所の10年前・・・多摩川の水質は改善されつつあったが、川底には黒く汚れた泥が堆積し、水中の石はどれもヌルヌルしていた。やはり流れている水と比べて、川底がきれいになるには時間がかかるということだろうか。水生生物といえばヒルばかりが目立った。その後、徐々にシマトビケラの仲間やハグロトンボなどが見られるようになってきたのだが、釣り好きの僕にとって「黒川虫」(ヒゲナガカワトビケラ)や「チョロ」(ヒラタカゲロウ類)は“清流の象徴”であり、彼らが戻ってくるまでになったのだと思うと嬉しい限りである。

アブラハヤやギバチなどもゲット。先月末の増水で上流から流されてきたのかもしれないが、きれいな水に棲む魚たちだ。

「泳げる川!おいしい鮎!水道水源!・・・」僕らが描く多摩川の将来像にまた一歩近づいた。

 

6月14日 宿河原

曇りときどき晴れ、蒸し暑い。せせらぎ館周りの手入れ(草むしり)と多摩川エコミュージアムの総会に参加する。

館の裏手には大きなビロードモウズイカ。堰の改築時に整地されてつまらない荒地になっていた高水敷に、いつの間にかカワラサイコが復活して花を咲かせている。カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コアジサシ、ツバメ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ドバト。

 

6月15日 野川(神明橋付近)

曇り。昨年10月、今年3月に続いて3回目となる「野川水辺の生きもの調査」(下流グループ)に参加。今回も小田急線鉄橋から谷戸橋まで遊歩道を歩きながら野鳥を観察した後、河川敷に下りて神明橋まで戻りながら植物を観察した。

「野川にカルガモが少ないのは、水辺に人や犬などが近づきやすく、水量も少ないので、カルガモ親子にとっては危険な環境だから」と説明がある。植物はセイタカアワダチソウ、オオブタクサ、ヒメジョオン、ムラサキツメクサ、セイバンモロコシなどの外来種が目立つが、水辺にはオギやヨシも茂っている。途中からリーダーのえのきんと僕は川に入って“ガサガサ”をしながら、みんなが戻ってくるのを待つ。

野川の水はどんよりと澱んでいてヘドロ臭く、川底の石はぬるぬるしていてヒルだらけ。水遊びを楽しもうという雰囲気ではない。ゲットした魚はコイとナマズの稚魚が多く、モツゴ、タモロコ、メダカは少ない。他にはアメリカザリガニ、タイコウチ、ハグロトンボやイトトンボ科のヤゴなど。また、今回もたくさん捕れたヌカエビは「ミナミヌマエビ」かもしれないとのこと。

僕が確認した野鳥は、コサギ、カルガモ、キジバト、カワセミ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、オオヨシキリ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

6月18日 釜の淵公園(61km付近)

曇りときどき雨、蒸し暑い。小学校からの友人とハヤ・ヤマベ釣りに行く。

 

6月19日 大丸用水堰上流

曇りときどき晴れ、暑い。カワラサイコ満開。ナワシロイチゴ熟す。

先日までレンリソウが咲いていた土手(小段)の草が刈り取られてしまった。京浜河川事務所に対して管理上の配慮を求めていた場所であり、大変残念である。説得力のあるデータを集め、具体的な提案をしていかなければならないことを痛感した。

カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、カワセミ、ツバメ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ハシブトガラス。

 

6月21日 大丸用水堰付近

晴れ、暑い。多摩川ふれあい教室へ。カワウ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、カルガモ、ハクセキレイ、ウグイス、セッカ、スズメ、メジロ、ハシブトガラス。ネムノキの花が咲きはじめた。

 

6月22日 「夢を語ろう明日の野川」

調布市文化会館たづくりにて「夢を語ろう明日の野川〜野川の自然再生を目指して」(主催:野川流域連絡会)が開催され、「野川流域連絡会」の設立から3年間の活動を報告し、120名ほど集まった参加者全員で野川の将来像について議論した。

* * *

はじめに、座長の小倉紀雄さん(東京農工大学名誉教授)から、野川とはどんな川であるのか話題提供がされた。

・かつて、緑豊かな大地を流れ、玉川上水の恩恵を受けて水量の多かった野川は、高度成長期、流域の都市化とともに汚された。

・その後、下水道の普及とともに水質は改善してきたものの、コンクリートジャングルと化した土地に降った雨は染み込まず、水源である湧水が激減し、ついには水涸れまでおきている。

・しかし、流域の人々にとって、水に親しみ、緑や生きものなどとふれあえる野川は、身近な自然として大変貴重な存在であり、以前から多くの市民が野川をまもる活動に関わってきた。

・このような背景に加えて、“川づくりへの住民参加”が法的に位置付けられたこともあって、野川流域連絡会が生まれた。

* * *

続いて、「生きもの」・「水質」・「水量」各分科会から活動報告がされた。

生きもの分科会からは、野川にどんな生きものがいるのかを知ろうと調査活動をしていること、また、水生生物・野鳥・植物など生きものの立場から見た野川の良い面と悪い面が紹介された。

水質分科会では、野川の水質を改善するために、市民・自治体・学識者などが共同で野川の実態を継続的に調査し、その結果を公の場で発表するとともに、市民の取り組みや自治体の施策などに活かしていく「野川の通信簿」というしくみを検討している。

水量分科会からは、「野川復活大作戦」をスローガンに、いつもきれいな水が流れる野川を取り戻すために、もっと野川を知ろう・流域のまちづくりを水でつなごう・湧水の保全に取り組もう・地域で水を生み出そう・用水路を活かそう・自然再生に取り組もう、と6つの提案がされた。同分科会では、これらの提案を具体化するために野川流域の湧水や水路網のマップを作成している。

* * *

「情報バザー」では、全員が「生きもの」・「水質」・「水量」の3グループに分かれて情報を交換しながら、思い思いに野川の“夢”を語った。

●生きものグループでは、

・自然の中の生きものにエサをやることは是か非か。

・地域ごとの特徴を活かし、人が自然とふれあう場所、生物の棲息・繁殖の場所などをゾーン分けしてはどうか。

・望ましい野川の自然とは何か、基本的な考え方をしっかり持とう。

●水質グループでは、

・子どもたちが水遊びを楽しめる野川、“春の小川”の原風景を目指したい。

・水量の極端に少ない野川に、もし計画されているような巨大な下水処理場(野川処理場)ができたら、将来の夢など吹っ飛んでしまう。

・みんなの夢を実現するために「合流改善」は避けて通れない。

・ひとりひとりの努力で下水道にかける負担を減らそう。

・「野川の通信簿」実施のしくみである“野川モデル”を確立し、全国発信していきたい。

●水量グループでは、

・野川の水量を確保するためには、湧水や崖線緑地の保全など、流域全体の視点で取り組むことが重要だ。

・流域全体のネットワーク活動を盛り上げ、浸透ますなどを普及させたい。

・できるところから用水路(玉川上水の分水)を復活して水を流し、野川につないで「水網緑網都市構想」を実現していこう。

・モニタリング調査などに取り組み、流域の水収支を解明しよう。

・洪水や災害時の利用と対策についても考えたい。

などの意見が出された。

* * *

また、その後の全体討論では、

・野川流域連絡会の果たすべき役割について、目的を明確に持って活動していきたい。

・野川流域連絡会の活動をもっと多くの人にPRしたい。

・野川の将来像について、生きもの・水質・水量の視点から具体的な目標を定めて取り組み、それを現在つくられている「河川整備計画」にも反映させたい。

・東京都民は水道水の多くを他県からいただいている。この事実を踏まえて、野川の復活について議論したい。

・昔から玉川上水と野川は密接な関係にある。玉川上水に処理水ではなく、原水を流す努力をすることが野川の復活につながる。

など、今後に向けて活発な意見が出された。

* * *

最後に小倉座長から、「今後は、これまでの成果を活かしながら、何をすべきなのか目的をしぼって取り組んでいきたい」と総括があり、9月から新メンバーでスタートする「第2期」野川流域連絡会に引き継がれることになった。

 

6月25日 多摩川水源〜笠取山

朝起きたらひどい土砂降りだったが、レンゲツツジの花に逢いたくて、多摩川水源へ出かける。

奥多摩湖を過ぎると、街道沿いの岩壁のあちこちに“滝”が出現しており、どうなることかと思ったが、作場平に着くと雨は小止みに。しかしホッとして歩き出したのも束の間、ヤブ沢峠の手前でまたもや土砂降りに。

それから15分とかからなかった。笠取小屋に差し掛かった途端、空は急に明るくなり、雲の切れ間から日が射してきた。富士山がくっきり浮かび上がる。何という幸運だろう。燃えるように赤いレンゲツツジの花が、今が盛りとばかりに緑の高原を彩っているではないか!

水干。大岩から無数の雫が降りそそぎ、それが幾筋もの細い流れになって足下の地面に吸い込まれていく。今まで雨が降っていたからだと片付けてしまうのは簡単だが、何と神秘的な光景だろうか。

下山路。ミズナラ林は「ミョーケン、ケケケケ…」エゾハルゼミの大合唱に包まれていた。

ホトトギス、アマツバメ、ビンズイ、ミソサザイ、ウグイス、メボソムシクイ、エゾムシクイ、センダイムシクイ、コマドリ、ルリビタキ、オオルリ、ウソ、コガラ、ヒガラ。

 

6月26日 大丸用水堰上流

曇り。ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジバト、イワツバメ、セグロセキレイ、ウグイス、セッカ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス。

 

6月28日 大丸用水堰上流

曇り、多摩川ふれあい教室へ。カイツブリ、カワウ、コサギ、アオサギ、カルガモ、ツバメ、ハクセキレイ、オオヨシキリ、セッカ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。郷土の森のアジサイが美しい。

 

6月29日 大丸用水堰上流

曇りときどき晴れ、多摩川ふれあい教室へ。カワウ、ササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、コジュケイ、イソシギ、コアジサシ、ツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。