指導普及委員会の技術指導


指導をする上で心がけていること

私は、子どもにレシーブやスパイクといったプレーの技術を指導するとき、「基本と基礎」「分解と組み立て」「試合中にあり得ること」「継続練習」という4点を大切に考えている。
@「基本と基礎」
 私自身もそうであるが、プレー中の選手に対して「正面で拾え」というような指示を良く耳にする。しかし、必要なのは、正面で拾うためにはどうするかを指示することではないだろうか。これを練習に置き換えても同じことが言える。「正面で拾う」ということを基本とするならば、それができるための「構え」「足の運び」「腕の組み方」「ボールに触るタイミング」などが基礎としておかなければならないであろう。さらに、その基礎ができるために練習しておかなければいけないことや体力が必要となる。それを「基礎を支えるもの」として練習メニューに加えなければならない。しかし、基本を身につけるための方法を工夫しているかが鍵である。
A「分解と組み立て」
 これは、@の「基本と基礎」とほとんど同じである。つまり、一つの技能をどこまで分解できるかそして、それをどう組み立てて一つにするかということである。例えば、アタック。いきなりアタックを打たせても、無理であるし、一度ついた癖はなかなか直らない。そこで、練習をアタックに必要なステップと腕の振りに分解する。さらに、腕の振りはバックスイングと振り上げと打ち下ろしに分解する。それらを組み立てながら、初めは指導者がボールを合わせてやる。少しずつボールを早めに上げる。子どもが、ボールに合わせることに気を使わずに、知らず知らずのうちに、上がったボールを打ちにいけるようにしてあげるのが良いのではないだろうか。こういったことが、サーブにもレシーブにも当てはまる。一人一人のプレーを組み立ててチームプレーを作り上げていくように、一つ一つの基礎を組み立てて一つの基本技術を作っていくことである。
B「試合中にあり得ること」
 中学生の大会の折、監督が強いボールを打ち、選手が見事にレシーブを上げるという練習を見る。そこだけ見るとかなり強そうに見えるが、試合になるとあまりボールがつながらないというチームをたくさん見かける。果たしてその練習をしていたレシーブは、試合中に何回あるだろうかと考えてしまう。私はサーブレシーブとアタックレシーブは全く別のものだと考える。さらにアタックレシーブも、正面に来た強打と、前に落ちる軟打、フェイント、左右に走るレシーブに関して言えば、「正面で拾う」ということさえ機会は少ないこととも言える。 つまり、試合中にあり得るプレーを、子ども達に試合の中のどういう場面か良く説明したうえで、練習させることが大切である。私は練習試合が終わると、その日の欠点バターン、あるいは得点につながらないプレーの中から、どの場面で何ができていなかったかを考え、それができるようになるためには、どんな練習をしたらいいか考えるようにしている。限られた練習時間の中で、強打を、足を止めて拾うレシーブに時間を割くか、それとも、試合中にありそうなことをたくさんやるか、それは指導者の考え方次第である。
4「継続練習」
 練習の仕方は、指導者によって様々であり、何が正しいとは言えない。基本の技術、例えば「構え」ひとつとっても、どれが正しいと言えないのがバレーである。前項で書いたように、私は「これができるために、一人一人にこういう練習をしよう」と考えるのだが、その練習というのはあまり時間を必要としないものが多い。数分間で、一人ないし二人組みでできることを考えようとしている。練習メニューの中にポンと加えても、時間的にあまり気にならないものである。例えば、コート外へそれたボールの戻し、ブロックカバー、後方へのオーバーパス(バックトス)等練習したいことを上げたらきりがない。あるいはレシーブのとき、いつも右足が前といった癖の克服服などもある。これらを2人1組でボールを止めずに連続して練習できるように工夫する。しかも、少ない回数でいいから毎回行うようにする。つまり、その場その場で一つのことを長い時間練習するのではなく、数分、慣れてくれば1分以内でできるメニューを考え、それを毎回の練習で必ずやらせるようにしている。一つの技術は、1日では身につかない。いきなりやらせても、悪い癖が身につくだけである。さらに、指導者が練習時間に出て行けないということも良く聞く。無理もないことである。だからこそ、このように数分ずつたくさんのことを継続して練習させると、ある時、それまでできなかったことを平気でこなしている子ども達を目にすることができる。
 以上のように、@基本を分解して(基礎技術とし)A子どもだけで無理なく毎日短時間で継続して練習できるようにしBそれを組み合わせて一つのプレーを作ることで、より基本のしっかりしたチームが出来上がる。「やれと言われたらすぐやる」「できるようにしろと言われたら、今日できるようにする」ということも大切。だが、それが「今日」できるためには、その土台が何ヶ月も前から準備されていての話である。基本がしっかりしていれば、フォーメーションを組んでのチーム練習の中で、再び個人練習に戻ることも少なくなる。あわてればそれだけ後戻りも多くなるのがバレーボールであるように思う。

                        指導普及委員会 技術担当  加藤浩一

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