《生物の身体は利己的な遺伝子の乗り物であり、
遺伝子がコピーを残すための生存機械である》・・・リチャード・ドーキンス
土曜深夜、26時30分。ソフトバレエ、遠藤遼一です。
個人的な日記としてお送りしているレディオ・トランシー、今夜の話は『本能』です。
我々の肉体に書き込まれた本能、逃れることが出来ない束縛、
受け継がれて行く行動システム―――今夜は本能について考えます。
♪♪『WHITE SHAMAN』 soft ballet
――― CM:ブレインドライブ 『リアライズ』 ―――
インド洋マウリシャス諸島に棲息したドウドウ鳥は1681年に絶滅した。
彼らは外敵のいない島に棲息していたために、
「外敵から身を守る」「闘争する」といった本能を持たなかった。
その結果、ポルトガル人が入植し目の前で仲間が殺されていても
まったく逃げようとしなかったという。ドウドウという名の語源はラテン語で
「生存に値しない滑稽なまでのバカ」という意味である。
だが彼らの本能は、生存のための能力以外必要としなかった。
インドに棲息するハヌマンラングールという猿は、
集団のボスが交代する度に子供を大量虐殺する。メスが子供を持っていると、
次の妊娠が可能になるまでの間にボスの地位を奪われた場合、
自分の子供を残せなくなってしまう。このためにボス猿は
自分という種を保存するために子供を次々と殺していく。
人間の脳は本能的に苦痛を和らげるシステムを持っている。
ある程度の苦痛が肉体に与えられると、それを和らげるために
脳の内部にリブリウム、ラリウムといった脳内麻薬が生産され、
一時的に肉体の苦痛を軽減するように出来ている。
しかし極度に脳内麻薬が分泌されると
肉体がその限界点を超えてしまう危険を孕んでいる。
過去から引継ぎ、幾重にも蓄積された籠に、動物は飼われている。
回避しなければ自分が消されてしまうために
目の前の異物を識別しなければならなくなってしまったのは何時からだったのか。
それが動物だという本能にも人は飼われている。
♪♪『Visions Of You』 Jah Wobble with Sinead O'Connor
四種類の塩基の数億の配列――
生物の本能はDNAによってその子孫に受け継がれて行く。
生物はこのコピーを繰り返し、その子孫を繁栄させる繁殖に必要な能力は確実に遺伝する。
だが、その人間の持つ個性は世代を重ねるにつれ薄まって行く。
例えどんなに優秀な遺伝子を持っていたとしても、それが子供に伝わるのは約半分、
孫では1/4、10世代後には1/1048576――つまり20世代後の子孫は全く他人になる。
《我々が生まれてくるところの、あの精液の一滴が
その中に父の肉体的形状の刻印を有しているばかりでなく、
その思想傾向の刻印までも含んでいるとは何たる奇怪なことぞ》・・・モンテーニュ
♪♪『I Build This Garden For Us』 Lenny Kravitz
殆どの動物は繁殖の相手を選ばない。だが人間は特定の個人を愛す。
これは相手を選り好みさせる遺伝子がさせない遺伝子よりもその生物の繁殖に優位だからだ。
我々のメスの体内にある遺伝子は、
巣作りや子育てをより手伝ってくれるオスを見付けるようにプログラムされている。
オスは立派な子供が産めるメスを見付けるようにプログラムされている。
その結果、特定の相手を愛するようになる。
第3の目――
ニュージーランドに生息する昔トカゲの頭蓋骨の中央には亀裂があり
松果体と呼ばれる網膜がある。この部分は目として機能し、
これを取ってしまうと彼らの闘争本能が著しく減退するという。
人間の脳にもこの松果体は存在し、
ヒンドゥー教の神話では超能力を司る部分であると言われている。
《本能の赴くままに行動する人間は人間ではない。だが本能を失ってしまった人間は
それ以上に人間ではない》・・・エリック・ジョセフ
未開の地の鳥は恐怖を受け継がず、敵対するものを知らない。
評価と判断と認識と、利己的な関心の束縛と、動物という名の壁に、
本能という名の信仰に、限界という名の定説に、
肉体人間として本能の奴隷となるか、本能の着眼点を変化させるか…
♪♪『Come Talk To Me』 Peter
Gabriel
――― CM:BUCK-TICK 『Darker Than Darkness Style93』 ―――
ソフトバレエ、遠藤遼一。レディオ・トランシー、今夜は本能について話しました。
今日お送りした曲は、
『WHITE SHAMAN』 soft ballet
『Visions Of You』 Jah Wobble with Sinead O'Connor
『I Build This Garden For Us』 Lenny Kravitz
『Come Talk To Me』 Peter Gabriel
番組では皆さんからのお便りをお待ちしています。なにか感じる所があれば
郵便番号107-06、TBSラジオソフトバレエ遠藤遼一『レディオ・トランシー』まで。
それでは、間もなく午前3時。遠藤遼一でした。