多摩川散策日記2003年10月)

文:上田大志

 

 

10月4日 四谷堰下流右岸

晴れ、爽やか。京浜河川事務所が四谷堰下流左岸の低水護岸工事の一環として、低水路幅を確保するために右岸側の高水敷を掘削したいということで、多摩川の自然を守る会と日野の自然を守る会が参加して現地検討会が行われた。ここは生態系保持空間に指定されている自然豊かな場所で、復元活動に取り組んでいるカワラノギクをはじめ、カワラヨモギ、カワラサイコ、カワラナデシコなど河原植物の宝庫であり、多摩川全域でみてもきわめて貴重な場所である。せめて昨年から始めたカワラノギクの復元活動をしている場所を掘削するのは待ってもらいたい、と訴えた。また、8月にカワラケツメイを確認した場所は、幸いにも掘削予定範囲をギリギリで外れていたが、現場を事務所担当者に確認してもらい、今後とも充分に配慮するように要請した。なお、この日確認できたカワラハハコは1本だけである。

 

10月5日 浅川

晴れ、爽やか。「多摩川水流解明キャラバン〜浅川パート3」(主催:多摩川流域協議会)が行われ、地元の市民団体、日野市、京浜河川事務所などから60人ほどの参加があった。今回は日野の湧水にスポットが当てられた。

小沢緑地・・・サワガニの遊ぶ泥岩の露頭一帯から湧水が染み出しており、集められた水は棚田を潤している。ミゾソバ花盛り。

明星大学裏の谷戸・・・ビオトープ池と雑木林。

多摩テック裏のさかい公園・・・丘陵の斜面から水が湧き出しているが、鉄分を多く含むのか、えらく赤茶色をしている。

丘陵地の高台(南平九丁目)・・・西側の展望が開け、宅地や崖線の様子がよくわかる。

黒川清流公園・・・東豊田緑地保全地域の崖線林のあちこちから湧き出している豊富な湧水を利用して、せせらぎがつくられている。歴史の古い親水公園だ。

午後は日野市役所の会議室で、水の郷シンポジウム「湧水のまちをめざして〜農と水循環パート2」がキャラバンの意見交換を兼ねて行われた。

 

10月9日 大丸用水堰上流

晴れ、爽やか。

土手で今年3度目の草刈りが行われている。前回は8月末。ここまで執拗に行う必要があるのだろうか。周りには体が半分つぶれたり、足のないバッタたちがたくさん!カワラナデシコはすでに結実し、枯れ始めていたが、避けてくれていた。作業していたのも同じ人で、「来年も自分たちが担当するとは限らない。貴重なものがあるのなら、柵で囲うなどして誰にでもわかるようにしておく必要があるよ」とアドバイスしてくれた。

浅瀬をジャブジャブ渡って中州の探検。若いオオタカがドバトに襲い掛かる(失敗)。河原植物は見つからなかったが、入り江にはコガモたちが到着していた。

カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オオタカ、チョウゲンボウ、イソシギ、カワセミ、ヒバリ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、モズ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ドバト。

 

10月11日 大丸用水堰上流

曇り、多摩川ふれあい教室へ。8月9日の台風10号で倒れ、撤去されたニセアカシアの切り株に、新芽が青々と育っている。郷土の森でどんぐり(コナラ、シラカシ、マテバシイ、クヌギ)を拾う。静かな一日だった。コサギ、アオサギ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハシボソガラス、ドバト。

 

10月12日 大丸用水堰上流

曇り、朝のうち雨。多摩川ふれあい教室へ。

鮮やかな繁殖羽に換羽中のオシドリ(若鳥?)を1羽発見。人の近くでもリラックスしているので、井の頭池辺りから飛んできた個体かもしれない。

今日は定例自然観察会「多摩川で草あそびをしよう!」。コセンダングサ、メマツヨイグサ、ヤハズソウ、オニグルミなどを観察しながら、メヒシバの傘、ねこじゃらしレース、オギの葉鉄砲、オギのミミズクづくりなどの草遊びを楽しんだ。

カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、オシドリ(♂1)、コガモ、カルガモ、キジバト、カワセミ、コゲラ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ムクドリ、シジュウカラ、オナガ、ハシブトガラス、ドバト。

帰り道、アブラゼミの声を耳にした。おそらく今年最後になるだろう。

 

10月13日 大丸用水堰上流

晴れのち曇り、昼過ぎにスコールあり、のち晴れ。多摩川ふれあい教室へ。カワウ、コサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、ヒバリ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

10月15日 河口(右岸)/多摩川原橋上流

曇りときどき晴れ。

久し振りに河口干潟へ。ねずみ島に「バードアイランド」なる看板が出現している。堤防の天端が舗装されてしまった(先日まで水準拠標手前の数百メートルは砂利道だったのに・・・)。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オナガガモ、トビ、シギsp、セグロカモメ、ウミネコ、ユリカモメ、キジバト、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

多摩川原橋上流右岸(グラウンド前)のワンドが掘り返されている。10/29に行われる水質事故対策訓練(主催:「関水対協連合」)の準備で、工事は数日で終わるとのこと。水が濁っており、1月に来たときには豊富に湧いていた伏流水の有無は確認できなかった。

 

10月17日 河辺町地先

晴れのち曇り。カワラニガナの花はほとんど終わっているが、一昨年9月の洪水を免れた小群落が、昨年、今年と確実にその分布を広げている。周りにはコセンダングサやムラサキエノコログサなども繁茂してきた。カワラバッタも確認できるが、もう飛び方は弱々しく、秋の深まりを感じさせる。

 

10月18日 昭島

曇りときどき小雨。「多摩川水流解明キャラバン〜昭島」に参加。

九箇村用水取水口跡:小河内ダム完成による本川の水量減少や、砂利採取による河床低下などのため、今では辺り一面、草木の茂る原野だが、かつてはここまで水際がきていたという。

昭和用水堰:改修によって新しい魚道が整備されたが、昭和用水の取り入れ口(一町二箇村用水樋管)は味も素っ気もなくなった。先日まであった古い水門が懐かしい。

霞堤跡:釜無川の「信玄堤」で有名な、洪水時に堤防と堤防の間から水が外へ流れ出るようにつくられた堤防の名残。

拝島原水補給ポンプ所:昭和用水堰から取り入れられた水の一部を、東京都水道局が非灌漑期に玉川上水に送水している。

龍津寺の湧水:崖線の湧水にポンプ所の余水を合わせたせせらぎ沿いは親水路になっている。水はきれいで、オイカワやカマツカなどの小魚が群れているが、放流されたコイもたくさん泳いでいる。山から持ってきたと思われる巨石積みが不自然。また、季節的なものだろうが、用水本体の流れが干上がっているのが気になる。

拝島大師:湧水の流れで子どもたちがサワガニとりをしている。

成隣小学校:ホタルが棲めるようにと年間通水されるようになった用水の水を取り入れて、“ビオトープ池”がつくられている。水路沿いには遊歩道の整備も予定されているが、フェンスを外して、歩きやすいように清掃するだけで良いのではないだろうか。

阿弥陀寺:境内の一画からきれいな水が勢いよく湧き出している、と言いたいところだが、この水は深い地下水をポンプでくみ上げたもの。以前は自然の湧水でわさびが栽培されていたが、湧水の量が減少したため、深井戸が掘られた。しかし、この水ではわさびが育たないそうだ。

諏訪神社:市民アクションの集合場所にしたのが懐かしい。2000年8月26日、暑い一日だった。境内の石積みの間から湧き出した流れは、心地よい音をたてて旧家の間を流れ、やがて用水路となる。庭先にはワサビ田もつくられており、元気に育っている。

多摩川上流処理場:見学者室で下水処理の概要と「清流復活事業」について説明を受けた後、多摩川ふれあい水族館やオゾン処理施設などを見学したが、多摩川本川への排水口を見なかったことが残念。

玉川上水(こはけ橋):拝島原水補給ポンプ所から送られてきた水が、玉川上水に勢いよく放流されている。

この後、昭島市役所で意見交換会が行われ、参加者から多くの意見や提案が出された。

「多摩川水流解明キャラバン」は見学会としての要素が強い。これをきっかけに、具体的にどうすれば良いのか、現地で突っ込んだ議論をしていきたい。

 

10月19日 河口(左岸)

快晴、爽やかな秋晴れの一日。多摩川の自然を守る会、定例自然観察会。

京急大師線産業道路駅から大師橋下流のヨシ原へ。アシ、アイアシ、オギ、ススキの4つを見比べる。「白い巨塔」のそびえ立つ大師橋を渡って左岸へ。最近流行の斜張橋だが、人間味のあった「富士山トラス」が懐かしい。赤レンガづくりの旧防潮堤を見ながら下流へ。釣り船の桟橋や船溜りが続き、漁村を思わせる。間もなく海老取川(と言っても運河だが)の合流点。子どもたちがボラっ仔を釣っている。ここから先は羽田空港だが、川沿いの浜辺を歩いて行ける。ハマヒルガオの大群落を見つける。ぜひ花の咲く5月ごろに来てみたい。今日は風もなく穏やか。浜辺で弁当を広げるには最高の日和だ。水面にはハゼ釣りの舟が数艘、のんびりと浮かんでいる。ヨシ原と干潟の広がる右岸も良いが、左岸を歩くと不思議な雰囲気に浸ることができる。

みんなと別れて、大師橋の上流、六郷干潟を目指す。雑色ポンプ所放流渠(地下)の新設工事が終わり、排水口は六郷水門の近くにつくられた。また、コンクリートの低水護岸が砂利のマットに変わった。満潮時で、干潟は沖合にわずかに見られるだけだが、カモメたちのくつろぐ周りでは、シギたちがエサを探して忙しそうに歩き回っている。特に、大きなホウロクシギが、あの独特の長いくちばしで、干潟からカニを掘り出して食べるところを見つけて、思わずワァと叫んでしまった。最後に薄紫のウラギクの花を楽しんで、多摩川を後にした。

カワウ、ゴイサギ(若鳥)、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、トビ、アオアシシギ、オグロシギ、ホウロクシギ、セイタカシギ、セグロカモメ、ウミネコ、ユリカモメ、ヒバリ、ハクセキレイ、モズ、スズメ、カワラヒワ、ドバト、その他シギ類多数。

 

10月21日 河口(右岸)

晴れ、穏やか。TRMの活動支援で河口へ。「多摩川再発見シリーズ」と題した羽村市立第三中学校の総合学習プログラムの2回目で、2年生150人が魚類観察、甲殻類観察、水質検査、鳥類観察、植物観察、周辺環境観察の6グループに分かれて活動し、自分たちの住んでいる羽村付近の多摩川の環境との違いを体感することが目的。筆者は周辺環境コースを担当し、ねずみ島の前から水準拠標、殿町小学校(郷土資料室&海苔養殖の資料室)などを案内し、羽田空港、工場地帯、住宅密集地といった極めて人工的な空間の中に、干潟とヨシ原の広がる自然豊かな多摩川が残されていることを伝えた。

 

10月23日 大丸用水堰

晴れ、にわか雨あり。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、イソシギ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、カワラヒワ、オナガ、ドバト。

 

10月24日 小作堰下流右岸

快晴。小作堰下流の多摩川は澄んだ平瀬が続く。ゴルフパーク前の流れは数年前のように2つに分かれた。ひっそりと咲くノコンギクが美しい。この秋初めてのカシラダカ。桜並木は葉を落としたが、まだカワラバッタも飛んでいる。カイツブリ、カワウ、ダイサギ、アオサギ、キジ、トビ、イカルチドリ、キジバト、コゲラ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、カシラダカ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシブトガラス。

 

10月25日 大丸用水堰

曇り、肌寒い。多摩川ふれあい教室へ。セイタカアワダチソウ花盛り。多摩川に出ると子どもたちが「白い鳥がたくさんいるよ!」と興奮した声で教えてくれた。カワウ、コサギ多、ダイサギ多、アオサギ、オシドリ1、コガモ、カルガモ、ヒドリガモ、ユリカモメ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、メジロ。

 

10月26日 大丸用水堰下流

晴れ、多摩川ふれあい教室へ。南武線鉄橋から大丸用水堰にかけては、「いい感じ」の川原が広がっているが、カワラノギクやカワラニガナは見つからない。カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ、カルガモ、セグロカモメ、ユリカモメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

 

10月28日 多摩川原橋上流

雨、寒い。明日行われる水質事故対策訓練のリハーサル。多摩川センターは、見学者に簡易水質測定法や現地の魚などを紹介することになったので、その準備をする。先日の工事で流路が掘削され、本流の水が訓練会場となるグラウンド前のワンドに導かれている。近くでガサガサができそうな場所はそこしかない。人工的に、しかもつくられたばかりの流れとあって苦戦するが、冷たい雨の中びしょびしょになりながら、オイカワ、アブラハヤ、タモロコ、モツゴ、ドジョウ、シマドジョウをゲット。

 

10月30日 等々力

晴れ、暖かい。多摩川センターでは毎年、川崎市立上丸子小学校の文化祭で「多摩川探検隊」コーナーのお手伝いをしている。明後日の開催を前に放課後、子どもたちと担当の先生と一緒に30分ほど歩いて等々力の魚濫川へ魚とりと水汲みに。日が短くなった。みんなが捕まえるまで頑張っていたら、辺りはすっかり暗くなってしまった。