多摩川散策日記2002年12月)

文:上田大志

 

 

12月1日 大丸用水堰上流(32〜33km付近左岸)

曇りときどき小雨、寒い。多摩川ふれあい教室へ。ハリエンジュはすっかり葉を落としたが、メタセコイアが赤茶色に染まっている。カイツブリ、カワウ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、トビ、チョウゲンボウ、ユリカモメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月7日 大丸用水堰下流(32km付近左岸)

曇りときどき雨、真冬の寒さ。多摩川ふれあい教室へ。草やぶに入ると、すぐにコセンダングサの“えじき”になる。構わず歩き回っていると、全身にくっついていたはずの種がいつのまにか全部取れている。なるほど、種の立場になってみれば、くっつきやすくて取れやすいのが何よりだ!

 

12月8日 大丸用水堰下流(32km付近左岸)

曇りときどき小雨、真冬の寒さ。多摩川ふれあい教室へ。丸石河原では,テリハノイバラの実が赤く色付いている。ノイバラと比べると,花だけでなく実も大きめだ。

今日は「多摩川でおイモほり!」。雨天時は室内で行うことになっていたが、“キクイモ掘り”をしなくては、このイベントの面白さは半分も味わえない。キクイモは初秋に菊のような花が咲き、根に芋のような塊ができる北アメリカ原産の植物で、“芋”にイヌリンという成分があり、かつては飼料用などに栽培されていた。人も食べられるが、栄養分の消化・吸収はできないとのこと。多摩川をはじめ各地の河川敷などに野生化している。

午後1時、幸いにも雨は上がっている。よろこび勇んで大丸用水堰の下流へ。そう9月には一面黄色の“向日葵畑”だったところだ。キクイモの枯れた茎を引き抜いて、その周りの土を掘っていくと、生姜のような芋がごろごろ出てくる。みんな夢中で掘っている。「サソリだ!」という悲鳴に駆けつけてみると、15cmはあろうかという巨大なトビズムカデが這いまわっているではないか。こんなのに刺されたら大変だ!近くからチョウゲンボウが飛び立った。その上空でトビがゆっくりと輪を描いている。

教室に帰ると、キクイモ入り豚汁が待っている。冷えた身体には何よりだ。茹で芋、きんぴら風炒め、フライドポテトなども好評。みんなヒマワリに似た黄色い花は知っているが、その根元に芋ができることは知らない。いつも遊んでいる近所の多摩川で芋掘りを楽しみ、食べるというのは新鮮な体験だったようだ。

カワウ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、コガモ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、トビ、チョウゲンボウ、イカルチドリ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、ヒバリ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月9日 東京に初雪降る

深夜に降り出した雪は日中いっぱい降り続き、多摩地域では10cmほどの積雪となった。

 

12月14日 永田橋〜羽村大橋(52〜53km付近右岸)

晴れ、寒い。カワラノギク復元プロジェクト。実験区のカワラノギクの様子を観察した後、野生の局地個体群の保全策を、現地を見ながら検討した。

実験区…今年(3月)に播種した場所では、今秋に開花した個体と、来秋に開花するロゼット個体の両方が見られる。開花個体の多くは結実しつつあるが、まだ名残の花も見られる。昨年(6月)に播種した場所の開花個体は、見事なまでに結実している。タンポポの綿毛を小さくしたようなかわいい頭花が、ひとつの株にたくさん付いている。ロゼット個体は見られない。カワラノギクの実生は、ふつう数年かかって開花するそうだが、栄養状態が良いのか、ここではすべての個体が、1年目ないしは2年目で開花したことになる。しかも根元からいくつも分枝し、1m近くの背丈に育った巨大な株が目立つ。今後も種を採取して播種するのだが、自然状態でも、かなりの数の種が周辺の石河原にこぼれ、発芽するのではないかと期待させる。そしてやがては、辺りが薄紫で染まることを夢見て…

野生の個体群は、もはや風前の灯。数年前までは見られた一箇所にまとまって生えている場所はなく、数個体ずつが広範囲に散在しているだけ。その周辺の環境も、石は完全に地面に埋もれてしまっており、他の草やピラカンサなどに覆われている。これでは貴重な種がこぼれても発芽できない。このままでは、野生のカワラノギクは数年のうちに絶滅してしまうだろう。

来年のカワラノギク復元プロジェクトは、メンバーと活動範囲を拡充し、実験区での播種、植生管理などだけではなく、野生の個体群の保全活動にも取り組んでいくことになった。

カワウ、ダイサギ、アオサギ、キジ、ノスリ、コゲラ、セグロセキレイ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、カワラヒワ、シメ、シジュウカラなど。

 

12月15日 秋川合流点〜平井川合流点(48〜50km付近右岸)

晴れ。早朝の冷え込みは厳しいが、日中は穏やかな一日。多摩川の自然を守る会の定例自然観察会。

睦橋上流の沼々には、ここで今年の春から夏にかけて発見されて、大騒ぎになった「カミツキガメ注意!」の看板が立てられている。水面は薄氷に覆われ、周りには9日に積もった雪も残っている。コゴメヤナギの大木を見ながらハリエンジュの林を抜けて、平井川の合流点へ。五日市線鉄橋下の淵は深く、水も澄んでいる。夏には“度胸試し”の子どもたちで賑わうことだろう。昨秋の洪水でつくられた広大な丸石河原を歩く。対岸にモトクロッサーが出現。イカルチドリが追い立てられる。

陽だまりで弁当を広げ、午後は睦橋の下流へ。沼からの流れは干上がりかけているが、伏流水が湧き出していて、クレソンが青々と茂り、小魚もたくさん泳いでいる。辺りはサギ類、カワセミ、ノスリなど野鳥の楽園。カシラダカに似て、目の周りが黒っぽく、その上下が黄色い小鳥が1羽。この付近で過去にも記録されているミヤマホオジロではないだろうか。砂につけられた足跡や砂浴びの跡などもおもしろい。しかし、ラジコン飛行機が唸り出すと、鳥たちは姿を消してしまった。秋川の合流点へ。冬とは言え、水量が異常なくらい少ない。

帰り道、年末恒例の石川酒造へ。軽くビールで乾杯し、来年の自然観察会計画について話し合った。

カワウ、ゴイサギ(若鳥)、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、トビ、ノスリ、イカルチドリ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ(多)、ジョウビタキ、エナガ、ホオジロ、ミヤマホオジロ?(1)、アオジ、スズメ、カワラヒワ(多)、シメ、ムクドリ、シジュウカラ、オナガ、メジロ、ハシブトガラス、ドバト、ガビチョウ。

 

12月19日 大丸用水堰下流(32km付近左岸)

曇り、寒い。多摩川ふれあい教室へ。研修(インターンシップ)で来ている学生と教室の大掃除をする。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、イソシギ、ユリカモメ、キジバト(多)、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ(多)、カワラヒワ、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月21日 大丸用水堰付近(32〜33km付近左岸)

真冬の寒さ。霙混じりの冷たい雨が降り頻る。多摩川ふれあい教室へ。

寒々とした川面の上を飛び回っているスマートな鳥が1羽。何とツバメである(ヒメアマツバメではない)。怪我でもして、みんなと南へ帰るタイミングを逸してしまったのだろうか。中州のクルミの木にノスリがやってきた。

カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、トビ、ノスリ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、コゲラ、ツバメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月22日 大丸用水堰上流(32〜33km付近左岸)

曇り、寒い。多摩川ふれあい教室へ。多摩川は昨日の雨でササ濁り。カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、キンクロハジロ、トビ、ノスリ、イソシギ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月28日 大丸用水堰上流(32〜33km付近左岸)

晴れ、寒い。多摩川ふれあい教室へ。

オオタカに襲われたらしいコサギの死体を発見!羽毛が水際から帯状に散らばり、骸には深く嘴が打ち込まれている。まだ温かく血も固まっていない。つい今しがたの出来事らしい。

 今日も中州にノスリがやってきた。カラスたちがギャーギャーわめきだすが、彼はまったく相手にしない。

カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、ノスリ、イカルチドリ、ユリカモメ、キジバト、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ(多)、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、ムクドリ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。

 

12月30日 是政橋〜大栗川合流点(31〜33km付近/右岸)

快晴。是政橋の旧橋撤去が始まった。旧橋は幅が(車道、歩道ともに)狭い上に交通量が多く、これと言った特徴もない橋だったが、20年間親しんできた橋が、いざ取り壊されるとなると寂しい。澪筋は右岸側に寄った。頭上をヒメアマツバメの群れが通り過ぎ、近くの松の木にはチョウゲンボウが舞い下りる。南武線鉄橋の先で柴田さんと出会う。

カイツブリ、カワウ、コサギ、ダイサギ、アオサギ、コガモ(多)、カルガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、コジュケイ、トビ、ノスリ、チョウゲンボウ、イソシギ、セグロカモメ、ユリカモメ、キジバト、ヒメアマツバメ、カワセミ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、ツグミ、ジョウビタキ、ホオジロ、アオジ、スズメ、カワラヒワ、シジュウカラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。