第34回 日本小児皮膚科学会(2010年7月:松山) 



1.食物アレルギーのシンポジウムがありました。

診断

食べたら湿疹が悪化した、特異的IgE抗体の結果で陽性に出た、ということは参考になりますが、それだけで、食物アレルギーとはいえません。総合的な診断が必要です。

一般的には、保護者が言うアレルギーを生じる食物数>本当の原     因となる食物数です。

食物負荷試験の標準化:加工食品交換表がつくられ、誘発閾値を決められるようになった。

その食品をどれくらいなら(量)食べてもいいかを決めるのが目的

治療

まずは、皮疹の治療(ステロイド軟膏など)。母乳を与えている時の母の食物制限は意味がない。

食物アレルギーの新しい治療法として、抗原特異的経口免疫療法:少しずつ食品をとり、慣れることで食べられるようにしていく方法ですが、危険を伴うことがありますので、専門の施設で行わなければなりません。

2.アナフィラキシー出現から治療(エピネフリン、エピペンなど)までのタイムリミットは、ハチ(特にスズメバチ)は5分、食物アレルギーは30分です。エピペンが1999年に発売されてから、蜂で死ぬ人は年間30人から、20−25人に減ってきました。

学校でのエピペン:教員がうつのは問題ない。こどもが倒れ、エピペンがあるのに打たなかった(助けてくれなかった)方が、問題だが、現時点ではおとがめなし。

3.ファブリー病:手足の痛み、汗が少ない、タンパク尿などが症状。頻度は数千人に一人で稀な病気ではありません。酵素補充療法ができるようになり、治るようになってきました。痛みを和らげる薬もあるので、このような症状の方は早く診断をつけることが大切。

4.皮膚感染症は痒みがないのが特徴だが、とびひ(伝染性膿化疹)は唯一、痒みのある感染症。最新の治療法も公開されましたが、すでに当院でおこなっている方法そのものです。難治性のとびひの方は、ご相談ください。ステロイド軟膏は必須ではありませんが、アトピーっぽい方は、塗ったほうが早く確実に治ります。ステロイドの為に感染が悪化することは、現実にはありません。ゲンタシンは今ではほとんど効きません。

5.とびひの時の日常生活:ひどくないときは、登校、登園は傷口を覆って可、プールは不可。予防は鼻かみ、爪切り、手洗いが大切。虫さされ・外傷・かぶれは早めに外用で治し、放置しない。

6.ステロイド軟膏の副作用:長期に大量に最強のステロイドを使うと、満月様顔貌がありうる。皮膚が黒くなるとか、厚くなるとかいうのは嘘で、それらは、不適切な治療による(主にステロイドの量不足)アトピーの悪化(東大の江藤先生)

7.最近のアトピー治療のトピックス、プロアクテイブ(proactive)療法:調子のよい時にも、治療を継続する治療法。具体的には、ステロイド、プロトピック軟膏を中心とし、毎晩→隔日→週一回と皮膚の状態をみながら、塗る回数を減らしていく。塗らない日は、保湿剤を塗る。スキンケアと保湿剤が大切なことは、大前提です。実際の方法は当院にご相談ください(かかりつけの方)

8.目の症状がひどい時の為に、プロトピック眼軟膏が出ました。現在は眼科医のみ処方が許可されています。今のプロトピック軟膏は眼の中に入っても、実際は大丈夫です。

9.アンダームは、かぶれることがあるので、2010年3月で発売中止になりました。

10.     日本アレルギー友の会があります。喘息、アトピーでお困りの方は相談されるのもよいでしょう。http://www.allergy.gr.jp/   
TEL03−3634−0865(祝日を除く火、土の11−16時)