第47回日本小児アレルギー学会報告(2010.12月横浜) 



1. 食物アレルギー

発症予知:現在でも非常に難しい。家族歴が一番わかりやすい。

発症予防:これも難しいが、ヤクルト菌などのProbiotics(腸内細菌)が
有効 らしい。食物アレルギーは皮膚からの感作もある。
妊娠中、乳児期の母親の食物制限は、発症予防と関係ない。(ミルク以外)

離乳食:最近では遅め(6ヵ月頃)開始が勧められてきたが、海外では
4−6ヵ月が勧められるようになってきた。
早めに少しずつ色々な食物をとった方がアレルギーの発症を抑えられる
らしい。
(著者註、25年前は、7kg・5か月、最近は6ヵ月、ここにきて4か月と、
時代とともに変わるので、どれがベストだかわからない。
結論として、開始時期は、4−6ヵ月の間で、いつでもよいのだと思います。) 
予防も、長期間のアレルギー除去から、積極的な摂取に変わってきた。
乳児期に抗生剤を使いすぎると、腸内細菌が乱れ、アレルギーが発症
しやすくなるかも。

治療:除去食から、食べて治す、に変わってきた。
入院の上行う急速特異的耐性誘導、外来で行うゆっくりとした誘導がある。
偏らず、幅広く食べることで、アレルギー反応に慣らしていく。皮下注射、
舌下の治療も見直されてきた。
食物アレルギーサインプレートの話がありました。
<この食物は食べられません>と、わかるようにつけるプレートです。
すごく良いアイデアだと思います。www.alsign.org/にアクセスしてみて
ください。


2. アトピー性皮膚炎

ステロイド剤の塗り方:入浴後にまだ少し濡れている時にすぐに塗る。
それもたっぷりと。
顔は3−7日、その他は2週間位ぬり、Proactive療法にもっていく。
Proactive療法とは、皮膚がきれいになった後も、1日おきや2日おき、
状態がよければ1週間に1度でもよいので、ステロイド剤をぬり、他の日は
保湿剤で維持する療法です。

去年あたりから、小児皮膚科のトピックです。
「ステロイドを塗ってアトピー性皮膚炎が悪くなった」という人がいます。
よく話を聞くと、おそるおそるケチケチつけていたというので、量不足では
効くわけがなく、悪化します。
たっぷりとつけて悪化したという話は、乳児の顔に最強のステロイドを
長期間塗って、満月様顔貌になったという例以外聞いたことがありません。

※著者は健診でたくさんのアトピーのお子さんに出会いますが、
今はほとんどの方が軽症です。その中でお二人だけひどいアトピーの方が
いました。
きくところによると、ご兄弟で、ステロイド剤をかたくなに拒否され、
民間療法をされているそうです。
標準的な保険のきく治療をうけていれば、アトピーはかなり良くなるのに、
残念です。


3. 花粉症の結膜炎の予防

めがね、ゴーグル、人工涙液(アイリス、ソフトサンテイア)。
プールはゴーグルをつけて入れます。
プールの後で人工涙液で洗眼をすることが大切です。

眼軟膏として広く使われているネオメドロール軟膏はその中に入っている
フラジオマイシンが接触皮膚炎を起こすことがある。ということで、
かぶれのおこしにくいプレドニン眼軟膏に当院では変更しました。
2種類以上の目薬をつける時は5分以上間隔をあけることが望ましいです。
実際は5分も待っていられないことが多いので、2種類以上が混合されて
いる目薬もあります。


4. エピペン(アナフィラキシーの治療薬):学校で、教職員も打てるように
なったが、まだ戸惑いもある。
2009.3月からは、救命救急士も可能になった。


5. 気管支喘息、アトピー性皮膚炎は治療の進歩で軽症となり、生活の
質は向上し、喘息死や入院は減ってきました。
今では、軽い病気というイメージを持っている方もあるでしょう。
しかし、@発症は減っていない。A管理が悪いと喘息死もありえます。

温泉療法、酸性水、怪しげな薬草・秘薬等、民間療法、アトピービジネスは、
後をたちません。
効かないだけならまだ良いのですが、これらの最大の欠点はガイドラインに
沿った標準的な保険のきく治療を否定する恐れがあることです。

軽症喘息の日常管理:掃除と禁煙が大切。
日本は欧米と比べ、軽症の方も早めに治療を始める事で、軽症が多くなって
きた。吸入ステロイドと、ロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレアやキプレス)
ホクナリンテープが効果的。逆に、初診時に重症な方は予後が悪いです。