多摩川散策日記2003年3月)

文:上田大志

 

 

3月1日 大丸用水堰上流(32〜33km付近左岸)

雨、寒い。多摩川ふれあい教室へ。コサギやアオジなど、夏羽に衣替えを済ませた鳥が目立ってきた。カイツブリ、カワウ、コサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ノスリ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト。

 

3月2日 野川(小田急線鉄橋〜谷戸橋)

晴れ。寒くはないが、北風が強い。

「野川水辺の生きもの調査〜冬編」(主催:野川流域連絡会)が、上流と下流の2グループに分かれて行われた。僕の参加した下流グループには、市区報の公募で集まった市民と連絡会の関係者を合わせ、30名以上の参加があった。

昨晩はまとまった雨が降り、野川は茶色く濁っている。まずは小田急線鉄橋から谷戸橋まで、左岸の遊歩道を歩きながら野鳥の観察。この地域の特徴、冬鳥について、カモやセキレイ類の見分け方などを、子どもたちや初めての人にもわかるように話しながらじっくり観察する。谷戸橋の手前には大規模な住宅団地が造成されつつあり、工事現場から?は白く汚れた排水も流れ込んでいる。観察できた鳥類は、カワウ、コサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、オナガガモ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、ムクドリ(多)、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル、ドバト。

谷戸橋を渡って水辺に下り、右岸を戻りながら植物の観察。土手の陽だまりに春を探す。神明橋付近には小さいながらも石河原やヨシ原が見られ、流れも変化に富んでいる。川岸に残る樹木はカワセミの大切なエサ場だ。直線的に改修された都市河川も、流れをコンクリートで固めてしまわなければ、徐々に自然の姿に帰っていくのだろう。

僕ら陸上観察班と同時並行で活動していた水中観察班の成果を見せてもらう。魚類はモツゴ、タモロコ、メダカ、オイカワ(幼魚)。他にアメリカザリガニ、ヌカエビ、シマイシビルなど。

 

3月4日 浅川合流点上流(37〜38km付近右岸)

晴れ。北風が吹き荒れ、猛烈に寒い。

土手下のきれいな沼は無事で何より。アカガエル?の卵も。浅川はまた改修され、根川と合流して多摩川に流れ込むようになった。合流点付近の樹木が何本も切られている。これも治水上の対策だろうか。草原はあまりの風の強さに、飛ぶ鳥も風下に流されているほどで、観察どころではないが、ニセアカシア林の中は風もなく、暖かな陽射しに包まれ、鳥たちも活発に活動している。目の前の梢をエナガの群れが次から次へと飛び移り、ルリビタキ(♀または若鳥♂)が1羽、尾をふるわせている。

カワウ、キジバト、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ルリビタキ、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス。

 

3月8日 大丸用水堰付近(32〜33km付近)

冷たい雨は上がり、朝からよく晴れて暖かくなった。多摩川はササ濁り。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、オナガガモ、トビ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、ホオアカ(1/成鳥夏羽)、アオジ、スズメ、ムクドリ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

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東京都府中青年の家の主催行事「環境ユースセッション〜東京の自然を語り尽くそう〜」が行われ、僕は第5分科会「多摩川をもっと知る方法!」を担当。青年の家のすぐ隣にある多摩川ふれあい教室で、多摩川の自然や環境学習の取り組みなどを簡単に紹介した後、旧堤防を通って多摩川へ。“身近な自然の再発見”をテーマにフィールドワークを行った。

オニグルミの冬芽がふくらんできた。陽だまりにはオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザを中心に、ハルノノゲシ、ナズナ、タネツケバナなど春の花。カワラサイコやテリハノイバラなど丸石河原の植物も芽吹いてきた。一方でコセンダングサの種やガガイモの綿毛も残っている。キクイモの枯れ茎を引き抜き、その周りを掘って“芋”を確認。川原で昼食後、堰の上流へ。

期待していたタカ類は不在。コサギとダイサギ、ヒヨドリとツグミとムクドリ、ホオジロとスズメなどを見比べる。乱れ飛ぶヒメアマツバメの群れの中にアブラコウモリが1匹。 

長靴に履き替えて“ガサガサ”にチャレンジ。銀色に輝く5〜6cmの小魚は昨夏生まれのオイカワだ。オレンジ色のラインが際立つアブラハヤ、2種類のカゲロウなど。

市民の憩いの場になっているニセアカシア林や、土手上のサイクリングロード「府中多摩川かぜのみち(武蔵野の路)」などを見ながら、利用上のマナーについて考える。

青年の家に戻って夕食後、今日観察した動植物や風景などの絵を模造紙に描きこみ、みんなで“多摩川発見マップ”をつくった。

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それにしても、ボランティア活動に意欲のある市民を強力にバックアップしている各地の青年の家を、次々に廃止していく東京都政に怒りを覚えずにはいられない。

 

3月15日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

曇り、肌寒い。多摩川ふれあい教室へ。柳の色が日に日に変わり、木々にエネルギーを感じる。季節の歩みはゆっくりだが、春はそこまできている。カワウ、コサギ、カルガモ、キンクロハジロ、セグロカモメ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

3月16日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

晴れのち曇り、夕方から雨。多摩川ふれあい教室へ。郷土の森博物館(本館2F常設展示室)では、ミニ展「府中と多摩川〜写真パネルに見る川の表情」が公開されている(筆者も写真を提供している)。カワウ、コサギ、カルガモ、キンクロハジロ、キジバト、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

 

3月17日 東久留米

曇りときどき雨、真冬のような寒さが続いている。早朝、この春はじめてウグイスの囀りを耳にした。

 

3月21日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

晴れ、多摩川ふれあい教室へ。

川原に現れたモトクロッサーに声をかけるが、走り去られてしまう。澄んだ流れは午前9時、対岸で護岸工事が始まると同時に濁ってしまった。多摩川にツバメたちが帰ってきた。

カワウ、コサギ、アオサギ、カルガモ、キンクロハジロ、トビ、オオタカ(若鳥)、コチドリ、イソシギ、キジバト、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト。

 

3月22日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

曇り、寒い。多摩川ふれあい教室へ。ツバメたちが水面をかすめながら飛び交っている。陽春を待ちきれずヒバリが歌いだす。「ジュリジュリ…」イワツバメも到着した。カイツブリ、カワウ、コサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オオタカ(成鳥)、コチドリ、セグロカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ヒバリ、ツバメ(多)、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

 

3月23日 大丸用水堰上流(33〜34km付近左岸)

晴れ、暖かい。多摩川ふれあい教室へ。1月にも報告したように、読売新聞社下流の高水敷は、出水による洗掘が進んだことで、水際に立入禁止のロープが張られている。護岸工事でもするのだろうか。水際線が土手に迫りつつあり、何らかの対策は必要と思われるが、河原植物をはじめとする、この地域の豊かな自然環境が損なわれることのないようにしなければならない。カワウ、コサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、トビ、チドリsp、キジバト、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

3月26日 東久留米

昨年より10日遅れで桜が咲きだした。

 

3月28日 仙川

晴れ、暖かい。「仙川上流域懇談会」の現地見学会が行われた。

丸池…三鷹市では、仙川のかつての水源であった「丸池」の復活を目指して、市民参加による池づくりのワークショップに数年がかりで取り組み、ビオトープ公園が生まれた。水際にはガマが茂り、ものすごい数のおたまじゃくしが群れている。そして網を持った“ミズガキ”も復活した。

野川宿橋…仙川の景観は、ここを境に大きく変わる。橋の下流側では、近年湧水の導水や遊歩道、ポケットパークの整備など、清流の復活を目指した環境整備が実施されている。一方で上流側は、コンクリート三面張りの柵渠となっているばかりか、水がほとんど流れておらず、とても川とは呼べない状況にある。

上連雀広場〜水源の森…無機質な鋼矢板護岸による柵渠が続き、地域の憩いの場としての水辺環境の創出が大きな課題となっている。三鷹市と東京都では、「仙川上流部環境整備基本計画」を策定し、地域における水循環の確保、都市防災機能の充実、緑と水の回遊ルートの形成に取り組んでいる。「水源の森」は、地面にしみ込んだ雨水が地下に設置した貯留浸透施設を経由して仙川に注ぎ込むようにした公園である。

桜堤団地〜桜堤中央公園…武蔵野市では、公団桜堤団地の建て替えを機に、「仙川リメイク」と題した環境整備に取り組んでいる。その目的は仙川に身近な自然を取り戻すことであり、水源には雨水のほか、境浄水場から洗砂水を導水して利用している。

築樋〜砂川用水・小金井分水分派点…築樋は浅い谷になっている仙川の上に、小金井分水を渡すためにつくられた土手(の上を流れる水路)である。小金井市内では梶野町にもあり、砂川用水が仙川の上を通っている。水が流されなくなって久しい水路跡をたどると、やがて砂川用水からの取水地点に出る。そこにはさび付いた水門が残っている。

松中橋…砂川用水は江戸時代に武蔵野新田開発のために玉川上水(昭島市の松中橋付近)から分水された水路であり、玉川上水と平行して立川、国分寺、小平、小金井、武蔵野の5市にわたって流れている。現在は道路排水、畑の水やり、親水公園の水源など限られた使われ方しかされておらず、水の流れていない区間も多いが、砂川用水を利用して仙川や野川の水量を回復しようという声もあがっている。また、松中橋付近の玉川上水は、流水を東村山浄水場に送る小平監視所よりも上流に位置するので、きれいな水がゆったりと流れている。

 

3月29日 大丸用水堰上流(33km付近左岸)

曇り、多摩川ふれあい教室へ。ここ数日暖かな日が続き、川原は一気に春めいてきた。カワウ、コサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、トビ、オオタカ(成鳥)、イソシギ、キジバト、アマツバメ(1)、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト。

 

3月30日 宿河原堰周辺(22〜23km付近左岸)

晴れ、暖かい。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。小田急線下流の土手にはノゲシやヒメウズの花。宿河原堰では魚道の溯上調査が行われている。調査員の話では、昨日はかなりの数のマルタが上ったが、今日はさっぱりだとか。堰下流の流れは右岸側に寄った。土丹の塊を砕いて化石を探したり、セイヨウカラシナのピリッとした辛味を楽しんだりして、柳の芽吹きが眩しい狛江水辺の楽校へ。小川の水もぬるみ、蛙やザリガニが活動をはじめた。午後は南部地域センターで総会があり、定例自然観察会など新年度の活動について話し合った。カワウ、コサギ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、トビ、イカルチドリ、イソシギ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、オオジュリン、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、アヒル、ドバト。

なお、対岸の“ビオトープ”は、人工的な“水辺公園”になってしまった。