多摩川散策日記2003年2月)

文:上田大志

 

 

2月1日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

快晴、風が冷たい。多摩川ふれあい教室へ。子どもたちとクルミ林を歩き回るが、きれいな実はもう見つからない。郷土の森の「梅まつり」が始まった(3/9まで)。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、ノスリ、セグロカモメ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ(多)、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月8日 東名高速多摩川橋〜小田急線鉄橋(21〜23km付近右岸)

晴れ、暖かい。

「北部医療施設」の建設工事に伴い、登戸駅の先(宿河原駅寄り)で南武線を跨ぐ歩道橋が通れない。多摩川に出るには、手前の危険な(狭くて人と車がひしめいている)踏切を渡るか、ずっと先の踏切を渡って遠回りをしなければならない。

宿河原堰上流の“ビオトープ”一帯にフェンスが張り巡らされ、中では重機がうごめいている。聞けば池の周囲を整地して、車椅子も通れる遊歩道を整備するのだとか。ここはもともと宿河原堰の改築時に整地された場所だが、99年の出水によって池や湿地ができ、自然の力によって動植物の豊かな“ビオトープ”が生まれた。そして現在は「かわさき水辺の楽校」をはじめ、市民の憩いの場になっている。堤防沿いの道路に横断歩道やスロープを設置して、多くの人が多摩川に親しめるようにするのはとても良いことだが、川そのものをいじるのは如何かと思う。

せせらぎ館で休憩後、堰の下流へ。カモ類は決して多いとは言えないが、それでも7種類。流れのある瀬に集まって藻を食べている。巨石護岸の列が途切れると、多摩川は大きくカーブし、広大な石河原が現れる。以前あった伏流水の流れは消えてしまったが、東名高速下の小川は健在で、小魚がたくさん泳いでいる。また、この冬も“災害復旧”工事が行われており、多量の砂利を積み上げて流路を変え、左岸側の籠マットを頑丈につくり直している。

カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、イカルチドリ、イソシギ、セグロカモメ、ヒメアマツバメ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月9日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

昨晩遅くに降り出した雨は短時間で上がり、早朝からよく晴れて春の陽気。多摩川ふれあい教室へ。

今日は「冬鳥を見よう!」。多摩川に出るには最適の一日だったが、野鳥の姿は疎ら。堰下の瀬でコサギをじっくりと観察した以外に、みんなでゆっくり見ることができたのは、ツグミ、ホオジロ、ムクドリくらいで、メインになるはずだったカモ類はほとんど見られず。ところがどっこい、帰る間際に思わぬプレゼントが待っていた。中州にオオタカがやってきたのだ。胸の模様がほとんどなく、白と黒のコントラストがはっきりした成鳥で、一瞬ミサゴかと思ったほど。しかも僕がちょっと目を離した間に、コサギに襲いかかり、2羽は石河原に消えたとのこと!

「梅まつり」に暖かさが加わって、今日の来室者は252人。今年度の最多記録を更新した。

カワウ、コサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オオタカ、ノスリ、イカルチドリ、イソシギ、セグロカモメ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月11日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

曇りときどき小雨。駅伝大会が行われており、多摩川の土手は朝から賑やか。オオタカとノスリをじっくり観察して、多摩川ふれあい教室へ。

 

2月15日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

晴れ、風もなく暖かい。多摩川ふれあい教室開館前の自然観察。

多摩川の土手ではオオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザなどが咲き始め、ヨモギの枯れ茎の間から白い若葉が伸び始めた。川原ではセキレイが囀り、春の訪れを感じさせる。カワウ、コサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、トビ、ノスリ、セグロカモメ、キジバト、コゲラ、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

午後は子どもたちとキクイモ掘りに…

ふれあい教室のある旧府中尋常高等小学校の復原校舎に、府中出身の詩人「村野四郎記念館」がオープンした。

 

2月16日 是政橋〜大栗川合流点(32〜33km付近右岸)

雨、寒い。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。

南多摩駅前で大丸用水の上を交差する大丸谷戸川(米軍多摩弾薬庫方面から流れてくる水路)の水は、いつ見ても激しく汚れていて気分が悪くなる。大丸用水にも所々で汚水が流れ込んでいる。是政橋の旧橋は殆ど取り壊され、もう右岸側の一部しか残っていない。それにしても南武線鉄橋の橋脚基部の露出が激しい。河床の低下と洗掘が進んでいるためだ。僕が小学生の時にはその上に這い上がって釣りをしたものだが、今では危なくてとても無理。南多摩下水処理場からの放流水が鼻をつく。

大丸用水堰。今日はあいにくの天気だが、多摩川は静かでカモたちはいきいきしている。そして中州にはオオタカとノスリが。ぬかるむ小道を足早に大栗川合流点まで行って引き返す。天気が良ければ広いオギ原を探検しながら、のんびりと春を探そうと思っていたので残念。

カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、キジ、コジュケイ、トビ、オオタカ、ノスリ、セグロカモメ、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス。

 

2月19日 白丸(79〜81km付近右岸)

晴れ、空気が冷たい。

2月8日の朝日新聞に「昨年末、検査のために白丸ダムの水を抜いたところ、堆積した土砂が流出してその下流の水が濁り、1ヶ月以上経っても続いている」との記事があり、確認に出かけた。

確かに白丸湖は早瀬へと変わっている。その水色は上流域の石灰分を含んだ独特のエメラルドグリーンだ。ダムではゲートを上げて工事(発電所関係とのこと)が行われており、ダム上の歩行通路は立入禁止。よく見えないが魚道も通行不能のようだ。当然ながら、その下流の水は濁り、白濁した渓谷をキャタピラ付きの重機が踏み荒らしている。

こんな具合なので、観察できた野鳥はホオジロとシジュウカラくらいで、いつもならたくさんいるはずのキセキレイは1羽も見ることができなかった。

帰りに御岳渓谷と釜の淵公園に寄ってみると、多摩川の水は未だにかなり濁っている。工事箇所直下の水が濁っているのは当然だが、20kmも下流で濁っているとはどうしたことだろうか。

 

2月22日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

曇り、寒い。天気の移り変わりが早く、寒暖の差が大きくなってきた。多摩川ふれあい教室へ。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、オオタカ、ノスリ、イカルチドリ、セグロカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト。

 

2月23日 柳山公園〜羽村堰(51〜54km付近)

曇り、寒い。カワラノギク復元プロジェクトの活動計画について話し合った後、永田地区の自然観察。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、キジ、トビ、ノスリ、イカルチドリ、キジバト、アオゲラ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、メジロ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。ノイバラとネコヤナギの芽吹き。

ところで、昨日の朝日新聞(夕刊)に「大田区の東京港野鳥公園でカモ類が激減している。オオタカが居着いてカモを食べるので、怖がって寄りつかなくなったらしい。」との記事があった。最近、大丸用水堰上流のカモ類が減っているが、同様の理由があるのかもしれない。因みにここのオオタカは主にコサギを襲っているようで、この冬、付近のコサギの数はめっきり少なくなっている。

 

2月25日 兵庫島(18km付近左岸)/大栗川合流点(34km付近右岸)

晴れ、暖かい。目と鼻がむずがゆい。

兵庫島。コンクリートの親水池は水が抜かれ、泥さらいが行われている。出水で凸凹になった河原も整備中。毎年毎年同じことをし続けている。誰もが安心して水に親しめる施設が必要だというのはわかるが、何も自然の川の中に人工の川をつくることはない。

大栗川合流点。今日は土手のカメラマンが異様に多い。多摩川らしい丸石河原とオギ原を探検する。カワラヒワの囀り。