第115回日本小児科学会報告 (2012,4月、福岡) 

 

皆様に役立ちそうな話題を提供いたします。

 

@     乾燥肌と保湿剤:お風呂に長く入っていると、湯上りにお肌がカサカサした感じになります。その理由は、天然保湿因子(尿素、セラミド、ヘパリン類似物質など)が流されてしまうからです。お湯につかっていたのだからすべすべになるはずだと思っていました。風呂上りに尿素などが入った保湿剤をすぐ塗ることで、カサカサしなくなります。

 

A    プロトピック軟膏:アトピー性皮膚炎の治療薬として日本でも定着してきました。ステロイドと比べ、効果の持続時間が長いのが特徴です。顔への使用が効果的ですが、それ以外の部位でも適応があります。

 

B    食物アレルギー:治療の考え方が現在大きく変わろうとしています。食べ物を制限していこうという考えから、必要最低限の食物除去でできるだけ食べさせようという考え方になっています。積極的に食べさせて全く症状が出ないことはありえません。多少は目をつぶって食べさせていくことが大切です。念のためご家庭に、抗ヒスタミン剤やエピペン(症状のひどい方)を用意しておくと安心です。くだものなどを食べた後に口の周りにブツブツが出ることはよくあります。5分以内に出ることが多いです。これだけではその食物のアレルギーとはいえませんので、気にしないようにします。食物アレルギーは0−1歳がピークで、小学生では10人中9人が治っています。皮膚症状がある時は、食事制限の前にまず軟膏をしっかり塗って皮膚をきれいにすることが大切です。

 

C    ADHD(注意欠陥多動性障害):幼児期のあまりに困るような多動はADHDではないことも多いです。日本人では、ADHD単独よりも、広汎性発達障害を伴っている人が多いです。ADHDとはっきり診断できない方でも、多動には薬物療法が効果あります。(当院でも処方できます。)

 

D    ロタウイルスの胃腸炎:衛生環境に気をつけても、予防効果は少ないです。ワクチン接種が効果的です。(当院では5価ワクチン(ロタテック)が市場にでたら接種開始予定です)

 

E    心身症:心理や社会的因子が関係する体の症状・疾患です。心の問題を考えるより先に、まず体(体調)をよくすることが大切です。薬物療法も積極的に行います。

 

F    こどもの喘息:1990年ころから重症の喘息・死亡者数は減ってきました。これは吸入ステロイドとキプレスやシングレアのおかげです。発症するこどもの割合は変化ありません。